※この作品はR-18です。

よう性   作:崇大

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非日常の始まり⓪

数学の授業中、教室の一角では数人の女子グループが既に放課後の予定で盛り上がっていた。

 

「ねぇ、新しくオープンした駅前のカフェ、行ってみない?」

「いいね!行こう!」

「私も行きたい!」

「私も!」

「あ、でもごめん。今日は部活があるんだよね。パスする。」

「そっか~、残念。また今度一緒に行こう?」

「うん!じゃあ、部活頑張ってね!」

「ありがとう!みんなも楽しんで!」

 

 そんな賑やかな声が響く中、ふと視線を横に向けると堀北さんが目に入った。堀北さんは教室の喧騒には気づかないようで、ただじっと黒板を見つめている。その静かな佇まいが不思議と目を引いた。

 

 ……気が付けば僕の意識は堀北さんに向かい、クラスメイトたちの会話も耳に入らなくなっていた。そして、ずっと堀北さんの横顔を見つめたまま――当の堀北さん自身に気づかれてしまった。

 

「何か?」

 

 堀北さんと目が合い、不意に声をかけられて動揺する。

 

「あ、いや……その……」

 

 頭の中が真っ白になる。視線に気づかれただけでも恥ずかしいのに、変な誤解を持たれたらどうしよう――そう考えて口ごもる僕。

 

「私の顔になにかついてる?」

 

 そう尋ねられると、なんとなしに笑う余裕を感じる。それでも誤魔化す余地さえ見つけられず、素直な想いが口をついて出た。

 

「いや、あのさ……堀北さんって、美人だよねって……思っただけ。」

 

 しまった――そう思った時にはもう遅かった。この不用意な発言が自らを追い詰めることになろうとは。

 

「あっ、ごめん!変なこと言っちゃった!」

 

 必死に謝罪の言葉を重ねていると、堀北さんは少し小首を傾げながら笑みを浮かべた。

 

「別に謝らなくてもいいわ。」

 

 拍子抜けするくらいあっさりした返事。それでも自分自身の発言が頭から離れず、恥ずかしさでいっぱいだった。

 

 気まずさを振り払おうと授業内容に集中しようとした矢先、不意に堀北さんが再びこちらを向き直った。

 

「私って、美人?」

 

 突然の質問に動揺しつつも、嘘をつくこともできず結局答える。

 

「えっと……うん。」

 

 答えた瞬間、自分の心臓が跳ねてしまった。しかし堀北さんは表情を崩さず、さらに問い詰めてくる。

 

「それじゃあ、私のこと見惚れてたわけ?」

 

「え?いや、それは……別に……そんなことないけど。」

 

 確かに見つめてしまっていたことは否定できない。でもそれはぼんやりしていただけで、本当に「見惚れていた」わけじゃない――そう自分なりに弁解していた。

 

 そんな自己弁護も虚しくチャイムの音が教室中に響き渡り、授業終了を告げた。どこか釈然としないまま教科書を閉じて立ち上がる。ひっそりと訪れた気まずさを引きずりながら、こうして2時間目の数学の授業は終わった。

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