※この作品はR-18です。

アラスカ極寒環境雪上戦IF   作:HighwayStar

5 / 6
 ミリンダを救出にクウェンサーとヘイヴィア、二人のヒーローが駆けつける。
最終章 最後までよろしくお願いします。(更新遅れてしまい本当にすみません!)


アラスカ極寒環境雪上戦IF END

「お姫様!俺だ!分かるか?」

「……クウェンサー?」

 

 ミリンダは薬で朦朧(もうろう)とした意識の中で涙を流し、死んだと聞かされていた彼の名前を呼ぶ。生きていた彼女を見てクウェンサーも安堵するが体は傷つき薬物に犯(おか)され、視点も定まらない彼女を見てすぐに表情を切り替え後ろの人物に声を掛ける。

 

「ヘイヴィア!お姫様の容態がヤバい、フローレイティアさんから預かった物を渡してくれ」

「あの爆乳の言った通りかよ...俺は外を見張るから処置は任せるぞクウェンサー!」

 

 クウェンサーに呼ばれた少年ヘイヴィアは持っていたホルダーを預けると銃を構えて入口の警戒を始めた。クウェンサーの方はホルダーの中のいくつかのアンプルを器具にセットする。そして、取り付けた器具を彼女の首元に当て

 

「少し痛むからな」

 

プシュッ

 

 ミリンダへ優しく諭しながら注射する。この薬は基地へ潜入する前に彼らの上官であるフローレイティアから預けられたエリート用の抗体である。

 恐らくフローレイティアも二日間敵基地に囚われたミリンダがまともな状態ではないと危惧していたのだろう。ミリンダの生存を信じながら潜入する二人に持たせていたようだ。しばらくすると効果が表れ始め、息も荒く火照っていた彼女が落ち着きを取り戻し始めていた。

 周囲に敵が居ない事を確認したヘイヴィアもミリンダへ駆け寄り「大丈夫か?」と心配しながら声を掛ける。

 

「うん、大丈夫だよ...本当にありがとう...二人とも」

 

 弱々しくも健気に返事をするミリンダにヘイヴィアの表情が曇る。もっと早く助けに来れていればと考えているのかもしれない。

 その後、二人の力でミリンダの手枷を外したのだが、再会の喜びで彼女が全裸姿のままだという事を失念していた野郎二人組は慌てて目を逸らし、彼女に敵兵から奪った防寒コートを手渡す。そのやり取りに久しぶりにミリンダは笑顔を浮かべた。

 

「ねえ...二人とも..他の皆は?」

 

 ミリンダはここに連れられてから一番気になっていた事をクウェンサーに尋ねる。

 

「ああ、ベースゾーンは壊滅したけど、あの時お姫様が飛ばしてくれた救難信号のおかげで”ウォーターストライダー”が少しの間索敵から離れてくれたから脱出できた...ありがとうお姫様」

「あの爆乳も整備大隊のばあさんもみんな無事だ」

 

「っ…良かった...」

 

 二人の感謝の言葉に泣き崩れるミリンダ、その姿を見ながら二人は彼女をここまで追い詰めた信心組織の連中に怒りを覚えていた。実を言うと二人は、ミリンダが味わった地獄の一部始終を知っている。その経緯には先程挙がったコートを奪われた敵兵が関係している。

 

 

===ミリンダ救出前の事===

 

 

 ミリンダへの魔女裁判が行われている最中に二人は吹雪に紛れて基地への侵入を成功させていた。本来、敵基地の潜入は現実的な手段ではない。誰か一人にでも見つかれば警報を鳴らされるし、下手をすると入り込む前に射殺される可能性の方が高い。しかし、今回の場合はアラスカの気候が彼らに味方した。ブリザードによる視界不良に加えて、何よりも基地の兵の大半がミリンダの方へ群がっていた事が彼らの侵入を成功させた一番の要因だった。あまりに簡単に潜入できた事に最初は罠を疑った二人であったが、中央広場が見下ろせる建物から広場を覗き込み、基地内の大半が集まった兵達とその中心で男達に嬲(なぶ)り者にされている彼女の姿を見て二人は警備が少ない理由を悟った。

 その光景を見て思わず助けようと動くクウェンサーをヘイヴィアが止める。

 

「待てクウェンサー!今は抑えろ」

「…っ!!」

 

 今ここで騒ぎを起こせばミリンダを助けられない。二人は男達のミリンダへの嘲笑と彼女の悲痛な叫び声に必死に耐えながら救出のチャンスを伺った。

 その後、高台から降りてきた衛兵によって首輪を繋がれたミリンダが犬の散歩のように基地内を引き回され始めると、広場の男達の一部は持ち場に戻ったり彼女の痴態(ちたい)を眺めようと付いていく者に分かれて動き始めた。先程と違って敵兵の往来が激しくなってしまった為、隠れている間に二人はミリンダの行き先を見失ってしまった。

 

「くそっ!一体どこへ行ったんだ?」

「通路に人は居ない、どこかの施設に入ったのか?」

 

 二人は兵が居ない通路を選びながら彼女を探したが見つける事は出来なかった。しばらく進んで角から様子を伺うと手にビデオカメラの様な物を持って歩く人物がこちらに向かってきていた。

 

「あーあ...連れてかれる前にもっとあのエ(・)リ(・)ー(・)ト(・)で遊びたかったのによ...」

 

 その言葉を聞いた瞬間二人は目を合わせて合図し、相手がこちらに来た瞬間に口を塞いで暗がりへ引きずり込んだ。状況に付いていけていない様子の若い敵兵に二人は銃とナイフを突きつけて質問する。

 

「よお!楽しそうな話してるじゃねーか、俺らにも教えてくれよ」

「質問に答えろ!それ以外の返答をしたらこの場で殺す!」

 

 相手が恐怖に震(ふる)えて頷(うなず)くのを見てクウェンサーとヘイヴィアはミリンダの行方を問い詰めた。

 どうやらこの若い男は新兵の様で彼女は現在その男が居た新兵の訓練施設に連れていかれているらしい。ミリンダがその訓練施設でさせられている事を聞くと男は答える。

 

「…俺らの上官が捕虜の扱い方の教材としてその女を連れてきたんだ...俺らは教官に言われて捕虜の尋問の訓練をしただけだ...その後の事は知らない...」

 

 そこまで言った新兵の口ぶりから訓練の内容を察したヘイヴィアが後ろから殴って男を気絶させる。二人で近くの空きロッカーに男を放り込み、ついでに防寒コート等の装備を拝借した。あとに残っているのは新兵の男が持っていたビデオテープだけである。二人はお互いにビデオの中身がろくでもない内容である事を承知の上でミリンダの行方のヒントを探る為、テープを回し始めた。

 

 

=====================================================

 

 

PM18:00

 

 撮影時間が表示され中の映像が映り始めると、そこには新兵達に囲まれて股間に肉棒を突っ込まれたミリンダの姿が映し出されていた。

 

「何がエリートだ!俺達にすら勝てないマンコのクセして偉そうにするな!このっ!このっ!」

 

パンッ♡ パンッ♡

 

 新兵がミリンダの膣内(なか)を責め立てると「お”っ♡お”っ♡」と獣のような声を上げながら彼女の身体が突かれる度にビクッ!と反応する。薬の影響で快楽に過剰に反応するようになってしまった事を知る由もない新兵達は自分達のイチモツでエリートであるミリンダを屈服させているこの状況に優越感を抱いていた。責められている彼女の前にカメラが近づいていく

 

「ほらエリート様、雑魚マンコ突かれて俺達の軍に歯向かったことしっかり反省したか?」

 

 カメラが近づきミリンダの表情を写す。そこには付き合いの長い二人でも見た事の無い表情をしたミリンダが画面には映し出されていた。普段は何を考えているのかわからない無表情の彼女が今は知らない男達の攻めで無様なアへ顔を晒(さら)し、覚えさせられたであろう様々な淫語(いんご)を叫んで周りからの嘲笑(ちょうしょう)を受けていた。

 

「はひぃっ♡反省しました♡私のような雑魚マンコが信心組織の皆様に歯向かってしまい申し訳ありませんでしたぁ♡」

「ここまで来るのに時間が掛かってたな?何をしていたか言ってみろ!」

「はい♡さいしょは広場の皆様の性処理の為におマンコを利用していただき、たくさん膣内射精(なかだし)してもらいました。次に戦闘訓練の的としてサンドバックにされながら口やおマンコを灰皿として使いつぶしてもらい、今は皆さま新兵の方の為の捕虜の教材となっています♡」

 

ミリンダが笑顔で語り、その無様さに笑いが上がる。再びカメラマンが質問する。

 

「そんなエリート様はこの後どうなるんだ?」

 

肉棒で突かれながら彼女は答える

 

「あんっ♡さいしょは裸でオブジェクトの主砲に吊るされて処刑される予定でした...♡しかし司令官様へ歯向かった罰として生きたままこの基地の便所として死ぬまで償う事になっています♡」

「うわ...エグッ」

 

 新兵達が知らない敵軍に捕まったエリートの末路を彼女の姿が示しており、遊び半分だった彼らにとっても結果として教材としての役割を果たす事になった。

 

「そら射精(だ)すぞ!」

「エリート様、こっち向いて~」

 

ビュルッ♡ ビュルルルルッ♡

 

「あああああっ♡..いくぅぅぅっ♡」

 

ミリンダの絶頂した顔が映し出され、そこで映像は終わっていた。

 

 

=====================================================

 

 

「何だよこれ...」

 

 映像が終わった後にヘイヴィアが呟く。映像に収められていたのはミリンダに対する凌辱の一部始終だった。正規の軍人の彼から見ても捕虜どころか人間としての扱いですらない内容に憤りを感じずにはいられなかった。それは、隣で見ていたクウェンサーも同様だった。

 

「あいつらにとって...信仰の無い人間は人ですらないって事なのかよ...」

 

怒りに震えるクウェンサーの横でヘイヴィアが立ち上がる。

 

「急ぐぞクウェンサー、最後に言ってた場所の見当はついているんだろ?」

 

怒りを抑えてクウェンサーは兵士が来た逆方向の施設を指さして答える。

 

「ああ、あの建物にお姫様が居る可能性が高い。ただ電気が通っていないから薄暗い..見落とさないように探していこう。」

 

方針が決まった二人は彼女を救う為に施設内を探し始めた。

 

 

=====================================================

 

 

===現在 ミリンダ救出後===

 

「はぁっ...はぁっ...」

 

 姿を隠すために信心組織の防寒コートを纏ったミリンダの呼吸が弱々しい。薬の効果は抑えられているが、体に蓄積された痛みや疲労が彼女の足取りを重くしている。そんな彼女を気遣(きづか)いながらクウェンサーとヘイヴィアが周囲を警戒して進んでいく。

 

「もう少しで外周だ!停めてある車に乗り込め!」

 

 ヘイヴィアが指さす方向に信心組織の軍用車が待機しており、二人に促されてミリンダも乗り込む。奇しくも連れてこられた時と同じ手段で脱出する事になった。車が走り出して基地の外周に出ると基地から警報が鳴り響くと同時にミリンダに異変が起き始めた。

 

「体が...熱い...」

 

 クウェンサーが傍らによって熱を測ると異常な温度を体温計は示しており、常人なら倒れてもおかしくない温度だった。クウェンサーは原因が分からず困惑するが、ミリンダには思い当たる事があった。

 

「…たぶん私の中に打たれたナノマシンの信号だと思う」

「だからあいつらは信号の動きでお姫様の脱出に感づいたのか」

「クソッ!てことはア(・)レ(・)が来るぞ!」

 

 警報が鳴り響く基地内から追撃の部隊は出てこなかったが、代わりにドーム状の格納庫が開き巨大な砲を構えた兵器が姿を現わす。

 

「ウォーターストライダー...」

 

 ミリンダはベイビーマグナムを破壊し、自分が人としての尊厳を失う原因となったアメンボの様な形のオブジェクトの名前を呟く。オ(・)ブ(・)ジ(・)ェ(・)ク(・)ト(・)に(・)狙(・)わ(・)れ(・)た(・)ら(・)逃(・)れ(・)る(・)術(・)は(・)な(・)い(・)、それが常識だが対するクウェンサーとヘイヴィアの表情に動揺は無かった。オブジェクトの登場と同時に車内に無線が入る。

 

「「束の間の自由は楽しかったかね?正統王国の魔女とサル共」」

「ひっ…!」

 

 無線の主はミリンダにとって忘れられない信心組織の司令官の物だった。その声を聴いた瞬間ミリンダは震え始め、背中の焼き印をコートで隠しながら怯(おび)えていた。そんな彼女を庇(かば)いながらクウェンサーが代わりに応答する。

 

「あんたが信心組織の親玉か?うちのお姫様が世話になったな」

「「なんだ?あの魔女は”姫”などと呼ばれているのか?ただの淫乱(いんらん)なエリートがお笑いだな」」

 

 相手の声にはミリンダに対する侮蔑(ぶべつ)が混じっていた。そして無線の主は勝ち誇ったように続ける

 

「「我が軍のオブジェクトがたった今お前達の車を補足した、主砲も発射体制に入っている。無様に命乞いをするなら奴隷として飼ってやらん事もないぞ?」」

 

 ”オブジェクトが狙っている”

 本来であれば死刑宣告に等しい言葉だがクウェンサーは冷静に答える。

 

「いや命乞いするのはあんた達の方だ。」

「「……何っ?」」

 

 彼の言葉に驚いたのは敵の司令官だけでなく隣で震えていたミリンダも同様だった。相手がトリガーを引くだけで終わってしまう絶体絶命(ぜったいぜつめい)の状況でなぜ彼はこんなに堂々としているのだろう?両者とも似た疑問を抱いていた。

 

「あんた達がお姫様にご執心(しゅうしん)の間、基地の主要施設の人員はほとんど出払っていた。その間に俺達はオブジェクトの整備基地に潜入する事が出来た。」

 

 それが何だというのだ?というのが司令官の正直な感想だった。ただの少年兵二人が侵入した所でオブジェクトの部品は破壊出来るはずはないし、現(げん)に今も自軍のオブジェクトは問題なく動いている。司令官の疑問に対してクウェンサーが答え合わせをしていく

 

「この方法を実行するには俺達の手持ちの爆薬だけじゃ足りなかった。だが基地の警備が無い状態なら保管庫の爆薬は使い放題だったよ」

「「貴様...一体何をしようと…」」

 

ドオオオオオオンッ!!

 

 業を煮やした司令官の声とウォーターストライダーの脚部(きゃくぶ)とその背後の整備基地の爆破は同時だった。それを見た司令官はクウェンサーに言い放つ

 

「「無駄だ!整備基地とオブジェクトの内側を爆破した所で止まりはせん!今すぐ主砲で焼いてやるぞ小僧!」」

 

 脚部を爆破されたウォーターストライダーだったが、装甲表面に傷は無く主砲を変わらずクウェンサー達の方へ向けていた。ウォーターストライダーの下位安定式(かいあんていしき)プラズマ砲が放たれようとする瞬間、クウェンサーは取り出したセンサーを構えながら言う

 

「俺も本当はここまでするつもりは無かった...だがお前達がお姫様にした仕打ちは絶対許さない!」

 

 次の瞬間、主砲を放とうとしたウォーターストライダーの至る所から先程の比では無い爆発が連鎖(れんさ)し、それによりバランスを崩したオブジェクトの主砲の照準(しょうじゅん)はクウェンサー達の車ではなく足元の信心組織の基地を向いていた。

 

「整備基地の予備(よび)の脚部用タービンと主砲に付いている安全装置(あんぜんそうち)を外してから爆薬をセットした。この爆発を敵からの攻撃と誤認(ごにん)したオブジェクトは機密保持(きみつほじ)の為に自爆シークエンスに入る。そして本来それを防ぐはずの安全装置のセンサー類は外されて機能しない状態だ!」

「「なっ!!」」

 

 オブジェクトの絶対的優位(ぜったいてきゆうい)を信じていた司令官の動揺が無線越しに伝わってくる

 

「お前達の敗因はエリートへの恨みに固執(こしつ)して俺達の避難ルートの情報を引き出せなかった事だ!どれだけ薬物や暴力で嬲(なぶ)られてもお姫様は口を割らなかった!あんたは屈服させたつもりかもしれないが、これはお姫様を侮(あなど)ったお前達自身が引き寄せた結末だ!」

「「待て!主砲の発射(はっしゃ)をやめっ……」」

 

 

ゴオオオオオオッ!!

 

 

 それが最後の言葉だった...。無線が切れるのと背後の信心組織の基地がオブジェクトと共に沈むのは同時だった。クウェンサーの後ろに居たミリンダも車内から後方を見る。自分が凌辱された広場、焼き印を押された本部棟も全て燃えていくのが遠くからでも分かった。この規模の損害を与えるのは見張りが居なかったとはいえ相当な労力や段取りが必要だったはずだ。彼がなぜそれほどの手間を掛けたのかは理由は一つ、ミリンダの名誉を守る為である。

 仮に上手く逃げおおせたとしても信心組織は報復(ほうふく)としてミリンダの痴態(ちたい)の記録を全世界に発信するだろう。そうなれば血統や名誉を重んじる正統王国はミリンダを敵に身体を売って生き延びた売女として秘密裏(ひみつり)に処刑されてしまう。

 この可能性を指摘したのは貴族であるフローレイティアとヘイヴィアの両名だった。フローレイティアも当初は生き残った部隊を生かす為にミリンダを見捨てるつもりだった。だが捕らわれたミリンダに対して信心組織の連中が執心(しゅうしん)していた為、想定していたよりも追撃が来なかった事で体勢を立て直す時間が取れたのが大きかった。それらの要因から彼女は(不本意ながらも)敵のオブジェクトを破壊出来ると言ったクウェンサーとヘイヴィアをミリンダの救出に向かわせたのである。

 その意図に気づいたミリンダは再び泣いていた。見捨てられて当然の状況だった自分を危険を顧みず助けに来てくれたクウェンサー達はまさに彼女にとってのヒーローだった。二人に改めてお礼を言おうとしたミリンダだったが、突然咳(せ)き込(こ)んでしまったので慌てて手で口を押える。

 

「大丈夫か?お姫様」

「…うんだいじょうぶだよ。少し気がゆるんだだけだから」

 

 心配する二人を安心させながら、ミリンダは手に付いた血(・)を後ろ手に隠しながら笑顔を浮かべた。

 

 

======================================================

 

 

 陽が落ち、燃え盛る信心組織の基地を背にヘイヴィアが運転する軍用車がアラスカの地を走っていた。しかし、その背後からは先のオブジェクトの崩壊から免れた生き残りの一団が追撃を行なっていた。そんな彼らの攻撃を避けながらヘイヴィアが悪態(あくたい)を突く

 

「クソッ!あいつら自分達のオブジェクトがやられたってのに何で逃げねーんだ?」

「多分、指揮系統(しきけいとう)が崩壊して撤退(てったい)の判断も出来なくなってるんだろう、今あいつらは俺達へ復讐(ふくしゅう)する事しか頭に無い状態なんだ」

 

 クウェンサーの言う通り彼らの追撃には、全員が退路を断たれて必死な様子が見て取れた。状況を打破する為、クウェンサーがヘイヴィアに行き先の指示を出す。

 

「キリがない!ヘイヴィア日中俺達が居た山の中腹に向かってくれ!」

「お前がせっせと仕掛けてた《(・)b(・)》(・)ア(・)レ(・)《(・)/(・)b(・)》か!」

 

 クウェンサーの意図を察したヘイヴィアが進路を変更する。基地にほど近い場所に小高い山が見えた。二人の考えが分からず困惑(こんわく)するミリンダを乗せたまま車は山の中腹(ちゅうふく)を目指して走り出した。

 

 敵の攻撃を受けながらも走り続けていた軍用車だったが目的地まで僅かの所でタイヤに穴が開き、車を乗り捨てざるを得なくなってしまった。

 当初、車体を盾に銃撃戦(じゅうげきせん)を展開した彼らだったが多勢に無勢だった。そこでクウェンサーは敵を撹乱(かくらん)する為に残っていたC4を車体に取り付け起爆(きばく)した。派手に炎上する車を囮に敵との距離を離す事に成功したが、敵がミリンダのナノマシンの信号を追っている以上見つかるのは時間の問題だった。中腹の針葉樹(しんようじゅ)の陰に潜む彼らだったが遠くで光るライトは着実にこちらに近づいてきていた。

 

「まずいぞクウェンサー...爆乳との合流地点までもう少しだってのに囲まれてやがる。テメーの策もここじゃ使えねーぞ!」

「ああ、ここじゃ俺達も巻き込まれる。何とか移動しないと...痛(い)っ!」

 

 会話の途中でクウェンサーが苦しげな声を上げる。ミリンダが心配しながら確かめるとどうやら足から血を流しているようで、先程の銃撃戦の最中に足を撃たれていたらしい。

 傷口を抑えながらミリンダは尋ねる

 

「クウェンサーおしえて。どういう作戦なの?」

「…この山の山頂付近に正統王国軍が所有してた爆弾がセットしてある。本当は車で駆け抜けた後で起爆させて、雪崩(なだれ)を追撃の部隊にぶつける予定だったんだけど...」

「ここだとわたしたちも巻き込まれるんだね...」

 

 手元の起爆用のリモコンを見せながらクウェンサーは説明する。内容を聞き終えたミリンダは辺りを見回して木々の間に洞窟(どうくつ)があるのを見つけた。

 

「ふたりとも、あそこに隠れられそうなどうくつがある。そこなら雪崩のえいきょうは受けないと思う。」

「よし!クウェンサーは俺が担ぐから、お姫様は先に行け」

 

促(うなが)すヘイヴィアにだけ聞こえるようにミリンダが耳元で何かを頼む

 

「ー…ー、クウェン…をー…。もう…ーーから。……ーー。」

「…っ!!--…!!」

 

 クウェンサーには内容は聞こえなかったが、ヘイヴィアとミリンダの様子が違う事に気づき二人にどうしたのかと聞こうとしたが。

 

「いーから行くぞ!」

 

 神妙な面持ちのヘイヴィアに肩を貸されて話は強引に打ち切られる。洞窟に入る直前クウェンサーの手元にあったリモコンが背後(はいご)から奪(うば)われる。敵がもう来たのかと振り返ったクウェンサーが見たのは悲しげな笑みを浮かべたミ(・)リ(・)ン(・)ダ(・)の姿だった。

 

 

=====================================================

 

 

「ごめんねクウェンサー...」

「お姫様?何で...」

 

 突然の行動に驚くクウェンサーに対して、ミリンダは自分の身体の限界が近い事を語った。

 

「あの基地でわたしはたくさんのくすりを打たれた...もう手遅れな所まで来てしまっているのが自分でも分かるの...。でも死ぬなら最後(さいご)はこの命をふたりを助ける為に使わせて」

「そんな...それじゃあ俺たちは何の為に...」

「ううん...わたしは確かに救われたよ...あの地獄(じごく)の中で駆けつけてくれたふたりは本当のヒーローだった」

 

 そう笑顔で伝えるとミリンダは敵の注意を洞窟から逸(そ)らす為に薬でボロボロの身体を動かして反対方向に逃げる。背後ではクウェンサーが必死に叫んでいるが、ヘイヴィアが彼女が頼んだ通りクウェンサーを抑(おさ)えてくれているようだ。彼も反対していたがミリンダの悲壮(ひそう)な決意を感じたのか、彼女の行動に協力してくれた。

 追手の部隊との接触はすぐに叶った。数は少なかったが銃を構えながら、確実に距離を詰めてきていた。ミリンダはリモコンをコートに隠しながら段々見えづらくなってきた目で相手を見やると、その先頭には見知った顔があった。

 

「本部で別れて以来だなエ(・)リ(・)ー(・)ト(・)様(・)」

「…そうだね」

 

 そこに居たのは連行された拷問室(ごうもんしつ)でミリンダを初めて犯(おか)したリーダーの男だった。それ以降会ってはいなかったが、その後の彼女がどのような目にあったのかも知っているのだろう。男は尋ねてきた

 

「てっきり薬物(くすり)で壊れたって聞いてたんだが、思ってたより元気そうじゃないか」

「うん...ヒーローが助けてくれた」

 

男達はちらりと彼女の背後を見やる、仲間の潜伏(せんぷく)を疑っているのだろう。リーダーが指示を出す

 

「おい、エリート様は俺らで確保する、半分はお仲間の追撃に回れ」

「了解」

 

 丸腰のミリンダを脅威(きょうい)ではないと判断したのか、半数が彼女を無視してクウェンサー達を探しに行こうとする。

 しかし、ミリンダはこうなる事を予想していた、薬と凌辱(りょうじょく)で壊れてしまった彼女の身体だが、それでもエリートとしての利用価値(りようかち)は変わらずすぐには殺されないという事をこれまでの経験で理解していた。問題は追撃に動こうとしている彼らを止める方法だが...

 

(大丈夫…うまくいくはず)

 

 覚悟を決めたミリンダは自分のコートに手を掛ける、当然あいては警戒して銃を構えなおすが発砲は無かった。その理由は、彼女がそのまま着ている物を次々と脱ぎ始めたからである。極寒(ごっかん)のアラスカの戦闘の最前線で突然始まったストリップショーに追手は全員状況が飲み込めずに動きを止めてしまっていた。

 特に彼らは連行初日にミリンダを犯した連中である、その時の快楽が忘れられないのであろう食い入るように見つめていた。-20℃の極寒の中で彼女の体感温度が急激に下がった影響か、体内のナノマシンが作動して体温を上げようとしていた。おかげで寒さで動きを止めずに済み、服を脱ぎながらもコートに仕込んでいたリモコンを後ろ手に隠し持つ事が出来た。

 

「おい!今、何を隠した」

 

 リーダーの男だけはミリンダの策に惑(まど)わされず、何を隠したかを問い詰めてきた。やはり彼は他の基地の兵士と違い前線での戦闘経験があるからか、敵の妙な動きには敏感(びんかん)らしい。ミリンダは構わずリモコンのスイッチを押そうとするが、パンッ!!と銃の発砲音と共に彼女の肩から血が噴き出す。

 しかし、彼女は止まらなかった、すでに全身の感覚が狂わされているミリンダにとってはアラスカの寒さも銃撃の痛みも無いに等しかった。ピッ!とスイッチ音がなった瞬間

 

 

ドオオオオオンッ!!

 

 

 ミリンダ達が居る山の頂上付近が爆発し、巨大な雪崩が発生した。それを見た男の部下達は慌てて逃げようとするが、雪崩の速度は一般的に80kmと自動車並みの速度があり、直前までミリンダに見入ってその場にくぎ付けにされていた彼らに雪崩のコースから逃れる方法は無かった。それはミリンダも同じだったが、彼女はクウェンサーからリモコンを奪った時から覚悟は決まっていた。そんな彼女に目の前のリーダーの男が問いかける

 

「まったく...エリート様が俺らみたいなのと心中するなんざ聞いたことないぜ、そんなにお仲間を守りたかったのか?」

「そうだね...最初に救難信号(きゅうなんしんごう)を押したときと同じ...わたしはエリートだからみんなを守らなきゃと思った、理由はなにひとつ変わってないよ」

「それで自分があんな目に遭ってもか?エリート様の考えには付いていけねーよ」

 

 やれやれと悪態をつく男の話の間にも雪崩は迫ってくるが、二人ともそちらを見ようとはしない。最後に怒ったようにミリンダが口を開く

 

「でもあなたにはわたしと一緒に死ぬ義務(ぎむ)がある。」

「あっ?何で...」

「わたしの処女(はじめて)をむりやり奪ったんだもの、その責任(せきにん)はとってもらう」

 

 その言葉に面食らった男だったが、最後は笑いを堪えた見た事の無い表情を浮かべていた。そして...

 

「じゃあなエリート様、久しぶりに昔の戦争らしい事が出来て楽しかったぜ」

「こっちも...あの日わたしの身体(からだ)を洗ってくれてありがとう...」 

 

 …なんだバレてたのかと最後に聞こえた気がしたが、ミリンダの意識は背後からの白い衝撃(しょうげき)によって途絶(とだ)えた。

 

 

=====================================================

 

 

 爆破された山の下には平原があり、雪崩に巻き込まれたミリンダはそこで目を覚ました。エリートの耐久性とナノマシンによる体温調整による奇跡(きせき)であったが、そのナノマシンもミリンダの生命活動に連動(れんどう)しているのか徐々に機能が失われていくのが感じられる。

 

「……ふたりは」

 

 薄れゆく意識の中で彼女が考えたのは自分を助けてくれた二人のヒーローの無事だった。最後にもう一度お礼を言いたかった、そう思いながら正面を見ると見慣れた機械が見えた。あれは...

 

「…ベイビー…マグナム?」

 

 彼女の前にあったのは破壊された時に吹き飛んだのだろう、彼女の半身であるベイビーマグナムのコンソール部分であった。予期せぬ再会にミリンダは最後の力を振り絞って近づくと、コンソールの画面が彼女の反応を感じたのか点滅しながらも起動する。キーボードは失われていたが、ミリンダは目の中に仕込まれたインターフェイスを用いて眼球運動だけでゆっくり画面にメッセージを入力していく。

 そして、打ち終わると同時に身体が手足の方から徐々に動かなくなってしまった。少しづつ身体の機能と体温が失われていく中、近くで声が聞こえたような気がした。

 

「ベイビーマグナムの反応!やっぱりお姫様だ!」

 

 通信デバイスを構えたクウェンサーとヘイヴィアが倒れている彼女へ急いで駆け寄った。何か必死に叫んでいるのだが、ミリンダの聴覚は完全に失われて聞き取る事は出来なかった。それでも最後に一番会いたい人に会えた彼女は満足だった。泣きそうな表情の彼らにミリンダは

 

「…あ…りがとう…」

 

 それが正統王国のエリート、ミリンダ=ブランティー二の最後の言葉だった。

 彼女の表情は童話(どうわ)の眠り姫の様に穏やかな物で、目の前にあったベイビーマグナムの中枢(ちゅうすう)も主人の後を追うようにその機能を完全に停止した。

 その夜、アラスカの地で二人の少年兵の慟哭(どうこく)が響き渡った...

 

 

=====================================================

 

 

 …終戦後、ミリンダは敵兵からの辱(はずかし)めや尋問にも屈せず自国の誇りを守った事が称(たた)えられ、二階級特進となり名誉(めいよ)の戦死(せんし)と記録された。

 クウェンサーとヘイヴィア両名と上官のフローレイティアは撤退中の独断行動(どくだんこうどう)が問題視されたが、エリートの身柄を奪還した事と何よりも敵オブジェクトを生身で破壊した偉業により責任は不問となった。

 現在、クウェンサーとヘイヴィアの二人は正統王国の墓所に立っている。墓石にはミリンダの名前が刻まれているが、遺体はここには居ない。情報を守る為に正統王国のどこかの施設に安置されているらしい、エリートは最期の時まで自由は無いという事を痛感させられた。

 

「これからどうするんだ?クウェンサー」

 

 隣のヘイヴィアが尋ねてくるので俺は答える。

 

「少し考えてる事はある...お前こそ実家の爵位(しゃくい)を継いで引き籠るって話はどうするんだ?今回の件で武功(ぶこう)は十分だろ」

「最初はそのつもりだったさ、でもお姫様からの最後のメッセージ無視してそれはダサいだろ?」

 

 二人で手元の端末(たんまつ)に目をやる、あの時の日付でお姫様から一件メールが届いている、内容は...

 

「 わたしを忘(わす)れないで 」

 

 あの戦いの後、俺達第37整備大隊(せいびだいたい)は壊滅した敵基地の調査を行なっていた。何故、俺達の部隊が出向いたかというと、お姫様が味わった凌辱(りょうじょく)の記録を消す為にである、これは他の部隊には任せられない。

 その過程で俺達は彼女がどういう目に遭(あ)ったのかを知り、その痕跡をすべて抹消(まっしょう)した。記録としては無かった事になったが、きっと俺を含めて部隊の皆が彼女を忘れる事は無いだろう。それはヘイヴィアも同じだった。

 

「お互いにあの子に恥ずかしくない生き方をしないとな...そろそろ招集(しょうしゅう)だ行こうぜ、クウェンサー」

「ああ」

 

 短く答えて最後に俺はお姫様の墓前(ぼぜん)に誓う。

 

「君の事は絶対忘れない、お姫様の死を無かった事にも無駄にもしない、俺がそうさせないと誓うよ」

 

 俺はそう決意するとヘイヴィアの後を追って次の戦場へ向かった。ミリンダ姫が守りたかった物を守る為に…

 




 ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。初めての作品で文章も拙(つたな)いですが、読んでくれる人が居るのは励みになっていました。
 最後に短いエピローグを書いて終わりたいと思います。ヘヴィーオブジェクトという作品とミリンダ姫の可愛さを色々な人に知ってもらえると嬉しいです。ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。