とある世界の常識改変 作:ロロノア
ベッドに横たえた身体に電極が張り付いている。両手と胸部に合計5つ。それから脳波を読み取るためのごつごつとしたヘッドセットだ。
この大仰な機械で何を読み取り、何が分かるのかは不明だ。
部屋は大きなガラスで仕切られていて、ガラスの向こうには木原唯一がいる。
機械に繋がれた条理は暇そうにしつつ、目の前にある風船を破壊する。色とりどりの風船を指定された順番に割る。ただそれだけの作業である。本来は
もっとも、これは木原唯一の研究のための実験だ。学校のカリキュラムとは別物である。条理の能力が学校では手に負えないものであると分かってから、唯一が彼の能力開発を引き受けている。マンツーマンの能力開発だが、これは唯一が条理を独占したいがために研究体制を変更した結果だ。「原石」の調査・研究に関われる人員は少なく、このことが条理暗殺事件に繋がったのだが、それを改善しようという意思は唯一にはなかった。
「はい終了。ありがとう、条理君。お疲れ様」
「お疲れ様、木原先生」
この関係もずいぶんと長い。
かつて
機械を外した条理のもとに唯一がやってきた。
「水、どうぞ」
「ありがとう」
受け取ったペットボトルに口をつける。ミネラルウォーターで水分を補給した。機械に繋がれた小一時間、まったく水を飲んでいなかった。空調が効いていて、汗もかいていないので別に喉が渇いているわけではないが、水分補給は大切だ。何せ外は真夏日なのだから。本格的な夏を前にしてこの気温は、世界的な異常気象の影響なのだろうか。
「で、どうだった。木原先生の研究の役には立ちそう?」
「どうかな。条理君の能力は未解明なところが多いからね。他の能力と結果が同じでも発動プロセスからして別物だから、今のやり方だとダメかな。ダメってわかることも大切なんだけどね」
条理の正体不明の能力の秘密を解明するべく検証を進めているのだが、唯一の知識と設備を駆使しても未だにその力の正体は判然としない。
別の種類の能力開発と同様の手段を使ったらどうなるか確認しているが、その結果は芳しくない。
それでも、この方法ではうまくいかないという結果もまた成果の一つではある。
「ところで、条理君。どうかな?」
唯一は淫蕩な表情で舌を出し、指で輪を作ってフェラのそぶりをする。
「してくれる?」
「はぁい♡」
それまでの理知的な声音から一転して、媚びるような声で返事をする。
唯一は条理のパンツを下ろしてペニスを取り出す。
「わぁ、もうガチガチ」
「唯一ちゃんが焦らすからだよ」
「ごめんなさい。でもお仕事はしないとだから……はぁ、雄くさ♡」
目を輝かせる唯一は大事そうにペニスを撫でると、右手で竿を掴んで上下させる。
「あー、気持ちイイ」
「気持ちイイ? じゃあ、手だけでいい? 口はどうする?」
「もちろん、口も使って」
「ふふ、もちろんいいよ……ん、ちゅ」
唯一はカリ首付近を手コキしながら、ペニスの根本にキスをした。それから舌を竿に這わせる。
「ぴちゃ、ぴちゃ、れろ、れろ、んあぁ♡ れろれろ♡ ちゅ♡」
柔らかい唇と舌を使って唯一はフェラをする。
唯一が条理の女になったとき、真っ先に修得した技術だ。
何度も実践を重ねて今となってはプロ級となった。
「唯一ちゃんのフェラ気持ちイイ」
「本当? ちゅ……ぴちゃ……れろれろ♡ 条理君のおちんちんも美味しいよ。んぅ♡ ちゅ♡ れろ……ちゅぱ……はむ、ちゅぷ……れろれろ……はあ……ふふ、いやらしいお汁が出てきた。先っぽ、れろれろれろ♡」
カウパー液の雫を唯一が舌先で舐め取る。鈴口から滲み出る粘液を次から次へと舐めて、その刺激でさらに次の雫を搾り出す。
蛇のように動く舌先で先っぽの割れ目を穿りながら、条理の様子を上目遣いで見てくる。そのいじらしさに思わず興奮してしまう。
「ん……あ……むぅ♡ んむぅううう♡」
唯一はペニスをぱくりと咥えて、そのまま頬張った。
ペニスを根本まで咥えて、口の中で舐め回す。
「んぅ……じゅる……じゅるる……れるれる……じゅるるる♡ おいひい♡ ひんぽ♡ れるる、じゅるるる、んぶぅ♡ じゅぼ……じゅぼ……じゅぼ♡」
むしゃぶりついてから、頭を激しく上下に振り始める。
唇を窄めて、その美顔をフェラ顔に歪めて愛撫した。
「んふ……ふう……じゅろろろろ♡ ちゅぱ♡ じゅるる♡ はふ……んふ♡ んあ……相変わらず、おっきぃ♡ ちゅぱ……れろれろ……んふ、じゅるるる♡ んぶぅ♡」
「唯一ちゃん、激しい。すぐ射精しちゃうって」
「いいよぉ♡ らして♡ れろれろ。飲んで、あげるから。んむ、じゅる、じゅる、じゅる、じゅる、じゅるる♡」
「うぉ……! ヤバ!」
激しいフェラは条理のペニスを吸引する。
さすがに手慣れたもので感じる場所を熟知している。しっかりと裏筋から亀頭まで舐めで射精感を高めたところで、一気に吸い上げる。
熱くぬるぬるとした口内粘膜に包まれたペニスは、それだけで感じている。そこに強烈な吸引が追加だ。睾丸が精子を高速生産して、唯一の口の動きに従ってそのまま精液を放出してしまう。
「ん――――んん♡」
どびゅ、どびゅ、と精液が唯一の口内に飛び散る。
「んく……んぐ……じゅるる♡」
射精後も唯一は口を離さない。
射精したばかりのペニスを咥えたままで、尿道に残された精液まで吸い出している。さらに舌を絡ませて、敏感なペニスを愛撫して、次の射精を促す。
「唯一ちゃん、それマジでイイ」
「んちゅ……じゅる……れるちゅ……んふぅ♡ じゅるるるう♡ もっとらひて♡ ん……ん……ん♡」
「うぅ、くう」
腰が抜けそうな快感だ。
ペニスは唯一の口の中にすっぽりと咥えこまれている。何も見えず、舐め回されている感覚だけが伝わってくる。
この美女の口の中でペニスが弄ばれているのだ。
映像だけで抜ける。
まして、実際にフェラをされているのだから、我慢できないのは当然と言えるだろう。
「ん――――ふう♡ んふ……じゅる……ん、んん――――ぷあ♡ はあ、濃い」
唯一は満足げに唇を舐めた。
条理の精液をたっぷりと飲んだ彼女は淫蕩な表情を浮かべる。
「うーん、やっぱり条理君の遺伝子の味、サイコー♡ ……はあ、わたし、もう興奮しちゃった。下の方でも飲ませてほしいなぁ♡」
蠱惑的な視線を条理に送る唯一。
大抵の男はこの瞳にやられてしまうことだろう。
と、その時、不意のアラームが鳴った。唯一の白衣のポケットから響く電子音。それは、緊急連絡用の通信端末からだった。
「うえぇ……なんで急に会議ぃ」
「何、仕事?」
「ぴぇん」
「それもう死語らしいよ」
これからという時に邪魔をされて唯一はお冠だ。
子どものように「うー」と言いながら端末の画面を睨んでいる。
唯一の魅力は大人の女性というよりもこうした子どもっぽさだろう。普段の知的な科学者然とした雰囲気も悪くないが、好きなことにひた向きな幼さが可愛いのだ。
「残念、じゃあ、続きはまたの機会に」
「う゛ぞぉ」
「ほんとに泣きそうになってる……大人なんだからお仕事頑張らないとダメでしょ」
「うー」
「後でね」
「後で? 本当に?」
「本当。俺だって唯一ちゃんとしたいし」
中途半端なところで寸止めされたのは事実。もっとも、条理の場合はフェラ抜きしてもらっているので不完全燃焼というほどではない。
「さっきから鳴りまくってね?」
「く……もう! 条理君、終わったら家行くからね! 頑張ったご褒美頂戴ね!」
そんなことを言いながら不機嫌そうな唯一は電話を取った。
「ええ、分かってます。今、行きます。はい、大丈夫です。ちょうど、こちらも作業が終わったところです。実験の途中でして、マニュアルに沿って終了対応していたので時間がかかりました。ええ、問題はありません。……はーい――――、シねクソ」
唯一は通話を終えると毒を吐いた。
一皮むけば口が悪いのも欠点か。
条理の前ではひたすら乙女というか雌顔なのだが。
つい数分前まで男のペニスを咥えていた女はすぐに研究者の顔に戻ると、タブレットをケースに仕舞った。
「それじゃあ、条理君。気を付けて帰ってくださいね。また、妙な女に絡まれることのないように」
「はい、気を付けます。お仕事頑張って。唯一先生」
唯一の地下研究室を出た条理は、エレベータで一階に上がった。
エレベータの扉が開くと一気に世界が明るくなる。無機質な研究室と異なる広々としたエントランスには、多くの人が行きかっている。白衣を着た研究員だけでなく、スーツを着たビジネスマンや能力開発で有名な学校の制服を着た学生たちもいる。
回生コーポレーション。
学園都市の中でも再生医療分野で目覚ましい成果を上げている大企業である。
能力開発面でも優秀であり、それゆえに上位能力者が集まる学校と共同研究をしている分野も数多い。学生が多いのはそういう理由からだ。
まだ日は高い。土曜日の午後2時は、まだまだこれからという時間帯だ。
「おや、ここでお会いするのは珍しいですね――――お兄様」
声をかけてきたのは腰まで届く長い三つ編みが特徴的な少女だった。
整った美しい顔立ちで、知的で落ち着いた雰囲気だ。
名門お嬢様学校の常盤台の制服を着ている。それだけでもエリートの証になるのだが、彼女はそのエリートの中でも逸材の一人だ。
「その呼び方はやめてくれって何度も言ってるだろ、加巳野」
「わたくしのことは昴と呼んでくださいと何度も言っているではありませんか、お兄様」
執拗にお兄様と呼んでくる昴に、条理はため息をつく。
特に彼女と血縁関係があるわけではないし、戸籍上の繋がりもない。
お兄様などと大仰に呼ばれる筋合いはまったくない。
「まあ、仕方ありません。今日のところはわたくしが折れてさしあげます、条理先輩」
「妹を名乗る不審者のくせに譲歩した感じを出すんじゃないよ」
「条理先輩は唯一先生のところに?」
「そうそう、いつものデータ取りだよ」
「いつものですか。――――
「全然、唯一ちゃんも途中で会議に呼ばれてお開き」
「そうですか」
昴は頤に手を当てて、少しだけ言葉を止める。
「では、条理先輩はこの後はただの暇人ですね」
「否定はしないけど言い方がキツくねえか? 常盤台ほど課題に追われちゃいないが、そこそこ真面目な学生だぞ」
「すみませんが、テスト期間が終わったばかりの土曜日午後に先輩がテキストを開く姿が想像できません」
「間違ってないが、オブラートに包もうぜ。ていうかさっきまで木原センセの仕事を手伝ってたんだから、別に暇人じゃねえのよ。仕事明けだよ」
「人は図星を言い当てられると早口で言い訳を述べるそうです。暇人の事実を認めつつ、そのことに負い目を感じているといったところでしょうか」
「漠然とした一般論を並べただけで分析してる風に言うんじゃない。これから予定がないのは事実だけど、負い目なんかねーよ」
「承知いたしました。先輩はこのあと予定なしと」
昴は小さく微笑んだ。
お嬢様学校で培った微笑みの技術は、彼女の真意を包み隠す。
何を考えているのかよく分からないというのが正直なところだ。
「では、わたくしは会議がありますので、そろそろお暇しますね」
昴は思わせぶりな態度を取った挙句、あっさりと踵を返した。
「なんだよ。このあと一緒にどう? って流れじゃないのかよそこは」
「わたくしはただの学生ですから、予定がなければこのような企業に立ち入りません。共同出資研究事業の会議がわたくしを待っているのです。そういうわけですので、残念ながらお兄様の暇つぶしにお付き合いできないのです。申し訳ありません」
「なんで俺がふられたみたいになってんだ。それに呼び方。自分で折れたって言っただろ」
「今ほど治りました。ご心配をおかけしました」
「口が達者で何よりだよ」
腕時計を見た昴はいよいよ駄弁っている時間もなくなったようで、軽く会釈をして立ち去った。
昴は唯一が能力開発を担当する学生の一人で、その中でも優秀な人材だという。
条理とも唯一を介して知り合い、ちょっとした事件を契機にして仲を深めた。
ちなみに、彼女が条理を兄と呼ぶのは半ば悪ふざけだ。親愛の裏返しでもあるか。決して、条理が常識を弄って兄と認識させているわけではなく、条理にそのような性癖はない。
(とりあえず、どうしようかな)
昴と話をしたのはほんの数分。暇つぶしとしては短すぎる。午後いっぱいは研究室にいるつもりだったので、ぽっかりと空いた時間をどう使うか悩んでしまう。
このまま家に帰ってネット三昧でもいいが、同時にもったいない気もする。かといって、今何かしたいことがあるかというとそれもない。
「いったん本屋だな」
電子書籍が隆盛を極める現代でも紙の本の需要は一定数ある。漫画本や文庫本は紙で欲しいという人もまだまだ多い。条理自身も漫画は紙で読むタイプである。駅前にある大き目の本屋をぐるりと見て回すだけでもそこそこ時間がかかる。暇つぶしにはもってこいだ。
そんなわけで条理はエントランスを抜けて熱い日差しの下に出ると、目的の本屋に向けて歩き始めた。