未来から来た美少女猫型ロボットとくだらなくておげれつなお話をする 作:じしんえる
◆
事が済んで、一息つく。あと三人。残り時間が分からないもんだから、いいペースなのかどうかわからない。とにかくがむしゃらに続けるしかない。
しかし、ここで重大な事実に気付いた。俺、あと三回も射精しなきゃいけないの?
ハハ……そんなご無体な。無理だろ。中坊の頃でも、一日三回が限度だったはずだし。それも、間あいだに休憩時間をたっぷりとった上で、だ。時計が無いもんだから分からないけど、二回目の射精からそんなに時間が経ってない。こんなの、事実上の詰みだろ! っていうか、ルール設計に難があるぞ! 女が鬼役ならまだしもさあ!
とカッカしてたら、ドラ子から通信。
「大丈夫ですよ。今あなたの身体には、特殊な力がはたらいています。短時間で何度も射精できるようになってますから。そもそも、一回目と二回目もあんまり間が空いてなかったでしょ。これもスーツの機能なんですよ」
ああ、そうだっけ。確かに、あの独特の倦怠感も疲労感もない。僅かながら、そこらへん走り回ったり這い回ったりしたことの疲れは感じてるのに。便利なもんだ。
でも、それって身体の仕組みを無視してるわけだよな。現代でも、エナジードリンクの問題が俎上に上ることが少なくない。反動はつきものだし、この機能って大丈夫なの? 寿命が縮んだりとかさ。
「心配症ですねえ。その点もお気になさらず。この試合が終わった後には、身体が疲労回復を求めて爆睡するくらいです」
ああ、それくらいで済むの。内臓や神経に負担をかけて、早死にするとか。そういった害が無いならいいんだ。
「回復のため、二、三日寝続けるくらいです。その間の面倒はお任せください」
そう言うなり、またブツンと通信が切れた。
は? 二、三日って。その間、寝っぱなし? 怒りのまま叫ぶが、宇宙では俺の罵声は誰にも聞こえない。
やっぱバット買わなきゃなんねえなあ。金属バットにしとこうかな。
◆
探索を続けた結果、残り三人のうち二人が固まって行動していた。これまでの逃げ役二人は、単独行動したせいで俺に捕まったわけだ。なら妥当な行動だと思う。
でも、最初からそうすればいいのに。作業効率が落ちるからだとは思うけど、せめて二人と三人のグループで行動するとか。逃げ役の人たち、意思の疎通できてないのかな? 鬼の俺としては都合がいいけどさ。
別の一人(単独行動している方)を捕まえようかとは思ったけど、まあまあ遠い位置。時間制限もあるわけだし、ここは二人組の方を狙おう。これまでの経験からして、逃げ役たちは見つけてしまえばアタフタするばかりだ。相手が二人に増えたところで、それほど苦労しないだろうし。
二つの光点が集まるところに近づき、今度は大胆にそこへ飛び出してみた。またもや豊満な美女二人がそこにいた。やっぱり未来は、女性の美的感覚が変わったみたいだな。
片方の美女は足がすくんだみたいで、立ったまま硬直。こっちがビックリするくらい、驚いてくれるなあ。おかげで捕まえるのが楽だけどね。
もう一方をチラリと見る。こっちは身を強張らせているけど、逃げ出す準備はできている感じ。
うーん、それなら逃げ出しそうな美女から先に捕まえよう。射精しないと捕まえたことにならないルール上、どうしても時間がかかる。固まっている方を先に捕まえると、その間にさっさと遠くへ逃げてしまいそうだし。
短い間にそう判断し、俺は相手を決めた。すぐさま駆け出す。
彼女は逃げ出した。やっぱり予想通りだ。ただこのスーツもあるし、捕まえるのはそう苦労しないだろう。普段の俺からしたら信じられない速度で、彼女を追いかける。
ものの一分もかからず、袋小路へと彼女を追い詰めた。ようし、じゃあこれまでみたいにとっ捕まえて……。
と思った刹那。強い光に視界が覆われた。
うわ、眩しい。なんだろ、ライトでも向けられたのかな? でもなんか見覚えある光だなあ。原始的な光な気がする。
ここまでで一瞬のできごとだ。なのに、なんでこんなに時間が遅く感じられるんだろう。変に頭がボーっとしているうちに、今目の前で起こった事態がようやく理解できてきた。
あ、火じゃんこれ。
火?
……火!? 火、ひ、ヒーッ!!
ヒェーッ!! お゛だずげぇぇぇ~~~い。
我も忘れて猛ダッシュ。人生一の全速力を出した。
「やかましいですねえ。一体なんですか、そんな大騒ぎして」
ドラ子が鬱陶しそうに返事してきた。
なんでもくそもあるか!! 火だよ!! 火!!
あ、あ、あの女! 俺に火を向けてきたぞ!! 多分、火炎放射器じゃないか? それだけ激しい炎だった! どこか火傷したんじゃないか!? いや、火傷で済んだら幸運な方だ! あんなもの浴びせやがって! 未来人の方がよっぽど野蛮じゃねえかよ!!
「もう、騒々しい。スーツに耐火機能もありますから、火を浴びたくらいで火傷なんかしませんよ。痛くも熱くもないでしょ」
頭が大混乱だったが、言われてみれば。ちっとも熱くない。もちろん痛みなんてない。強いて言えば、久しぶりに全速力で走ったから、肺がしんどい。太ももが痒い。それだけ。
にしても、耐火機能まであるの? それなら、もっと早く言えって。逃げ役は火炎放射器を使える、っていうのもさ。無事だから言える物種であって、これで怪我したらシャレにならないんだから。
「あのですねえ、これは未来の遊びなんですよ。それくらいの安全性、保証されていて当然でしょう。映画でタランチュラが使われるのも、安全だからというのと同じ理屈です。それくらい分かるものだと思うんですが」
毎度思うんだけどさ。君の製造者って、どこかの緋の目の生き残りをモデルにして、君を作らなかったかな? なんか蜘蛛と因縁がありそうな。なんでもっとユーザフレンドリーにしなかったの? 製造者も何発かぶんなぐった方がいい気がしてきた。
とにかく、火炎放射されても無事だってのはよく分かったよ。でも、なんでそんな物騒なものを使えるようにしたのさ?
「今こうして、あなたが驚いたのがその理由ですよ。急に強い光を浴びると、例え痛みはないと分かっていてもビックリします。追いかけっこで鬼が驚く・追い払えるというのは、逃げ役にとってとても効果的な道具でしょう」
ああ、そうか。実際取り逃がしちゃったし。でも、もっと可愛らしい道具にできたんじゃないの。閃光弾、は大袈裟か? 光じゃなくて音でもいいだろうし、なんなら爆竹とか。おもちゃの拳銃でも良かったよね?
「ダメですよ拳銃は! 反社の抗争と勘違いされますし、騒ぎになりますよ」
実銃じゃないんだから別にいいだろ……。それにその感想、一昔前かよ。宇宙船っていう閉鎖空間なら、別にそれくらい使っていいと思うんだけどな。
まあいいや。とにかく、火炎を浴びても無事ということがわかったし。それじゃゲーム再開するよ。
「ご理解いただけて何よりです。それでは」
またドラ子の通信が切れた。