店内奥のソファ席。プレイヤーがデッキ構築に没頭していると、背後からひどく落ち着いた声がかけられた。
「あの……ちょっと相談に乗ってもらえないかしら」
振り向くとそこには見知った顔があった。長い白髪に黒リボンを巻き付けた独特のヘアスタイル。ぴょこんと飛び出たアホ毛。紫水晶のような瞳がこちらを真っ直ぐ射抜いている。
カノンだ。
「カノンか。珍しいな……俺に用事とは」
「……実はね」
彼女はふわりと腰を下ろす。距離が妙に近い。
「新しいデッキを試してるんだけど……どうしても納得いかないところがあって」
「ほう?」
プレイヤーが促すとカノンはそっとテーブルにデッキを広げた。無色を中心とした構成──そこには明らかに戦略性が欠如している。
「最近はジョーカーズが出てきて、無色デッキは作りやすくなったのだけど、まだ火力不足なの。もっと速攻力を上げたくて」
伏し目がちな視線を伏せるカノン。だが唇の端に微かな笑みが浮かんでいた。これは単なる質問ではない。彼女がデッキを見せた時点で意味合いが変わってくる。
カノンが机の陰に潜ませた『洗脳センノー』が蠢いた瞬間──プレイヤーの意識に亀裂が入った。
「……あれ?」
視界がゆらりと波打つ。音が水中で響くように歪み、思考に霞がかかる。喉まで出かかった拒絶の言葉が形を成さぬまま霧散していく。
「どうかしたの?」
カノンが小首を傾げる。その仕草があまりに自然で──そして妖艶すぎた。
「……いや」
否定しようとしても声帯が意思に従わない。自分の体が他人の操り人形になった錯覚。
机の上で広げられたカード群。
「プレイヤーさん。一緒に来てほしい場所があるの」
拒否権など存在しなかった。右手がひとりでに動き、彼女の指先に吸い寄せられていく。温かい。柔らかい。心地いい。
(な……にが……)
カノンの体温が神経に染み渡るにつれ、疑念すら溶けていく。彼女の笑みは慈母のようでありながら蛇蝎のごとく蠱惑的だった。店の出口へ導かれる足取りは、まるで岸辺から深い海溝へ引きずり込まれていくようだ。
「さあ行きましょう?」
カノンが囁くたびに、思考が砂時計の砂粒となって墜落する。
目蓋の裏で閃光が瞬いた気がした──だがそれも刹那のこと。プレイヤーは虚ろな瞳で空を見上げたまま、導かれるまま歩み続けた。
ホテルの一室。分厚いカーテンが夕暮れを遮り、室内は薄闇に包まれていた。ベッドの中央に座らされたプレイヤーは、ぼんやりと天井を見つめている。洗脳センノーの催眠は完璧だった――理性は溶け、思考は断片化されていた。唯一残るのは漠然とした熱感だけだ。
「……はじめるわね」
カノンの声が耳元で揺れる。彼女の白髪が肩を滑り落ち、甘い香りが鼻腔をくすぐった。細い指が恐る恐るプレイヤーのベルトに伸びる。その手つきが僅かに震えていることにプレイヤーは気づかなかった。
「……あっ」
カチャリ。金属の擦れる音と共にズボンが緩む。解放された部分にカノンの吐息がかかり、プレイヤーの身体が無意識にピクリと跳ねた。
「ごめんなさい……」
謝罪の言葉と共に、柔らかなものが押し当てられる。生温かい感触――カノンの唇だ。初めての行為に対する恐怖と期待が混ざり合い、彼女の動きは極めて緩慢だった。舌先がおそるおそる輪郭をなぞり、時折引っ込めてしまう。そのぎこちなさにプレイヤーの意識の奥底で疑問が泡立つ。
(何でこんなこと……?)だが答えは浮かばない。
「ん……っ……ちゅ……」
小さな水音が室内に響く。カノンは懸命に首を傾げ、角度を変えようとする。だが慣れない動作に顎が疲れ始め、動きが停滞した。唾液が糸を引くのを見て頬を赤らめ、慌てて袖で拭う仕草さえ幼い。
カノンの細い指が震えながらプレイヤーの腰に添えられた。白い太腿が震えているのが暗がりでもわかる。彼女の呼吸は浅く速い。
「こ……ここ……よね?」
確かめるように秘部を擦り合わせる。粘膜の触れ合いにカノンの背筋が弓なりに反った。未知の感覚に怯えながらも、好奇心が恐怖を凌駕している。
「入れ……ます……っ」
ぎこちない動作で腰を落とし始める。先端が肉壁を押し広げる感触にカノンは息を呑んだ。
「はっ……あ…っ」
亀頭が沈み込み始めた瞬間――鋭い断裂感が走る。
「いた……ああっ!」
純潔を示す証が引き裂かれる。カノンの白い肌に玉のような汗が噴き出し、痛みに耐えきれずプレイヤーの胸板に爪を食い込ませる。結合部から鮮血が滲み、白いシーツに紅い花が咲いた。
(痛い……でも……)
矛盾する感覚に戸惑いながらも、カノンはさらに深く腰を沈める。破瓜の痛みと共に奇妙な充足感が下半身を満たしていく。根元まで埋め尽くしたとき、彼女は深く息をついた。
「全部……入った……わ…」
紫水晶の瞳が恍惚に潤んでいる。征服欲と被虐心が入り交じった複雑な表情が浮かんだ。
「動く……わね……?」
ぎこちない抽送が始まる。初めは不協和音のような摩擦音。カノンの歯がカチカチと鳴り、眉間に皺が寄る。だが次第に潤滑油が増し、音色が滑らかになっていく。
「あっ……んっ……はぁっ」
苦悶の呻きが官能的な吐息へと変わる。カノンの腰使いは拙いながらも本能的に最適解を求めた。子宮口が叩かれる度に背骨を電流が駆け上がる。
「これが……セックス……?」
無意識に呟きながら速度を上げる。プレイヤーの硬直した肢体はカノンの動きに合わせて弾かれるばかりだ。だが生物的な反応として脈動が強まり、内部で膨張するのが分かる。
「すごい……おっきく……ああっ!」
カノンの悲鳴と共にプレイヤーの先端が最奥で爆ぜた。熱い奔流が子宮を焼き焦がす。
「ああああっ!」
甲高い嬌声を上げて仰け反るカノン。初めての絶頂に脳裏が真っ白になる。それでも腰は貪欲に律動を続ける。一度味わった快楽を逃すまいと本能が命令していた。
「まだ……まだ欲しい……っ」
垂れ下がった白銀の髪が汗で首筋に貼りつく。涎を滴らせながらカノンはプレイヤーに覆いかぶさる。濡れた唇を彼の首筋に這わせ、鎖骨に歯型を刻んだ。
二度目の射精。三度目。四度目。
絶頂の連続に理性は蒸発し、獣欲だけが残る。カノンの瞳孔は爛々と開き、プレイヤーの汗臭ささえ媚薬となった。結合部から溢れる液体が泡立ち、卑猥な匂いが部屋中に充満する。
「私のもの……全部……あなたは私のもの……」
そうしていると。
「カノンッ!!そこにいるんですね!!」
「あっ、うっウェディング!」