常識と認識操作のスキルで完璧な(性)犯罪者になった俺~このスキルで女達にやりたい放題する~ 作:nene2012
午前8時45分。
「何で……?」
俺はドアに手をかけるが、微動だにしない。代わりにドアのガラス部分に大きな白い貼り紙がガラスの中央に、まるで巨大な絆創膏のように無機質に貼られていた。
近付いてみると会社が法的整理の手続きに入った事を知らせる告知書であった。それは簡潔で冷たい告知だった。
『〇〇株式会社は、本日付けをもって事業を停止し破産手続きを開始します。従業員の皆様には追って連絡いたします。』
俺は張り紙の内容を理解するのに数秒要した。理解した瞬間、全身から血の気が引いていく。
昨日まで普通に働いていた会社が、たった一夜にして消滅したのだ。最近は給与の支払いが遅延していたので怪しいとは思っていたが、本当に倒産するとは……。
「嘘だろ……?」
「こんな事って……」
「ははは……」
他の従業員も俺と同じように貼り紙を見て口々に呟く。俺は目の前の現実に、ただ笑うしかなかったのだ。
同僚達は皆、放心した状態で立ち尽くしている。こうも呆気なく会社が消滅した事に言葉が出ないのだろう。
俺もその内の1人だが、いつまでも立ち止まってはいられない。一刻も早く職を探さねば……。
会社から帰宅するまでの間、俺は社会から切り離されたような喪失感と孤独に苛まれ続けたのである。
夜になる前に俺は酒場に行きヤケ酒をあおっていた。
「くそっ! 何でこんな事に……俺の人生は……無職になったんだぜ」
俺はカウンター席で酒を飲みながら愚痴をこぼしていた。だが、そんな俺に対して酒場のマスターは優しく慰めてくれた。
「まあ、そう落ち込むなって。人生なんてそんなもんさ」
「だけど……これからどうすれば良いんだよ?」
マスターの言葉に苛立ちを覚えながらも、不安を口にする。すると彼はこう答えた。
「とりあえず今は飲んで忘れろ!」
「はぁ……」
俺はため息を吐く。だが、マスターの言葉も一理あるかもしれない。明日から気持ちを切り替えて仕事を探すしかないだろう。
それから酒を飲み続け、酔い潰れるまで飲んだ。そして気が付いた時には深夜になっていた。
「う〜ん……」
「もう、このへんで止めとけ体に悪いぞ」
マスターがもう帰れと催促してくる。
「ああ……分かったよ」
俺は支払いを済ませると、ふらつく足取りで酒場を後にした。
深夜の街を彷徨い歩く。辺りは静まり返っていて、人の気配も俺だけだ。まるで世界に自分だけ取り残されたような感覚に陥る。
「飲み過ぎたな……」
そんな独り言を呟き、ふらつきながら歩いていると、いつの間にか公園に辿り着いていた。
俺は少し休憩するために深夜の公園のベンチで座ると、夜空を見上げた。
「壮大で綺麗だなぁ……今の俺とは大違いだ」
月が瞬く夜空は美しく雄大であった。俺はその景色に見入るように眺める。
すると、そこへ1人の老人が近付いてくるのが見えた。老人は迷うことなく俺に向かって歩いてくる。
老人の姿を見ればボサボサの白髪頭で、9月の季節だが黒いコートを着ており、眼差しだけは異常にギラギラしていて、外灯の明かりの下で鈍く光っていた。
「お主は……誰にも気付かれず、おまけに人々の既成概念を入れ換えることが出来る力が欲しいと思うかね?」
突然、彼は俺に話しかけてきた。その老人の顔は明るく人がよさそうに見えるが、鋭い眼光を放っている。
「はい……?」
俺は思わず疑問の声をあげた。何を言われたのかすぐに理解出来なかったからだ。だが、老人は構わず続けた。
「だから……人間の認識を妨げ、さらに常識を改変する力が欲しいかと聞いておる」
男の言葉に俺は戸惑った。だが、同時に興味を惹かれたのも事実だ。もし本当にそんな力が手に入るのなら……と考えてしまう自分がいた。
酔った勢いで俺は何も考えず老人に言ってしまったのだ。
「欲しいです……」
老人は俺の答えを聞くとニヤリと笑い、続けてこう言った。
「いいだろう……この力は人間に効果があるだけでなく、機械……監視カメラ等の映像や記録にも影響を及ぼし見つかる事はない」
「えっ……そうですか……?」
彼の言葉に胡散臭さを感じたが、酔いによる気分の高揚や理性の低下で物事を深く考えられず、彼の言葉に頷いてしまった。
「では、この力を授けよう……ただし、行き過ぎないように気を付けるのだぞ。それと、おまけに精力絶倫の能力も与えておくぞ」
老人はそう言って俺の右手を握る。その瞬間、俺の全身に何かが駆け巡るような感覚になったのだ。
まるで自分の身体が自分ではない何かに変化していくような感覚に襲われた。そして、老人に目をやると彼の姿は忽然と消えていたのである。
「夢? 幻?」
俺は狸に化かされた感じを抱きながらも家路につく事にした。だが、家に帰った途端に老人の事はすべて忘れてしまい、そのまま寝てしまったのであった……。
翌日、俺は昼前に目が覚める。
「うっ!頭が痛いな……二日酔いだ」
昨夜の深酒のせいで頭はズキズキと痛み、体が重い。だが、いつまでも寝ているわけにはいかないので起き上がる事にした。
「とりあえず外に出掛けるか……」
起きてからは台所に行きコップに水を汲み飲み干すと、少し気分が楽になった気がした。そして、ふと鏡に映った自分の姿を見る。
相変わらず小太りで腹が出ており、顔は不細工だった。
「こんなんじゃ、モテないのも当然だよな……しかも、無職になったし」
俺はため息を吐きながら顔を洗う。
そして、忙しくて故障した電子レンジを買い替える暇がなかったので今日は家電量販店に向かう事にした。
そして、店内に入ると様々な電化製品が並んでいる。
中を進んで行くと、途中に防犯カメラコーナーの所に置いてあるデモ機の前を通りかかった所で、画面に映った自分の姿の異常に気付き足を止めた。
「あれ? 俺の姿がぼやけて不鮮明になっているぞ……どういう事だ?」
しかし、すぐ傍を通り過ぎる別の客は鮮明に映し出されている。怪訝に思い近くにいた店員に尋ねることにした。
「すいません、ちょっと良いですか?」
「はい? 何でしょう?」
声をかけると店員は営業スマイルで応対してくれる。
「あそこのデモの防犯カメラなんですけど……俺の姿が不鮮明になってるんですけど故障なんですかね?」
俺の質問に店員は画面に目を移し確認するが困ったような表情を浮かべた後、愛想笑いを浮かべつつ答える。
「えっと……お客様のお見間違いじゃないでしょうか? はっきり映っていると思いますが……」
「えっ! そうですか……」
俺は唖然とした。何故なら俺の目には、ぼやけて映っているからだ。だが店員の目には鮮明に映っているのであった。
昨日の深夜の公園での出来事を瞬間的に思い出す。
「まさか……これが……? あの老人が言った事は本当だった……」
昨夜の事を思い出し呟くと背筋に冷たい物が走った。すると店員も困惑しながら尋ねてくる。
「まだ、何かご不明な点はございますか?」
「いや……大丈夫です」
どうやら、店員にはモニターに映る俺の姿が普通に映っているように見えてるようだった。
この真相から能力の下では俺の姿は正常に見えてると思い込んでいるのだろう……。
俺は防犯カメラコーナーから離れると頭の中を整理して考える。
(機械の目を誤魔化すと言った事は老人の言う通りだった……)
「これは凄い能力じゃないか……」
思わず独り言を呟いてしまうほど感動した。そして、老人が他にも言っていた人の認識に気付かれず常識を入れ換える能力についてもテストしてみようと思い立つ。
すぐさま、俺は能力を試してみる為に店の外へと出るのであった……。