世界は狂ってしまったらしい。
もっとも、いつだって世界なんてものは多かれ少なかれ狂っているものだが今回の狂い方は少々、いや、かなり質が違っていた。
男という性別がその根源的な部分から根こそぎ壊れてしまったのだから無理もない。
原因はさっぱりわからなかった。太陽フレアの影響だとか、どこかの研究所から漏れ出した未知のウイルスだとか、あるいは神様が暇つぶしに起こした気まぐれだとか、様々な説がまことしやかに唱えられては次の日には忘れられていった。
確かなことはたった一つだけ。
世界中の男という男がまるで箍を完全に外された獣のように、その性欲を際限なく増大させ続けているという動かしがたい事実である。
その結果として何が起きたか、それは改めて言うまでもないだろう。
強姦事件の発生件数がそれまでの統計データを嘲笑うかのような天文学的な数字を叩き出し、あっという間に世界を埋め尽くしたのだ。
各国政府は当然、対策に追われた。
性欲を劇的に抑制するという触れ込みの、夢のような新薬が鳴り物入りで開発された。
だがほとんど効果はなかったらしい。
焼け石に水、とはまさにこのことだった。
いっそ物理的な去勢手術を義務化してはどうか、などという過激な法案が真顔で提出された国もあったという。
当然ながら、男性たちの猛烈な反発にあって即座に否決されたのは言うまでもない。
そうしてありとあらゆる対策が空振りに終わっていく。
そうこうしている間にも、女性たちの悲鳴は世界中に空しく木霊し続けるのだった。
そんな地獄のような状況下で、我が国日本は一つの答えを世界に提示してみせた。
実にこの国らしい、実に変態的で、実に合理的な答えを。
すなわち──肛門への挿入ならば、罪に問わない、という新法の施行である。
膣への挿入は従来通り、厳罰をもって強姦罪が適用される。
しかし肛門への挿入、つまりアナルセックスは暴行罪や脅迫罪が適用されない限りにおいてはたとえ当事者間の合意がなくとも犯罪とは見なされない、ということになった。
とんでもない法律だ、と世界中から非難が殺到した。
だがこの前代未聞の法律は驚くべきと言うほかない効果を発揮することになる。
なんと、あれほどまでに頻発していた日本国内における強姦事件の発生件数が法施行を境にして嘘のように激減したのだ。
膣さえ守られれば、それでいいというのだろうか。
そんなはずはない、と誰もが思ったがしかし。驚くべき事に、この法律はそれなりに機能したのである。
施行前は単なる強姦に収まらず、被害者の女性が抵抗の末に殺害されたり、回復不能の重傷を負わされたりする例も後を絶たなかったのだが、施行後はそういった最悪の結果だけは確かに激減した。
性欲という名の狂気に支配されてしまった男たちの中には、警察官も検察官も裁判官も弁護士も含まれている。もはや女性は法によっては守られないのではないか、という絶望が国を覆い尽くしかけた時、この新法は一時的に麻痺した法秩序を最低限のレベルで維持させることに成功したのだ。
男たちとて何も女を見境なくレイプしたいとは思ってはいない。勿論そういう男もいるにはいるが、すべてではないのだ。セックスはしたくとも、無理やりは嫌だという者が相当数いた。犯罪行為に強い抵抗を示す男たちも多くいた。しかし、そういった者たちでさえも爆発的に膨れ上がる性欲には勝てなかったのだ。
それがまあ詭弁とはいえアナルならば合法だと言われれば、多くの男は我慢できなくなったらアナルを犯す様になった。
そして膣を犯した男たちは見せしめのように逮捕され、厳罰に処された。
結句、女たちも望まぬ妊娠をして人生をめちゃくちゃにされるよりは、と嫌々ながらも男たちにその背後の穴を差し出すようになったのである。
無論、全員が全員ではないが。アナルセックスに非常に強い抵抗を覚え、反感を露わにする女も少なくはなかった。まあそんな女のささやかな抵抗のほとんどは、男たちの性欲でいともあっさりと塗りつぶされてしまったが。
槍間 栗男(やりま くりお)はそんな狂った世界に生きる、ごく平凡なサラリーマンである。
◆
槍間 栗男──この男もまた、この世界の理不尽な呪いをその身に受けた、哀れな男の一人だった。
栗男の股間にもまた、獣が潜んでいる。
いつ牙を剝き、誰彼かまわず襲い掛かってもおかしくはない、飢えた性獣が。
そんな栗男は公園のベンチに腰を下ろしていた。
栗男は社員食堂で社食を取るはない。なぜなら、社員食堂はヤリ部屋と化しているからだ。そこかしこで男性社員たちが女性社員たちのアナルを犯している。さすがに他人のアナルセックスを見ながら食事をする気にはなれないため、栗男は昼食をよくこの公園でとっていた。
コンビニで買ったサンドイッチを、半分ほど食べたところで、その手がぴたりと止まった。
彼の視線の先にはどこにでもあるような、ありふれた公園の昼下がりの風景が広がっている。
子供たちの歓声が聞こえてきそうな滑り台。
風に揺れるブランコ。
乾いた砂が陽光を照り返す砂場。
そしてそこでたった一人、夢中になって遊ぶ少女の姿。
少女は小さなスコップを手に、懸命に砂の城を築いていた。
その小さな背中。真新しいスカートからすらりと伸びる、まだ細い足。
栗男の腹の底に飼われた獣がぐるる、と低く唸り声をあげたのが分かった。
少女はたった一人だ。
時刻は平日の昼過ぎ。
公園には他に誰もいやしない。
栗男は音もなくゆっくりと立ち上がった。
食べかけのサンドイッチを、まるで大切なものを置くかのように、そっとベンチに置く。
足音を殺して、砂場へと一歩、また一歩と近づいていく。
少女は全く気付く様子がない。
砂の城作りにすっかり心を奪われている。
栗男は少女の真後ろに立った。
汗の滲んだうなじを見下ろす。
そのあまりにも幼い肢体。
栗男の股間は既に岩のように固く張り詰めていた。
「ねえ、きみ」
栗男は自分でも驚くほど、優しい声を作って話しかけた。
少女の肩がびくりと小さく跳ねる。
ゆっくりと少女が立ち上がり、振り返った。
大きな、ビー玉のような瞳が栗男を見ている。
「……なあに?」
「立派なお城だね、すごいね、一人で作ったの?」
「うん……」
少女はこくりと頷いた。
その無垢な仕草が栗男の欲望の火に油を注ぐ。
「上手だね。よかったら、手伝ってあげようか?」
「……ううん、ひとりでできるもん」
少女はぷいと可愛らしく顔をそむけた。
その仕草がまた堪らなく可愛くて──栗男は少女の華奢な腕を、ためらいもなく掴んだ。
「きゃっ」
少女が短い悲鳴をあげる。
栗男は構わず、その綿のように軽い体をひょいと抱え上げた。
「いやっ、はなして! はなしてよ!」
少女が手足をばたつかせて暴れる。
だが大人の男の圧倒的な力の前では赤子の戯れにも等しかった。
栗男は公園の隅にある公衆トイレへと、迷いのない足取りで向かった。
多目的トイレのドアを開け、少女を抱えたまま中に入る。
内側から、ガチャリと、無機質な音を立てて鍵をかけた。
「いや、いやぁ……! こわい……!」
少女が本格的に泣き叫び始める。
栗男は少女を床に下ろすと、有無を言わさずその場にうつ伏せに押さえつけた。
小さな背中に、栗男の全体重がのしかかる。
あれほど激しかった少女の抵抗がぴたりと止んだ。
恐怖がその小さな体を完全に支配してしまったのだろう。
可哀そうに、少女はぶるぶると震えているではないか。
栗男は少女のスカートを無造作にめくり上げた。
小さな花柄の、まだ真新しいパンツが現れる。
栗男は躊躇なく、そのパンツを抵抗ごとずり下ろした。
白く、まだ果実とも呼べないほど未成熟な尻が薄暗いトイレの中に露わになる。
その中央にはまだ固く閉じられたままの小さな
栗男は自分のズボンのチャックを下ろし、熱く膨れ上がった自身を解き放った。
それは少女の小さな体にはあまりにも不釣り合いな、凶器そのものだった。
栗男は手際よく小分けしたアナルローションをポケットから取り出し、少女の菊門へと塗りつけていく。この時代、ほとんどの男はローションを所持しているのだ。いつどこで、誰のアナルを犯したくなっても良いように。
「ひっ……!」
少女が息を呑む。
冷たい液体の感触と、これから自分の身に起きることへの絶望的な予感に体がわなわなと震えている。
栗男は自身の亀頭を、その小さな入り口にぐりぐりと押し当てていく。
「や……やめて……おねがい……」
少女の懇願は弱々しく空気に溶けて消えていった。
栗男はゆっくりと、しかし着実に腰に力を込めていく。
ぐ、と肉がわずかに沈む感触。
しかしそこから先へはまるで頑丈な壁に阻まれたかのように進まない。
入り口はあまりにも狭く、そして硬かった。
「痛っ……たい……! いたいよぉ……!」
少女が金切り声をあげる。
栗男は一度腰を引いた。
そして、もう一度、今度は躊躇も慈悲もなく、全体重を乗せて一気に腰を突き出した。
「いぎゃあああああああああああっ!」
少女の絶叫の凄惨さがその激痛の大きさを物語っている。ローションを使用したとはいっても、子供の肛門に大人のペニスをねじ込めばこうなってしまって当然だ。
だが栗男にはいささかの躊躇もない。現行法に於いて、アナルを犯す際に怪我をさせてしまってもそれは不可抗力として扱われる。ちなみにその際、被害者は特別な保険が適用されて医療費は無料となる。
ともあれ、栗男の亀頭が無理やりその狭く抵抗する道をこじ開けていった。
想像を絶する激しい痛みに、少女の体は魚のように弓なりにしなった。
栗男は一切構わない。
さらに奥へ、もっと奥へと、獣のように肉棒を突き進める。
ぐちゅり、ずちゅり──少女の柔らかい腸壁が悲鳴をあげて引き伸ばされていく感覚。
ぬるりとした粘膜が異物である栗男のペニスを、まるで生き物のように締め付けた。
その強烈な締め付けが栗男にたまらない快感をもたらす。
「ああ……いい……すごく、いい……!」
栗男は獣のように喘ぎながら、ゆっくりと腰を動かし始めた。
ずぶり、ずぶりと、ペニスが少女の体内を生々しく出入りする。
その度に、少女の体がびくん、びくんと痛みに痙攣した。
「や……だ……いたい、いたいよぉ……やめて……」
涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになった顔で、少女が訴え続ける。
だがその声は栗男の耳にはまるで届いていない。
彼はただ自らの下半身から突き上げてくる、原始的な快楽だけを追求していた。
少女の肛門からはじわりと血が滲み出している。
その鮮やかな赤が栗男の興奮をさらに高めていった。
腰の動きが次第に速く、そして激しくなっていく。
トイレの中には卑猥な水音と、肉と肉がぶつかり合う鈍い音だけが響き渡っていた。
少女はもはや、抵抗らしい抵抗をすることもできない。
そうして栗男の動きがクライマックスに向けて急激に加速していく。
「ああ……イク……イクッ……!」
栗男は低く咆哮した。
そして、灼熱の精液を、少女の体内の最奥へと容赦なく叩きつける。
びくん、びくんと脈打つペニスが最後の一滴まで執拗に絞り出していく。
栗男は大きく息をついた。
そして、ゆっくりと少女の体から自身を引き抜く。
どぷり、とまるで沼から足を引き抜くような、生々しい音がした。
少女の肛門は見るも無残に赤く腫れあがり、だらしなく開いている。
そこから、栗男の精液と少女の腸液、そして生々しい血が混じり合った液体がとろりと流れ出していた。
栗男は自分のズボンを整えた。
少女はうつ伏せになったまま、ぴくりとも動かない。
ただその小さな背中が小刻みに震えているだけだった。
栗男はそんな少女を一瞥した。
そして、何も言わずにトイレの鍵を開け、ためらいなく外に出た。
昼下がりの太陽がやけに目に染みるように眩しく感じられる。
栗男は公園のベンチに戻った。
食べかけのサンドイッチがまだそこにぽつんとあった。
彼はそれを何気なく手に取り、何事もなかったかのように食べ始める。
トイレの方からは微かに少女の嗚咽が聞こえてくるような気がしたが、栗男は気にも留めない。
これがこの狂った世界のありふれた日常なのだから。
◆
サンドイッチの最後のひとかけらを飲み込むと、栗男は包装紙をくしゃくしゃに丸めて、近くのゴミ箱に放り投げた。
──さて、と。
栗男は何事もなかったかのような顔で立ち上がり、会社へと戻ることにした。
帰り際、ふとトイレのほうへ目をやる。公園のトイレからは少女が出てくる様子はない。怖がっているのだろうか? それとも疲れ果てて立つ事も出来ないのだろうか? どちらにせよ、それは栗男の知ったことではなかった。
会社までの道のりでも、この世界の歪んだ
路上のど真ん中で小汚い中年男が主婦らしき女を立ちバックで犯していた。栗男はすれ違い様、一応結合部を確認する。もし膣を犯しているようなら警察に通報しなければならない。だが見た所、しっかりとアナルへ挿入していた。
主婦は歯を食いしばり、目に涙を浮かべながらもアナルセックスを受け入れている様だ。
特に問題はなさそうだな、と判断した栗男は会社へと急ぐ。
◆
会社に着くと栗男は自分のデスクに向かい、午後からの業務に取り掛かった。
パソコンのモニターに映し出される数字の羅列。それらを無心で処理していく作業は何の感情も伴わない。ただ指先だけがまるで別の生き物のようにキーボードを叩くだけだ。
ちなみに勤務時間中であっても我慢ができなくなった男性社員は女性社員のアナルを犯す事が認められている。不意に襲い掛かってくる性欲の波は、並大抵の精神力で耐えられるものではない。
だが栗男は仕事は仕事、アナルセックスはアナルセックスとして割り切る事が出来ていた。確かに勤務中のアナルセックスは権利として認められてはいるが、それはそれとして別に仕事が減るわけではないからだ。
──ヤリたければ仕事を片付けてからでいい
そんな事を思いながら栗男は淡々とキーボードを打ち込み続け、一通りやるべきことをやった、そんな時。
「槍間さん、お疲れ様です」
ふと、隣の席の同僚が声をかけてきた。
鈴木 花──栗男より二つ年下の同僚である。
「ああ、お疲れ様」
栗男は当たり障りのない返事を返す。
「あの、このデータなんですけど、ちょっと分からなくて……」
花がファイルを手に栗男のデスクにやって来た。
彼女が身を屈めて、モニターを覗き込む。
ふわりと、甘いシャンプーの香りが鼻孔をくすぐった。
栗男の腹の底の獣がまたゆっくりと目を覚ます気配がした。
ブラウスの隙間から、控えめながらも形の良い胸の膨らみが覗いている。
だが栗男の興味はそこにはない。
彼の視線はタイトスカートにぴっちりと包まれた、彼女の尻へと吸い寄せられていた。
程よく肉付きのいい、丸みを帯びた官能的な形。
きっと、指が沈み込むような極上の感触に違いない。
「……槍間さん?」
「ああ、いや。なんでもない。そのデータはここの数値を修正すればいいだけだよ」
栗男は平静を装って説明した。
花は「ありがとうございます」と花が咲くように微笑んで、自分の席に戻っていく。
その小気味よく揺れる尻を見送りながら、栗男は心の中で決めた。
次の獲物は彼女だ、と。
◆
終業時刻が過ぎた。
オフィスにはまだ何人かの社員が残業のために残っている。
栗男もまた、残業するふりをして席に座り続けていた。
もちろん、花が一人になるのを待っているのだ。
一人、また一人と、「お先に失礼します」という声と共に、社員たちが帰っていく。
やがて、だだっ広いオフィスに残っているのは栗男と花、そしてあと数人だけになった。
「鈴木さんもまだ仕事かい?」
栗男はさも今気づいたというような自然な口調で声をかけた。
「はい。ちょっと立て込んでて……」
花は少し恥ずかしそうに笑う。
その笑顔が栗男の嗜虐的な心を妙にくすぐった。
「手伝おうか?」
「いえ、そんな! 槍間さんもお忙しいでしょうし、申し訳ないです……」
「いいんだよ。二人でやった方がどう考えたって早いだろ」
栗男は席を立ち、花の隣の空いている椅子に、ごく自然に腰掛けた。
花の顔がぽっと少し赤らむ。
そう、鈴木 花という女は栗男に淡い好意を持っているのだ。
──槍間さんって真面目で素敵だな……
そんな事を思っている。ほかの男の様に、性欲のままに女を犯す事がないと勘違いしている。まあ槍間とて平然と女を犯すのだが、それは仕事が溜まっていない時に限るし、勤務中はなるべく仕事に集中しているため、花の目にとまっていないだけに過ぎないのだが。
◆
二人はしばらく、黙々と作業を続けた。
他の社員たちも、最後の追い込みにかかっているらしい。
オフィスには静かな熱気が満ちていた。
そして、ついに最後の社員が「お先に失礼します」と、やや疲れ気味に帰っていく。
オフィスには栗男と花の二人だけが残された。
しん、と静寂が辺りを支配する。
キーボードを叩く音だけがやけに大きく響いていた。
チャンスだ。
栗男はそう判断した。元々残業のフリをしていただけである。すぐにやるべき仕事などはない。
「鈴木さん」
「はい?」
「ちょっと、休憩しないか。コーヒーでも淹れてくるよ」
「あ、じゃあ、私がやります!」
「いいんだよ。いつも頑張ってるご褒美だ」
栗男は優しく微笑んで、給湯室へと向かった。
花はその頼もしい背中をうっとりと見つめている。
栗男のさりげない親切が彼女にはたまらなく嬉しかった。
しばらくして、栗男が二つのマグカップを持って戻ってくる。
一つを、こつ、と花のデスクに置いた。
「どうぞ」
「わあ、ありがとうございます」
花は嬉しそうにカップを受け取った。
その時だった。
栗男の手が花の肩に、そっと置かれた。
「え……?」
花の体がびくりと可愛らしく震える。
「いつも、本当に頑張ってるなと思って」
栗男はまるで恋人に囁くかのように、花の耳元で囁いた。
その声は昼間の公園で少女に話しかけた時と全く同じように、ひどく優しかった。
「そ、そんなこと……ないです……」
「俺はちゃんと見てるよ。花が誰よりも努力してること」
栗男の手が肩から背中へと、まるで蛇のようにゆっくりと滑り落ちていく。
そして──尻にふれた。
「ひゃっ!?」
花が素っ頓狂な声をあげる。
ぐに、と尻肉に深く食い込む指の感触。
「や、槍間さん……? な、何を……」
花は狼狽して、栗男を見上げた。
栗男はもう笑っていない。
「ねえ、鈴木さん」
「……はい」
「君のお尻、すごくいい形してるね」
栗男のその言葉に、花の顔からさっと血の気が引いていく。
「何、言ってるんですか……? やめて、ください……」
「どうして? 柔らかくて気持ちがいいよ」
栗男はさらに力を込めて、尻を玩具のように揉みしだいた。
花の体が恐怖で石のように硬直する。
「いや……いやです……!」
彼女はか細い声で、必死に拒絶した。
だが栗男は全く意に介さない。
「大丈夫だよ。法律でちゃんと許されてるんだから」
「そんな……法律の方がおかしいんです!」
「確かにそうかも。でも仕方ないよ、我慢できないんだ、本当に」
栗男は花を、まるで荷物でも扱うかのように椅子から引きずり下ろした。
「きゃっ!」
床に尻もちをついた花を栗男は無理やりに立たせ、その背に獣のように乗りかかった。
「やめて、やめてください! お願いします!」
花が泣き叫ぶ。彼女はすでにこの会社で数回アナルを犯されている。快感など全くなく、ただひたすら痛いだけだった。女子トイレで泣きながら肛門から精液を書き出している記憶が蘇る。
栗男は花のタイトスカートを、ためらいもなくまくり上げた。
現れたパンティーストッキングを、まるで邪魔な雑草でも引きちぎるかのように、乱暴に引き裂く。
びりびりと、安物のナイロンが裂ける乾いた音がした。
レースのあしらわれた、可愛らしいピンク色のパンティーが露わになる。
栗男はそれも構わず、力任せにずり下ろした。
「いやあああああ!」
花の絶叫。
白く豊かな尻がオフィスの無機質な蛍光灯の下に無防備に晒されると、栗男はローションを穴へと塗りたくった。指にたっぷりとつけて、そのままぬるりと突っ込み、内壁にも塗りたくる。
「ひっ……!」
花の体が大きく弓なりに跳ねる。
「槍間さん……お願い……やめてください……」
彼女は涙ながらに懇願する。
「どうして……どうして、私なんですか……」
「そこに君の最高のお尻があったからさ」
栗男は悪びれる様子も微塵もなく、そう言い放った。
そして狙いを定めると、一気に腰を突き入れる。
「あああああああああああああっ!」
花の悲鳴が静まり返ったオフィスにこだました。
栗男は一切容赦しない。
ぎちぎちと悲鳴のような音を立てる狭い道を、強引に突き進んでいく。
その強烈な肉壁の締め付けが栗男に絶頂にも似た、抗いがたい快感を与えた。
「ああ……すごい……鈴木さん、君のお尻はすごいよ……」
栗男は喘ぎながら、夢中で腰を動かし始めた。
花の体はただただ嵐の中の小舟のように揺さぶられるだけだ。
痛みと屈辱に、彼女は奥歯をきつく、きつく噛み締める。
涙がデスクの上にぽたぽたと落ちて、小さな黒い染みを作っていった。
好きだった人。
その人が今、自分を獣のように犯している。
この世界は本当に根の先まで狂ってしまった。
もう何も信じられない。
花の心は光の届かない、深い絶望の闇に沈んでいった。
どれくらいの時間が経っただろうか。
栗男の動きがひときわ激しさを増していく。
そうして獣のような咆哮と共に、栗男は花の体内に自らの汚れた種を注ぎ込んだ。。
栗男は満足げに息をつくと、ゆっくりと体を引き抜いた。
そして、デスクの上でうつ伏せになって泣きじゃくる花には一瞥もくれず、自分の身なりを整え始める。
まるで、道端に落ちているゴミを跨ぐかのように、彼は花の体を無造作に乗り越えた。
「じゃ、お疲れ。俺、先に帰るから。あとよろしく」
その声はあまりにも事務的で、氷のように冷たかった。
返事はない。
栗男は気にもせず、自分の鞄を手に取ると、何事もなかったかのようにオフィスを出て行った。
一人残された花はただ声を殺して泣き続けることしかできなかった。
◆
翌日、栗男は何事もなかったかのような顔で出社した。
花は会社を休んでいる。
まあ、そうだろうな、と栗男は他人事のように思った。
気にするだけ無駄だ。
代わりはいくらでもいる。
「槍間ァ!」
不意に、鼓膜を突き刺すような鋭い声が飛んできた。
声の主は田中 順子だ。
四十代半ばの、仕事一筋で生きてきた女部長である。いつもヒステリックに部下を叱りつけているため、社内での評判はすこぶる悪かった。見目も決して良いとはいえない。だからアナルを犯された経験はない。男たちも、好んでこのような狷介な女を犯そうはしなかった。
「はい、部長」
「昨日の報告書、数字が間違っていたわよ! たるんでるんじゃないの!?」
順子はヒールの音も高く栗男のデスクにやってくると、書類を叩きつけた。
その甲高い声が栗男の頭に不快に響く。
栗男は平坦な声で答えた。
「なんですって?」
「ですから、数字は間違っておりません。そちらは経理部から共有された昨日の確定値です」
栗男はパソコンの画面を順子の方に向け、共有フォルダに格納されている大本のデータを示した。誰が見ても、報告書の数字が正しいことは明らかだった。
一瞬、順子の目が泳ぐ。
自分の勘違いだと気づいたのだろう。
だが、その口から謝罪の言葉が出てくることは、天地がひっくり返ってもあり得ない。
「……書き方が紛らわしいのよ! これじゃ、誰だって間違うわ!」
ほら来た。
予想通りの反応に、栗男は内心でため息をついた。
「申し訳ございません。次から書式を工夫いたします」
「当たり前でしょ! まったく、報告書一つまともに作れないなんて。それでも給料もらってるんだから、ちゃんとやることやりなさいよね!」
キンキンと響く声で一方的にまくし立て、言いたいことだけ言うと、順子はヒールを鳴らして去っていく。
残されたのは、理不尽に叩きつけられた報告書と、ふつふつと煮え立つ黒い感情だけだった。
──クソ女が
口の中で、誰にも聞こえないように毒づく。
怒りを覚える。殺意すら湧く。
だが、栗男はそれを決して表情には出さなかった。
◆
その日の夕方。
栗男は順子に呼ばれて、部長室にいた。
報告書の修正について、またしてもネチネチと説教されている。
三十分以上はほとんど同じような内容を繰り返し聞かされていた。
栗男はただ無表情にそれを受け流している。
しかし腹の底ではマグマのような黒い怒りがぐつぐつと煮えたぎっていた。
「分かっているの!? あなた一人のミスのせいで、どれだけの部署に迷惑がかかると……」
説教が最高潮に達した、その時だった。
栗男はおもむろに立ち上がった。
そして部長室のドアにゆっくりと鍵をかける。
ガチャリ、と重く、決定的な音がした。
「な、何をしているの槍間! ふざけてないで席に戻りなさい!」
順子が驚きと怒りが混じった声をあげる。
栗男はゆっくりと、まるでスローモーションのように彼女の方へ振り返った。
「部長、いつもお仕事お疲れ様です」
「何を……っ! 聞いているの!」
「少し、ストレスが溜まっているようにお見受けしましたので」
栗男はにたりと口の端を歪めて笑う。
「この俺が特別に発散させてあげますよ」
順子の顔が恐怖に引きつった。
彼女は栗男が何をしようとしているのかを、瞬時に悟ったのだ。
「ふ、ふざけないで! 誰に向かって口をきいているのか分かっているの!?」
「あんたにだよ、クソババア」
栗男は順子の細い腕を鷲掴みにした。
必死に抵抗する彼女を、まるで子供を扱うように、いとも簡単に床へとねじ伏せる。
「離しなさい! この無礼者! 警察を呼ぶわよ!」
順子が金切り声をあげて暴れた。
だが男女の歴然とした力の差はどうしようもない。
無理やりその体を押さえつけると、上質なスーツのスカートを、乱暴にまくり上げた。
「やめろ……やめろおおおっ!」
そして、ストッキングごとパンティーを、まるで邪魔な包装紙でも破るかのように引きずり下ろす。
現れたのは年齢の割にはよく引き締まった、形のいい尻だった。
栗男は少しも躊躇わずに、カチカチに硬く勃起した自身のそれを、必死に抵抗する順子の蕾へと突き立てる。
「いぎっ……!?」
順子の体がありえない角度で大きくしなった。
栗男はそのまま全体重をかけて、一気にその体を貫く。
「があああああああああああああッ!」
言葉にならない絶叫。それはもはや、獣の咆哮に近かった。
怒りと屈辱に、順子の顔は真っ赤に染まっている。
栗男はそんな彼女の耳元で、楽しそうに囁いた。
「どうですか、部長。これがあんたがいつも虫けらのように見下してる、部下のモノの味ですよ。さぞ屈辱的でしょうなあ!」
「き、貴様……っ! ただじゃおかないわ……! 必ず、殺してやる……!」
「威勢がいいですねぇ、さすがは部長だ」
栗男は嘲るように笑いながら、まるで杭でも打ち込むかのように、激しく腰を突き始めた。
「ほらほら、もっと抵抗しないと! いつもの威勢はどうしたんですかあ!?」
栗男の腰の動きが、一段と激しさを増す。
「あ……っ、ぐ、うううっ……!」
順子の背中が、弓なりにしなる。
その瞬間、栗男の灼熱が、彼女の奥深くで激しく脈動した。
「ん……っ!」
栗男は低く唸ると、粘りつくような白濁を、そのありえない場所に叩きつけた。
「あああああああああああっ!」
異物と熱が、腸壁を焼く。
順子は絶叫し、屈辱と怒りにわなわなと震えた。
「き、さま……! よくも……っ!」
その目で栗男を殺さんばかりに睨みつける。
だが、栗男はケロリとしたものだ。
「おや、まだ足りませんか」
彼はゆっくりと自身を引き抜いた。
ぬぷり、と生々しい水音が響く。
順子は、信じられないものを見た。
一度は事を終えたはずの栗男の剛直が、まるで何事もなかったかのように、再び猛り立っている。
先ほどよりも、なお一層硬く、大きく見えた。
「な……」
順子の顔から、怒りの赤みが引いていく。
取って代わったのは、純粋な恐怖だった。
「ひ……」
「安心してくださいよ、部長」
栗男は、悪魔のように笑った。
「まだ始まったばかりなんですから」
「や……やめ……」
懇願する声はしかし。
「いぎゃあああああっ!」
絶叫によってかき消される。最初のアナルレイプによって傷ついた肛門が、再度の挿入によって強い痛みを発していた。
ローションの使用を最小限にしているのも大きい。順子は鋭い刃物で肛門を抉られているような、そんな感覚を覚えて目に涙を浮かべる。
ここへきて、順子は恐怖を覚え始めていた。
「あ、あ、ああ……や……やめて……」
そんな懇願に栗男は面白そうに口角を上げる。
「もう終わりですか? まだ始まったばかりじゃないですか」
栗男は容赦なくペニスを抽挿する。順子の赤く腫れ上がった肛門を執拗に痛めつけ続ける。すると──
「お願い……もうやめて……許してください……なんでもしますから……」
順子は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、懇願した。さっきまでの攻撃的な態度は見る影もない。ただ怯えた小動物のように震えているだけだった。
「お願い……もう、むり……痛いのよ……本当に痛いの……」
しかし栗男は「ああ、その顔が見たかったんですよ、部長」といって、にたりと笑うなりこれまでで一番強く腰を打ち付けた。
「ぎゃああああっ!やめ、やめて……やめろぉーーーーっ!!!!!」
それからしばらくの間、オフィスフロアまで響き渡るかのような、けたたましい絶叫が──何度も、何度も部長室から響き渡った。
◆
栗男はすっきりした気分で、会社を後にした。
夜風が火照った体に心地よい。
歩いているうちにふと、田舎で暮らす実家のことを思い出した。
──そういえば、もうずいぶん帰っていないなあ
栗男はスマートフォンを取り出すと、母親に電話をかけた。
数回のコールの後、懐かしい声がスピーカーから聞こえてくる。
「もしもし、栗男?」
「ああ、母さん。元気にしてる?」
「うん、元気だよ。栗男こそ、ちゃんとご飯は食べてる?」
他愛のない会話がしばらく続く。
仕事のこと、健康のこと。
昔と何も変わらない、母親の無償の愛情が電話越しにじんわりと伝わってきた。
「それでさ、今年の夏、久しぶりにそっちに帰ろうかと思って」
「まあ、本当? 楽しみに待ってるからね」
母親が心から喜んでいるのが手に取るように分かった。
その時、栗男の頭にある一つの考えがまるで天啓のようにふと浮かぶ。
母親の尻は一体どんな感触なのだろうか。
自分をこの世に産み落としたあの体を犯したら、一体どんな気持ちになるのだろう。
我知らず、口の端に酷薄な笑みが浮かぶ。
(了)