金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
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――ガッ! ガツッ!
「いい反応です! エナジーを放出するスピードも、だいぶ上がってきましたね……それじゃあ次からは、手数を倍にして攻めちゃいます!」
――ガッガッ! ガガガガッ! ピシピシッ……ガシャーーーーン!!
「ほらほら、練り込みが甘くなってましたよ! もっとエナジー同士をニュニュニュ~ッと押し固めて、ブイーンッて一気に解き放たなくちゃ!」
――パキッ、グシャッ! ガッシャァァァァァン!!
「はいっ、今度は喉と胸の中心……。急所を突かれたのは、今ので十回目になります。もしこれが寸止めじゃなかったら、黒河くん私に何回もやられちゃってますよ?」
……あれから数十分ほどの間。俺はひたすら障壁を創り出し、姫菱にそれを打ち砕かれるといった特訓を繰り返していた。
最初の内はエナジーの密度が高くて頑丈だった障壁も、時間が経つにつれ精度が落ちて脆くなり、ただのガラス板のようになっていく。
ほとんどのエナジーを出し尽くしたころには姫菱の攻撃を受け止めることもできなくなり、無数の障壁が砕けた破片となって虚空に消えていった……。
「ハァ、ハァ……わ、悪い、ちょっと休憩……」
ヘトヘトになった俺は、近くにあったベンチに
普段からあまり利用者がいないのだろう。雨や泥で座面がうっすらと汚れていたが、そんなことはお構いなしだ。
「はい、お疲れさまでした。エナジーも残り少ないみたいだし、今日のところはこれくらいにして、ゆっくり休んでください」
スカートが汚れるのを気にしたのか、姫菱が控えめな手つきでベンチを払った。
そして隣に腰かけると、楽しそうにニコニコしながら俺を見つめてくる。
「ふふっ、久しぶりですこういうの。子供のころ、お母さんと一緒に練習したことを思い出しました♪」
姫菱が昔を懐かしむように微笑んだ。
なるほど……特訓中の厳しさは、純玲さん譲りか。
「正義のヒロインにも、そういう泥臭い反復練習とかが必要なんだな」
「それはそうですよ。スポーツと一緒で、エナジーを扱うのにも、日々の積み重ねが大事なんです」
つまり俺と姫菱の間には、一日の長……どころか、何年分もの経験の開きがあるということだ。
エナジーの総量は俺のほうが優れていると言っていたが、果たしてそれだけで、この差を埋めることができるんだろうか……?
「……にしても、奇妙なもんだな」
「え? なにがですか?」
「いや、あれだけ何度も障壁を壊されたのに、辺りには破片ひとつ落ちてないもんだからさ。キレイさっぱりとしすぎてて、なんだか実感がわかないって言うか……」
「あはは、そういうことですか。物質化したエナジーは、壊れるとそのまま空気に溶け込んじゃいますからね。まあ、自分の意思で形を留めておく……みたいなことをしなければの話ですけど」
「……ん? ってことは、いまはそこら中に俺のエナジーが漂ってるってことか?」
そう言われた俺は、空気中のエナジーをもう一度体内に取り込むべく、思い切り息を吸いこんだ。
おかげでヘトヘトだった身体に闇のエナジーが戻り、多少は力が回復してきた……ようなが気がする。
……いや、どうだろう。戻ってるのか、コレ? 自分ではよくわからないんだけど……。
「……ぷふっ!」
すると姫菱がとつぜん吹き出して、手で口を押さえて肩を揺らし始めた。
「……なに?」
「ご、ごめんなさい……黒河くんがいきなり深呼吸をしたのがおもしろくて……」
「……もしかして、エナジーって息で吸ったりするようなものじゃないのか?」
「え、ええっと、そうですねぇ。基本的には心で操ったり、感情の起伏で増えたり減ったりするものですから、空気中に漂っているのをそのまま吸いこんだりする性質のものでは……。あっ、で、でもわかりません! エナジーだって物質には違いないですし、呼吸で直接取り込める可能性だってないことは……ふふっ、くすくすくす……♪」
最大限に気をつかいながらも、姫菱は込み上げてくる笑いを堪えることができないらしい。
やっぱり体力が戻ったように感じたのは気のせいだったようだ。思い込みによるプラシーボ効果ってヤツか……。
「……ま、いいさ。エナジーの扱い方を教わるっていう目的は果たせたんだ。次にお前と
妙に気恥ずかしくなった俺は、それをごまかすように憮然とした態度でそう言った。
……すると姫菱は笑顔から一転。口元を切なそうにキュッと結び、急に物悲しい表情を浮かべて上目遣いの視線をこちらに向けた。
「え、と……どうしても戦わなくちゃダメですか? その……私たち」
「……??? 当たり前だろ。そのために、今日はわざわざ付き合ってもらったんだから」
「で、でも今はこんなに仲良くできてるじゃないですか。なのにお互いを傷つけあうようなことをしなくたって……」
「……勘違いするなよ?」
俺は姫菱から目線を外して前を見て、すがるような言葉を一蹴した。
「前にも言ったろ、俺はお前が大っ嫌いなんだって」
「そ、それは……でも……」
「そうじゃなくても、俺は世界征服を企む悪の魔王で、お前はそれを止めようとする正義のヒロインなんだ。仲良くなんて、最初っからできるはずないだろ?」
「……うそです。黒河くんは、世界になんて興味はない。黒河くんは、私のために魔王として――」
「別に目的なんかどうでもいい。俺はお前たみたいな偽善者を、この世からいなくさせることができればそれでいいんだからな」
「……それってやっぱり、
絞り出すような声で、姫菱が尋ねてきた。
彼女にとっても辛い質問なのだろう。何せ、俺の家族を見捨てたのはコイツの母親なんだから。
……しかし今となっては、そんなことはどうでもいい――とまでは言わないが、動機としての優先順位は、以前と比べるとやや低くなっている。
純玲さんが俺の家族を救えなったことは仕方ないことだし……何より姫菱がこれ以上くだらない人間たちに傷つけられないよう、彼女の中の“正義のヒロイン”という価値観をぶち壊して、普通の学生に戻ってほしいだけだ。
そのためにも、決してシャイニングディオーネに負けるわけにはいかない――
「………………」
少しの間黙り込みながら、俺はそんなことを考えていた。
しかしその沈黙を、問いかけへの肯定として捉えてしまったのだろう。姫菱は泣きそうな表情を浮かべながらも、それをグッと堪えて俺への説得を続ける。
「……たしかに私たちは、すべての人たちを助けることはできません。子供のころ、救いの手を跳ねのけられてしまった黒河くんに恨まれるのだって、仕方ありません……」
「………………」
「それでも私は、使命を諦めたくありません! ぜんぶの人を助けられなくても、せめて自分の手が届く範囲の人は守りたい……。十年前に救えなかった黒河くんの心も癒してあげて、元の優しい黒河くんに戻ってほしいんです」
姫菱は握った拳を太ももに置き、不器用ながらもそんな決意を語っている。
俺はそれを隣で聞きながら――自分の中に苛立ちを募らせ、どんどん不機嫌になっていくのを感じていた。
なんだコイツ……人間を守ったうえで俺まで救いたいだなんて、けっきょく望んだものをすべて欲しいと言ってるようなものじゃないか。
いくら俺がなりたての魔王で、強さではシャイニングディオーネに及ばないと言ったって、これは少しナメ過ぎじゃないか?
「………………」
チラリと横を見ると、姫菱は自分の拳を見つめたまま、俺からしてみれば都合のよすぎる願望をつらつらと並べている。
宿敵である魔王が隣にいると言うのに、まったくの無防備だ。
いま不意打ちを仕掛ければ、倒せるかもしれない。……と言うか、姫菱が変身を解いているこの状況こそが、唯一のチャンスだ。
いくらエナジーが底をつきかけているとは言え、俺には魔族としての膂力がある。ただの人間の女ひとりを始末することくらいは容易いはずだ。
姫菱が油断しきっているこのタイミングで仕掛ければ、瞬間的にシャイニングディオーネの力を開放する暇も与えず仕留めきれるだろう。
これまでアメジスティアと共に何度も彼女を負かし、人間の本性を利用して闇のエナジーを注いできた。しかしダイヤモンドのように輝く心は決して折れることなく、コイツは負けるたびに力を増すかのように歯向かってくる。
……もう諦めてもいいんじゃないか? 俺はやれるだけのことはやったはずだ。
良くも悪くも、頑固な性分のコイツのことだ。きっとこの先どれだけ現実を見せても、人間を見限ることなんかないだろう。
(……そうだな。もうアレコレ考えるのも面倒くさくなってきたし)
姫菱がこれ以上、心無い人々に傷つけられる前に、自分の手で――
そう思い、俺は体内に残ったわずかなにエナジーを一点に集中させる。話に夢中になっている姫菱は、それに気づく様子はない。
……こんな状況だというのに、気分は妙に落ち着いていた。
姫菱を救いたいという目的を失ったからだろうか……感情が冷え切って、心の動きが止まってしまったかのようだ。
――やがてエナジーを練り終えて、俺は静かに姫菱を見つめた。
狙いは白く細い首筋だ。薄く固めた障壁を手にし、それを刃のように滑らせて肉に食い込ませる。
せめて苦しまないように……と。先ほどのホースの例えに倣い、最大出力で一気に命を奪う算段だ。
「――――――」
俺は闇のエナジーがもたらす衝動に身を任せ、甘っちょろい理想論ばかり語る口を一秒でも早く塞ぐべく、姫菱に迫る。
……その時。
「――だから黒河くんも、もう一度だけ
喋っている途中だった彼女が、不意にその横顔をこちらに向けた。
次の瞬間――
「…………ん、むぅっっ!?」
姫菱が、驚いたように目を丸くした。
「……………ッッ!?」
俺も驚いて目を丸くした。
――
気づけば俺は姫菱に顔を寄せ、自分から唇を重ねていたのだ。