※この作品はR-18です。

君は湊友希那。   作:美肉。

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湊友希那ママお漏らし。

「ねぇ、ママ、起きてっ、起きてぇ……」

 自室で就寝していた湊友希那は囁き声で起床した。

 だが友希那は身体を上手く操作できなかった。それは深い眠りにあった友希那の意識と身体は離れており、だがそういった事情を無視する声が横から鳴っていた。

「ママ、ママ……」

「何……」

 友希那はこの薄闇の中で上半身を持ち上げた。毛布を捲り乱れている長髪を持ち上げ、マットレスへ肘を落として声の方向に顔を向けた。

 ベッドの横に立つのは彼、つまり恋人の男だった。何か怯えているような表情は今にも崩壊し泣き出してしまいそう。友希那が何か訊ねる直前、その彼はまた震える声を発した。

「出ちゃった……」

「出しっちゃった……?」

 彼の弱ったひと言は友希那のまだまだ胡乱な意識を覚醒させるに十分な刺激であり、だが友希那はいまいち発言の意味を理解できなかった。

「せーし、でちゃって……」

 そういう友希那を察したのか彼はまた口元を尖らせた。友希那はそれで状況を理解した。毛布を完全に身体から剥がし腰を起こす。長髪が乱れながら手元にぱたりと落ちてくる。友希那は彼の前、ベッドの上に座り込むと彼を見下ろした。

「夢精、またしたの?」

「うん……」

 彼はいつの間にか腰を落とし膝立ちだった。友希那の足に素手を絡ませ、顔を仰いでいた。

 夢精、という単語を自分で発して友希那は意識が集中する。

 就寝中、つまり夢の中であろうが関係なく性欲を発揮し、それで射精することを夢精と呼ぶ。

 最初、友希那はそんなものありえないと考えた。だって射精をするということは、まず勃起をするということであり、寝ている最中に身体がそれほど熱烈に蠢くなんておかしい。正確に脳裡で想像することが難しく、友希那にとって夢精とはそれこそ夢のような概念でしかなかった。

 そうした友希那の感覚を打ち壊したのは彼だった。

 有言実行、とは少し違うなと友希那も思う。だが彼は、実際に自分で夢精をし、それを友希那に報告した。

「ねぇ、ママ」

「いいえ、知らないわ」友希那はきっぱりと押し付けるように宣言した。「出してしまったのなら、自分で処理して」

「うう……」

「そもそも、出したからといってどうして私のところに来るのよ。こんな時間に。恋人だからといって、していいことと悪いことがあるわ」

 迷惑よ、と最後に口を開きかけて友希那は停止した。すでに彼はゴメンナサイと小さく謝罪し立ち上がっている。そのまま友希那に尻を向け歩き出した。出入り口に向かっているようだった。

「待って」

 友希那はベッドに着席したままだった。それで彼の背をみつめ声を発する。彼は友希那に尻を向けた時より素早く顔を向けた。

 その顔は湿っていた。

 友希那は立ち上がり彼へ歩いた。自分より背の高い彼の顔をみつめて手を取った。

 現在の彼の言動は確かに非常識だった。

 しかし、たったそれだけで拒絶し帰らせる、という仕打ちのほうがよっぽど非常識だと現在の友希那は考えた。

 思考していると不意に友希那は自分に嘲笑した。

 私もすっかり、この人に染まっているみたい。

「ほら、私に詳しくみせて」

 湿り気の中に期待を含んだ彼の顔を友希那はみつめた。

 

 時間を確認すると深夜の三時だった。

 友希那は部屋の照明を灯し、それから彼を見渡した。灰色のパジャマの下半身、その中心の股間の部分が確かに湿っている。

「それじゃあ、まずはそこに座って」

 友希那が指示をすると彼は躊躇した。なぜ、と訊ねると彼は自分の濡れたもので友希那の寝具が汚れるのが嫌だと話した。友希那はその問題はないだろうと考えていた。彼の下半身、事故と呼べるその箇所は股間のさらに中心部分に収まっており、そこから広がるとは思えない。

 結局、彼は友希那に誘導されるように寝具に腰を落とした。次に股を開き、友希那は床に膝を落とす。彼の両足のその中に身体を収め、手元にやってくる股間を視た。

 いいや、視界が股間を捕らえるより先、友希那の鼻先、つまり嗅覚がすでに彼の雄の部分を捕らえている。

「くさい……」

 友希那は股間を睨みながら慎重に、つまり音を立てない程度に素早く鼻で呼吸した。

 奥から、確かなものが、彼のにおいが薄っすら漂ってくる。友希那は両腕を持ち上げた。彼のパジャマ、そのズボンのふち部分に手を添え、一気に下ろした。何度か引っかかりながらも衣類はずり下がり、やがて男性的な太く角張った両足とそれから黒色パンツが出現した。

「あなた……」

 友希那はその膨らみと湿り気を帯びた股間をみつめていた。

 彼の股間、まだ黒色のパンツを着衣している箇所は不自然に突き出ている。屹立している。奥から太く突き出たものがパンツという布を吊り上げ、友希那に握手を求めるかのように膨らんでいる。

 夢精として一度出したはずなのに、それでも足りていないというのか。

「本当に、凄まじい性欲ね……」

 友希那はその様子をみつめて喉を唸らせた。そしてパンツのふちに指を通した。

 パンツだって確かに濡れ湿っている。それは彼が睡眠中に発した精液によるシミであり、だがパンツそのものがぐっしょり全て、潰れているわけではなかった。

 持ち上がった陰茎の先端、鈴口が触れているらしい箇所を中心にシミは広がって、それで小規模で済んでいる。パンツは今や形を不自然に変えており、シミの中心は友希那の頬に差し迫る勢いだった。

 また彼は、そういった自身の股間の事情をむしろ友希那へ主張するように、腰というか股間そのものを若干上擦らせている。

 それから友希那は手を動かすのではなく首を伸ばして接近した。

 たくさん、たくさん圧縮された男の熱気を自由に解放してやるよりまず先に、パンツの上から味わってみる。

 うら若き乙女が、まさか恥など知らぬという勢いで男の股間に鼻先をねじ込ませ吸引する。それで嫌悪するわけでもなく、むしろやみつき。女豹という正体を示す友希那は、より深い彼の体臭を求め散策する。

 パンツを履いたままの股間、その上を友希那は鼻先で練り歩く。

「くさい……」

 額を上げた後に友希那はひとつ呟いて両手を力んだ。少しクセのある果実の皮をそれでも剥くような動作で、やがて友希那の眼前に肥大化した陰茎が出現した。

「ああっ!」

 彼の上擦った声が深夜に響く。また、それと同時に友希那の眼前に、まだまだ期待に満ちた大きなものが出現する。

 立ち上がる肉棒に向かって友希那は軽く前傾姿勢になっていた。

 手元、というより顔面のすぐ近くにあるはずなのに、友希那は巨大な高層ビルを仰いでいるような心地だった。

 陰茎のさらに上、この凶器を発揮する彼の顔が申し訳なさそうに萎んでいる。しかし眼前、陰茎はそれを罰するように猛烈に上向いて主張している。

 友希那は彼の股間のその頂点を視た。裏筋、と呼ばれる箇所は名前の通り複雑な筋がある。また先端の亀頭という箇所は赤く肥えており、そして竿そのものを含める全ての箇所は湿り気のあるにおいを周囲に散布し友希那はそれを顔面で受け止めていた。

 友希那は竿の部分を右手で握った。

 少しぶよついた、知っている質感が素手の全体に染み渡る。それは熱気と共に友希那の皮膚と溶け合ってよく馴染む。だがなんだか特異な湿り気も確かにある。

 友希那は陰茎を握ったまま動かした。自分から視て前方向に、彼へ先端を向けるように優しく曲げ、それから竿の付け根部分に顔を差し込んだ。

 その部分とは竿の根本の部分であり、また睾丸袋がはじまる箇所だった。

 いうならば彼の股間の中間地点であり、友希那は何かさりげないというか、ひとつの流れでそうなっただけ、という雰囲気で鼻先を近づけた。

「におうわね……」

 ひとつ、素早く鼻で呼吸をすると異質な風味が脳まで上がってくる。それは彼の体臭で、だがいつもより湿り気が大量に含まれている。

「ひどいにおいよ……」

 ズボンどころではない、パンツという窮屈な密閉空間で射精をしたが故の湿り気があり、友希那はそれそのものを舐め取るように鼻で呼吸し続ける。

「本当に、ありえないにおい、こんなの……」

 流れ込んでくるものとは彼のプライバシーそのものだった。

 強烈で酸っぱい、獰猛な優しい風味がしい風味が鼻孔を通過し友希那の脳を魅了する。

「くさい」

「ゆ、友希那っ、いっぱい嗅いじゃ、恥ずかしいよ……」

 彼が腰を震わせる。友希那はそれを逃がすまいと左手を持ち出した。腰を握り締め顔をさらに進める。

「駄目よ」

 頬の位置に睾丸袋が触れている。友希那は、自らの頬で彼のものに擦り寄りながら、彼に対し鋭い目つきを飛ばしていた。

「私は、あなたのママなのよ?」

 それは彼の睾丸が友希那の頬の上を転がっているようにも、友希那が頬で彼の睾丸袋を撫でているようにも思える動きだった。肌同士はなんの抵抗もなく擦れ合っている。友希那の頬に触れるものとは熱気だった。それは湿り気を帯びた熱気で香ばしいものが漂っている。寝ている間に吐き出した精液が仕込まれており、その臭いは脳まで持ち上がってくる。

 友希那はその熱を顔面全域で体験しつつ、両手で彼の腰を持ち、それからまた鼻先を彼の股間へ突き進める。

 彼の雄としてのにおいを嗅ぐと、なんだか身体が操縦を失う。

 それはどういうことなのだろう。友希那自身にも詳しくはわからないが、とにかく彼の、睾丸だとか股間だとか、さらに尻穴、脇、胸元に首筋部分を嗅いでみるとたったそれだけで、なんだか心地が安定する。身体の中、脳から通うあらゆる神経組織が猫の毛並みのように逆立ち、その末端がカッと熱くなる。

 どうしようもない。嗅覚を敏感にする友希那はそのように、ある意味で彼の体臭に敗北し嗅ぎ続けるしかない。

「におい確認はしっかりしないと……」

 友希那は鼻先で彼を撫でていた。鼻呼吸と共に臭いが流れ込んでくる。

 ああ、これは竿そのものだけではない。股間に凝縮する汗のにおい、それからさらに、夢精による薄い精液のにおいも混入し、恐ろしく強烈な悪臭へ練り上がって――。

「くさい……」

 現在深夜三時、彼の前に跪く友希那はただ、男の体臭を求める正直な雌だった。

 最も安心できる雄の臭いを前に、いつもの毅然とした態度などどこにもない。

 はっきりいって、我慢ができない。友希那は水面から顔を出すように額を持ち上げ、大きく口から息を吐く。そうしてまた鼻頭で彼へ沈む。

「ひどいにおいよ、これ。くさい、本当に、いけないにおい……」

 今、彼のにおいは全て友希那のものだと決定している。鼻息も仕方なく、忙しなく友希那は続けていた。そうして、くさい、口ではそのように呟くが実際、友希那の彼を嗅ぐ鼻先は止まらない。まるで回収するようににおいを吸引し、口から吐息を漏らすと同時にまた、くさいと呟く。

 そうしたやり取りの中で友希那はひとつ彼について確信を得る。

「くさい」

 股間の位置、竿も睾丸も陰毛も、それ以外のあらゆる箇所を順番に嗅ぎ、くさいと口ずさむとそれだけで、彼のほうは何か嬉しいらしい。友希那が掴むこの竿も、腰そのものが跳ねるように震えている。

「くさい」

 という発音と共に竿が打ち上がるなんて、なんだが可笑しい。故に友希那は今度はわざと、くさいと呟く。

 彼はやはり股間で反応してくれる。

 友希那は彼の睾丸の近くで薄っすら笑みを造り額を上げた。

 もうどれくらいか、相当な時間、友希那の顔面には影が伸びていた。それが今、晴れ渡り、この深夜を吹き飛ばすほど燦然な照明を受ける。

「あなた、私にくさいと言われて、嬉しがっているの?」

「い、いや……」

 追求してみると彼は身を揺らした。友希那は彼の中から彼を仰ぎ、頬を少し傾けた。

「違うの?」

「い、いや……」

 嬉しいのかと尋ねて否定し、その否定を追求するとさらに否定する。

「どっちなのよ」

「あの……」

「はっきりして」友希那は彼の茂みの中から彼を睨んだ。鼻呼吸を続け、それでも厳しく彼に尋ねる。「私におちんちんくさいって言われて、嬉しいの?」

「う、嬉しい……」

 潤んだ声で表明する彼に満足し、友希那はひと言、「そう」と置いてまた股間を嗅ぐ。

 なるほど、恋人から罵倒されて喜ぶなんて彼らしい、奇妙な好みをしている。

 それにしても、ええと、こういう男の人の気質とはなんと呼ぶのだったか。

「マゾ……?」

 友希那はその単語について詳しいわけではなかった。

 だが知っていた。彼と恋仲になり、その世界に無知だった友希那は少しずつ性を知り、その中で、最初に見聞きした専門的な単語こそが、このマゾという単語だった。

 そして今、はっきりと自身の口でマゾと呼称する。そうして彼を覗いてみる。

「あなた、マゾなのね」

 マゾなんて、何気なく呟いたのだが彼にはよく効いたらしい。

「マゾで、おちんちんも、こんなにくさいなんて……」

 友希那は詰め寄るように口ずさみ、それから確認するように彼を嗅ぐ。

「男として、色々と考え直したほうがいいんじゃないかしら」

 だがそんな厳しい評価、助言さえこの男には餌でしかない。

「ママ、お願い……」

 彼の甘い声のみが友希那の自室に鳴った。友希那は額を上げ、それから彼のシモの頭部を右手で隠すように掴んだ。

 友希那がひとつ、鋭利な言葉で男性そのものを罵ると、彼は友希那に股間を示したまま暴れて、もっともっととせがんでくる。

 恋人としてそのように要求されるとなんだか嬉しいのだが、彼が男として特異な部分にあることは事実である。

 だが、そんなことで躊躇をみせる友希那ではない。むしろ何か決起し、この難解な男を満足させてみせる、などと燃え上がる。

「仕方がないわね。まったく」

 触診は無事に終了し、次に、口や舌を使った清掃がはじまる。

 

 まず彼には全裸になってもらってそれから、ベッドに仰向けになってもらう。

 この際、頭部に関しては枕を使用しない。友希那は枕を退かし、枕があった位置に彼の頭を誘導し、脱力してもらう。

 寝転んでいる彼はそれを見下ろし、枕を掴んだままの友希那へ名残惜しそうな目を向けていた。

 友希那としては自分の枕など寝具のひとつでしかなく、そこに利便性以外の価値など意識しない。しかし彼からすると違うらしく、愛する人の体臭がたっぷり染み込んで柔らかい。たったそれだけで男からすると、どんな寝具でも価値が付属する。

「……これはこう使うのよ」

 友希那は枕を持ったままベッドの上の彼に向かった。ちょうど腰の位置だろうか、適当なその部分を少し浮かせてと指示して隙間に枕を入れる。それでまた脱力していいと許可すると、彼の背中、やはり腰の部分と寝具は触れ合わず、その間に枕が挟まっている状況になる。

「ゆ、友希那……?」

 まだまだ理解をしていない彼を無視し、友希那もベッドに乗り上げる。彼の両足を器用に避けて場所を確保し、さっそく彼の両足に触れて目をあわせる。

「足、持ち上げてくれるかしら」

「え、あ」

「左右どちらもよ。お願い」

 呟きながら肌を擦る。すると彼は口で訊ねるより先に、今までベッドに落ちていた足を動かす。すると脛部分や関節部分、踵に足裏という、普段は影が差すような箇所が天井に向き、友希那の目に触れ、またここで先ほどの枕が役に立つ。

 寝転んだまま下半身そのものを打ち上げる。腰の位置の枕はそれを手伝い、やがて身体そのものに傾斜が出来上がる。

 これのおかげで彼は、ただベッドの上で足を上げただけではなく、何か尻部分を友希那に向かって突き出しているような体勢に変化する。

 枕とは、彼のこのひっくり返したような体勢が途中で崩れないようにするためのものであり、これがあると彼は力を抜いても足が下がらない。

「前に読んだ本に、こういうものが載っていたの。あなたがマゾなら、これも好きそうだと思って試したのだけれど、どうかしら?」

「すきかも……」

 友希那からすると、少し遠い位置、最初は枕があったその位置で今は彼がにやけている。

 強烈な光景だった。普段、寝起きのためのベッドの上に彼が全裸で居るだけでなく、その彼は枕を踏み台にし、こちらに向かって股間を持ち上げる。屹立した竿の全容だけでなく、睾丸の正確な形や付け根の構造に、そのすぐ下部の尻穴までが、揃いも揃って明かされて、友希那の手元に提出されている。

 これで友希那は、彼が披露する男のシモの部分を一望しつつ、股間を自由にされた彼の反応についても、逃さず確認できる。

 友希那は彼の太腿部分に左右の手をそれぞれ置いて尻肉を分けるように深まってゆく。自らの顔面をあの跪いていた時のように彼の中心部分に接近させ、それから鼻先を意識してみる。

 するとにおいが、脳天の位置まで一気に駆け上がる。

 尻肉を保持する両手が力み、友希那は彼の睾丸やそれより下、尻穴の周囲を嗅ぎ尽くす。

 とても、とても濃い彼そのものだった。

 ぶよついた睾丸を鼻でかき分けるようにし、睾丸の根本に顔を埋めて吸ってみる。一度精を吐き出した彼の股間からより香ばしい雄が香る。

 友希那はそれを強く嗅いでいた。

 口から息を吐いて、また彼に向かって沈み、大きく大きく鼻で呼吸をする。雄がムワリと持ち上がり、友希那の内部に大胆に入ってくる。後に続くふわふわとした波動のような心地に脳の奥が重たくなる。それでも友希那は新しい彼を吸引した。自分の鼻、いいや脳そのものに彼のことを記憶させたい。

 次に友希那は左手をぴんと伸ばしてその先端をちろりと舐めた。それは準備だった。指先を這う舌には当然唾液が潤沢にあり、その透明なものは左手に移りゆく。その、しっかりとぬめめった指先で友希那は彼の睾丸に触れた。

「おちんちんはあんなに硬くなるのに、こっちはいつでも柔らかいのね……」

 友希那は三本の指先を自分から視て左の側の睾丸に落とし、そのぶよついた質感と大きさを確かめるように撫でて廻った。

「しっかり、洗わないと」

 友希那の唾液で彼の睾丸が満ちてゆく。夢精ではない、正真正銘の潤いが広がって洗われてゆく。就寝中の彼が事故として漏らしたものを溶かし、代わりにとして自分の、つまり彼にとっての『ママ』の唾液のにおいを与えておく。

 こうしなければ、彼は安心できないだろう。

 彼と交際をはじめて約一年、もうそんなことくらいは想像できる。

 また、そうした処置で反応する部分とは彼の竿だった。

 唾液で湿った指先が蠢く度、友希那の瞳と彼の視線が触れ合う度、竿はびくり、びくりと友希那へ挨拶をする。友希那が彼を脱衣させた頃から竿は勃起の状態にあったが、唾液付きの指先で睾丸を撫でられてさらに逞しく育っていき、あっという間に限りなく極限の領域に近い卑猥さを示していった。

「指で撫でただけなのに、こんなに……」

 友希那は指を止め、何か穿つように立ち上がる彼について目を張った。

 するとその向こう、仰向けにある彼の顔がまたくしゃりと震えるる。

「だって、ママだもん……」

 芯のない声が空気に溶けてゆく。友希那はその、時間をかけて完成させたクレヨン絵画をみせてくれる男児のような、少し自信がない、けれど成果を認めてほしい、なんていう顔を視て頬を揺らす。

「ママだなんて、本当に変わった性癖ね」

 少なくとも、友希那は他で耳にしたことがない。だが彼が、これほど喜ぶのならそれでいいか、とも思う。

 最大限まで発揮された竿は彼の中心部分にて巨大だった。

 まさしく主を前に嬉々と蠢く犬の尻尾の様相であり、友希那はついにそれを右手で握り込む。

 というより、竿を中心にして自身の素手を丸め込むような動きを取り、すると素手のより奥まった位置に竿がやってくる。素肌と竿の表面が擦れ合い、彼がちょっとびくりと震えて、だがすぐに、溶け合うように馴染んでゆく。

 彼は竿をただ握り込むだけである程度の喜悦を顔に示す。

 だが女性の友希那からするとはっきりいって、その居心地のよさを想像することは難しい。本当にそれほど気持ちがいいのだろうか、という純粋な疑問が浮かぶし、また、特別に高度な愛撫をしているわけでもないのに、つまりこうして竿を握り込み、それから軽く上下に蠢くそれだけで簡単に喘ぐ彼のことが、なんだか可笑しく視える瞬間もある。

 それはこの体勢、下半身をひっくり返し、ママと頼りにする女性に全てをみせつける今の状況も影響しているのかもしれない。

 いいや、こんな巨体を持っているというのに、その中心、生えているものを掌握されるだけで縮こまるなんてやっぱり不思議だと友希那は思う。

 彼に対し手淫を実行する友希那は素手の動きをそのままに、口元で彼へ沈んでゆく。

 歌手としてあらゆる歌を歌いこなす友希那の唇は彼の尻の穴に寄り添った形に変形し、今まさに肌と肌は連結される。

「ひゃっ?!」

 動く前、一応と思い舌先で湿らせておいた唇が尻穴に触れると彼が驚いた声を出す。友希那はそんな彼の心地を理解しつつ、目元で彼を見守りながらも口は止めない。竿は右手で、尻穴は口そのもので完璧に取り押さえ、彼がちょっとの快楽で敏感に身体を揺らしても意味がない。左手は尻肉を保持しており、その三点で彼という男は完全に制圧されている。

「ね、ねぇママ……」

「なによ」

 友希那は一瞬だけ彼から口を外して訊き返す。

「あの、お尻の穴って、美味しい?」

 彼の弱弱しい質問が飛んでくる。友希那は一旦それを無視し、また尻穴のふち部分と自らの肉厚を連結させ、啜った後に額を上げる。

「こんなもの、美味しくなんてないわ」

 ぶっきらぼうに男を貶した後、友希那は口腔内で舌を尖らせる。右耳にきた長髪がするりと流れ、それは首筋を伝って自由になる。

 友希那はそれを見送るといよいよ、柔らかいまま尖った舌を彼の尻穴からその奥へにゅとんと進めた。

 押し込むようにすると穴は自ら拓いてくれる。ひとつの入場資格を得たような心地であり、友希那はついに彼の尻穴内部を散策する。

 今まで、友希那は彼の尻穴のふちの部分のみを撫でていた。それは奉仕としての側面の他に、慣れてもらうという意味合いも大きい。つまり彼の尻穴の、そのまさしく最初の部分は友希那の肉厚や唾液によってすっかりふやけており、このぬるついた皮膚にいよいよ歌姫の舌先が巡ってゆく。

 別に味や変わった質感はなかった。ただ狭く、それを舌で少し強引に押し広げると彼の身体そのものがびくりと跳ね上がる。友希那はもちろん散策を中断しなかった。舌の多くの部分が彼の中で彼を擦っている。その洗い落とすような動きはまた彼に快感を与えている。手淫についても休むことなく、蠢く素手からは相当下品な湿った音が続いている。

 友希那はこの恋人の男の尻穴について懸命に思い出していた。まず広さを、それから形に、どこが弱点なのか、というところを必死に脳裡で想起し、徹底的に探り出す。

 歌手として鍛錬を続けている友希那の舌とはこの世の何より柔らかい。その柔軟な勢いと対応力により彼の内側、そのあらゆる肉壁の喜ばしい箇所をひとつひとつ巡り、調子を窺うように擦って、そこに付着する汚れか、あるいはそれに近しい何かを擦り落として責めてゆく。

「あひ、友希那っ、友希那っ……」

 過激に開花する口元と共に友希那は右手も意識していた。

 歌手の右手には男の竿が包まれている。それは友希那が舌先を彼の中に進める度、何か新しく芯を強くしたように上擦って震えてくれる。いよいよ我慢ができないのか、天井に向け持ち上がった両足がそのまま空中でぐねぐね蠢き、身体そのものの均衡も怪しくなってくる。そろそろ射精だと友希那は探り、よりしごく動きを盛り上げる。

 しかし彼は絶頂の兆しをみせない。

 友希那は瞳をちらりと持ち上げ彼の表情を確認した。

 彼は歯を食いしばっている。

 まさか、耐えているとでもいうのだろうか。これほど、友希那が右手も、口元の全てを執行しているというのに、彼は何か負けん気を発揮し、射精しないぞと意気込んでいる。

「なんて人……」

 友希那は胸中で呟いた。この場の主導権は友希那にある。姫君は彼の弱点を完璧に突いている。しかし彼はそれで正直に負けることをせずむしろ抗っている。より長く快感に浸っていたいという貪欲な姿勢であり、友希那はそれに呆れた。彼の性欲の奥深さについてももちろん把握していたが、それを体現させられると唖然とする。

 また友希那は、今の彼が予想外だと感じていた。

 友希那が繰り出す指先の遊びは彼専属のものだった。彼という欲張りな城を陥落させるための特攻を友希那は続けているのだが彼はそれを耐えている。耐性がついてきたのか、この期に及んで生き残る彼ついて友希那は新たなやる気を意識する。

 頑丈になったのなら、また堕とすだけ。

 友希那は改めて彼を握る素手に熱を込めた。そして口元、尻穴に付属する全ての感覚を敏感に際立たせ、視線は彼から離さない。たとえ彼が羞恥に侵されていようが関係はない。肉厚な唇で尻穴をかき分けて穴そのものを拡張する。激しく埋まり、啜ってみると彼は背筋を反り返らせて喘いでくれる。友希那は左腕を廻した。腕は彼の腰部分にひたと絡み、縛り上げ、両手は震える竿の相手を開始する。

 激しく弾ける音が鳴り、それに追いつくように五指の動きが加速する。彼の足裏が上擦って口角から唾液が垂れる。それは複数の太い透明な線で、線がベッドのシーツに触れた時、友希那は左手を受け皿にした。

「イくっ!」

 友希那の手元で彼は腰を騒がしく浮かばせる。それは全て友希那に管理されていることだった。舌先が身体の奥まった位置を突いており、またそれにより睾丸の運動が加速している。

 全ての快感が硬直し、陰茎に集中し濁ったまま放出されている。その粘液も腹部にはそれほど飛び散らず、一切は友希那の素手により回収されてしまった。

 

 射精と共に彼は一応の収まりをみせた。

 友希那はそれから彼の湿った箇所を全て丁寧に拭き取った。その間の彼はじっと佇み、たとえば友希那が「立ち上がって」と指示すれば直立し、「座って」と指示すれば座った。それは機械的な動作ではなかった。彼は、友希那の短い指示に対し必ず「わかった」だとか「こうでいい?」とひと言確認し、友希那もまたそんな彼に対し「ええ」や「構わないわ」と続けた。

「ありがとう」

「どういたしまして」

 ベッドが二つ、彼と友希那の形に添って沈んでいる。

 彼はすっかり湿り気を拭い、また新しいパジャマに身を包んでいる。友希那もまた新しく、身体を清掃し、二人は互いに丁寧に会釈し、就寝に向かう。

「それで、どうしてあなたは私の隣で寝ているのかしら」

 ベッドの上で横になり、毛布を被せて友希那は気付いた。別にそういう約束をしただとか、彼が所望した、ということですらない。今、二人は何か自然な流れで添い寝を開始し、友希那はそれがはじまってすぐに、彼に鼻先で突くような質問をした。

「いいじゃん。友希那ママ……」

 彼は相変わらずの態度で友希那に向かって抱き着いてくる。

 現在、友希那は左側に身体を倒し、彼は右側に身体を倒す。男女は温かい毛布の中で肢体を絡み合わせ、だがそこに卑猥な湿度はもう存在していない。二人が持ち寄り、擦り合わせるものとは真新しいパジャマの布の質感だけであり、だがその中にほんのりと、女のにおい、男のにおいが香っている。

「まったく……」

 友希那は半ば呆れた心地で彼を受け止めた。

 普段、直立していると背丈の終点は彼のほうが高い位置にくる。しかしこうして添い寝をすると彼は必ず友希那の胸元に額を当て、女の温かい懐の部分に転がってくる。

 彼が毛布の中で蠢き、熱気が友希那へ密着してくる。友希那もまたそういう彼を無視することはせず、丸まった背、後頭部に素手を伸ばして包んでやる。

 すると彼はそれをひとつの合図だと解釈し、鼻先や頬を乳房に当てて緩ませる。

 友希那は彼のそういった態度にもう慣れていた。

 普段の彼とは逞しく寡黙な雰囲気の人だった。何事にも驚かず、過度に声を上げることはない。けれどそれは他への関心が薄いというわけではなくむしろ逆で、彼は周囲のあらゆる風景や人、建物に生物を視ている。

 好奇心、という部分において人一倍強く、そういう意味で態度が高揚する瞬間はある。

 だが、その瞬間に覗く『無邪気さ』と今の『幼さ』は異なるものだった。

 友希那は彼が自分のことを『ママ』と認識し、性的に介護されたがる状況について不可思議な質感を確かに感じていた。インターネットを使用し調べてみると、恋仲にある男性がそういった性質を持つ事例はいくつか存在し、実はそれほど珍しいものではないことを友希那はすぐに知った。

 個人的な趣味、気質が複雑に混じり合う案件であるが故、彼の好みについて他者に相談することは友希那はしなかった。それより友希那は彼について自らの技量、身体ひとつで満たしてあげたいと考えている。

 恋人としてそういう対応が正しいと思ったし、そうありたいと友希那自身が最初に意識してしまった。

 けれど、それにしたって……。

 友希那は寝そべりながら、またその胸元に彼という熱を意識しながらそれを撫でながら、自分の行動力に愕然とする。

 彼と出会い、その趣向に出来る限り付き添ってきたが、まさか尻穴の面倒までみることになるとは大胆だった。

 などと考えていると、ふと、友希那は「お漏らし……」と呟く。

 それからひとつ思い至って、友希那は胸元に突っ伏す彼に質問する。

「あなたは、赤ちゃんみたいな扱いを好んでいるのよね?」

「うん。そうだよ」

 彼は友希那から顔を上げ、至近距離で肯定する。

「確か、セイヘキ、と言ったかしら。そういう好みは、なんだか奇妙なものね」

「う、ソウカナ……」

「ええ。不思議よ」友希那は寝そべったまま、彼を抱き締めたまま真剣な目をする。「だって、成人もしているはずなのに、年下の私に甘えてくるだなんて」

 すると彼はすかさず口角を上げる。

「それくらい、友希那が魅力的ってこと」

「それは……」友希那は語尾を迷わせる。「自分では、よくわからないわ」

 友希那は避けるように呟いた。それは本心だった。

 すると彼はまた額を持ち上げ、唐突に目元を緩ませる。

「あの、ごめんなさい」

 卑猥な部分から一転、どうにも真面目そうな口ぶりに友希那は眉を歪ませる。

「どうして謝るの?」

「いやだって、こんな夜にこんなこと、ちょっと迷惑だったかなって……」

「そうね」

 彼の杞憂を友希那は素早く肯定し、口を続ける。

「夢精だと言っても、少し非常識な時間だったかもしれないわ」

「うん。次からは、お漏らしの処理まで一人でするよ」

「そう……」友希那は軽く目を見開いた。「あなたに、できるかしら」

「が、頑張るよ!」

「本当に?」

 今、友希那は目の前の、この彼のことが背伸びをしている男児にしか視えない。

「全部自分で、一人でするのよ?」

「……無理かも」

 つい数秒前の意気込みはどこへ消えたのか、友希那の腕の中、彼は萎んで視線を迷わせる。

 そんな彼を友希那はさらに包み、「仕方ないわね」と口元を緩ませる。

 それから少しの間、友希那は彼の背を撫で、彼もまた頬や鼻先で友希那の身体を撫ぜてゆくのだが、すぐにまた近くで要求する。

「におい、嗅ぎたい……」

 友希那は毛布の中で少し身体を動かした。首を軽く突き出して彼の口元に参上する。彼の荒い鼻先が友希那の首筋を登り、やがて二人は口と鼻で逢う。

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