未来から来た美少女猫型ロボットとくだらなくておげれつなお話をする 作:じしんえる
第1話
ベッドの上で寝転び、スマホをいじって俺はゴロゴロしていた。
すると急にクローゼットが開いた。戸が壊れるんじゃないかってくらいの轟音と共に。
一体なんなんだよ!?俺はクローゼットを向くと、ヌッと美少女が飛び出してきた。
「『ぼくだけど。気にさわったかしら』……こう言えばいいんでしたっけ」
なんか小綺麗な格好をした猫耳美少女は、仏頂面でそんなことをぼやいた。
わけもわからず、思わず俺はたまげた。
「全く、この時代って不都合ですよねえ。引き出しのついた机がほとんど見つからないんだから。学習机には大抵付いてるんですけど。大人になったら使わなくなって、困りますよ。こっちの都合も考えて欲しいです」
そして文句ばっかり彼女は垂れた。
そんなこと言われてもなあ。部屋は狭いし、足元は広くしておきたいし。あと、引き出し付きの大人向けの机って、意外と売ってないもんだぜ。多分。
で、君は誰よ?
「そうやって言い訳して。引き出しがないから、こうやってクローゼットなんかから出てこなきゃいけないんですよ。引き出しからの登場は皆さん慣れてるくせして、クローゼットからは慣れてないんですからね」
勝手に出てきた割に、どんどん彼女はケチを付けまくった。
で、ともかく君は誰よ?
「私は未来からきたロボットです。アンドロイドとかレプリカント(これは人間ですけどね)とかガイノイドとか、面倒なんでロボットでいいです」
未来から来た割に、雑な自己紹介だなあ。やばい子かな?
でも、彼女の言うことは本当かもしれないなあ。このクローゼットはかなり狭いし。加えて、俺の服や雑多なモノが詰め込まれてるんだよね。
この子は細身とはいえ、身を潜めるには相当手狭だろうし。
もしも犯罪目的で、この子が不法侵入してきたとする。それなら、他を隠れ場所に選ぶはずだ。
それに、金目のモノを盗むなり俺の命を奪おうとしたなら、こうやって自己紹介する意味もないよな。こうやって油断させるやり方だったり、単純にやばい子だったら仕方ないけど。
「まあ、いきなり信用しろと言うのも無理がありますね。とりあえず、あなたの情報でも伝えますか。サトウタロウさん、30歳男性、彼女いない歴=年齢。現在無職。前職で心身を病んだため」
おおすげえ。ちゃんとわかってんじゃん。
突拍子もない事態だからか、変に冷静に俺は感心してしまう。
でもさあ、そういう情報って意外と調べればわかるもんなんじゃないの?もっと個人的な情報じゃないとさあ。最近の犯罪も多様化・高度化してきたみたいだし。
なんて煽るくらい、俺は冷静に対応した。
「と、言い返すことも予想してます。幼少期、道端で拾った成年向けの写真集。ブロンド美女のヌードでしたか。おかげで白人女性に目覚めたようで。それがお父様に見つかり、その日の晩にご両親からしこたま叱られて。神棚に大泣きして最敬礼し」
わかったわかったわかったよもう!!そんなことどこで聞いたんだよ!親父からか!?土足で、人の中に入るな!!
急にプライベートに踏み込まれ、俺はどこぞの機動戦士のミンキーモモになってしまった。
「それに、最近の嗜好は熟女もの。孕ませは、あなたの中のブームが一旦過ぎ去ったようで。そういった電子漫画やイラストを買い漁っていますね。現在はBBWとか、今の時代の流行りに則ってい」
ねえお願いだから静かにして!!
「タイトルも言いましょうか?にしても、あなたの好みのボディスタイルは常識からかけ離れてますよ。感覚が異常になっているので、一度刺激から遠ざかるべきかと。買い過ぎですし」
やめろって!人の話聞けよ!!そんなプライバシーをズケズケと侵せって言ったわけじゃないから!!
信用するよ、信じりゃいいんだろ。で、なんのために俺のところに来たの?
「ありがとうございます。目的ですが、端的に言えば研究の一環ですね。この時代の独身男性の願望とは、どんなものか」
え、俺の願望?それが研究になるの?
「くだらないとお思いになるかも知れません。ですが、こうしたことが未来の世界に影響するものです。バタフライ・エフェクトという言葉も知られて久しいですし」
そりゃそうなんだろうけどさ。実際、こんなちっぽけな存在の俺が、未来に影響するって?なんか実感湧かないなあ。
とは言うものの。歴史って、過去起きたことを振り返る立場、つまり現代。そうなると、客観的に見れる。
『なんでこんなことしたの?』
とか、
『こうなるって普通わかるじゃん!』
みたいな感想を抱く時もある。
けどさあ、同じように未来からしたら、現代だっておかしなことをしているように見えるかもしれない。でも、そういうおかしいことが今の常識なんだよな。現代っていう一時代の当事者として俺は生きている。だから変だ、って思えないんだよね。
歴史って、こういうことの繰り返しなんじゃないかな。そう考えると、俺の考えや願いが未来に影響するっていうのも、研究対象になるっていうのも、わかる気がしてきた。
「理解が早くて助かります。それに、もう少し詳細に言いますと。私のような異性を模したロボットに対して、どのような願望を持つのか?それを調べたいのです」
えっ、何そのエロ漫画みたいな展開は。
そんなこと言い出したら、俺が買ってるエロCG集とかと同じようなもんじゃん。都合が良すぎてついつい訝しんじゃうぜ。
「人間さんって、いっつもそうですね。都合のいいことを常日頃から願っているくせに。いざそれが叶うとなると、こうやって疑り深くなるんですから」
しょうがないだろ!普段、生きていてそう都合いいことが起こらないんだから!そこんところ、慮ってくれてもいいんじゃないの?
「そうですね、申し訳ありませんでした。それで願い事はなんですか」
物凄く事務的な謝罪だなあ。そんなところばっかり機械的なんだから。未来のロボット工学者って、みんな陰湿なのかなあ?それとも言語システム担当者だけかな?