友希那という女性を性的に視た時、やっぱり男として、何がなんでも気になる部分とは胸元である。
友希那の乳房とはありえないほど突出しているというわけではない。だが鉄壁をその身に備えているというわけでもなく、仄かな、そこに膨らみだけが造られている。
彼としてはこの絶妙な大きさが素晴らしいなと思う。
僕だって男なのだから、巨乳を前に勃起が止まらなくなったことも、小さい胸を視て何か愛おしいなと舌なめずりをしたこともある。
こんなに安心する乳房など他に知らない。
それはきっと、胸の形だとか大きさだとか、あるいは味という部分が理由ではない。
そうではなく友希那だから。湊友希那という一人の女性の胸だから、だから彼はこれほど興奮し、その存在、そのものが嬉しい。
現在深夜、友希那の自室のベッドに友希那本人が仰向けにある。もちろん彼も一緒だった。しかし今、友希那が股を開いているだとか、彼が覆い被さって腰を振っているだとかそういうことはなかった。
すでに夜の深い部分に時間は触れている。それでもこの部屋には白色の照明が機能しており、友希那は、自らの寝具に身体を倒すこの歌姫は、その光を頬にも瞳にも受けていない。
彼という巨大な影が彼女を覆い、またこの寝具に映し出されているのだがその形は常に動いている。
何か慌てている。
「友希那、友希那のおっぱい……」
今、彼は友希那に馬乗りにある。
ああ、それはどういうことなのか。女が男に跨ることならよくある。勝ち気な女性が好きな相手を組み敷く際や、男が彼女の全容を、自らに迫る巨大なものとして眺めたい時に女は男の上を取る。
男が女に跨るなんて、それは彼氏が彼女の胸を堪能したい時しかありえない。
「ううう、友希那おっぱい……」
勢いよく伸びたその竿を彼は友希那の乳房の谷間の位置に強引に収納している。左右を両手で保持し、友希那の柔肉を竿に与えるように狭めて腰を揺らしている。
男が幼い頃、少年ですらない幼児期から注目し、本能的であれ、人間的であれ、とにかく常々追い求めた女性の乳房、ただ柔らかく、突出しているだけだというのに魅力的なおっぱいというもの、そこに性の象徴である陰茎を差し込むなど。
それもただ、そこにあるというだけでなく、左右の乳房を真ん中に持ち寄って、竿を刺激するなんて。
そんなもの、なんと極楽なことか。
「ゆきな、友希那っ、もういきそうだよ、友希那おっぱい。ね、顔に、お顔ぶっかけしていい?」
「駄目と言ったら、こんな大変なもの、どうするつもりなの?」
真っ直ぐ、彼を見上げる友希那の瞳が一瞬だけ下部の竿に向かう。
ベッドに両膝を落とす彼は薄い呼吸の合間に呟く。
「が、頑張るっ。でも出したい、友希那の顔」
「仕方ないわね」彼を仰ぐ友希那は平然とした目つきだった。「胸なんかで、こんなにして……」
「気持ちいいよ、だって、友希那のだし……」
竿の全体が肌色の柔肉に包まれて気持ちいい。彼は友希那の鼓動を陰茎で体験していた。つまり、友希那の乳房が比較的小さいからこそ、その位置に存在する友希那の心臓、それが動き脈打つ様子を彼は男として体験できる。
その刺激がどれほどのものなのか、つまりこの行為が、具体的にどれほど気持ちいいか、というところを多くの男は気にしない。
ただ、好みの乳房に自らのものを進入させ、左右からその柔らかさを体験する。その事実、その体験こそが醍醐味だと思う。
「うう、友希那のおっぱい、もうだめ、出しちゃいそう……」
男の最も熱滾る部分と、女の弾ける心の臓が触れ合う、こんな行為だって性行為と同じ、一心同体に成り果てるということだと彼は思う。
「もう、時間よ」
冷静な声に続いて細い両腕が持ち上がる。友希那の素手が持つものとは自らの乳房であり、これで彼は両手が自由になる。今まで必死に彼女の柔肉を保持していた素手は次に友希那の顔面の左右の位置に降りてゆく。馬乗りになる身体そのものがより前傾姿勢となり、色濃くなる影に友希那の背丈は完全に包まれる。両乳は彼の貴重な部分に押し当てらてたまま、それでも先端、亀頭の部分は飛び出ている。雄が吹き出る肥えた箇所は虎視眈々と友希那を狙い、その美顔を受け皿に指定する。
「友希那、友希那ぁ……」
彼は自分の熱気に関する要領がついに限界突破をし、それから強く一斉に友希那へ流れてゆくことを体験する。
「友希那っ、お誕生日おめでとうっ!」
十月二十六日零時零分、誰よりもはやい、誰にも真似などできない。そんな祝福の飛沫を彼は友希那へぶちまけた。
十月二十六日に突入した瞬間、彼は友希那の乳房の中に己を隠して発射と共に誕生日を祝った。
湊友希那という女性の恋人として、その友希那の乳房が大きくないことなど常識的なことだった。
ママという性的な役職を聞いた全ての男子が連想するほどの規模にはなく、これをママだと呼称することに疑問が浮き上がる日々もある。
けれど、そういうものに頼ることだって十分にいいじゃないか。
そもそも、ママというのは母性の大きさのことであり、胸の大小などで決定しない。
それでいうと友希那とはママの適正がある。甘やかすだけでなく、叱ったり、許したり、導くこともしてくれる。それは強大な母性とそれから、その母性を発揮しようという意識がなければ成り立たない気質であり、友希那はまさしくママである。
乳房を使用した射精の後、呼吸を整えながら彼は股の間の友希那を視た。
大量にして、粘っこい。
というより、何か独特の質量とそれから、においを充満させる白いものが友希那の胸元に、そこから上がって顔面そのものにこんもり乗っかっている。
それは細っこい飛沫を顔面で浴びただとか、シャワーを受けて水滴が通っているだとかそういうものではなかった。
塊、白く、少しだけ濁っていて、柔らかい塊が友希那の綺麗な顔面の上、素肌に無数に滞在している。何かちょうどよく、目元や鼻孔、耳孔といった箇所は避け、鼻筋や額、口元部分に散乱しているのだが、一部は重力によって知らない方向に適当に垂れ、それで友希那の素肌を、女性が成し得ない白色で進む。
友希那を愛している。けれどこれでは、まるで友希那の誕生日、いいや友希那が誕生した日、その奇跡そのものを己で汚している。
もちろん、そうした淫らな行為が気持ちいい。
大胆なパイズリ顔射の後、彼はまず友希那から外れた。女体に久々に照明が降り注ぎ、雄が吐き出した精液もなんだかより一層の光沢を得ている。
だがこんなもの、放置するわけにもいかないだろう。彼はティッシュボックスからいくつか取り、友希那の頬に散る自らのものを慎重に拭き取った。
するとスマートフォンの通知の音が室内に響く。スマートフォンとは友希那のもので、顔面を戻した彼女は肩を上げ、さっそく画面を操作する。
「ふふ……」
画面を眺めてほほ笑む友希那を彼は眺めていた。
今、まるで庭の薔薇を前に寵愛を意識する淑女のような顔をしているが、その顔面には先ほどまで精液が排泄されていたし、全裸のその、もっとも目を引く乳房だって男のものを咥え込んでいた。しかし友希那はそんな気配は一切感じさせぬまま、スマートフォン画面を眺めていくつか操作し、笑みをさらに盛り立てる。
「幼馴染の人?」
「ええ」朗らかな表情のまま画面から視線が上がる。「それ以外にも、たくさんの人からメッセージが送信されているわ。もう、夜も遅いのに……」
言葉としては、何か深夜の送信を咎めるようにも聞こえるが、実際はそんな気配が少しもない。友希那の声は明るく弾んでおり、聞いている彼まで何か口角が持ち上がる。
「みんな、友希那のことを祝いたいんだよ」
今日、十月二十六日を祝いたい人間など山のように居る。彼ももちろんその一人なのだが、彼はその山の中の、頂上に存在していたいなと強く思う。
友希那を祝う人が一人でも多ければ、それは徹底的によいことだ。
しかし、先頭は他の誰でもない。
だって、もう彼が祝った。射精と共に、今年の友希那について世界で最初に祝ってしまった。
友希那は今年、男の温かいものを顔面や胸元で受け止め、感じながら誕生日に突入した。
そんなことの、ああなんと幸福で、背徳的なことか。
湊友希那誕生記念パーティは自宅リビングにて開催された。
参加者は友希那その人と、それから彼だけだった。二人きりで祝うというものは彼が言い出した我が儘で、友希那はそれを了承してくれた。少し無理をしたか、とも思ったが予定は滞りなく決定し、そして当日、二人きりのパーティがはじまった。
大きなテーブルに料理が並び、向かい合って座るとグラスと寄せ合いひとつ鳴らす。「おめでとう」と男が労うと、「ありがとう」と女の顔に花が咲く。何より鮮やか、それでいて品のある笑顔を前に彼は、これを視るためにいつでも全力なのだと自分自身に頷く。
他の誰も居ない、何もない個人的な、こんな二人きりの中で友希那を祝うことができるなんて。
ノンアルコールを飲みつつ食事をし、それが終わると豪勢なものがテーブルに現れる。それはケーキで、指定の数のロウソクに彼が灯りを差してゆく。室内の照明には一旦出ていってもらい、テーブルに戻ると明るい色だけが友希那の頬を下から照らしている。
そして、改めて、と彼は着席しながら最愛の人を視る。友希那も男のことをみつめている。瞳の色彩が、いいや瞳の、その潤いそのものがこの暗闇の中で浮かんでいるように綺麗だった。
「友希那、お誕生日おめでとう」
「ええ、ありがとう」
こうして暗い室内で、たった数本のロウソクを頼りにまた伝える。するとこの、おめでとうという前向きな発言もなんだか、秘密の暗号のように思えてくるのだから不思議だった。
もう、後ろめたさなんて感じない。
それから室内照明を戻し、ケーキを切り分けながら彼はひとつ想う。
誕生日という唯一の日に友希那と二人きり、友希那のことを独占できて心から嬉しい。彼はもうそんなことだけを考えることにしていた。後ろめたさだとか、他者への考慮なんてもう知らないものとし、見放していた。
だって、友希那は僕のものだし、僕の時間も意識も生命も、友希那に捧げられていい。
君が音楽を切なく愛しているように、僕も君だけを視ていることにする。
彼は二人分のケーキをそれぞれ皿に乗せた。ひとつを友希那に向け、「どうぞ」と添えると友希那がまた「ありがとう」と頬を揺らす。それから彼も整えて、男女二人の誕生日記念、もう一度、手を合わせる。
「いただきます」
ケーキについて、これは最も一般的というか、多くの人がケーキと聞いて想像するあの白色のショートケーキになっている。白色のクリームが全体に伸びており、視ているとなんだか、中身まで全てこのクリームなのではないかと思えてくるのだが、実のところショートケーキはスポンジで形造られている。縦に向けたフォークを入れ、少し押すとその白の中から優しい色がもっさりと香りを出す。ひとつ、欠片のようなものを丁寧に掬い取って口に運んだその瞬間、まず少しの冷気と甘いものが触れ、彼は思わずさらに期待をしながら咀嚼する。
「美味しい……」
彼という人間は、甘いもの、という存在に特別な意識は持ち合わせていなかった。
強烈なこだわりはないし、名店を知り尽くしたマニアではない。だが、かといって甘い物は苦手、などとそっぽを向く性分でもない。
けれど、このケーキはあまりにも美味い。
それなりの値段を選んだのだから、相応の味が帰ってくる。そんなふうに当たり前に構えていたが、この味付けは予想外といっていい。何か単純な技術や素材の質以外の、それではないところに特別感を意識する。
そうして彼は周囲を見渡すようにその原因を探るのだが、そんなものすぐに思い付く。
眼前、手元の皿やその上のケーキではなく、そのさらに向こう、切り分けた元々のホールケーキでもなく、さらに向こう、彼の対面の位置に座る愛しい人と目が向かう。
「……どうしたの?」
今しがたケーキひと欠片を口に運び、フォークだけが皿に戻って咀嚼をしている友希那の頬に少しばかりの困惑が浮かぶ。
「いいや」
彼はその表情を視て花開くように頷いた。
「思い出すわね、あの日のこと」
そうしてフォークを動かしていると友希那の眉が上がり、それまでの話題と異なる発言が飛び込んでくる。
「いつのこと?」
「あの日よ。あなたが、部屋に呼び出した日があったでしょう?」
ケーキの合間に友希那は少し、尖った視線を彼に送る。
友希那が言及するあの日とは、きっと一年前の誕生記念パーティのことだろう。
確かにあの日、全てが終わった後に友希那と繋がる手筈だったが彼が我慢できず、友希那には途中で部屋に駆けつけてもらった。突発的な行為であり、あれを強引だとか、理不尽と語られてしまうと彼としては、なんの弁明もできない。
そうして思い返してみると、男なんて単純なもので、すぐに鼻先にあの日のにおいが蘇る。視界のケーキが目に入り、そういえばあの日も同じショートケーキを友希那は食べていたな、とさらに思い出す。
そうか、だからあんなに甘い味がしたのか。
「また、嗅ぎたいのかしら」
「え――」
愛する人の声がして彼は視線を上げた。それほど遠くない位置に友希那が居る。ケーキを完食しており、口元は少し淫らに、唇に触れたクリームを舐め取っている。
「違うの?」
「い、いや……」
「嗅ぎたがっているように、視えたのだけれど……」
口元を隠すようにナフキンが一周する。
「嗅ぎたいけど、でも、そんなの駄目だよ……」
「けれどこの前は、途中で私を呼び出したわ」
「成長したんだよ、僕も」
ほら、赤ちゃんは成長がはやいから、なんて少し口元を揺らしてみる。視線のみで触れ合い、そうしていると、また友希那が口を開く。
「あなたは知らないかもしれないけれど、頑張った赤ちゃんには、ご褒美が用意されているものよ」
「ご褒美?」
なんだか縁遠い言葉に、彼はどうにも馴染めない。用意があるの、と友希那は何か声を弾ませるが彼は見渡して不思議に思う。だって、この室内のどこにも、たとえば高級なオナホールや、執筆のための道具など見当たらない。
困惑していると友希那は手元、そのカトラリーたちを丁寧に置いて立ち上がり移動をはじめる。今まで、二人は向かい合って座っていたが友希那は彼の隣の席に登場し、それから細い両腕がそっと、彼の後頭部を包み込むように接待してくれる。
「最初は、よくわからなかったけれど」
歌姫の口元が耳へ降り、突くように声になる。
「今は、とてもよく理解しているわ」
友希那の両手が彼の頬を、彼の腕が友希那の肩口をそれぞれ擦る。接吻の距離感なのだが唇同士が重なることはない。歌姫の肉厚は男の鼻先で軽く開いたまま。彼の鼻を食む勢いで停止し、しかし口腔内部のその蒸気だけが彼へ仕掛けてくる。
「あなたは赤ちゃんだから、ママの口のにおいで、私の口臭で発情するなんて、当たり前のことだったのね……」
ああ、そうか。
現在、この部屋に存在する尊い存在とは友希那だけであり、彼の目が、鼻も意識も向く対象についてももちろんたったひとつしかない。
つまり、ご褒美は私。
「遠慮する必要なんて、ないのよ」
寄り添う友希那の、その肩口から適当な毛先がつるりと落ちる。
その言葉、というよりその語気は彼を許すものではなかった。そうではなく、友希那は今まさに彼を導いている。自分の欲望を解放すべきか、抑えるべきか、なんだか悩んでいる彼に対し、その雲間に、力強い光芒を向ける。
それこそが友希那であり、彼は夢中になって誘われる。
「もっと、こっちにきて」
彼と友希那、二人並んで座ったまま彼は身体を寄せてみる。沈みゆくこと、溶け抜けることを友希那の両手がゆったり肯定してくれる。誕生日なのに。それでも友希那は彼をやっぱり支えてくれて、彼はそこに存分に甘える。
「ほら、ママのところにおいで……」
友希那の声が差し込まれてゆく。彼はそれを耳で聞いていなかった。彼はその声を臓物で聞いている。友希那の声は巨大な鐘の音のように、彼に対し大きく染み込んでくる。
「大丈夫。全部、あなたのものだから」
だからにおいでも、なんでも、好きなだけ、味わっていいのよ。
二人は二人きりのパーティも、テーブルも、ケーキさえ置き去りにして抱き締め合う。
彼は友希那の湿り気をまず嗅覚で堪能する。
いいや、これはケーキではない。
これは、甘味をしっかり完食し、そのうえ唾液でぬるぬる、十二分に整った友希那だけの楽園、その風味。これは、なんて香しい。ああまさしく、僕のためだけの真のデザートがここにあるじゃないか。
男の鼻先はそれを素早く検知し、それから敏感に降伏してしまう。何か肢体が、末端の位置まで急激に引き締まって、もっともっと欲しくなる。
友希那の右手が抱擁から外れ、するり、蛇のように彼の男としての位置に下るのは一瞬だった。
現在、彼は確かに勃起の状態にある。だがそれはまだ未完成の状態だった。彼はまだ雄として明確な決起に至っていない。そんな時に愛する女の右手、その指先が様子を窺いにやってきてくれる。
衣類越しだとかそんなことは関係ない。
いいやむしろ、衣類というひとつ余計なものがあるからこそなんだかいい。衣類ごと包んで盛り立てるこの手つき、急所を狙って高速で動く指先が、まだ勃起未満にある男にとってありがたい。
そうして男に寄り添いつつ、自らも女体を押し付けて股間を握る友希那は、長い、長い頭髪を揺らして囁く。
「チン撫でよ」
「ち、チン撫で……?」
なんだそれ。彼の脳裡に飛び込んできたその言葉、友希那の声で形造られた単語が新鮮だと感じる。
チン撫で、いいやそんなもの、聞いたことがない。
だが眼前、友希那は平気な顔でチン撫で、といくつか呟いている。
まさか、僕が知らないだけでそういうものがあるのだろうか。もしもそうだとしたら、友希那のほうが変態的に進んでいるということになる。けれどその一方で、チン撫でなどというものが実在せず、つまり友希那が造った言葉だとしたら、そんなものをまるで実在するものとして扱う姿がなんだか可笑しいし、また、そうした言葉を連想する友希那が、考えている最中の友希那が愛おしい。
だって普段、むしろ彼が卑猥な単語や名称を口ずさみ、友希那はその知能が高いとはいえない羅列に呆れているのだから。
彼は友希那の色香を頬で舐めていた。呼吸を彼女の薄い胸元の中に隠している。互いに縮まるように体躯を丸め、彼は友希那のにおいを嗅ぎ、友希那は、彼の股間を増長させる。
男の自慢のひとつのテント、不思議に出っ張ったその箇所によく似合う友希那の右手は、そのままゆったり、上下、上下に運動し盛り立てる。かと思えば、唐突にその寄り添う動きを停止し、今度は代わりに先端を包み込む。先端、というのは彼から視て前方向に突き出たものではなく、むしろ若干斜め上に今は備わっている。テントそのものが反り立つ様子にあり、友希那はその最も膨らんだ箇所のみを掴む。
今まさに友希那は彼という男性世界の頂点を獲っている。
「どうかしら、居心地は」
そう命じられたわけでもないのに友希那はそのただ一点を集中的に擦ってくれている。素手は一方では男の汗を巻き込み頭部を擦り、また一方では股間を、衣類の上から擦っている。
「すき……」
それで男は、彼は鼻先を埋め込んだまま友希那の中から友希那に向かって語りかけることになる。劣情というものさえ一時的に忘れて母体へ還ってゆく。
友希那とえっちなことがしたい。
そうした欲求を彼は実のところいつでも抱いている。気分や精神的な浮き沈みに影響して大小様々だし、具体的にしたいことについても、その日によって変化する。
だが一点、友希那としたい、という部分についてはいつでも考えており、それが生きるうえでの最優先事項だし、というより、友希那とのえっちを願わない日なんてありえない。
誰だって愛する者との性的なまぐわいなどいつも妄想している。ただ彼が、他の大勢の男どもより少し異質な部分とは、そうした自身の素直な欲求をその素直なまま、包み隠さず性的対象へ、つまり友希那へ向けて、みせつけて、あわよくばその場で友希那にすぐに、理想通りに応えてほしいと懇願する。
その様相について、友希那だって毎日異なる反応を示す。日によってはよく受け入れてくれるのだが、そうではない日ももちろんあるし、彼だって人間なのだから、そうした相手の状態についても機敏に察知し、盛り上がる愛刀を鞘に納めることも多い。
そして今日、つまり友希那の誕生日という日に限っては、彼はその部分を徹底していた。
だって、友希那を祝いたいじゃないか。誰だって愛する者を真剣に祝いたいと常に願っている。
本気の本当に友希那の誕生を祝福したい。しかしその意識、思考、志のすぐ裏側に、そんな誕生日とは全く接点のない情欲がある。
誕生日の、それもパーティ最中にはっきり欲情を示すなんてありえない。
彼だって、男児。そして男児とは、母親に無限に甘えることのできる権利を持つと同時に、男ではなく漢として、堅い生き様を時に強いられている。その生き様とはまさしく侍であり、耐え忍ぶものであり、彼はここぞとばかりに彼は己を律する。そうして今日、ただ友希那を祝うだけに専念した。
そんな中、そういう俗っぽい話題が、まさか友希那のほうから持ち上がるなんて。
これほど嬉しいことはない、などと踊り出してしまいそうになる一方、だがいいのか、と何か慎重な部分を意識する。
「だって、したいのでしょう……?」
友希那の素手は彼の股間から離れずに呟いた。
彼の弱点、最も敏感な箇所を友希那は衣類越しだというのに正確に探し当てている。それから手つきが淫乱に変形している。何か指の腹を押し付けてくるような感覚で、彼は股間を固くしつつ、友希那の口や首元、垂れ流れる長髪を嗅ぎながらふと鼻先を上げた。
他に誰も居ない。たった二人きりのパーティ会場、主役の女の懐に男は横から身体を倒し頭を預けている。
「わ、わかるものなのかな。その、男が、えっちしたがってるとか、そういうのって……」
「ええ。わかるわ」
ああ、なんてはっきりとした即答だろう。それから友希那は両手を稼働させたまま視線を少し細め、何か考え、それから彼を視る。
「他の男の人について、私は詳しくないけれど、あなたのことは視ているだけでよくわかるの」
「そう、なんだ……」
自分としても、何か隠していたり、誤魔化したり、遠回しにしているつもりなどない。けれどその相手から、つまり友希那からはっきりと、あなたの欲情は見抜いている、などと宣言されて恥ずかしい。
しかし妃の発音に淀みは生まれない。ただ相手の男について、真実のみを淡々と、報告でもするように口にしてゆく。
「今日だって、あなたはずっと、私の胸やお尻ばかりを視ていたわ」
隙をみつけて楽しんでいたつもりだったが、それだってばれていたのか。
「好きな人のことは、いつでも気になるものでしょう?」
そんな、男にとって何より嬉しい台詞をこの歌姫は明瞭に与えてくれる。
それからすぐ、何かカッと熱く震える箇所がある。それは股間で、彼は友希那に抱き着いたままその箇所を意識し、より上向くように踏ん張ってみる。友希那は身体そのものを寄せ、手元はより彼に接近してくれる。優しく包み、いくつか揺すった後にまた指先が上へ流れて、今度は彼のそのテントのうちの、最も膨らんだ箇所をなんと指先で擦る。
衣類越しのため、適切な刺激のみが彼に触れるのだがこれがもどかしい。確かに愛撫のように嬉しいが、どこまでも中途半端な気がして、嫌でもその気にさせられる。
こんなにしつこく撫でられてしまっては、理性もなんにも太刀打ちできない。
ああ、なんだか敵いそうにない。
もういい。もう、いいか。誕生日だとか、パーティだから、なんて意識は一旦忘れてしまおうか。ただ僕は、友希那としたい。したいことを、とことんしたい。
だって僕は、最初のほうからそういう人間だし、この友希那も、そういう僕を受け入れてくれている。
それなら、いいじゃないか……。
今日は友希那のため、懸命に準備し当日を迎えた。全ては滞りなく進み、これは成功か、なんて胸の内側でほほ笑んだ。
だがここで、友希那の素手の指先たった一本、柔らかい誘惑というものだけで、それまでの積み重ねも、理性も溶けている。ただ、友希那としたい。友希那とえっちなことがしたい。えっちなことがいい、とあらゆる思考を放棄する。
もちろん、彼に拒絶の気配などない。年齢相応の彼氏はいつもの男児に逆戻りする。友希那の献身的な『チン撫で』により彼の勃起はより確固たる芯を持ち、立ち上がる。
つまりは、友希那に肉棒を造ってもらった。
いいや、育ててもらった。勃起さえ手伝ってもらっている。
今からこれが、友希那の華の部分をかき分けて奥まで到達し、おそらく満足に射精するのだが、そこにだって友希那の、ママの介助が予見される。
自分より年下の女性を性的に頼りにする。
それも、ただ相手になってもらうだけではない。ママ、という独自の役割を任せ、それで性欲の世話を、勃起の面倒という部分からしっかり視てもらう。そんなこと多くの女性が嫌悪するだろうし、そうでなくとも遠慮するはず。
けれどこの友希那は違う。友希那はそんな独特な部分を把握したうえで、自らママになることを選んでくれた。
ああ、これほど男として都合のいいこともない。
いったい友希那の脳内で、年上の男を男児とあやすことについてどのように折り合いをつけているのか、彼にはもう予想しかできないが、それでいい。とにかく友希那は、君は僕のママになってくれる。
そんな事実だけで、真に愛されているのだと安心できる。
それにしても、あのパーティ会場から主役の友希那が男のことを喜んで連れ出すなんて。
これはいわゆる『お持ち帰り』というものではないか、などと彼は気持ちを上擦らせる。世間的に評価されている歌姫が一人の男を選んで自ら部屋に運び込むなど、もはやそういわれても仕方がない。きっと誰であっても黙っていられないし、誰でもその一人の部分に収まりたいと願っている。
歌姫から一人手引きされて、あっという間にベッドの上に誘導される、なんてものが一番いい。
そうした幸運に至ること、それそのものが嬉しい。また彼の目には、やっぱり友希那が愛おしい。
現在、リビングから友希那の自室へ二人で、それから彼は仰向けにある。すっかり全裸で竿のみが屹立している。友希那も同じく衣類を脱ぎ、それから最後に、黒い蝶の髪飾りを丁寧に取るともう、彼女が歌姫だった痕跡はどこにもなくなる。
男体に跨る雌が狙う箇所とは男のそそり立つ大きなものだけだった。姫の堅牢なスカートの内側、その肌色の様子に彼だけが突入し、友希那の胎内へ帰宅する。
友希那の生涯が終わるまで、その上に跨っていたいくらいなのに、君からこちらにきてくれるなんて。
こういうことくらいは流石に、運命、なんて語ってもいいだろう。
小さな歌姫のその濡れ湿った膣口を彼は先端で体験する。膣の入り口と熱いものが触れ合い先に膣のほうが溶けてゆく。何か男のほうが、少しこじ開けてゆくような感覚で友希那が拓かれてゆく。
歌姫と男児、二人はこの瞬間にしっとりと結合する。肉壁と、それから内部をじっくり堪能しているとふと、腰を下ろす友希那に異変が現れる。
「あっ……」
彼の上、身体を落とす友希那はけれどその身を引き絞る。大きな髪型がそういう色の絵筆のように流れ、表情が、急速に慌ててそれでも股間は落ちてくる。
「うう……」
男体に跨って、それから悶えるようにいくつか痙攣をした時、彼は、この友希那がその背に翼を宿し、飛び立つものだと一瞬だけ間違えた。結果として腹部をうねらせ、腰が細く、反り立つ背筋をそのまま、甘い声をあちこち散らして力が抜ける。
彼はその何か縮んだように思える容姿を目の当たりにするのだが、その時、この友希那は確かにひとつの地点へ羽ばたいたのだと知った。
「友希那」
「いいえ……」まだ何も訊ねていないが、それでも歌姫は懸命に呟く。「なんでも、ないわ……」
明らかに引きつった、けれど十分に火照った口ぶりを彼は見上げることになる。
友希那はすでに彼の腹部に簡単に手を置き、揺れる長髪、頬も特別に染め上がっている。
そんな様相を前にして、彼はヤッパリ、と思い、だが口ぶりはわざとらしく、もしかして、と続ける。
「イッちゃった?」
まさか、たった挿入しただけで、硬い男が女を姦通し、そのまま、入り口から子宮まできつく埋め尽くすだけで絶頂まで先んじたのか。
「ごめんなさい」
次いで出てくる友希那の言葉は正々堂々の謝罪だが、彼はそれで納得しない。
今しがた女の内部に到着した男は何か確認するように尋ねてゆく。
「イッたの?」
「ええ」
「イッた?」
「……そうよ」
頬を傾け、視線の先に羞恥を浮かばせる友希那の声が愛おしい。
だが男としては今ひとつ満足に至らない。
「ちゃんと自分で宣言してごらん」
「やめて、そんな……」
「ほら話してみて。どうしたの、友希那」
「イ、イッたわ。挿入しただけでイッたのよ」
口元、右手を持ち上げ、適当な汗を拭う友希那はいかにもおしとやかにある。だがすぐ下を視てみると、清楚な態度はどこへ消えたのか、股は開かれ、その内側に男を招き、最も大事な部分はずっぷり離さない。
「これで満足……?」
「おまんこ、もう限界だったんだ」
また視線を逸らす友希那に彼はにやけて追撃する。
「人の股間擦ってる間、自分も濡れてたんだ」
そうして喉元を揺すっていると友希那の身体が倒れてくる。別に友希那は体力を使い果たしたというわけではない。全裸の歌姫はその上半身を彼へ向け、細腕が男の頭の左右の位置につく。
無数の、出来立ての女のにおいを引き連れて友希那は狭く、彼からするとよく視える。ああなんだか、友希那の身体そのもので捕獲されているような眺め。友希那さえ知らない、友希那の野生的な部分が一気に露呈し、それから尻だけが上下に動き出す。
火照った女体が男にとって、なんとも都合のいい流動として流れ、動き続けてくれる。
敷かれた彼に向かって垂れかかる友希那という肉布団、だがそれは友希那という存在を彼が被るということではない。男へ、女が必死に差し迫っている。みっちり仕込まれた友希那の肌肉に彼は沈んでいる。
「ゆきな、激しいっ、激しいよ……」
「うるさいわ」
燃え滾る女を男が抑えることなど不可能だった。
一種の暴走状態に陥る友希那は、何か使命感に駆られているわけでも、相手を屈服させる企みがあるわけでもない。ただ恥ずかしい。たった挿入しただけで絶頂したこと、確かにそんなこと、普段から高貴だと謳われる姫君からすると、尻を杭打ちしてでも誤魔化したい恥辱になる。
雄がどれだけ降参をしても、友希那のその、汗の飛沫さえ弾ませる胆力を褒めたところで火に油になる。振り落とし、また持ち上がって、さらに打ち付けられてゆく。
「こういうの、好きでしょう?」
「うう、そうだけど……」
この友希那だって絶頂直後で敏感なはずなのに、そんなこと知らないわ、と態度で示してくる。
一撃一撃によって彼はたまらず追い詰められて、まるで後を追うように友希那へ打ち上げることになる。
「ううぁっ――」
膣の入り口から、最奥の、子宮の入り口部分まで、その参道を占領する竿がうねりを上げて飛び出してゆく。その瞬間に友希那の柔肉は全て彼に添い、子宮も、搾精のため下ってくる。
自分が最も欲する雌の奥に自由に徹底的に種を付ける。
その瞬間に彼は性的な、つまり射精の快楽とは別の快感に満たされる。それは男としての、あるいは友希那の恋人としての特権のようなものだった。今やプロとして活動を伸ばす歌姫の、乙女としての最深部を自らが独占するなんて。もちろんそこに強要などない。友希那もまた男を受け入れ、彼は貪欲に雄として続き、沈み、友希那を狙って、その胎内を染め上げる。
それからすぐ、友希那は耐えられないという様子で顎先を伸ばし、その唇は男のものとぴったり重なる。
「んぶ、んぇ――」
口の内部に友希那が流れ込んでくる。胎内での射精のお返しのように舌や唾液が注がれて蠢き、もう互いの輪郭など、ふやけてしまうほど彼は友希那を頬張ることになる。
友希那はまた絶頂をしたのだろうか、今、鼻息を散らし、それでも貪るように口づけを、臀部の動きを続けているが、無事に花開いたのだろうか。彼もまた雄として狭まって、意識が友希那で潰された時、その背中を包んで撫ぜてやる。
艶めかしい肌色の上に大きな汗の粒が浮いており、彼はそれさえ喜ばしく指先で楽しんだ。長い髪が背筋に添い、それを避けてやると友希那の肩がすうっと浮き、火照った頬が視えてくる。
「ゆきな……」彼は呟き、それから喉をしゃんとする。「友希那」
男に跨ったまま、最愛の人は彼をみつめてくれている。
彼はそうした色気、肌色と薄紫の毛先、それから重たい瞳の表情を視て想う。
「誕生日、おめでとう。友希那」
この一連の快楽は、ただ射精をしたというだけに留まらなっていない。彼は今、自分という人間性の肯定、という部分にまで触れている。
一度果てた男とは唐突に弱くなる。
それまで、たとえ練度の高い実力で女を先導した男でさえこの時間には逆らえない。
それはこの時間というものが、精神的なものではなく生物的なものであることが原因で、男にはどうすることもできない。
そんな時間に突入した男に求められる行為は悪あがきや強がりではなく、そういうものがあることをまず相手の女性に簡潔に伝えること。それで理解を得てもらうこと。
稀に、理解を得られず破局にまで至るカップルや夫婦をみかける。彼も他人事ではないことは理解しており、故に緊迫してたところもあるが、そんなもの一人だけの茶番だった。
友希那にそのテの知識があったわけではない。ただ友希那は、彼が話す男の性の話に興味関心を常に寄せてくれる。
射精後の時間について、物珍しいさを得ているが最後まで聞き理解してくれる。
というより、友希那は彼の話についてある程度の距離を保っている。
そういうものなのね、というお決まりの台詞がある。これを聞くと彼は安心する。この常套句が、ただ聞き流しているだけの上っ面ではないことは友希那の所作が教えてくれる。
今、このベッドの上で二人は折り重なっている。彼が下敷きで、その股間の位置に友希那がある。二人、二度の絶頂によるすっかり消耗した後で、何か浮遊でもしているような世界に突入している。
それは心地のいいものだった。全ての精を友希那で使い果たし、友希那もまた女性として消耗し尽くしている。身体を這う気怠さ、これさえなんだか楽しいというか、それが大きくのしかかることに満足している。
だが、これで終わりたくはない。
だってそうだろう。この世、現実世界を見渡して、あの子が一番可愛いな、と真っ先に舌先が伸びる相手を横に、ちょっとの気怠さで休んでいる暇などない。
だが事実として、二度の発射により彼は消耗している。熱も湿度もまだ癒えない股間は、けれど今は明日を失っている。そんな状態から男が心地よく、素直に再起するためには――。
「魔法が、必要……」
ふやけた男のその上で、やはり女が先に性的に再起する。
男体の腰部分に跨ったまま、上体を起こし、けれどその口先が迫ってくる。また接吻か、などとぼんやり構えていると口と口は触れ合わない。ではどのように落ち着くのか、眺めていると友希那の口先は男の乳首に向かってゆく。
彼の胸元に下る歌姫の口先は開花のように小さく突き出し彼のものをぱっくり覆った。
柔肉とそれから温かいものが弱点部分にしっとり貼り付く、彼は右乳首を舐め廻される。
まさか、こんな媚びるようなことをするなんて。彼はベッドに敷かれたまま、腰そのもので友希那に射止められたまま驚くが、その彼女は淡々と男の胸板に突っ伏している。腰の具合も上々に、何か細かく、練り上げるような動きを重ねて刺激が集まってくる。
その間、どうにも気になるのは左の乳首だった。
だって、右側だけがこんな待遇を受けているのだから、彼としては当然、比較をして、それからさらに欲してしまう。
しかしここが流石歌姫というか、妃というか、友希那は彼が何か口走るより先に眉を上げ、ちらりと顔をみつめた後に対応してくれる。
右側に口を添えてそのままに、友希那は左手を持ち出して彼を摘んでくれる。親指と人差し指、二つの指の腹で挟んだ乳首を友希那はぎゅぎゅっと確かに揉み、転がし、それで右側は啜ることを続けてくれる。
男の股間にどっしり座ったまま、右は唇、左は指先、それぞれが別種の意識を持ち働きかけてくれている。
こんなもの、男として己を再建しないわけにはいかない。というより、股間以外の弱点など少しも耐性がないので、燃え上がるしかない。
左右の突起をそれぞれしっかりあやしてもらいつつ、すっかり馴染んだ友希那の膣は、また固く膨れる彼を最初から包んでくれる。
友希那を知るどんな人々も、その友希那の両足が大きく左右に拓くことを想像できない。
だが現在、彼の手元に居る友希那は足を拓くどころか、股間をみせつけている。足については膝の関節で大胆にたたみ込んで、ベッドに対し、左右の足裏をしっかり落としている。
二つの膝は塔のようにそれぞれ立ちはだかり、股間に続く肌色に筋が浮くこともある。そのうえで尻はどっぷり乗り上げており、胴体は彼に向かって影を落とすのだが、口先が向かう箇所とは彼の中の同じ口元ではなくその乳首にある。
足を踏ん張り、胴を曲げて腰を低くし、彼に向けて守っている。
そんな体勢なんて、何か異質というか、日常の中ではまずありえない。
だが友希那は次の瞬間に激しく上下にはじまる。
その動きは大きく、腰が持ち上がると男体との隙間から室内を覗くことができる。肉厚が打ち下ろされると柔らかい尻が男体の上で歪み、腰は揺らめきながらまた浮かぶ。
「イきそう?」
そうして男に乗り上げたまま、膝を立て、尻がむっちり肥えて動き続ける中、友希那は熱気のある声で訊ねる。
「ねぇ、イきそうなの?」
いったい、どこから聞きつけてきたのか、咥え込む竿の様子をじっくり感じ取っていたのか。
「イきそう……」
「駄目よ」友希那はすっかり雌猫の顔をする。「イくって、ちゃんと口にして」
まさか、これが仕返しなのか。
つい先ほど、挿入直後の絶頂をしつこく指摘されたことをこの友希那はそんなに根に持っていたというのか。
友希那としては、こうして自ら男を跨いで仕返しをしているつもりなのかもしれないが、それを受ける男としてはなんだか可愛い。こうして肌色を重ねている時点で女が何をしようが、男には愛おしく映る。
だが、それはそれとして今、射精に関する権限は友希那が握り締めている。
というより、抱き込んでいる。
彼という形にみっちりと膨らむ友希那の胎内は、激しい臀部の動きによりその実力を発揮し続けている。
そんな中で、男がどうこうできる選択はない。
「イ、イきそう。友希那でイきそう……」
まさか、あの友希那がこんな戯れに興じるだなんて。
「いいわよ……」
友希那を見知った時、その瞬間に彼女に感じたあの気質から真反対の姿が目の前で披露されている。驚いている場合ではない。こんなに素晴らしい友希那のことを、たった一秒でも長く味わって、楽しみ尽くさなければいけない。
「イけ」
彼はもうどうしようもなくなって、やがて、討ち滅ぼされるように最奥で濁ることになる。
一度、男体も友希那も大きく跳ね上がり、それから波が引くように全ての動きが緩くなってゆく。彼は獰猛なものを友希那に打ち上げ、友希那は体勢をほぼそのままに、大きく息を吐く。
燃え上がるまでは男がはやいが、燃え上がった後は女のほうが過激になる。
つまり、一度はじまってしまうと男は主導権を手放すしかない。その後のことは女が決定する。友希那が「出すな」と命じれば彼は出すわけにはいかないし、友希那が「離すな」と願えば彼は抱擁を止めるわけにはいかない。
一度でもその気になった女に男は敵わない。男が一度絶頂したところで関係はない。
友希那という猛獣は彼を組み敷いて愉悦を得る。
しかし、負けるわけにはいかない。
そんな意味もない対抗心によって彼は浮き上がる。
この真上、姫はもうもうと呼吸を続けている。彼はそれに焚き付けられ、腰を激しく突き上げてみる。
獰猛な姫君に対する反抗は簡単に成功した。
「待って……」
彼の突進により友希那は身体を不安定にし、彼の上で仰け反ることになる。後方に両手を落とし彼の視界に友希那の全てが映し出される。
「あなた、ちょっと……」
顔面から顎先、それから首筋に現れるこの発汗と同じで、胎内もよく温まっている。
そういうものの中で彼はここぞとばかりにひとつ暴れてみる。子宮の入り口を小突いてみる。竿の形と一体化するように友希那の膣が一斉に引き締まってゆく。彼はそれでも肉をかき分けるように腰を駆動させる。友希那はまだ空を目指して身体を浮き上がらせる。身体のあちこち、たとえば太腿の部分や鎖骨の部分、首筋、腹部に骨格らしい筋のようなものが浮き出てくる。
友希那の身体は今、彼という男を股で挟んで、身体を引き伸ばし、それでも男のために尽くしてくれている。まだまだ燃え上がる雌猫は強く腰を降ろし、すると竿の先端が最奥に触れて飛沫を上げる。
「んんっ……!」
暴発した彼の温かいものを全て回収し、ようやく停止した歌姫の身体が帰ってくる。
長髪が前に垂れ、頬の上に影が浮く。友希那はその肢体を揺らして息を整えている。
男の腰を完全に椅子のように使用し、また毛髪、背中に流れるそれらがゆらゆらと誘惑してくる。
全体的に何か薄っすら汗ばみ、細い輪郭だけがただ、この世界から浮き出ているように思える。
友希那もまた、この熱烈なぶつかり合いにより高ぶりを覚え、彼の絶頂と同時に果てたらしい。
絶頂を終えた後、友希那は男体の上から流れ落ちるように彼の隣についた。
そうして二人、息を整えているのだがここでも友希那は彼に寄り添ってくれる。
体格という、男女だとどうしても揃わない二人の差の部分について友希那がその女体をくねらせることで彼に対応してくれている。この間の彼はただ寝そべっているだけでいい。彼から視て左隣、その懐に友希那の顔が転がってくる。
汗ばんだママが、長い長い髪を引き、小さな肢体を寄せている。
そんな様子を彼は視て、それからひとつ呟く。
「今年一年、どんな年だった?」
それはつい先ほど、絶頂直後に彼が呟いた誕生日を祝う文言に関連付けた話題で、友希那の額が少し浮く。
「あなたが居たわ」
「ああ、僕も」彼はにやりと口角を上げる。「友希那が居た一年だった」
すると友希那はまた頬を揺らし、彼を射る。
「あなたに、いやらしいことをとことん教え込まれた一年、というところかしら」
「友希那はセンスがいいんだ」
「あなたが変態なだけよ。私は、別に……」
「いいや、君はすごい」
彼はここぞとばかりに明瞭にいっておく。
「だから、たくさん教えたくなる」
「わ、私は……」
友希那の語尾が溶けて、また息を吸う。
「音楽をしていたのよ」
「へぇ……」
彼は友希那の裸体を舐めるように視た。
「じゃあ、さっき急に激しくなったのも、あんなに、みせつけるみたいにお股開いたのも、僕が変態だったから?」
にやけながら追求してみると友希那は何も喋らない。何かいい訳でも考えているのか、待っていると口先が上がってくる。
「んっ――」
友希那を唇で受け止めた刹那、彼は友希那の後頭部や腰の部分に腕を伸ばした。いくつか重なり、揉み合ってから男女二人は少し離れる。
「ママだとか、赤ちゃんだとか。あなたが言わなければ、私も知らなかったはずなのに……」
友希那の世界にそのような不純なものを持ち込んだ。その責任は確かに、男にあるのかもしれない。
だが友希那を視てみると、それほど男を責めているとは思えない。
だってそれだと、あの誘惑が嘘になる。それに今、友希那の目元ははっきりと、言葉とは異なる感情を表現している。
それは友希那にはよくあることで、だがそれは、別に彼女が未熟だとか意地悪だとかそういうものではない。純粋に口下手というか、隠したがるだけ。ただ確かに、友希那が人として少し複雑であることは事実で、彼からするとそれこそが愛おしい。
何か難解な女を好まない男など居ないし、その難解さが魅力に直結しているのなら指摘などしない。
男はただ好ましい複雑な、薔薇のような友希那をじっくり眺めて、たとえば真意をするりと読み取ってみたり、口ぶりとちぐはぐな態度に心を温めてみる。
この湊友希那という女性の恋人として、彼は常に忙しいのだけれど、常に楽しい。
「友希那……」
男もまた汗で潤んでおり、二人は湿ったまま、寝具の上でさらに抱き合うことになる。口腔内部ではすっかり求愛に飛んだ温かいものたちが再会を果たし、もつれ合いながら唾液を与えてゆく。
それは交換だった。
自分の唾液を相手の口へ仕込み、相手の唾液を啜り尽くす。
潤う口元にいつでも愛する者が居るなんて、性的な趣向とは別に何か安心する。贈り物、という解釈を取ることができる。唇を離した彼はツーと伸びる透明な糸の数にさえ喜ばしく思い、口の中、まだ残る友希那を飲み干した。
「おいしい……」
盛んな男児はもちろんママの唾液で満足するのだが、それだけで飽きることなどありえない。
その欲望が次に向く先とは友希那の喉元よりさらに下の乳房に触れている。
「おっぱい」
不思議そうにみつめてくる友希那に彼は注文のように呟いた。それは許可を求めたものではない。彼はさっそく腕を伸ばしてママのおっぱいを求めてゆく。どちらが合図したわけでもなくまず友希那が仰向けになり、今度は彼がその懐の位置に入り込む。
左右の触手が望むものとは、もちろん友希那の乳房。
「ふふ、友希那おっぱい」
「本当に、好きなのね……」
「うん。好きだよ」
彼は取り出すように肯定した。ここもしっかり発言しておきたい。友希那の胸は巨大ではなかった。だが彼が、男として何よりも扱いに長けた胸だった。
「大きさじゃないんだよ。友希那のおっぱいだから、いいの」
「ええ。よく知っているわ」
そんな乳房を揉みながら彼は友希那の顔を視る。見上げている。ベッドに倒れた友希那の髪は周囲に散り、首筋が傾斜を造って魅せてくる。鎖骨の部分、それから乳房も艶やかに映り、何より瞳が柔らかく彼を見守っている。
「私のことよりも、私の胸のほうが好きなんじゃないかしら」
「え、それは……」彼は友希那に手を置き考えてすぐに持ち直す。「いや、ありえない」
「そう……」
友希那の声は、手の中に落ち消えてゆく雪のひとつのようにすぐに彼へ染みてゆく。
彼はなんだか不安になって、言葉ではなく行動で示したいと決起した。今、仰向けにある友希那に寄り添っているが、さらに接近し、友希那の乳房、というより肌色そのものを頬や鼻頭で擦る。
「んふ、友希那……」
「本当に、甘えん坊ね……」
「だって、ママだから。友希那に甘えたいから」
ずっと抱き着いていたいし、体臭も、嗅ぎ足りない。
そんな想いを必死に込めて、彼は友希那にしがみつく。
「おかしな人……」
などと呟くと同時、友希那の細い左腕が伸び、その素手は彼を撫でてくれる。彼は友希那へ倒れ込み、肩幅がこんもりと栄える。やがて雄の鼻先は美女の濃厚な一点、友希那の脇のにおいを楽しみはじめる。
十二分に吸引し、それから額を少し持ち上げて友希那の顔を視る。目と目が合って肌が触れ合い、また口を緩ませてみると友希那の素手が頬に触れる。
友希那の素手に友希那の乳房、頬ずりをして身体をさらに近づける。
彼は友希那の顔だけを視ていた。
「かわいい……」
彼は常々、友希那の容姿を強く想う瞬間があった。
友希那は確かに美女である。道を歩けば誰でも二度ほど視るだろうし、どんなコンテストでも一位を獲得できるだろう。だがそれだけではない。この子の顔つきはなんだか、安心する造りにあるなと彼はよく考える。
なんだろう、なんというか、心の収まりがよくなる。友希那という人の顔面を視ていると、それだけであらゆる精神的なざわめきが穏やかに落ち着き、傷ついた箇所が癒されてゆく。何か保証されているというか、この場に居てもいいのだ、という安心感を友希那の顔をみつめるだけで感じる。
ただ整っているだけではない、ただ美しいだけではない。それ以外のところで、いつまでも視ていたい、隣にあってほしいと欲求が治まらない。
そうした魅力を放つ友希那とは、やはりただの女性ではない。やっぱり、僕の――。
「ママ……」
このベッドの中、彼は呟きながら身体を持ち上げた。天井を背に、友希那の裸体に男の形の影が浮かび上がる。ああ友希那が愛おしい。ママが可愛い。彼はその肩を撫ぜ、指先は少しずつ下へ、下へと期待してゆく。
「この一年、僕は」
二人の間にまた、妖しい雰囲気が舞う。
「僕は友希那のことばかりだった」
彼は今、友希那の上から友希那の全容を眺めつつ、友希那の胸元を擦り、友希那の腹を優しく労って友希那の茂みに向かう。
「いろんなことをしたし、夢の中でも、友希那に逢った」
指先は入り口を捕らえ、少しだけかき混ぜてみる。垂れ出る蜜がよく馴染む。友希那の柔い頬に緊迫した高揚が浮く。
穴が湿って、準備万端なことは茂みのおとなしい加減でわかる。
「楽しかった。でも、まだ満足できない。もっと、友希那と居たい。もっと、友希那とえっちなことがしたい」
大きな男児は母親の股へ、その内側に肩身を落とし、沈んでゆく。
「ずっと、友希那がいい……」
溺死のように友希那へ向かうその背を、ママはゆったりと撫でてくれる。
そうして耳元、いつでも追っている優しい声がする。
「いいわよ」
私は、あなたのママだから。
今、この世のそれ以外のところには、なんの価値もないのだとようやく理解した。
潤んだ今まさに蕾は花開き、彼を受け入れてくれる。
入り口だけがなんだか堅苦しく、けれど彼の強さがそれを貫く。するともう、抵抗感というものはほとんどなく、彼という形の分だけ、友希那の中も広がってくれる。膣内、無数に広がり続く肉ひだは彼のことを快く出迎え、おかえりなさいと包んでくれる。
彼は、身体を友希那へ本格的に倒した。
それは今までのどの体位とも異なるものだった。背を預け、広がるように寝そべる友希那に彼が突っ伏している。身体の表面と表面が触れ合い、肌肉が混ざって汗の粒が弾けている。密着があった。温かい。そして、汗を流したままの友希那は彼のことを抱き締めてくれる。
火照った女体が流れ込んでくる。彼もまた友希那のことを抱き締め、二人は動き出す。
それはもう、今までの明確な上下の運動ではなかった。それは身体の表面を触れさせたままただ擦れ合うものだった。それで心地がいい。彼は自らの肢体の全てを使って友希那のことを抱き締めたい。
そうして二人、絡み合いながら続いてゆく。口づけをしないわけにはいかない。友希那にしがみついたまま彼は頭をつるりと前に出し、友希那も口を預けてくれる。
この友希那、彼女こそ壮大な音楽世界の住人で、何か間違いがあり、こうして僕の前に実在しているのではないか。
彼はふとそのように考えた。もし、そんな妄想が事実だとしたら、嫌だ。友希那はいつか、音楽の世界に帰ってしまうのではないか。
そんなこと、あってほしくない。
彼が度々友希那の胎内に還ることを考えるとそれだってあり得ることだった。あり得ることだと思わせるほdの説得力が友希那にはある。
彼は固持するように、また己を鼓舞するように腰を動かした。そうして友希那の身体に己を印象付ける。
この友希那を離したくない。
だって友希那はママだから。僕を視て、僕を認めて、僕を欲してくれるから。
「あなた……」
そんな急いた心地が腰遣いから伝わったのか、友希那の右手が背から上がって、彼は頭を撫でてもらう。
「大丈夫、だいじょうぶよ……」
ああ、撫でてもらうなんて本当に愛おしい。
友希那、つまりママからそれを受け取ることとは彼にとって、いつでも複数の意味を持つ。
たとえばそれは肯定。あなたはそのままでいい、という最も強烈で温かい肯定を母は子へ、撫でるという方法で与えてくれる。その瞬間に何か縮こまっていた子の不安は全て払拭され、自らも、僕はこれでいいんだ、と安心する。
また、たとえばそれは寵愛。ほぼ無償の愛情を表現する時、母は子をめいっぱい撫でてやる。母からの愛情とは子にとって、己の人生がどのように曲折あろうと均一にある。子が求めれば、求めるだけ常に与えられ、なんでも受け止めてくれる。
そうした底のない愛情というものを、彼は友希那から受け取っている。本当に、本当に友希那こそが真の母親であり、ママの臀部はさらに熱烈にある。
竿は根本から先端まで友希那に触れて友希那に包まれている。友希那の胎内、その場こそが陰茎にとっての最大の安全地帯になっている。もう離れることなどできない。彼は友希那に、膣に、めいっぱい撫でてもらっている。身体の部分も精神的にも、それ以外も、湿り気を帯びて重なっている。彼と友希那、二人だけで通じ合い、二人だけで続いてゆく。
親子二人はより激しく、頂の部分へ昇ってゆく。
「でるっ――」
もしどこかに友希那が帰ってしまうとしても、それを阻止できるほどのものでありたい。
そんな想いと、それからやっぱり、めいっぱい甘えたい。そうした欲望を溜め込んで、友希那の奥地に彼は己を宿しておく。
最大限の射精と同時に子宮は彼に向かって駆動する。飛び出す彼のものを友希那は奪い取ってゆく。決定的な痕を彼は友希那の内部に埋め込むことになる。自らの愛情そのもので、この友希那を、ママを溺れさせる。
友希那をママとすること、僕は、普段のあの強さに惚れたのだろうか。それとも、時おりみせるあの慈愛の声に惚れたのだろうか。とにかく友希那に母性を感じずにはいられない。何か生粋というものではなく、相手を思いやることを知ったことで、少しずつ獲得した、いうならば後天的な母性が僕の、この弱い部分を擦るように誘う。
友希那にママになってもらいたくて仕方がない。友希那に理解してもらって、友希那に受け入れてもらって、友希那に、友希那にこそ愛でてもらう。尊重してもらう。完全に与えられる側になる。
僕の、行動の全てを友希那で埋め尽くしておきたい。疲れ切った時は抱き締めてほしい。眠たくなったたら膝を貸してほしい。どうしようもなく悲しい時に胸を使わせてほしい。
それが恋人の間で発生するママというものなのだけれど、僕たちはそれだけじゃない。
迷った時、不安に陥った時、何も選べなくなった時、僕の人生の権利を代わりに握ってほしい。任せてみたくなる。なさけなくなっておきたい、それでお世話をされたいし、醜態に呆れられたい。でも全てを包んでほしい。
「友希那……」
今、彼は友希那でひとつ卒業を果たした後、また友希那に入園する。
性に狂い咲く友希那のなんと美しいことか。
荘厳な気品の中に確かに淫らなものが浮かぶなんて、何より甘美で魅力的、また今回は、友希那が責めの立場だったため、今、隣にある歌姫はいつもより汗を纏っている。
その汗というものも、いつもと異なる。
友希那の音楽のライブの後の汗とは勲章だった。やり尽くしたことによる達成感をその身に、熱気として纏うもの、それがあの汗であり、発汗そのものだった。
だが、今回は限りなく野性的な汗がもうもうとある。
「友希那……」
現在、すっかり疲れ果てた彼と友希那はベッドの上にていよいよ暮れてゆく。
寝具はすっかり歪み、たとえばシーツなんて、じゃれ合った二人の痕跡を熱も含めてそのまま残している。
二人はそういうものを放置して、今はただあらゆる行為の余韻に浸っている。添い寝というもので、彼は友希那を、友希那は彼を抱き枕にする。
「なんか、たくさんしちゃったね」
「そうね」
彼がとろんと呟くと、友希那もまた囁いてくれる。
「少し、激しかったわ」
「そう、だよね」
ハハ、とほほ笑んでみるとすぐに、けれど、と友希那の声が持ち上がる。
「気持ちよかった」
「うん。僕も気持ちよかった」
二人、重ね合わせるように発言する。そうして互いの色香を意識していると、最初に彼が、ねぇ友希那、と胸の部分から声を出す。
「僕はきっと、どんなふうに君と出会っても、君に惚れていたと思うし、自分がしたいことを隠すこともしなかったと思う」
そうして語ってみると、対する友希那も、そうね、と視線を持ち上げる。
「私も、同じ気持ちよ」
くっきりと声が浮く。
ただやっぱり、ああ友希那らしいなと彼が愛おしく思うのは、そんな発言の次にすぐ、「年下の私をママだなんて、まだ少し、慣れない部分もあるけれど」と頬を揺らすところ。
友希那は続けて、さらに真剣に言葉を紡ぐ。
「そういうものに付き合うこと、つまりその、あなたの恋人として、あなたのママになることは、嫌ではないわ」
「友希那……」
「あなたの欲望に、どこまで応えてあげられるのか、私もはっきりとはわからない。けれど恋人として、私はあなたが求める全てに、全力で応えたい」
彼は思わずその胸元に、また頭を擦り付けてしまう。
だってこんな、こんなに尽くされていいのだろうか。友希那の中だけを意識する。そうして彼の鼻孔は、なんだか質の高いものに反応する。
それは、友希那の体臭。激しい運動による消耗、荒々しい風味は少し酸っぱいような、けれど甘く、舐め取りたくなる。
「んっ……」
思った途端、彼は動き出している。
友希那の頬へ首を伸ばし舌を突き出して投げている。湿った粘膜はすぐに友希那の汗を拭い、彼はそのまま舐め上げる。
「もう……」
彼の影が離れても友希那は眉を歪ませるだけだった。故に彼はその横で舌を収め、その表面を口腔粘膜のあらゆる箇所に押し当てて擦り付けた。強烈な友希那の汗の味が身体に染み、熱い身体がさらに火照って心地いい。
ああ、やっぱり間違いない。
確信なんて、最初からとっくにしていたことだった。
そのうえで彼は、また強く、深く納得する。
僕はきっと、この人を好きになるように最初から、そのように生まれてきた。
「友希那……」
愛している。そんな言葉では足りないから、似合う言葉を、一緒に探したいくらいに。