主に凪さんが『死ねず』腹や胸を串刺しにされ拷問される展開がメイン。生存エンド。

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荒砥凪、谷川瑠璃リョナ短編

「凪さん!見て下さいこれ!ゴーレム?岩の巨人?とにかく大発見ですよこれは!」

瑠璃と凪は、ある山の採掘場跡に来ていた。

そこは近隣の住民から「絶対に近づいては行けない場所」と言われていた。曰く「呪われた物が眠っている」「悪神が封印されている」と。

瑠璃がその場所をネットで見つけて「行きたい」と言ったとき、凪は反対した。凪もその場所は知っていて悪い噂も聞いていたから。しかし瑠璃が「立ち入り禁止になってないから、行けるはず。」と、1人でも行きそうだったため同行することにした。

採掘場跡最奥部にそれはあった。全長3mはありそうな岩の巨人。異様に指先が長く、その先端は尖っていた。しかし、瑠璃は危険性を感じず驚喜する。

凪は「・・・ありえない。」と思った。

明らかに人工物。しかし、人類史上こんな創作物はどの歴史にも、どの文明にも、あったためしがない。何なんだこれは。

凪が岩の巨人を観察し、その顔を見たとき、

巨人の目が動いていた。

明らかな殺気。いつのまにか、巨人の片腕が動いていた。そして巨人の指の一つが瑠璃に狙いを定めていて、発射された。

「瑠璃!危ない!」凪はとっさに飛び跳ね瑠璃を抱きしめ、そして、

ドズッ!

「ぐぅっ!」

巨人の指は凪の逞しい右太ももを貫いていた。

瑠璃は何が起きたのか理解できなかった。しかし、凪が自分を抱きしめて倒れている。そして、その足は太い岩が突き刺さっており、おびただしい出血をしている。

瑠璃は理解した。これは自分のせいだ。自分が凪さんをこんな所に連れてきたから、凪さんは・・・。

涙で顔をクシャクシャにする瑠璃。そんな瑠璃に凪は

「泣くな、瑠璃。・・・私を置いて逃げるんだ・・・。」

「嫌・・・。凪さんを置いていくなんて出来ない・・・。」

「瑠璃!」

凪が一喝した。

「私はもう足手まといだ。逃げろ。君だけでも。」

瑠璃を説得しようとする凪。その背後で巨人が狙いを定めているのに凪は気がつかなかった。

ドチュ!

「ぐ!んうぅぅぅぅぅ!!!!」

今度は凪の左太ももが貫かれた。

「あ・・・・ああ・・・・」

瑠璃の頭は真っ白になっていた。

「・・・瑠璃・・・。しっかりするんだ・・・。お願いだから、逃げるんだ・・・。」

凪は激痛に耐えながら瑠璃を励ます。しかし瑠璃は動かなかった。動けなかった。

「・・・凪さん・・・。私の足・・・動かない・・・。震えて動かないよ・・・。」

瑠璃の身体は恐怖で硬直していた。

背後で岩が崩れる音がした。巨人が動き始めていた。

凪は思った。巨人の狙いは私たち。瑠璃を逃がさなければ殺される。それだけはだめだ。

凪は両脚に力を込めた。ブシッ!ブシュッ!という音がして激しく出血する。

(・・・私の脚、動け!うごけぇぇぇぇぇぇ!!!!!)

凪はゆっくりと立ち上がった。自分でも信じられなかった。そして瑠璃を脇に抱えて逃げた。

走るどころか歩くことも出来ない傷の筈なのに。

かまわない。考えるのは後だ。凪は瑠璃を抱えて全速力で巨人の前から逃走した。

 

採掘場跡の真ん中程。

「・・・凪さん。ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・。」

瑠璃はへたり込んで泣いていた。

そんな瑠璃の頭を凪は優しく撫でて

「いいんだ。あんな状況で咄嗟に逃げれる方がどうかしている。」

と慰めた。そして、

「瑠璃。怖いかもしれないが、私の脚を見てくれ。」と言った。

凪の両太ももの大部分が巨人の指で貫かれていた。凪のジーンズ全体が血で赤黒く染まっている。

凪が自分の状況を説明する。

「私の太もものほとんどの部分が無くなっている。筋肉も骨も潰れて無くなった。でも、私は脚を動かすことが出来る。何故か?岩が一体化しているのさ。私の脚と。」

瑠璃は震えながら聞いていた。何故この人はこんなに冷静に話すことが出来るのだろう。

「悪趣味な仕組みだ。今でも血は大量に出ている。痛みもある。でもこの岩は絶えず私の脚を再生させている。血を増血させている。死なない程度に。死なせない為に。」

「・・・凪さん、外で助けを呼んでお医者さんに見せて貰えば治るんですよね?」

「無理だ。この岩のような仕組みは人間では作れない。治す方法もない。両脚切断するしかない。」

「・・・なんで、なんでそんなに落ち着いて話しているんですか!私のせいで!私のせいで凪さんが!」

「瑠璃のせいじゃないよ。こんなこと誰にも予想できない。後、私が落ち着いている理由は、これは瑠璃にも覚えていて欲しいことだけど、採掘には危険が伴う。万が一、死ぬこともある。私はいつでも死ぬ覚悟で研究に臨んできた。私は瑠璃を安全だと思える場所にしか連れて行かないけど、それでも危険はゼロじゃない。忘れないで欲しい。

もう私は、二度と瑠璃と一緒に鉱物採集に行くことが出来ないからね。」

瑠璃は大声で泣いた。そんな瑠璃の頭を凪は再び優しく撫でた。

その時、

採掘場奥から足音が聞こえてきた。

巨人だ。

凪は瑠璃に話しかける。

「瑠璃、すまないが君のスマートフォンを貸してくれないか。私のはバックに入れたまま、この奥に置きっぱなしでね。」

瑠璃はスマホを渡した。物凄い勢いで何か文章を入力する凪。そして瑠璃にスマホを返して、

「瑠璃、君は採掘場から出て電波が届く所になったら、私が打ったメールを大学へ送信して欲しい。アドレスも入力してあるから、送信を押すだけだ。大学にはもしもの時のために君のアドレスも登録してあるから悪戯とかに間違われることはない。その後、君は人気のある所を探して助けを呼ぶんだ。」

瑠璃はメールの文章を読んだ。大体の内容は、こうだった。

「〇〇採掘場の奥は有害物質で汚染されている。直ちに公的機関に連絡し封鎖要請願いたい。」

「〇〇採掘場の入り口は誰にも入れないようにすべし。出来れば爆破し穴を埋めることが望ましい。」

そして瑠璃は最後の文章で心臓が凍る気持ちになった。

「荒砥凪は〇〇採掘場の奥で有害物質に汚染され死亡した。遺体捜索は危険かつ困難であり捜索は行わないこと。」

瑠璃は、

「・・・なんで?凪さん生きてるじゃん・・・。凪さん生きてるじゃん!」

半狂乱で叫んだ。凪は無言だった。

「生きようとしてよ!私がこれから凪さんの足になるから!一生凪さんのお世話をするから!お願いだから、一緒に帰ろうよぉ!」

凪は微笑みながら

「それは嬉しいなぁ。でもね、瑠璃。あの巨人を放って帰ったら誰かが犠牲になるだろう。あの巨人に付けられた傷は治せない。犠牲者は増える一方だ。私は既に傷を付けられた。足止めするのに私以外の適任はいない。」

そう言って凪は立ち上がる。元々出血が続いていた太ももからブシュブシュと血が噴き出す。痛くない筈がない。それでも凪は採掘場の奥を見据えていた。

巨人の姿が見えてきた。その腕は既に標的を定めていて、その先は

「瑠璃!」

瑠璃も巨人の殺気に気がついていた。しかし動けず恐怖で目を瞑ってしまった。

 

瑠璃は目を開いた。目の前10センチ先には巨人の指の先端があった。その先には、いつも自分の前にいた憧れの背中があった。その背中は、血まみれだった。

凪は、自分の両手と自らの肉体で巨人の指から瑠璃を守っていた。

巨人の指は凪の鳩尾を突き破り内臓を潰し背中を貫通していた。

にもかかわらず凪は後ろを振り向き、口から血を流しながら、

「・・・瑠璃には当たらなかったようだね・・・。良かった・・・。」

と言いながら慈しむような微笑みをした。

「いやだ・・・。凪さん・・・。その傷・・・。死んじゃう・・・。」

「・・・あぁ致命傷だ。本来ならな。だがやはり私を死なせないように出来ているらしい・・・。本当に悪趣味な仕掛けだよコイツは。」

凪の肉体には激痛が走っている。それでも平静を装っているのは瑠璃を逃げるようにさせるため。自分が少しでも苦しむ姿を見せたら彼女は留まるだろう。優しい子だから。逃がさないといけない。瑠璃だけでも。

「瑠璃。君はさっき私が言ったとおりに動くんだ。コイツは私が足止めするから。」

「いや・・・、凪さん・・・。」

「さっさと行け!」

瑠璃は入り口の方に走っていった。

凪は(・・・これでいい。)と思った。瑠璃に対して怒鳴ってしまい罪悪感があったが、生きてくれればそれでいい。後は、こいつを足止めするだけだ。恐らく嬲り者にされるだろうが、封鎖されるまで時間が稼げるならそれでいい。

「・・・ハンマー、置き忘れなければ良かったな。でも仕方ない。あの時は逃げるので精一杯だったから・・・。」

そう言いながら凪は巨人にパンチを見舞った。一発で凪の拳の皮はむけ血がにじむ。構わず連続してパンチを見舞う。何発目かで凪の拳の骨が砕けた音がした。でも構わない。せめてコイツに一矢報わないと気が済まない。

巨人は凪の攻撃に対して何の反応もせず、凪の腹に突き刺さった指を更に奥に押し込んだ。

ズギュッ!

「ごはっ!」

吐血し、凪の攻撃は止まった。

「・・・ぐっ!はぁはぁはぁ・・・。」

凪の腕はだらしなく垂れ下がった。もう抵抗する力も無い。両手の骨は完全に砕けている。

巨人は凪の両腕を掴み吊り上げた。そして凪の両腕を片手で掴み直すと、残った片手で凪の腹に突き刺さった指を捻り始めた。

「うぐっ!ああああああああああああああ!」

信じられないくらいの痛みに凪は思わず叫び声を上げる。そして「しまった。」と思った。

(私が叫び声を上げたら瑠璃が戻ってきてしまう。・・・心配して戻ってきてしまう。)

巨人は数秒捻るのをやめた。その後凪の顔を確認し、再び凪の腹を捻るのを再開する。

(・・・コイツ・・・。)

凪は巨人の魂胆がわかった。ゲスな奴め。

凪は「わざと」小さな声で話す。

「・・・普通なら気絶するほどの痛みなんだろうが、それも出来ない。これもお前の力なんだろう?相手を嬲り者にするために。そしてお前の狙いはもう一つ。私に叫び声を上げさせること。瑠璃か、誰かを誘い込むために。更に犠牲者を増やすために。・・・反吐が出る。私はもう絶対に叫ばない。お前の思い通りになんてならない。」

巨人は吊り下げられた状態の凪の腹を更に掻き回し始めた。刺さった指を前後に出し入れしてきた。

グチャ!グジュッ!ズバッ!ブチィ!ズブッ!

「・・・・・・・・ツ。・・・・・・・・・。ツ・・・・・・・・・・。」

歯をギリギリと噛みしめて耐える凪。その口からは血が流れ続ける。

巨人の動きが止まった。凪の様子を見ているのだろうか。

凪は吊り下げられた状態で荒い息をしながら、

「ぺっ!」

巨人の顔に唾を吐きかけた。そのほとんどが血であるが。

巨人はその態度を侮辱だとわかったのか、更に激しく指で凪の腹を掻き回してきた。

グジュグジュグジュズボグチャビチャグチャズブズブズブズチャグチャズバッ!

「・・・・・・・。ふ・・・・・。・・・・・・・。あ・・・・・。・・・・・・。く・・・・・。・・・・・・・。」

流石にやや声が出てしまう凪。それでもそれは叫び声には遠いか細い声で。

凪の肉体から大量の血が流れ出る。その量は明らかに凪の身体の血液より多い。やはり凪を痛めつけながら回復させている。血を作っている。死なせないために。

(・・・叫んで・・・やるものか・・・。この先長い間嬲り者にされようと・・・絶対に・・・コイツの思い通りにはならない!)

巨人は凪を拷問しながら採掘場の奥に戻っていった。

 

採掘場跡最奥部。

凪は巨人に投げ捨てられた。

凪は仰向けになって動けなくなっていた。太ももと腹を貫通している巨人の指のため、身体がやや宙に浮いているような状態。

凪は顔を傾け、血を吐く。蛇口の水のように凪の口から血がこぼれ出る。

(・・・フッ、まるで漫画の描写のようだな・・・。)

凪は心の中で自嘲気味に笑った。

顔を真正面に向けると、巨人が指先を近づけていた。凪の右胸に。

ズボォ!

凪の右胸が貫かれた。凪の豊満な乳房が潰れ、肋骨が砕け、肺が破裂し、背中まで貫通した。

「う・・・・・。・・・・・。く・・・・・。・・・・・・。ん・・・・・。・・・・・・・。」

凪はそれでも叫ばなかった。全身を激しい苦痛が苛む。肺が潰れて息が出来ない。それでも凪の心は折れなかった。

巨人の指が今度は凪の左胸を狙った。

ドズゥッ!

凪の左胸が貫かれた。心臓が完全に潰れた。それでも凪は自分の身体を血液が循環しているのを感じる。巨人の指が心臓の代わりに血液を動かしているのだろう。

だが痛い。痛すぎる。想定以上の苦痛だった。激痛で脳が焼き切れそうだ。

絶叫したい誘惑にかられる。叫びたい。そうすれば少しは苦痛が紛れるから。

でもダメだ。瑠璃が来る。万が一瑠璃が来て巨人の手にかかれば、それは今の苦痛よりも辛い。自分の心は壊れるだろう。耐えなければ。耐えなければ。

そんな時、巨人が近づいてきた。巨人はしゃがみ、凪の豊満な胸を貫いている二つの指を握りしめた。

怖気がした。これは耐えられないと思った。しかし、凪はその思考を遮った。嬲り者にされると覚悟しておいて数時間で折れるのか。負けない。負けてなるものか。

グジュ!ジュバ!ブチュ!ズボッ!バキッ!グチャ!

「んふ・・・・。・・・・・・。はぁ・・・・・・・・。・・・・・・・・。んく・・・・・・・。・・・・。あは・・・・・・・・。」

巨人は凪の胸を貫いている指で、胸を掻き回してきた。まるで凪の豊かな胸を揉むように。

(・・・駄目だ・・・。激しすぎる・・・。・・・もう・・・持たない・・・。)

そして、

「がぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ぎぃっ!ぐふっ!ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!ぐぅっ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ついに凪は叫んだ。大声で。もう何も考えられなかった。ただこの痛みから少しでも楽になりたい。それだけで叫んでいた。

巨人は変わらず凪の両胸を掻き回し続ける。凪の叫びはいつまでも続いた。

 

採掘場跡入口付近。

この辺で電波が通じるようになったので、瑠璃はメールの送信ボタンを押した。

これで、凪さんは死んだ扱いになる。私のせいで。私がこんな所に行きたいと言ったせいで。

凪さんは人気のある場所に行けと行っていた。車道から一キロか二キロ歩いたところにここはあった。元の道を戻って道を進めば人気のある場所に出るのだろう。でも・・・

瑠璃は体育座りをして膝に顔をくっつけていた。何もしたくなかった。

「・・・凪さん。私、凪さんがいないと何も出来ないよ。何処にも行けないよ。凪さん・・・。」

瑠璃はずっと座っていた。長い時間ずっと。

そして、採掘場跡から凪の声が聞こえた。小さな声。苦しんでいる声。

「凪さん!」

瑠璃は採掘場跡に戻っていった。

 

採掘場跡の真ん中程。

凪と瑠璃が分かれた場所。

ここに来るまでに凪の絶叫はどんどん大きくなっていった。身を切られる思いだった。

そしてここには、おびただしい量の血があった。あまりに濃すぎる血の臭い。

「おえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

瑠璃は血の生臭さに耐えきれず吐いた。あらかた吐いて落ち着いたところで

(これは凪さんが私のせいで流した血なんだ。)と気づき吐いたことを恥じた。

凪の絶叫はまだ続いている。奥から聞こえる。べっとりと血の跡が続いている。

瑠璃は奥に進んだ。

自分には何も出来ないとわかってはいたけれど。

 

採掘場跡最奥部付近。

凪の絶叫が小さくなって、聞こえなくなった。

「凪さん!」

瑠璃は駆け出していた。

 

採掘場跡最奥部。

凪は横向きになって入口付近を見つめていた。

意識はあった。痛みもあった。でも、その目は光を失っていた。

凪は時々「・・・あ・・・、・・・あ・・・。」と言うだけでほとんど痛みに反応しなくなった。巨人は反応しなくなった凪を嬲るのに飽きたのか、放置して入口付近を見つめていた。そして、

「凪さん!」

瑠璃が入ってきた。

瑠璃は一目で凪を見つめて、凪の両胸が新たに貫かれているのを見て、

「・・・凪さん。凪さん!」

凪の元へ駆け出していった。

(・・・る・・・り・・・?)

凪の停止していた思考が再び動き出した。

(・・・来る・・・な・・・。来るんじゃ・・・ない・・・。)

凪は砕けた片手を突き出して凪を止めようとしたが、声が出なかった。

今度は叫ばなければいけないのに声が出なかった。何て皮肉な。

凪は巨人の方を見つめた。巨人は既に瑠璃に狙いを定めていた。

「・・・や・・・め・・・て・・・。」

凪のか細い声を無視して指は発射され、それは凪に近づいていた瑠璃の胸の中心を貫いた。

瑠璃の走りが止まった。瑠璃は両膝をついて、自分の胸を貫いている指を見つめていた。

「い・・・や・・・、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

凪はやっと叫ぶことが出来た。全てが遅かったが。

そんな凪の方を見つめて瑠璃は笑って

「・・・凪さん。私、痛くないよ・・・。平気だよ・・・。ゴボッ!だって私・・・元気なことだけが取り柄だから・・・。」

血を吐きながら言った。

(・・・嘘だ。痛いんだろ?苦しいんだろ?瑠璃。私を恨んでくれ。呪ってくれ。お願いだから。)

凪は砕けた片手を瑠璃の方向に向けながら、そう思っていた。

「・・・・・・・えっ?」

手が砕けたまま?何故だ?巨人の指は体を再生させるはずなのに。

凪は気づいた。そうか、巨人の指は自分で傷つけたものしか治せないのか。

凪は全身から血しぶきをあげながら立ち上がった。巨人の方を見つめた。巨人は瑠璃を嬲るのには興味ないのか動いていなかった。良かった。瑠璃をこれ以上苦しませずにすむ。凪はよろよろと歩きながら、置いていった自分のバッグに近づき中を開けて、アウトドアナイフを取り出した。そして瑠璃の方へ向かっていった。

(早く気づくべきだった・・・。そうすれば私は嬲られる事の限界前に死んで、瑠璃はここに来ずに済んだのに・・・。)

瑠璃は近づいてきた凪に微笑んで、

「・・・凪さん、メール送ったよ・・・。もう、ここには誰も来ないよ・・・。私、凪さんとずっとここにいるよ・・・。」

凪は砕けてボロボロの手で瑠璃の頭を撫でて「ありがとう」と言い、しゃがみ込んで瑠璃と同じ目線に立ち、瑠璃の首元にアウトドアナイフを近づけ、

「瑠璃、君を楽にしてあげる方法はこれしかないんだ。・・・気づかなかった私を憎んでくれ・・・。」

そして、

「君を、殺す。」

と言った。

 

凪は瑠璃に、巨人の指は巨人が傷つけたものしか治せないことを説明し、

「・・・瑠璃・・・、君はもう助からない・・・。君を苦しみから解放するためにはこれしかない。・・・君の首を斬る。痛いけれど、こんな苦しみよりマシな筈だから・・・。」

凪の言葉に対して

「・・・凪さんは、どうするの?」

と瑠璃は聞いた。

「私は瑠璃を殺した後で、自分の首を斬る。・・・いや、迷ってる。正直ここで巨人に嬲られ続けた方がいいと思ってる。・・・私は瑠璃を殺した罪人だから・・・。」

凪はあれほど嬲り者にされても流さなかった涙を流しながら、

「・・・私を恨んでくれ、瑠璃。「絶対に許さない」と言ってくれ。そうすれば、嬲り者にされても瑠璃の言葉を思い出して、これは罰なんだと耐えられる。お願いだから罵ってくれ・・・。」

瑠璃は、凪の頭を撫でた。優しく。

「・・・え・・・。」

「凪さんって本当に優しいよね・・・。で、ちょっと抜けてるところあるよね。そんな凪さんを私可愛いと思ってた。凪さんの頭を撫でたいと思ってた。・・・最後に叶えられて良かったよ。」

唖然としている凪。瑠璃はナイフを握った凪の手を取って、

「・・・凪さんの罪は私が背負うから。」

瑠璃は、凪の手からナイフを奪って、凪の喉を切り裂いた。

「・・・かっ・・・。る・・・り・・・?」

凪の視界が急速に暗くなってくる。そんな凪が最後に見た光景は自分の首元にナイフを当てた瑠璃の笑顔だった。

「大好きだよ、凪さん。」

瑠璃は自らの喉を掻き切った。二人が倒れたのはほぼ同時で、二人の体から出た血は混ざり合って一つになって採掘場跡を流れていった。

 

凪が目覚めたのは光に包まれた空間だった。

自分の体を見た。巨人の指はない。体の痛みもない。ここは死後の世界なのだろうか。

「死後の世界ではない。君たちは肉体的には死亡したが、君たちが言う魂というものを拾い上げてこの空間に移したのだ。」

聞いたことのない声。

「・・・誰だ。」

「私は君たちとは別の世界にいる者だ。最初に謝罪したい。すまない。君たちが巨人と呼んだもの、あれは私たちの世界の古代の兵器だ。私たちは、ああいった負の遺産を探していた。君たちがアレに近づいたことで、アレが動き出し私たちが探知することが出来た。私たちがたどり着いたとき、君たちは自決していたが。」

凪は怒りがふつふつと沸いていた。ふざけるな!勝手なことばかり並べて。それに自決だと?瑠璃を、あの優しい瑠璃の手を血に染めて!

「すまない。君たちは復元させる。要望も何でも聞こう。」

凪は矢継ぎ早に喋った。こんな奴とは一秒でも早く離れたかった。巨人を回収しろ。もし地球上に同じモノがあるとしたら全て回収しろ。そしてその痕跡を消せ。人々の噂話やネットのデータ等全て消せ。人々の記憶からも消せ。特に瑠璃からはコレに関わる記憶を全て消せ。

ただし私の記憶は残せ。私はお前達を一生許さない。その憎しみを忘れないために。

「わかった。他に要望は?」

まるで自分の憎しみが通じていない相手に対して凪は最後にこう言った。

「二度と私たちの前に現れるな。」

 

「今日こそでっかい宝石見つけましょうね!凪さん!」

瑠璃が凪の後ろをついて行きながら無邪気に話す。

あの採掘場跡は跡形も無く消えていた。どの文献にも残っていない。人々の噂話もない。ネットの記録もなかったことになっている。一番肝心な瑠璃の記憶からは確実に消えている。

それでいいと思った。特に最後、瑠璃が私を殺したこと。アレは確実に憶えていないで欲しい。アレは私の罪だ。背負うなら私が、

「・・・凪さん、荷物重いですか?疲れてませんか?私が背負いますか?」

凪の心臓の鼓動が一気に早まる。

「あ、あはは・・・。疲れて見えるか・・・。そうだな、研究に没頭しすぎてるかもしれない・・・。」

「ハンマー持ちますよ!ハンマー!」

「ああ、ありがとう。」

凪は瑠璃にハンマーを渡した。瑠璃はすぐにへばるだろうが、それまでの間でも軽くなって気分がいい。

「・・・本当に、ありがとう。」

凪は独り言を呟いた。

瑠璃はハンマーを背負って1分でへばっていた。でも背負うと言ったんだからまだ頑張らないといけない。それに凪さんの背中、いつも憧れて見ていたこの背中。早くこの人のようになりたいから。頑張らないと、と思った。


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