日本ベースの少しずれた世界で2度目の先生 作:sasahara
...いま振り返って素直に言うと、あたしはアビドスのメンバーを甘く見ていた。
幼馴染のアヤネは性格も能力も適性が後方支援で戦闘には向かないし。
一方であたしは、魔獣討伐の『バイト』も経験があって、それなりに評価されており実績も積んでいる。
「セリカちゃん、バイトの片手間でフリー生徒のシルバークラスなら、上澄みも上澄みだねぇ。『ふつうの』学園のチームなら、ゴールドの中堅でじゅうぶん活躍できるよ」
突然エースとまで言わないけれど、横に並べる程度の実力を想像していた。
「ちゃんと世間的客観的評価もされてるセリカちゃんと比べると、おじさん最近まで未所属で免許無しだったんだよねぇ。アビドス正式加入の前に暴れてたのがバレると、実はちょっと困ったりする立場でさ」
その『おじさん』って何?
という疑問は、その日のうちにどうでもよくなってしまった。
「どうして!? 一発も当たらない!!!」
「わたしいまは弾に当たって守る『タンク』なんだけどなー」
1対1の模擬戦、ホシノさん――ホシノ先輩はあたしの銃弾の軌跡を回避する。
回避タンクだってこんな弾の外れ方はしない。
特別な技術や能力ではなく、ごくごく当然の戦い方の範囲だと言わんばかりの自然体な回避行動。
「これならシールド張るまでもないよね」
こっちが本気で動いて、やっと何発か盾に掠る。
本気を出さないと盾にすら当たらない。
あたしは前衛ストライカーであるにもかかわらず体力切れでダウンし、最後は腰砕けになってしゃがみこみながら全弾乱射でばら撒いたが、まぐれ当りすらしなかった。
「セリカちゃん、乱射っていうのは狙って当てるんだよ?」
一言で矛盾するのやめて!?
「動きは良かったんだけどねえ。やっぱ学園未所属フリーだと教範も無いし、最初はこんなもんか。アビドス流の連携もイチから覚えてもらわなきゃならないし。せんせー、これはちょっと時間かかるかもね」
困ったなぁ、という実は全く困ってなさそうな顔をするホシノ先輩に、先生は脳天気な笑みで返す。
「大丈夫。セリカはアビドス生徒、向いてるから」
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アビドスは目標もぶっ飛んでいる。
「1ヶ月以内に、アビドス生徒5名でデマグラマトン級『ビナー』Hard個体を撃退します」
ブリーフィングは最年長ホシノ先輩ではなく1年生のアヤネがまとめていた。
日本政府だって鳥取放棄をしたいはずがなく、アビドス解散を嫌がらせで決めたわけではない。
それ故にひっくり返すことは容易ではないわけで、『ビナー』撃退はそれに足る成果というわけ。
「このとき先生による指揮はなしで戦います。また、ホシノ先輩には『タンク』を受け持ってもらいます。主攻には含めません」
ちなみにHard個体といえば、普通なら6人編成チーム指揮有り3凸以上で攻略する相手だ。
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「ホシノ先輩ならビナーHard個体程度なら1人でも倒せます。ですがそれでは飛び抜けた実力を持つホシノ先輩を他校に引き抜いてもっと優先する防衛拠点に充てたいという話になるだけで、アビドス廃校は回避できません。アビドスという組織の力でビナー撃退できる必要があるんです。...全力でないとはいえホシノ先輩がメンバーに含まれているのは、若干インチキではありますが」
「ん、ホシノ先輩の強さはゲヘナ風紀委員長空崎ヒナに相当する」
つまり3大校最強戦力と同等ってことじゃない!?
どうしてそんな生徒が無名のまま、廃校寸前のアビドスなんかで活動してるの?
そう問いかけると、ホシノ先輩はしれっとこう問い返した。
「セリカはアビドスが有名実力校だから来てくれたの?」
「そうじゃないけど、そういうことじゃなくて...」
ホシノ先輩が立ち上がって言った。
「さーて、作戦成功のためにも、セリカちゃんを『アビドス生徒』に教育しないとね」
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ヘイロー持ちはふつう、技術的な訓練内容があまりない。
ヘイロー持ちは戦闘のプロではないので、ヘンに戦術を覚えて遠くを狙ったりしだして、敵を見落とし接近を許すのが一番マズい、という事情もある。
いち早く敵を見つけて、一番近くの敵を撃つ。
逆にソレだけは徹底されるし、叩き込まれるわけだが。
「じゃ、セリカちゃん、ちゃんと受け身取ってね」
「へっ?」
ちょんと触れられた瞬間、視界の上下が反転した。
「え?」
なんで天井を見ているのかといえば、床のマットの上に転がっているからで。
「さ、すぐ立って。転んですぐ立ち上がるのも訓練のうちだから」
立ち上がるとすぐ転ばされる。
「セリカちゃんやっぱり身体柔らかいね。猫の獣の神秘があるからかな。受け身は無意識でもできるみたいだけど、一旦意識的に受け身とってみようか。最適化された動きを身に着けてからもう一度無意識に落としこもうね」
と言っている間に、ホシノ先輩があたしを転ばせた数が数えられなくなった。
「ほら、素早く起き上がって戦闘復帰できるようになって。できるようになるまでは私が勝手に立たせるからね」
百歩譲って転ばすまではわかるが、あたしの身体をホシノ先輩がどうやって立たせてるのか、されているのに全く理解できない。
「セリカちゃん、抵抗するのはまだ早いよー、素直に投げられないと逆に怪我するから、まずは上手い転び方を身体で覚えてねー」
「ふぎゃん!」
とんでもないスパルタだ。
3時間ほどぶっ続けで投げまくられ、自分の限界を4回くらい超えたあたりで、ホシノ先輩は手を止めた。
「...今日はこんなもんかな」
あたしは『明日もこれやるの!?』という絶望の叫びが出ないくらい、疲れ切っていた。
...何もせずにただ転がされていただけのような気もするのに、なんでこんなに疲れているんだろう、とすら思う。
アヤネが湿布を貼ってくれる。めちゃくちゃ手慣れていた。
「お手伝いしますね」
「ん、私たちも最初は通った道」
女の子ばかりなので上着を脱ぎ、体中に湿布を貼るうち下着だけの姿になってしまった。
女の園な部屋に満ちるのが湿布の匂いなのは頂けないけれど。
「じゃあ次はBDと教本行こうか」
ホシノ先輩はあたしが湿布でミイラみたいになるのを見計らって言う。
休ませてくれるつもりはないらしい。
「疲れているときにもアビドスの教本通りな連携動作をしてもらう必要があるからね。先生よろしく〜」
「えっ、先生」
女の子の悲鳴をあげる私にホシノ先輩はまったく気にもとめてくれないらしい。
「セリカちゃん今さら裸くらいで恥ずかしがらなくても」
「んっ?」
「えっ」
「あっ」
反応的に、アヤネには確実に先生とエッチしたことバレた!
「もう何言ってるのよホシノ先輩! 先輩だって裸は恥ずかしいでしょ!」
「確かに!」
疲れた状態でアビドス専用の初級BD&教本を学ぶ。
先生の教え方は穏やかで、叩き込むといったことはしないが、体力の限界を超えた状態で優しくされると、疲れた脳から理性が剥がされて本能むき出しになり、いちど身体を許した男にささやきかけられる声に、言葉で責められているような状況になる。
疲労もあって恥も外聞もなく、口から悲鳴のような嗚咽が迸るのを止められなかった。
「に゛ゃあぁぁぁぁぁぁ、あだまおがじくなるううううう♡♡♡!!!」
「この初級教本が終わったら休憩だからね」
あたしはとっくにおかしくなっているけれど、先生は意にも介さず淡々と授業を進め、私の脳に教本の内容を刻み込む。
生存本能が勝手に下着のクロッチ部分を熱く重くする。
もう先生の声だけで気持ちよかった。
こんなの授業じゃなくて服従洗脳でしょ、と思いながら、あたしは抵抗する意志も持てずズルズルと沼に沈み込んでいった。