「たきなが最近おかしい?」
クルミがモニターから視線も外さずに復唱した。
「そうなんだよ~」
「そういうお年頃なんだろ」
面倒くさそうに話を切り上げて押入れのふすまを閉めようとするハッカーに「ちょいちょいちょいちょい!」と待ったをかける。
「相談に乗ってくれたら、お礼に千束特製スペシャルパフェを奢るから!」
パフェに心を動かされたか、相手をしないと後々面倒だと判断したのか、はたまた友人は大切にしようと思い立ったのか、クルミは渋々頷いた。
「仕方ないな。まあ、話くらいは聞いてやる」
「ありがと~、さっすがクルミ様♡」
「世辞はいい。早く話せ」
「実は――」
ハワイから戻って『喫茶リコリコ』を再開させてから、私はたきなと二人で暮らしている。
救世主だと信じていたヨシさんが私に人を殺す事を望んでいたのはショックだったけれど、それももう乗り越えつつある。だってこんなにもみんなが支えてくれているのだから。
特にたきなは、私の人工心臓を壊された時に犯人を逃がしてしまった事を今でも悔やんでいるらしく、新しい人工心臓を入れたのに心配症というか過保護というか、お母さんのように口うるさくなっていた。
「あまり心臓に負担をかけるような事はしないでください。そうでなくとも任務ではハードな立ち回りをしなければいけない事が多いんですから!」
「イエス、マム!」
ヤケクソで敬礼し、やれやれと心の中で溜め息を吐く。
本来の意味は“マダム”の略称のマムだけど、気持ち的には“はぁい、ママ”だ。
そんな共同生活の家事分担は、最初はグーから始めないじゃんけんやクジ引き、ボドゲ会の勝敗など、ちょっとした勝負で決めるようになったのだが、ここ最近運命の女神サマに見放されてしまったらしく、5日連続で食事当番になってしまった。
――ま、自分の食べたいものを用意できるからいいんだけどね
リコリコからの帰り道、商店街のお肉屋さんで美味しそうなとんかつを見つけ、ホクホクと持ち帰る。
キャベツを千切りしていると、帰宅したたきながテーブルを見て、顔を引きつらせた。
「千束……今夜はとんかつですか?」
「そう♪ お肉屋さんの前を通りかかったらめっちゃいい匂いして、揚げたてだって言うからつい買っちゃった」
「そう、ですか……。今まで千束の料理当番がこんなに続いた事がなかったから気付きませんでしたが……なるほど、やはり私がしっかりしないといけないみたいですね」
そう言って顔を上げたたきなの笑顔が、なぜか怖い。
「明日から食事の準備は私がします!!」
「で、たきなが宣言してから一週間が経った、と」
「そう! 次の日家電量販店で最新のなんちゃらオーブンとか多機能過ぎて使いこなせんのかみたいなフードプロセッサーとか色々買い込んで、スーパーで買い出しして」
「ちなみにお前は一体何を作ったんだ? たきなの嫌いなものばっかり使った料理でも出したんじゃないのか?」
「そんな事ないと思うけど。えっと確か一日目は――朝はトーストに目玉焼き、オニオンスープにミニサラダで――」
「おお、意外とまともじゃないか」
「昼はラーメン屋さんに背脂増し増しとんこつラーメンと餃子を食べに行って、夜は映画のDVDを見ながら宅配ピザとポテト。んで次の日の朝はピザの残りにチーズをガン盛りして焼き直して、昼はリコリコのまかないのピラフとコンソメスープでしょ。夜は煮込みハンバーグで、次の日にバンズにハンバーグとチーズを挟んでチーズバーガーにして、夜は唐揚げで――…」
途中まで聞いてクルミが呆れたように声を上げる。
「千束、お前……そりゃ、たきなも怒るわ」
「え、なんで!? 夕飯の残りを朝食に回したから? でも捨てちゃうのも勿体ないし、ちゃんとアレンジを加えたから大丈夫って思ったのに~。……あ、でも唐揚げの後、夕食に揚げ物が続いたからなぁ。四日目の夜がコロッケとメンチカツで、五日目がとんかつ――」
駄目だ、こいつ。早くなんとかしないと――という目で私を見ていたクルミが、話を戻した。
「でも話を聞く限りヤバいのはお前の食生活で、たきなは別におかしくないだろ」
「でもそこから一週間、私、ほぼ野菜と魚ばっかり食べてるんだよ! お肉食べたいって却下されるし! おっぱいの育成には動物性たんぱく質も必要なのに!」
「胸なら充分あるだろ! まだそれ以上育てるつもりか!? ……あ、いや」
ついツッコんでから、問題はそこではないと気付いたクルミは咳ばらいをする。
「とにかく! お前の食生活は偏っている。もう少したきなに付き合ってもいいんじゃないか」
「ええ~…」
タン、と目の前でふすまを閉められ、押し入れの中でクルミが何かを呟くのが聞こえた。
「動物性たんぱく質か……」
――いや、美味しくない訳じゃないんだよ?
たきなの作ってくれた夕食――鮭ときのこの豆乳ベースのグラタンにカリフラワーのポタージュスープ、じゃがいもと玉ねぎ、パプリカ、ベーコンが彩りよく入ったスペイン風オムレツに全粒粉のパン、生野菜のサラダをつつきながら、自分に言い訳する。
ただもうちょっと肉っ気とパンチが欲しいだけで――。
そう考えた時、クルミの言葉を思い出す。
“お前の食生活は偏っている”
――じゃあなんで、たきなは私の食生活を正したいのだろう――…
「あ、そっか……」
「千束?」
テーブルの向かいから、心配そうにたきなが私を見ていた。
「口に合いませんでしたか?」
「んーん、美味しいよ! また腕を上げましたね、たきなさん」
慌てて笑顔をつくって、つついていたグラタンを口に運ぶ。
「一体誰目線なんですか」
呆れたように言うたきなは、それでも私の言葉にホッとしたようだ。
なんだかんだ(心の中で)言いながら出されたものは残さず平らげると、林檎のコンポートを盛った小皿に水切りヨーグルトを添えようとしているたきなを止める。
「あ、待って! そこにバニラアイス乗せない?」
「駄目です。本当はデザートを抜きにしたいくらいなんですから」
「ええ~、食後のデザートは頑張った自分へのご褒美だよ! アイス乗せよ♡」
「駄目です」
「いいじゃん~。明日はリコリコも休みだし、今夜はちょっとだけ自分を甘やかそうよぉ」
うるうると上目遣いで見つめると、たきなは深―い溜め息を吐いた。
「……仕方がないですね、少しだけですよ」
「わーお、やったぁ♡ たきな優しーい」
「はいはい」
ディッシャーを使ってコンポートにアイスを添えるたきなの背中から、抱きつくようにわくわくと覗き込む。
「めっちゃ美味しそう!」
「千束、背中に胸が当たってます」
「あれ? イヤ? たきなは私の胸、好きだと思ってたのに」
「まあ、好きか嫌いかで言ったら好きですけど」
「そうでしょ、そうでしょ。たきながたくさん揉んでくれるおかげで、最近ちょっと大きくなった気がするもん」
「気のせいでは?」
素っ気なく答えたたきなは冷蔵庫にアイスを戻しに背中を向けたが、その頬は少し赤くなっていた。
「って、あれ? たきなの分は?」
「私は作っている時に味見したので、いいんです」
「そうなの?」
一口食べると、林檎は甘く煮られているだけでなくスパイスが利いていた。
「これ、シナモンと――カルダモン?」
「ええ」
「すっごく美味しい! アイスとも合う!!」
スプーンですくって、たきなの口元に運ぶ。
「はい、たきな。あーん♡」
「だから私はもう食べましたから……」
「いやいや、バニラアイスとの相性も確かめた方がいいって!」
むむむ、とスプーンを見つめていたたきながパクリと一さじを口に咥えた。むぐむぐと咀嚼して、複雑そうな表情になる。
「くそ……美味しいな……」
「なんで悔しそうなんだよ」
笑いながらスプーンを動かし、デザートはあっと言う間に皿から消えてしまった。
満足の溜め息を吐きながら、洗い物をシンクに下げる。
たきなが料理を作ってくれるようになったので、皿洗いは私の担当だ。
手早く洗い物をしながら、テーブルを拭いているたきなに声を掛ける。
「この後、どうする?」
「特に決めてませんけど」
「じゃあさ、映画鑑賞会しよ♡ 最近お洒落に目覚めたたきなにぴったりの映画を、用意したんだ♪」
「いいですけど……条件があります」
「何?」
「歯を磨いてからにする事!」
「え、なんで?」
「千束の事ですから、絶対に映画を観ながらお菓子食べたり、ジュース飲んだりし始めるでしょう。歯を磨いておけば抑止力になるかと」
「う……」
痛いところを突かれ、ここで駄々をこねるのも子供っぽいかと、ヤケクソ気味に頷く。
「いいでしょう。磨きましょう。なんならお風呂にも入っちゃいましょう!」
「……ふう」
千束の後にお風呂から上がると、居間にはテーブルに色々並べられていた。
「千束、これは?」
「いつもお料理してくれているたきなの為に、癒しの品々を準備しておきました♪ ささ、まずはこちらを」
渡された冷たいペットボトルの水でお風呂上がりの水分補給をすると、千束はフェイスパックをピラッと広げてみせ、ソファに座るように促す。
「たきなは乾燥肌っぽいから、しっとり系のパックだよ♡ 10分経ったら剥がしてね」
「どうも……」
ひたひたのパックを顔に乗せ、タオルを敷いたソファの背もたれに頭を預けると、千束が甲斐甲斐しくドライヤーで髪を乾かし始めた。
「……一体どうしたんですか、千束?」
至れり尽くせりの様子に嬉しいよりも困惑してしまい、髪が乾いたタイミングで耐え切れなくなって聞いてみる。
「え? いや、別に、純粋に日頃の感謝を込めてみただけで……」
そう言って目を泳がす千束をジッと見つめると、彼女は隣に座って、私の肩に頭を乗せた。
「……私、気付いちゃったんだ」
「何に?」
「たきなが料理の当番を引き受けてくれた理由」
「理由なんて別に……千束の用意する食事が油ものとお肉ばかりだったから、我慢できなくなっただけで……」
「私の為――私の心臓を気遣ってだよね」
「…………」
本当は千束の言う通りだが、それを口にしてしまうのは何か恩着せがましいというか、違う気がして黙り込んでしまう。
吉松の一件後、私は人工心臓について調べた。
一般的に使用・開示されているものについての知識でしかないけれど、血栓の予防が大切なようだった。
千束の人工心臓には替えがない。修理もできない。何かあってからでは遅い。
だからせめて毎日の食事で、いわゆる血液をサラサラにするような食材を使い、千束に食べてもらいたいと思ったのだ。
見透かしたような目をした千束は「ん♡ そういう事にしておこう」と微笑み、頬にキスをする。
「ありがとう♡ 私の事、気遣ってくれて」
「はい………いいえ」
つい肯定してしまってから、千束に引け目を感じてほしくなくて、否定した。
「どっちだよ」
笑う姿を見て、やっぱり千束には笑っていてほしい、元気でいてほしいと思う。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、千束は私をソファに押し倒すと、甘えるように胸に耳を当てた。
千束は二人きりになると、時折こうして私の鼓動を聞く。
「……たきなの心臓の音聞いていると、凄く落ち着く」
「千束は鼓動がないですものね」
それでも千束はちゃんとドキドキもトキメキも胸の痛みも感じていて、誰より輝いて人生を楽しんでいる。そして私は、そんな千束が好きだ。
「今夜は一緒に寝ましょうか」
ポロッと出てきた言葉に、千束がパッと顔を上げる。
「それは、どっちの意味?」
「どっちって?」
「ただ同じベッドで寝るって事? それともエッチのお誘い?」
「千束はどっちがいいですか?」
「あ、ズルい!」
「ズルくないです。私はどちらでも構いませんよ」
ズルい、ズルいと口を尖らせる千束が、胸に顔をうずめて呟いた。
「そんなの……シたいに決まってるじゃんか……」
素直な千束が可愛くて、頭を撫でて囁く。
「そうですね。映画はいつでも観られますし、今夜は久しぶりに♡」
部屋に行き、キスをしながら着ていたパジャマを脱がし合い、裸でベッドにもつれ込むと夢中で舌を絡ませ合う。
「たきな♡ 大好き♡」
たきなの舌をジュウッと吸ってフェラしてあげると、彼女はもっとして欲しそうに更に舌を突き出した。
「ちひゃと♡ もっと……♡」
「エッチだなあ、たきなは♡」
「でも好き、でしょ?」
「好き♡」
舌を吸い絞りながら互いの乳房を愛撫する。
「ね、乳首でキスしよ♡」
「はい……♡」
むにゅっ、と押し付けられた柔らかな乳房の中心で硬く尖る乳首を擦り付け合う。
「たきなったら、もうこんなに硬くしちゃって……可愛い♡」
「だって千束があんなもの着けるから……」
「感じやすくなった?」
たきなは顔を赤くしながらも、こくりと頷く。
「たきな、脚開いて♡」
「もう……恥ずかしいんですからね」
素直にベッドに仰向けになったたきなが、脚を広げた。
真っ赤に勃起したクリトリスの根元に、銀色の小さな輪が下がっている。
「んんん~♡ めっちゃエッチで、めっちゃ可愛い♡」
2週間くらい前に二人で一緒に開けたクリピだ。
「痛みはない?」
「痛くはないですけど……これのせいでずっと剥き出しにされて、下着に当たって擦れて――ずっと感じて濡れてしまって、大変なんですから」
「分かってるよ♡ お揃いだもん。私も一緒♡」
たきなのトロトロに濡れたそこへと屈み、舌全体で舐め上げる。
「んあぁぁあぁぁっ♡」
身体が逃げそうになる太ももを押さえて愛液を舐め取り、チュポチュポとクリをフェラしてあげると、たきなは涙と唾液をこぼしてよがった。
「好き♡ 好き♡ 千束がぺろぺろするの、好きっ♡」
「ん♡ ピアスのおかげで感度上がってるね、たきな♡」
クリピを舌で弾く度に、あ、とも、お、ともつかない声で喘ぐたきなに、もっと気持ちよくしてあげたくなってくる。
これ以上ないほど勃起しきったクリトリスを優しく噛んで、クニクニと食むと、たきなは「ひぃッ♡」と喘いだ。
「それダメ! 根元に歯を立てるのダメぇ!」
ダメ、と言いながら、膣口から愛液がぴゅる、ぴゅる、と漏れてくる。
「たきなはいーっぱい甘やかしてあげた後、ちょっと酷くされるの好きだよね♡」
「やっ、ま、待って千束! 今は敏感過ぎるの! ずっと勃ちっぱなしでおかしくなってるの! 本当はトイレで用を足すだけでイッてたの! リコリコでお客さんの前でもイッてたの! ホントに今は――」
泣いて懇願するたきなにゾクゾクしながら、少し強めに噛んだクリを歯で扱いた。
「ひぐッ!? んおぉぉッ♡♡♡」
激しく潮を吹きながらたきなが絶頂し、弓なりに仰け反ってブルブルと身体を震わせる。
荒い息を吐くたきなが、涙目で睨んだ。
「もう……待ってって言ったのに……」
「ごめんごめん。たきなが乱れる姿がエロくて、つい♡」
「何が“つい”ですか」
そう言って、たきなはまだ息も整っていないのに潮を浴びてびしょ濡れになった私をティッシュで拭いてくれる。
「すみません、こんなに濡らしてしまって。ベッド、もう寝れないですよね」
「ああ、平気平気。こんな事もあろうかと、防水シーツを敷いておいたから♪」
「はい!? 準備良過ぎませんか!?」
「だって私ももう限界だったんだもん。今夜絶対たきなとするつもりだったの!」
「……まったく……仕方がないひとですね」
たきなはフッと笑うと、私の胸――手術の痕に優しくキスをした。
「千束、今夜は私にさせてください」
「うん?」
「いつも千束にイニシアチブを握られているので、たまには私がシたいです」
グイッと千束を押し倒し、もう一度胸の傷に唇を押し当てる。
「もう痛みはないんですよね?」
「平気。たきなのキスがくすぐったいぐらい♡」
乳房を愛撫しながらソッと乳首を口に含むと、千束が甘い吐息を漏らした。
「んっ♡ 気持ちいい♡ ……ね、お腹の奥が切ないの。下も触って……♡」
吸い付いた乳首を舌で転がし、伸ばした手で千束の柔らかな秘肉を掻き回す。
愛液の溢れる穴にゆっくりと指を入れると、待ちかねていたようにキュウッと膣が指を締め付けた。浅いところのザラザラが、ふっくらと主張している。
「私も千束の好きなところ、知っていますよ。ここを、こうして――♡」
クリトリスを後ろから突くように膣の中で指を曲げた。強めに押し上げると、千束は腰を浮かせて嬌声を上げる。
「あああぁぁ♡ そこ好き♡ 好き♡ グリグリされるの好きぃ♡」
「千束もめっちゃ仕上がってるじゃないですか。ここ、こんなにパンパンに腫らして、弄ってほしいのバレバレ」
「そうだよ♡ クリピのせいでずっと発情しっぱなしで、でもたきなとシたかったから、ひとりエッチだってずっと我慢してたんだから♡」
「でしたらご褒美に、ここで一度イッておきましょうね♡」
身体をズラしてピアスごとクリトリスを舐め回しながら、膣内で完全に指を曲げて関節でGスポットを突き上げた。
「あー♡ そんなにグリグリしたら♡ すぐイく♡ イく♡ イッくうっ♡♡♡」
千束がビクン、と仰け反って、潮を吹く。
余程気持ちよかったのかオーガズムの後も腰を痙攣させて喘ぐ千束の片脚を抱え、性器を合わせた。
「ひんッ♡」
パンパンに腫れ上がったクリトリスに愛液を纏わせて擦り合わせると、千束がブルブルッと震える。
「待って、たきな! 私、イッたばっかで――」
「分かってますよ。千束の“待って”は“強引に犯して”ですよね?」
にゅる、ぬるる、と合わせた性器の柔らかくて艶めかしい感触に、硬く勃起したクリトリスと金属のピアスが引っかかって刺激され、夢中で腰をくねらせて快楽を貪り合う。
「千束の嘘つき♡ 待ってとか言って、こんなに積極的に腰を動かしてるじゃないですか♡」
「だってめっちゃ気持ちいいんだもん♡ こんなの、腰止まんない♡」
「ピアス、ヤバいですね……引っかかる度に甘イキしてます」
「私も♡ ――ねえ、そろそろ、前に二人で選んだアレ、試してみない?」
「え、アレ本当に買ったんですか?」
「もちろん♡ これ以上続けたら立てなくなっちゃいそうだし、今のうちに用意しとこ?」
そう言って身体を離すと、愛液がドロドロと糸を引いてシーツと太ももにこぼれる。
千束はクローゼットに行くと、隅から長い箱を持ってきた。
「じゃじゃーん♡」
「うわ……卑猥……」
男性器を模した半透明のピンクの玩具は長く、両端とも挿入できるようになっている。いわゆる双頭ディルドだ。しかも真ん中辺りに変な形の突起が付いている。
「ちゃあんと充電してあるよん♡」
「はいはい、準備万端ですね」
手に取ると手触りはしっとりと柔らかく、芯が入っているが柔軟性があって自在に曲がり、これなら二人で繋がったまま色々な体位ができそうだ。
「ね、たきな。自分で入れてみて♡」
「え?」
「たきなのエロい姿、見たい♡」
期待で瞳をキラキラさせている千束にイヤとは言えず、溜め息を吐く。
「……仕方がないですね」
「あ、潤滑剤、使う?」
「たぶん大丈夫です」
ディルドを膣口にあてがうと溢れる愛液でぬめり、難なく挿入される。
「ん……っ♡」
たっぷりと濡れていたおかげで簡単に奥まで入り込んだディルドは、柔らかな亀頭部分がしっかりと子宮口に嵌り込んで、それだけでイッてしまいそうになった。
「あは、めっちゃエロい♡ たきなからおちんちん生えたみたい♡」
「もう……いいから千束も早く入れてください」
「はぁい」
脚を広げて千束が挿入しやすいようにディルドを持ち上げる。
「は♡ 結構太いね、これ……♡」
千束が私の脚を抱き寄せるようにググッと奥まで挿入すると、ディルドの中心部分が余っていた。
「少し長いですね」
「そうかな?」
何か企んでいそうな悪い笑みを浮かべた千束は、いつの間にか持っていたスマホのアプリを起動させて、私を見る。
「たきな、1から9の中で好きな番号言って」
「……じゃあ8月生まれなので8で」
「パターン8ね♡」
トン、とスマホの画面をタップした途端、ディルドが暴れ出した。
「んんううぅ!?」
振動しながら強弱をつけてうねるディルドに膣内を蹂躙され、逃げそうになる身体を千束が押さえてディルドを更に深く押し込んでくる。
「無理、無理っ! 止めて! 刺激が強過ぎます!」
「ヤバ♡ これめっちゃ中掻き回してくるっ♡」
「千束、そんなに押し付けないでぇっ!」
「まだまだ♡ 凄いのはここからだよ♡」
再びスマホをタップするとディルドの真ん中にあった突起が振動し始め、クリトリスに当たるように千束が身体の角度を変えた。
「あああぁあぁぁ♡」
「クリバイブもヤバいでしょ♡」
押し付けられた突起の振動で、一瞬にしてイかされてしまう。
「イッた! もうイッたの! 止めて、千束!!」
「これでまだ弱モードだよ?」
千束は身体を起こすと私に折り重なって正常位になった。
グッと腰を落として、お互いのクリトリスにクリバイブを強く押し当てるだけでなく、更に股間を擦り付ける。
「あーっ♡ 中とクリの同時責め、効くッ♡ たきなのイキ顔見ながらイク♡ イク♡ イクぅッ♡♡♡」
千束がガクガクと痙攣して絶頂した拍子に、スマホがベッドから滑り落ちた。
突然、クリバイブがうるさいほど唸り出し、振動が強くなる。
「「ヒィッ!?」」
床に落ちた時にスリッパにでも当たったのか、衝撃で誤作動を起こしたのか、耐え切れないほど強い振動で敏感になり過ぎた突起を揺さぶられ、一瞬で絶頂した。
絶頂のすぐ後に強制的に絶頂させられた千束が潮を吹いて失神し、私の上に倒れ込む。
「千束! ちょっ、起きて――こんな強いの無理! 無理無理無――――ひぎぃッ!?」
電動ディルドはOFFにしない限り、充電がなくなるまでは止まらない。
イキ過ぎで痺れて動けないのに、ディルドが膣中を掻き回し続け、失神した千束の身体でクリバイブを押し付けられ、イッてもイッても休む事なく責め続けられて痙攣する膣はディルドを締めつけ過ぎて抜く事ができない。
立て続けに与えられる神経と脳を凌辱されるような刺激に呼吸も上手くできず、涙と鼻水と唾液、愛液と潮が溢れ出るのを止められない。
――こんなの狂う! おかしくなるっ!!
「あぐうぅッ! イぎッ♡――ひグッ♡♡♡」
強過ぎる快楽は苦痛なのだと思い知った何度目かの強制連続絶頂で、私も気を失った――…。
明け方にハッと目が覚め、二人ディルドで繋がったままだと気が付いた瞬間、何があったかを思い出した。
さすがに電動ディルドは充電が切れて振動は止まっていたが、たきなの顔に残る幾筋もの涙と唾液の跡が、私が失神した後も責め続けられていた事を物語っている。
強烈な連続絶頂にまだ痙攣している膣からディルドを抜こうとすると、深く咥え込み過ぎてなかなか引き抜かれてこない。
ズポッと音を立ててようやく抜けた時、たきなが目を開いた。
「千、束……?」
「たきな! 大丈夫? どっか痛いところとかない?」
「え……?」
昨晩のせいか寝起きのせいか、ぼんやりとしたたきなは、どうして私が心配そうなのか分からないという顔をしている。
「ごめん――ごめんね、たきな」
ようやく思い出したのか、たきなが目元を擦りながら起き上がった。
「ああ……そうでした……ディルドが暴走して……」
「無理させちゃったよね。しかも私の方が先に失神するなんて……」
ディルドが誤作動するなんて本当に計算外で、イチャ甘な夜になる予定だったのになんだか悔しい。
「大丈夫です……と言いたいところですが、次からは本当に気を付けてください。頭がおかしくなるかと思いました」
「おかしくなっても大丈夫♡ たきなは私のお嫁さんにしてあげるから♡」
「反省していませんね?」
真っ黒なオーラを出して迫るたきなに、両手を合わせて謝り倒す。
「してます! ごめんて! お詫びに一緒にお風呂入ろ! 身体洗ってあげる♡」
「やっぱり反省していないでしょう、千束?」
二人でベトベトの身体をシャワーで流した。
泡が流れ落ちると、股間の合わせ目からは銀色のピアスが覗いている。
クリ責めとピアスで肥大したクリトリスは、常に勃起したまま戻らなくなっていた。
「こんなエッチなクリじゃ、この先恋人ができても絶対見せられないね」
「誰のせいですか」
「うん、だからたきなは これからもずうっと、私のもの♡」
照れるかと思ったのに、たきなはスン、と真顔で否定の言葉を口にした。
「違います」
「ええ~? ここは微笑んで“はい”って言ってくれるところじゃないの~?」
むくれる私に、たきなが生真面目に言う。
「違いますよ。千束が、私のものなんです」
男前なセリフに思わずキュンとトキメいて、気付けば私は素直に頷いてしまっていた。
「はい……」
「まあでも、確かに私をこんなにエッチな身体にした責任は、取ってもらわないといけませんね」
「へ?」
「今日はお揃いの白のワンピースを買いに出掛けましょう」
「うん? ……うん」
「お嫁さんにしてくれるのでしょう?」
ウェディングドレスを着て微笑み合う二人の姿を想像して、胸の奥が甘く疼く。
「うん! 行こ、行こ♡」
数日後。
「…………」
クルミが唐揚げを頬張りながらパソコンを弄っている姿に、私は足を止めた。
視線に気付いたクルミは、ピックに刺した唐揚げをこちらに差し出す。
「どうした、たきな? 食うか?」
「いえ……」
最近唐揚げにハマっているらしく、ここのところ毎日コンビニやデリバリーのものを食べているのを見かける。
「…………クルミ、なんだか少し太りました?」
ちなみに千束が観ようと思って用意していた映画は「プラダを着た悪魔」です。
ちょっと古い映画が好きな千束っぽいチョイスかな~と考えていたのですが、結局観る前にエッチが始まってしまった…(ΦωΦ)アレェ?