限界社畜OLがロリになれる身体を手に入れたので、とりあえずショタを監禁する夢を果たすことにします。 作:ひざぎ
◇
「……本当?」
好青年だと思っていた彼が吐き出した言葉を、警察は訝しいように聞いてくる。当然だよなって思う。そりゃあこの状況的にその嘘を信じられるか、というと微妙なものでもある。
それはそれとして、目の前にいるお兄さんが呟いた嘘はさも当然の事実のようにも語られている。警察官はその言葉を次第にお兄さんではなく、私自身に問いかけるようにした。確かにその視線は私の目を見ていた。
……え? いや、どうしよ。
確実に他人でしかないお兄さん。先ほど並べられた言葉を嘘だ、と言ってしまえば、途端にお兄さんは犯罪者になってしまう。彼が今どのような人生を送っているのかは知る由もないけれど、その人生を終わらせることになる。
泣いている少女に声をかけ、その上でまた泣かれてしまっている。さらには警察官にその現場を目撃され、しかも警察官に対して当然のように嘘を並び立てている。
そんな状況を、そんな事実を警察官に伝えていいものなのだろうか。
……いや、けれどなぁ。
状況的に、お兄さんは嘘を説明しなければいけない立場にある、と考えれば道理はある。ただ、それでも警察官という正義の立場でしかない人間に対して、当然のように嘘をついている彼の振舞いは些か怖い。
わかる、わかるよ? もし私がショタに声をかけて、その上で同じような状況になったら嘘をつくかもしれない。……いや、その前に相手が男の人だったら挙動不審になって「へ、へへ、きょ、今日もいい天気でござんすね、ひひひ」とか、そんな反応をしてしまうのが九割だと思う。……ちなみにあと一割は「はい、私がやりました」と自首をするパターン。
そう考えると、お兄さんは確実に怪しい。不審者、という風に該当されても仕方がない、とそう思えてしまうほどに。
えぇ? こんなイケメンがでござるかぁ?
まあ、不審者にイケメンもそうじゃないかも関係ないっちゃないよね。うん。わかってる、わかってますとも。
ただ、嘘に慣れている彼の言葉、それに便乗するように私は頷いていいのだろうか。それともきちんと警察官に伝えるべきなのだろうか──。
「──う、うん……」
……結局、私は警察官の言葉にそう頷いた。
いろいろと脳裏に過ったことがあったから、とりあえずそう頷くことしかできなかった。
◇
だってさあ、もしこの好青年のお兄さんが不審者だったとしてもさ、同じ穴の貉でしかないじゃないですか。私だってショタコンだし、その上でお兄さんもロリコン(いや、まだ確定したわけじゃないんだけども)だったら、その人間を庇わない、というのはなんとなく道理に反する気がするじゃん。
同類だと思ったら、なんとなく救いたくなってしまう。いや、私だったらショタに声をかける勇気なんてないし、大人のまま誘拐拉致監禁なんてできないんだけどさ。でも、でもなんか納得がいかないじゃない?
そんな言い訳を心の中で並べながら、私は警察官に向き直って、さも妹のように振舞ってみる。自然とお兄さんから伸ばされていた手をつなぐようにして、マジで妹のように。
きっと、私も兄とかいればこういう風に手をつないだのかなぁ。いないから知らんけど。
「いやー、すいませんね。こういうご時世ですから」
警察官は私の反応に納得したのだろう。帽子を取ってこちらに頭を下げてくる。「わかってはいるんですけどねぇ、通報があったら動かないわけにもいかないので」と言い訳のように言葉を並べているが、実際それで動かなかったら大問題だから本当に仕方がないんだろう。
お兄さんも同様に頭を丁寧に下げながら「そうですよねぇ」と相槌を打っていく。
「最近怖いですもんね、不審者とか」
いや、お前だよお前(予測)(推理)(ほぼ九割)(おそらく)(多分)(確信)。
まあ、そんなツッコミを口から吐き出すことなんてできず、私もお兄さんに続くように頭を下げた。
そんな私をお兄さんは撫でていく。まるで本当に妹みたいに。
え、ヤリチン? ヤリチンですかぁ? ……ロリに対しての行動が的確過ぎでは? それはそれとしてロリに対してヤリチンがいたらやばすぎるな。うん、あんまり考えないようにしとこ。
「ま、とりあえず確認はとれたのでもう大丈夫ですよ。お手数をおかけしました。お気をつけてお帰りください」
警察官はそう言いながら、再び頭を下げた後に公園から去っていく。
とりあえず一難は去ったな、とそう思うけれど──。
「──いろいろごめんね。そしてありがとうね。きっとたくさん言いたいことがあるだろうけれど、それは後で話すから」
お兄さんはそう言いながら、私とつないでいる手を引くようにする。
え、え、これでもう終わりじゃないんすか。終わりであってくれよ。例え童顔で好青年でショタっぽい要素を兼ね備えていたとしても、流石におっさんにこの身体の処女はやれんが? ……いや、大人の方でも処女だったわ。……どうでもいいかそんな話。
ともかく、私は戸惑うような声、息を吐き出してみる。え、あ、と確実にこちらが困惑していることが理解できるような声音。割と演技ではなく自然に声は漏れていき、信憑性については高いような気がする。
それでも、その足は止まらない。
──え、え? マジでこれ、誘拐、というか拉致になるんじゃないの?
そんな不安が渦巻いたけれど、それでも私はそれ以上に抵抗する声を出せなかった。
私だって、これ以上面倒ごとに巻き込まれることが怖かったから(目前のお兄さんという面倒ごとについては考えないこととする)。
◇
「ええと、迷惑をかけちゃったお詫びはケーキでいいかな? それ以外だとシュークリームとか買い置きしていたような気がするけれど……」
「え、あ、あ、そ、その……」
そうしてたどり着いたのは、ひとつの一軒家である。
表札は暗がりにあったからわからなかったけれど、それでもお兄さんが独りで暮らしているようなアパートに連れていかれるのではなく、どこかの誰かも住んでいそうな二階建ての一軒家に連れていかれた。
……いやあ、これじゃあマジで誘拐じゃない?
そう訝しんでしまう自分もいるけれど、それでもなんとなくお兄さんの雰囲気から感じることは、別に悪いことをしようとしている気はなさそうなところ。
飄々としている雰囲気からそんなことを感じ取っているけれど、実際無理に手を引いてきたわけでもないし、そして家に連れ込まれてから無理矢理ベッドルームに押し倒されているわけでもない。ただ私を労わるため、というそんな雰囲気をお兄さんは醸し出しながら声をかけてきているから、なんというか訝しい気持ち半分、どうせ大したことじゃないだろう、という現実感が半分あった。
「別にどっちも食べたいって言うならどっちも食べていいよ。……あ、でも弟に怒られちゃうかな」
──弟、だと……?
「お、弟さん、いるんですか……?」
やばい。こういう時に限ってスイッチが切り替わって、幼気でかわいいだけの少女から、ショタコンOLの気が表に出てきてしまう。
よくない、よくないとはわかっているんだけれどもね? ほら、品定めっていうか、さ。ほら。……もしかしたらこのお兄さんとの関わりを通じて、何か運命のようなショタ出会いをするかもしれないじゃん? しかも私は学校に行けないわけだし、その上で関わるショタが増えるってこれはめちゃくちゃ得でしかないわけで……。
「ん、いるよー。……まあ、そうか。こんなおじさんと話しているよりかは同年代の子とおしゃべりしたいよね」
「──いやマ」ジでそうなんですよ、って反射的に返しそうになったけれど、三文字くらいでなんとか止められた。
「そ、ソンナコトナイデスヨ? ……え、ええと、弟さんって、私と同じくらいなんですか……?」
片言になってしまう自分がいる。おい、そこでショタコンのキモさを出すな私。お前今は少女なんだぞ! 少女でしかないんだからな!
「うーん、そうだねぇ。……ちょっと待っててね」
お兄さんはそう言いながら、かたかたと食器とカトラリーを用意して、冷蔵庫からケーキを取り出していく。
そんな作業をしながら──。
「──おーい! ショウタぁ!」
──今、翔太って言った?
私はお兄さんから聞こえた名前に、再び鼓動が動き出す感覚を覚えずにはいられなかった。いや、動いてるんですけどね。
次回あたりにエロが書ければいいな、って思うけど恐らく次々回からが本番です。
それにしても主人公ェ……。