淫臭村フィールドワーク〜ムチムチドスケベ欲求不満おんなばかりの田舎村を調査する〜 作:ユリイカ
谷倉邸の門前に女たちが集まっていた。白い浴衣に身を包み、一様に目が据わっている。明らかに平時とは空気が異なる桃花村の女性たちは、固く閉ざされた門戸を叩く。
「谷倉さん、開けてください。いらっしゃるんでしょう?」
橘花結美が声を張り上げる。山の隅々まで探し回った後にも関わらず、彼女の声には覇気がこもっている。桃花村の血筋である彼女はその程度で疲弊するほど柔ではない。だがそれ以上に、強い感情が彼女を突き動かしていた。
「耀さーんっ! 助けに来たよ。早く扉を開けて!」
隣に立つ玲奈も切実に叫ぶ。彼女もまた衣服を乱しながらも綽然とした立ち姿だ。彼女たちはここに探し人がいると確信した顔で開門を迫っていた。
繰り返し何度も叫び、訴えかけながら、徐々にその声色に不満と怒りが滲み始める。
「谷倉さん! もうお祭りは始まっているんですよ。どうして邪魔をなさるんですか?」
「百花舞奉納は村の伝統なんですよね。ここで途絶えさせちゃいけないって、笙子さんが言ってたんじゃないですか」
沈黙を保ち続ける門の向こう、屋敷の主に向かって語りかける。当然ながら、それに対する返答はない。
やがて橘花親子の背後に控える村人たちからも不満の声があがりだす。一度は"供物"を受け取った橘花親子はともかく、彼女たちは障子戸越しにその営みを見せつけられただけである。目の前のご馳走を掠め取られた犬のように、唸り声にも似た荒い吐息をあげていた。
「早く開けてください。もうすぐ、また日が暮れますよ」
時刻は夕暮れ間近。一昼夜を経た彼女たちは、すでに我慢の限界を迎えていた。
夜の帷が降りてしまえば、女性たちの時間である。本来ならば百花舞奉納も最高潮を迎えるはずだ。しかし当の"供物"は村長によって隠され、門は固く閉ざされている。
自分を愛してくれた男性が、愛おしい存在が取り上げられた。その悲しみが結美の心を燃え上がらせる。
「笙子さん!」
普段は淑やかな美熟女が、明確な怒りを込めて扉を叩く。
その時、不意に背後でけたたましいエンジン音が吠えた。
「結美ちゃん、退いて。開けてくれないなら、私が開けてあげる」
磨き上げられた黒い車体が美しいセダンに乗り込み、白い手袋をつけてハンドルを握るのは、制服に身を包んだタクシー運転手。耀をこの村へと連れてきた彼女もまた桃花の女。正式な百花舞奉納を楽しみにしていた者の一人だ。
女性たちが左右へ退く。道が現れ、タイヤがガリガリと敷き詰められた玉砂利を削る。
「百花舞奉納は終わらせない。――あの子に孕ませてもらうの!」
色欲に染まった目を輝かせ、限界までアクセルを踏み抜く。重厚な車体が野兎のように跳ね、轟音と共に門へ向かう。
「きゃああっ!?」
あまりの衝撃に玲奈が頭を抱えてうずくまる。
耳をつんざくような破壊音と共に、立派な門が木っ端微塵に砕け散る。
「玲奈、行きましょう」
「お母さん……」
結美は娘の手を取り、悠然と歩きだす。
大穴が開いた門をくぐり、その向こうに囚われている愛しい彼を救い出すため。気分はまさしく、拐われた姫を救い出す騎士のようだ。ただの民宿の女将でしかなかった彼女は、胸の内にたぎる高揚に驚きさえしていた。自分にまだここまで情熱を燃やせるほどの女性性があったのかと意外に思っていた。
端緒は彼の風呂へと忍び込み、浅ましくも自ら誘惑したこと。彼はそれを受け入れ、あまつさえ真正面から愛してくれた。燻り続けてきた愛欲が、その瞬間に解き放たれたのだ。
「耀さん。待っていてね。私が助けてあげるから――♡」
必ず彼の子を孕む。
そのためにも百花舞奉納を成し遂げなければならない。
愛の妄執に囚われた結美にとって、笙子は魔王にも等しい存在と化していた。今すぐにでも、彼女を打倒しなければならない。そのためには、門のひとつやふたつ、破壊されても致し方ない。
桃花村の中でも特に歴史が長く、格式高い谷倉邸。その中へと足を踏み入れる。敷居を跨ぎ、堂々と屋敷の扉に手をかける。道場破りのような猛々しさで、戸を引いた。
「っ!」
その瞬間、内部に満ちていたどろりとした空気が流れ出し、結美の鼻先を掠めた。
甘い桃のようでいて、喉に絡まるよな濃厚な匂い。彼女たちが知らぬはずもない。桃花の女が発情し、淫らに己を慰める時に醸す匂い。それが意味するところはただ一つ。
「笙子さん、耀さんを独り占めするなんて!」
長い廊下を駆け抜け、匂いの発生源となった部屋の襖を蹴倒した結美が見たのは、桃色の湯気すら幻視するほどに満ち満ちた淫靡な惨状。畳に愛液と精液が飛び散り、脱ぎ捨てられた和服と帯が乱雑に転がっている。
部屋の奥の暗がりで、バチュ、バチュ、と水に濡れた肉音が響き、呻くような女の嬌声がか細くそれに混ざる。
「お、おぉ……♡ らめ、耀くん……♡ お、おまんこ壊れちゃう♡ もう、いぎたくないのぉ♡ んぉ♡ おぉんっ♡」
「笙子、かわいいよ。その顔もっと見せて。ほら、お尻あげて。もっと、もっとセックスしよう」
ぐったりと身を投げ出し、白目を剥いている美熟女村長がいた。その腰をがっちりと掴み持ち上げ、腰を叩きつけている青年がいた。
笙子はもはや抵抗する余力もなく、次々と送り込まれる快楽に身体を痙攣させている。しなやかな白い媚体は体液で穢され、全身に噛み跡がついている。耀は目をぎらつかせ、明らかに正気を失っていた。そんな笙子を抱きしめながら、衰えを知らぬ男根を突き込み続けている。
「耀さん、そんな……。まさか、笙子さんを抱き潰すなんて」
結美は思わず口を覆う。
笙子の亡夫が衰弱した遠因には、彼女の毎晩のように激しく夜の営みを求めていたこともあるというのは、桃花村の皆がよく知るところだ。村長である彼女が、桃花の血を最も濃く引き継いでいるのは、そう不思議なことでもない。
だからこそ結美たちは、笙子が耀を独占し、彼を壊してしまうことを危惧していた。
だが、蓋を受けてみれば彼女たちの予想は裏切られた。耀は笙子が降参する声も無視して、彼女を愛し続けている。
部屋の中にわずかに酒気の匂いを感じた結美は、彼が何を飲んだのかを察する。それにしても、驚愕のひとことだ。桃花の媚酒はあくまで興奮を極限まで高め、箍を外させるもの。村長を息も絶え絶えの状態にまで追い込んだのは、間違いなく彼の絶倫である。
「ああ、耀さん。なんて素敵なの」
哀れな村長を見て、結美はうっとりと頬に手をやる。股間にも指先を伸ばし、水気を滲ませ始めた茂みを弄る。
己が愛した青年は男として一段成長したのだ。圧倒的な雄として一皮剥けて現れた。その成長がうれしく、その勇姿に彼女の中の女が打ち震える。
「耀さん、耀さん♡ 私も、犯して♡」
彼女は取り憑かれたように彼の元へと歩み寄り、浴衣を脱ぎ捨てる。一糸纏わぬ姿となりながら、野獣の前に身を晒す。百花舞奉納は始まっている。山神の下に供物は捧げられる。
彼女は自らの熟れた果実を持ち上げた。