あの耳朗との訓練の日からすでに一週間が経っていた。俺は平然とで学校に登校し、授業を受けている。耳朗も学校に来てはいるが、様子は以前とはまるで違う。傍目から見ても俺をちらちらと見過ぎているし、誰かに話しかけられても返事が遅れたりとうわの空である。
(くくく......そろそろ限界だろう..耳朗)
俺はあの日以来あえて耳朗との接触を絶ってきた、理由は簡単、アイツを最大限焦らすためだ、強引に堕とすのではなく、自らがこの俺、淫羅神楽《いんらかぐら》に惚れ込んでいると自覚させ、焦らし、焦らし、あちらから接触してきた所を"捕食"する。耳朗のような自分の魅力に自信がないやつを堕とすのに最も適した方法だ。
「なんかさ、最近耳朗ちゃんの様子おかしくない?」
「んね、顔ずっと真っ赤だし、熱でもあるのかな....心配」
クラスのやつらも噂している。俺の個性、『感度操作』の効果は一時的なものだが、何度も食らうと身体がその感度に慣れてしまい、その人物本来の感度が高くなる。耳朗はその典型だ。あの訓練以来感度が抜群に高くなってしまっているのだろう、毎晩自慰をしてはいるが、俺を考えるとすぐ下着を濡らしてしまう。そんなところだろう。
(さて.......頃合いか......)
俺はこれから起こるであろうことに思わず口角を上げてしまうのだった。
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放課後、夕暮れに染まる教室の中には、耳朗と淫羅《いんら》の二人だけだった。淫羅は帰り支度をしているようで、耳朗はもどかしげにその背中を見ている。その目は恋する乙女のそれであった。
何分か経って、淫羅は帰り支度が終わったようで、教室から出ようとドアの引き戸に手をかけた、その時。
「あ、あのっ」
耳朗が少し震えた声で淫羅に声をかけた。淫羅が立ち止まって振り向く。
「あれ、耳朗いたのか?もう教室には俺一人だと思ってたよ」
「う、うん...そう、淫羅、あの、さ.......」
「ん?なんだ?」
「.........えっと、その」
耳朗どこか斜め下を見ながらもじもじしている様子だった。顔を赤らめ、照れ隠しに耳たぶのイヤホンジャックを指でくるくる回している。
「どうした?耳朗、俺に用なんだろう?」
対して淫羅は何の緊張もない様子である、それが余計に耳朗を恥ずかしくさせた。
「....えっと、さ、最近ウチさ......皆から見て....ちょっと様子が変じゃん?」
「....................」
「.......自分でも分かってんだよ......自分がおかしくなってること.......」
淫羅は何故か黙っている。
「あの日からなんだよ......あの日、アンタと格闘訓練で組んだ日から、さ....ずっと胸がドキドキしてて.....♡興奮が止まらなくて.........♡なんでなんだろうって、考えたらさ.......」
耳朗の呼吸がだんだん荒くなっていき、顔も赤くなっていく。
「アンタなんだよ....,...♡、アンタが、ウチにこんな気持ち..............」
「..................」
「何言ってんだかわかんないよね.........ハハ......ごめん急に....でも、もう我慢できないんだ....♡♡」
淫羅は黙っている。
「あの格闘訓練の日......ウチ、アンタ、アンタに........♡」
「...............」
「—————っアンタにイカされちゃったんだよッッ♡♡♡♡」
耳朗はついに今まで溜め込んでものを発散するように叫んだ。
「アンタのっ、手や、足がっ体に擦れる度にっ!感じてたんだッッ♡♡♡堪えるえるのに必死でっ.....♡我慢しようと思ったけどッ♡最後尻餅ついた時に、衝撃でイっちゃってぇッ.........♡♡♡♡」
淫羅はまだ黙っている
「そっから毎日ッ♡アンタのこと考えてオナニーしてたッ♡♡乳首つねってっ、オマンコ弄ってッ♡♡、喘いでよがってたッ♡何回ヤっても興奮止まんなくてさぁっ♡♡♡学校でもアンタのことばっかり見てて、考えてッ♡♡授業中なのにパンツ濡らしてた........♡♡♡♡」
耳朗の声はどんどん涙ぐんでいく。
「だからっ♡だからさぁっ♡もう限界なんだよっ♡一人でじゃ何回やっても疼きが治らないッ♡だから、ウチとっ♡ウチとっ.........♡♡♡」
耳朗はついに口にする、最後の言葉を、最後の告白を、未だに黙ったままの想い人へ告げる
「——————ウチと、セックスしてください..........っ♡♡♡♡」
.........その告白から、しばらくの無言の時間が流れた。耳朗は両手で顔を覆っている。涙を流しているのだ。小さく嗚咽と泣き声が漏れている。淫羅は何も言わない。
(あぁ........っ♡終わった.....♡♡、変態告白しちゃったぁっ♡♡♡、ウチ、もう終わりだ.......♡♡、学校生活も、ヒーローの夢も何もかも.......終わっちゃったぁ♡♡♡)
「.............うっ、ぐすっ、うっ、うぅ...........ごめん、ごめんっ.....頭おかしいよね、ウチ、........イかれてるよね.......ごめん....こんなこと言ってさ、受け入れてもらえるわけないよね.......うぅ」
耳朗は俯きながら話す、とても淫羅の顔なんか見れなかったのだ。
「...............」
淫羅は黙ったままだった。耳朗の告白の後もじっと黙ったままだった。耳朗はその沈黙がとても怖かった。頭のおかしな変態女として拒絶を受けるのが怖かった。だから顔も見れなかった。そこからさらに何分か経って、沈黙に耐えられなくなった耳朗が言葉を発した瞬間—————
「あの、淫羅—————」
「知ってたよ」
これまでずっと黙っていた淫羅が口を開いた。
「.............え?」
耳朗は思わず淫羅の顔を目を見開いて見た。『知ってたよ』、その言葉の意味を測りかねているのだ。
「うん、だから、知ってたんだよ、俺、耳朗があの日、訓練中に絶頂したことも、そっから俺のことが忘れられなくなったことも」
「......え?...え?え?」
「知ってたよ、全部」
「.......なん、で........?」
「だって、耳朗、わかりやすすぎるんだよ」
淫羅はクスっと笑いながら言った。その言葉に耳朗は顔がポッと赤くなった。
「ん、だけどな耳朗、俺はそのことを見て見ぬふりしてた、踏み込むのが怖くて.....俺の方こそ、ごめん」
「え?いやいやいやっ、そんなっ、おかしいのはウチの方なんだからっ♡」
予想外の告白と逆に謝られたことで耳朗は手を振り慌てる
「だからな......耳朗、お前がそんなことになったのは、俺の責任だ。だから、俺が責任を取る」
「え?それって......」
「お前とセックスする」
「へぇぇえええっ!?♡♡♡」
耳朗はあまりの事態に対応できずにいた。まさかの返事に脳の許容容量を超えてしまった。
「そ、そ、そんなっ♡、そんな、なんでっ.......?♡」
「言ったろう?俺の責任だから———いや、そりゃ建前だな、俺はな耳朗」
「う、うん♡」
淫羅が耳朗の目をまっすぐ見る、耳朗はそれにビクッと体を震わせ身構える
「————あの日、お前が感じてる姿見て、可愛いって思ってた。責任とかじゃない、俺が、お前とヤりたいんだ」
「〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!??♡♡♡♡」
耳朗は体を『ビクンビクンッ♡♡』と震わせぐらっと体を揺らして倒れそうになる。
「っと、大丈夫かっ!?」
「ぅん.......っ♡だい、じょっ.......ぶ♡♡♡」
耳朗の体を淫羅が支える、耳朗は体をガクガクと震わせており、まるで絶頂の後のようだった
「耳朗、お前......」
「うん........♡ウチ、今のでイっちゃったぁ♡♡♡」
「マジかよ.....」
「だって....♡嬉しかったんだもん♡♡♡淫羅がぁ♡ウチと......♡」
涙を流しているぼやけた目と汗ばんだ顔で笑いながら耳朗は言う。それを見て、淫羅は苦笑するのだった
———————————————10分後
「いいか?耳朗」
「........ん、淫羅、もう落ち着いたよ、下着はびちょびちょだけど、まぁ仕方ないね」
「そうか、それじゃあ、耳朗........」
「うん.........シよ?♡」
「え?」
「え?」
一体何を言っているんだと言うような顔で耳朗を見る淫羅と、それに対し同じような顔で淫羅を見る耳朗。
「するって.......ここでか?」
「え....、ここでシないの.....?♡」
「学校だぞ.....」
「いいじゃんか別にぃ♡、誰もいないんだしさぁ♡」
その耳朗の様子を見て、『コイツ思ったより堕ちきってるな』と淫羅は思い、予想以上の仕上がりに心の中で舌舐めずりした。
「いや、やっぱ学校じゃマズイ」
「そっか.,...じゃっ部屋シよう♡」
「あぁ.....ただし、3時間後だ」
「........え?」
耳朗は顔を硬直させる
「今が18時だから.......21時に、俺の部屋に来てくれ、そこでしよう、そんで、その3時間、自慰は禁止だ」
耳朗はしばらく体を固めた後、ばっと勢いよく立ち上がり
「......ッッ♡そんなっ♡そんなのッ♡♡無理ッ♡無理だってッ!!♡♡今まで一週間我慢してッ♡♡なのにッここから3時間もッ!?♡ふざけんなッ♡そんなッ!?♡♡」
「落ち着け、耳朗、お前さっきイッたじゃないか?」
「そんなんで収まるわけないじゃんッ♡」
「それに、今から寮に帰ってすぐヤッてみろ、クラスの奴らにバレバレだぞ。するなら消灯時間後からだ」
「うっ、そ、それは......そう、だけど...........」
耳朗は納得しながらも不満そうに淫羅を見る。
「でもっ!三時間自慰禁止って!!♡♡それはやる必要ないじゃんっ♡」
「お前がもし自慰をしたと分かったら、もう2週間は何もしないからな、セックスもしないし、お前に話しかけもしない」
「そっ、そんなっ!?♡♡なんで、そんなことぉっ♡」
涙ぐみながら訴える耳朗に対し、淫羅は『ニマァ』と両頬の口角をあげ
「俺の趣味だ」
その時、耳朗はようやく自分が蜘蛛の巣に引っかかり、捕食されるだけの間抜けな雌だと理解した。