「それで、今日は何をしていたの?」
その友希那の尋問に彼は黙秘を貫いた。
しかしそれはたった口元のことでしかなかった。そうではなく今、仰向けの状態ですっぽんぽんに披露されている股間の部分は相手が友希那となるともう素直になる。
天井に対しピンと伸び、けれどその竿の部分はベッドに腰を下ろす友希那の右手が掌握している。
よく、母親は息子のことを全て知っていると謳われるが彼にとって友希那とはそういう意味でも真剣なママだった。
「ご、ごめんなさい……」
「謝ってほしいわけじゃないの」友希那は素早く言葉を際立たせる。「私は今日、あなたが何をしていたのか訊いているの。答えて」
「ええと……」
彼は自分がいつどの時間に眠ってしまったのか知らなかった。
友希那の衣類を持ち出し室内に忍び込みたくさんたくさん楽しんだ、その後に力尽きたことは覚えているが、しかしそれが具体的にどの時間なのかというところについて彼は知らなかった。
いつの間にか意識が沈み、本格的に眠る中で仰向けに変形し夢精と共に目を覚ました。
その際、ベッドのすぐ近くに帰宅直後の友希那が腕を組んで立っていた。
しかし彼は止まらなかった。止められなかった。帰宅後すぐに異変に気付き、彼を探して自室までやってきた友希那の視線を浴びながらそれでも長い射精をとぷとぷと、まるでみせつけるように続行するしかない。
友希那からするとそんな絶頂も、そもそも彼が部屋の中に居ることさえ荒唐無稽な光景だった。
彼も彼で一度はじまった陥没を止められない。パンツの中、高揚する竿はその衣類を持ち上げてテントのように発揮している。下着以外を身に纏わない彼はそんな股間を突っ張らせ、先端は緩やかに湿る……。
そのように、彼は帰宅してくれた伴侶に対しなんの説明もなくひとまず射精をみせつけるしかなかった。
何か、弁明することなどなかった。友希那が視たもの、嗅いだものが全てであり誤魔化すつもりなどなかった。故に先ほどから必死に謝罪をしているが、友希那はたとえばベッドから降りろだとか、シャツを着ろということは要求せず、むしろその場でパンツを脱げと命令した。
彼はもちろんそれに従った。
それは脱衣というより何か暴くような動作だった。股間に貼り付いた衣類を取り除き、その内側に隠されていた彼自身を友希那に向ける。その最終兵器は一度夢精を終えたというのに立派なままで、むしろより濃厚な熱気が集結していることを彼は感じていた。
友希那は何も脱がぬままベッドに腰を下ろした。
ここは友希那の部屋で、これは友希那のベットのはずだが、まるで友希那専用の取調室に彼は容疑者として、いいやもう、半ばクロだと決定された真犯人として挙げられているような心地だった。
圧倒的な権力を持つ友希那により彼のものは確かに確保されている。それはただ性器を奪われたというだけのことではなかった。この場、というより関係性における主導権がこの瞬間に友希那に渡り、彼の雄としての命運など指先ひとつで決定する。
「私が家を出てから、すぐにこんなことをしたのかしら」
屹立した彼の陰茎と友希那の細い指たちが触れ合っている。
友希那はそのまま彼の根本を包み込み、さらにさらに、様子を窺うように目配せをしてくる。竿の根本、つまり陰毛が生い茂る箇所に臆することなく両手を添え、五つの指はさらに引き締まる。
絶妙な熱と、それから柔らかい質感に包囲された彼のものはそれでも蠢いて、またあっけなく雄を示すことになる。
友希那の五指が離れることはなかった。ママは素手の範疇から脱する亀頭を睨んでまた口を開く。
「パジャマは、確か洗濯かごに入れておいたはずだけれど、それを持ち出したのね……」
友希那の声を聞くと彼は、それが厳しい尋問であっても竿を上擦らせることになる。
「部屋に、勝手に入って。ベッドの中でオナニーをしたのかしら……」
友希那の視線が少し揺れ、彼、というより彼が今も背を落とすベッドを睨む。脳裡で素早く、たった独りで自慰行為に興じる恋人のことを想像したのだろうか。友希那は竿を握り締め、視線を彼に戻すとそのまま「何回したの?」と尋ねてくる。
彼はまた、口や表情、視線ではなく股間そのものをびくりと跳ね上げることで首肯を表現する。
「一回?」
びくり、と一度だけ竿が引きつる。
「二回?」
またびくり、と竿は友希那の五指を跳ね退ける勢いで一瞬動き、友希那はその脱走しかけた囚人を警棒で上から精圧するように素手を引き締める。
「さ、三回もしたの……?」
いまだっ、という勢いと共に彼は股間を三回跳ね上げる。「そう……」と友希那の納得しているような小声が響き、さらにその静謐な視線が室内を見渡す。
「それにしては、部屋のどこも汚れていないけれど……」
呟きながら友希那はまた彼の顔をみつめる。
「出す度に掃除をしたのかしら」
たった一度だけ股間が唸る。
「最初から飛び散ってしまわないように、気をつけたの?」
次は二度、股間を友希那の顔に向かって勢いよく主張する。友希那はまた、「そう……」と少し淡々とした具合で呟き、竿を握る素手を適度に動かしてくれる。
「そんな気遣いができるのなら、最初から、服を持ち出すことも、部屋に勝手に入ることもするべきではなかったわね」
何か追いかけるように彼は勢いよく竿を打ち鳴らす。
「が、我慢ができなかったの?」
彼は頷くようにもう一度跳ねた。流石に素手の中で暴れるそれに動揺したのか、友希那の語気に震えが浮かんでくる。
「それで、三回も……」
さらに肯定するため彼は根本の部分から大きく竿を揺るがす。「そう……」と友希那の声が溶け、少し間があり、またママはぽつりと呟く。
「オナニーやりたいだけやって、後はベッドでぐっすり眠るなんて、いいご身分ね」
彼はそこにも首肯しようとした。だが友希那の素手が先回りをし、彼の股間による痙攣そのものを抱き締めた。
次に柔らかいママではなく鋭い歌姫の視線が彼の頬を貫き、硬い声が響く。
「おちんちんで答えるのいい加減やめてちょうだい」
そんなことをいい渡されたって止まらない。
というより、止められない。だって友希那が居るから。男とは、好きな人が眼前に居ると竿の様子をその人に預けることになる。つまり今、彼の勃起も竿の起伏も全て原因は友希那であり、興奮するなんて仕方がない。びくびくと続くこの痙攣を彼が停止させたり、何か阻止するために彼が尽くすことのできる手段などなく、友希那が引き下がるしかない。
彼はただ、目の前に居てくれる友希那の色香に男として正しく反応しているだけ。
蝶が花の蜜に引き寄せられてゆくように、男児が、オモチャが視える硝子に寄ってしまうように彼の弾頭は友希那の色香に誘われているだけ。
つまり、チンピク。
それを男の力のみで堪えろというのもまた苦行で、やはり最良の対応とは相手の女性に処理してもらうこと。
「ちょっと……」
そうしたアピールというか、要求も含めて彼はさらに股間を強張らせてやる。ちょっとした痙攣でさえ察知されてしまう。意外にも友希那は視線を迷わせ、けれど男を握る手はなぜか離れない。そうして握手を続け、またもう片方の手が浮き、友希那はその指先で自らの毛髪を耳元にかけている。
そんな仔猫のことがまた愛おしく、彼は不覚にも股間を吊り上げた。
その衝動は友希那の素手の中で速やかに回収されてゆく。だが彼は主張を止めなかった。友希那に掴まれたこのまま、もっともっと暴れてみたい。そんな様子、蠢きそのものが素手を介して友希那に触れている。
「ちょっと、あなた……」
首筋を迷わせる友希那がまた可愛らしい。肩の部分が少し誇張され、腕が震える姿がもはや眩しい。なんというか股間に悪い。彼はたまらずピコピコと、さらに友希那の中で尻尾を振るう。友希那のほうは長い整ったあの薄紫色が揺れており、その合間からなんともみずみずしい、火照った肌色が窺える。
「あ、相変わらずね、その性欲……」
竿の表面が五指に激突し、擦れ、だがその鼓動は友希那に握られている。友希那の口ぶり、そのにおい、またいちいち、歩く度に何かふわりと香るもの。彼の痙攣はそれが続く限り連鎖してゆく。
これが普通の恋人であるのなら、仕事帰りの彼女を彼氏はとにかく労い、話を聞き、褒めたりする。
だが彼は今、そういう友希那にむしろ容態を視てもらっている。仕事を終えたばかりの恋人にさらにまたひとつ労働を頼んでしまっている。
「私が脱いだものでそんなに興奮するのなら、これが一番効果的だと思ったのだけれど……」
現在、彼という男はただ一匹の雄猫となり、この友希那に可愛がられている。
ベッドの上で四つん這いで、全裸のまま。けれどその背には友希那が今日一日を共にしたあの白色の上着を羽織っている。
「ふふ、よく似合っているわ」
友希那はというと、その上着のみを脱いだ状態で彼に寄り添ってくれている。
ベッドに乗り上げ、四つん這いにある彼にさらに被さるというか、彼が羽織る上着が、変につるりと滑って落ちたり、また手淫によって、彼が必要以上に揺れ動かないように固定している。
そうして男体に被さる友希那は伸ばした両手で彼の竿も主導権も握り締めている。
きっとバンドの仲間たちも、仕事関係のあらゆる人がそんな姿を想像しない。けれど仕事として的確に音楽を行った後、家に帰ってしまえば平然と、恋人の性欲処理に伏す。
それも、上着を貸し出してくれている。
一日ずっと袖を通し、背を覆い胸部を包んだ分厚い上着は仕上がっている。
「すごく、いい……」
彼はこの提供された上着を想った。
素肌に被さる少し変わった質量の中にも友希那が居る。今日一日、外で稼いできた女の風味、そういった熱気は体臭や汗と混ざって、奥のほうから分泌され、一切は着ていた衣類に染み込んでいる。
しかし、そういった香ばしさに富んでいるのは何も上着だけではない。今、身体を寄せて、みっちり触れ合うこの友希那だってそれなりに湿度が高い。上着を脱いだことでよくわかるあの黒色、身体に比較的ぴったり沿っているのだが、上着の下にあったということで布には何か凝縮されたものがある。寒いとはいえ流石に熱が籠り、その湿気が、布の上にもほんのり香っている。
雪原などと思ってみたが、その実態はむしろむわりと友希那が舞い、彼はそれを羽織っている。
いいや、羽織るように強いられている。
それは明らかに滑稽な様子だった。全裸のまま、唐突に上半身だけがもこもこと肥えている。女装と呼べるほどの完成度ではなく、ただ友希那の上着の内側に、少し汗ばんだ雄が入りこむ。恋人が着ていた衣類、という情報がより惨めな湿度を付与し、それは彼の興奮の邪魔にならなかった。
そのちぐはぐとした様相と、衣類から香る友希那の風味に彼は脳裡がくらくらと潤うことを意識する。またその高揚感は股間、その屹立に対し普通ではない硬さを与えてくれる。
「私がついさっきまで着ていた上着、最近は寒いから汗はそれほどかかなけれど、体温はしっかり移っているし、問題ないはずよ」
ちょうど、耳元に友希那の口元がある。それは彼の左右のどちらかに留まることもなく、どちらにもやってきて吐息を与えてくれる。
また、そうした友希那の動きの度に彼が惹かれる部分とは長髪だった。
今、友希那も彼ほどぼ同じ四つん這いの体勢で、故に長髪は前のめりに垂れている。その流れは彼の身体にだって触れており、細かい質感は友希那の首の動きによりいちいち蠢く。彼の背から垂れてゆくものもいくつかあって、さらに股間、友希那の素手が絡まる箇所はただ股間を刺激しているだけに留まらない。たとえば左手だけが胸板に伸びて、そこを擦ってくれたり、乳首に触れて遊んでくれる。
彼はたったそれだけで腰を打ち上げるが、その痙攣も友希那の身体に回収されてしまう。
さらに彼が震える度、竿を握る友希那の素手は引き締まる。そうして彼は、まさしく自分が、友希那という姫君の支配に下ったことを意識する。
「今日、簡単にはイかせないわ」
左右から握られた竿の行く末を彼はもう知らなかった。背中から彼を覆う友希那による手淫は開始され、すでにある程度仕立てられた精液が一斉に持ち上がる。
友希那といえば勇猛果敢な歌姫という印象は強い。
何事にも腐らず取り組み、最後には答えをみつけて前進し続ける音楽家という姿を彼でなくとも描く。
そういう面影から視ていると今の友希那は不思議なものだった。
独力で突き進む姿には一応の勇ましさを感じるが、それで集中している行為が男への奉仕とは、歌姫という二つ名もきっと呆れてしまう。もっとも、友希那自身はそんな周囲の印象や二つ名などということはひとつも考慮していない。彼女からするとそういうものにはあまり価値がなく、音楽家としてはただ歌を歌いたい。恋人として、快感を与えたい。
本気の友希那とは隙がない。完全に男の要領を把握し、的確に、それでいて己が発揮できる最大限の一手を常に打ってくる。男はやがて我慢することより負けることに魅力を感じるようになる。
だが、それさえこの姫君にはお見通しのようだった。
「――駄目よ」
鋭い声と共に熱気が終了する。今、四つん這いの彼はそのまま友希那に素手で相手をしてもらっていたのだが、その両手がパッと離れ、竿の先端はそれを探すように空中を跳ね廻る。
そんな痙攣が終わる頃を視て、友希那の両手はまた彼に取り掛かる。すでにねっとりと熟れている両手が被さり、竿の部分を前後に動いてくれる。彼の中、睾丸で収まってしまった熱気はまた運動を起こしている。なんだか漲るというか、充填されてゆく心地が盛り上がって、彼は雄として細くなる。
「駄目」
しかし友希那の素手はまた逃げ去るように離れてしまった。
「友希那、なんでっ、ゆきなぁ……」
彼は四つん這いのままぎしぎしと呻っていた。四肢、というより関節が強張り、もう自分だけではどうにも発散などできない強い熱気が身体の内部で狭苦しい。はやく友希那に搾ってほしい。すると激しくのたうつ股間に友希那の両手が飛び込んでくる。思い出したかのようにまた竿が、勢いよく盛り立てられて彼は背筋を上擦らせる。
あの、消えかけた熱気たちがまた濃厚に高ぶってゆく。友希那の素手も、今度こそそれに合わせて共に加速してくれる。股間の位置から激しい湿った音が連続し、いよいよ達するという瞬間にその原動力がすっぽりと消えた。
「ああぁっ……!」
彼は首を垂らした。
今まさに、快楽と自分そのものが、きっちり隔絶されてしまったことを嘆いていた。
その股間は、自分で視てもおかしいと思うほど膨張し、また先端から粘液が太い線を垂らしている。それは友希那のシーツに触れているが本人は気にせず、むしろその粘液を素手に取り、彼に塗りたくる。
もう、こんなもの……。
だが友希那は無情に行為を続けてくる。
「待って、もう……」
「何よ。もう限界なの?」
彼は声ではなく首を振って答えた。
その返答に友希那の手淫が当てられる。彼は、いよいよ発射することができるのだと確信していた。そういう意思を持ち、射精へ一直線に組み上がっていた。それは強烈な意思であり硬い覚悟がある。
竿をしごく友希那が次の瞬間に素手を外して彼の雄としての運動は全て失われてしまう。
「まだよ」
彼はすでに限界だった。もどかしさと共に宙を落ちている。しかし友希那は最後のひと押しをしてくれない。竿部分をしごくのではなく先端部分だけを緩くあやしてもらう。それだって気持ちいい。けれど友希那は絶対に向こう側には飛ばしてくれない。
この友希那はどういうわけか、男の寸前のところついて完全に理解し、彼が果てる前に素手は解散してしまう。
射精への快感は全てこの友希那という支配者に掌握されている。故に彼は名残惜し質感を股間に湛えたまま上擦った声で、何かどうすることもできず佇むしかない。
そうして少しの休息があり、次に友希那は両手で彼のことを挟んでくれる。
五つの指が左右から迫り腰も確保されている。
友希那は身体を伸ばし、彼は耳元が温かくなる。
「あなたの好みに付き合うようになってから、私も少しずつ、わかってきたの」
好きなのでしょう、と呟くと同時に親指が、竿の位置から亀頭の位置にまで流れ込んでくる。
「こうしてきつく責められて、けれど、絶頂はできない。完全に、ママに管理されているこの感覚がたまらないのよね」
今、四つん這いにある彼の上に友希那が寝そべり、その素手の中に完全に雄のものは取り込まれている。
「偉いわよ。私の指示通りに、我慢ができているわ……」
そういうものを意識すると、喜びに満ちると同時に、彼はもっと友希那を楽しみたくなる。
故に彼は腰をさりげなくへこつかせた。友希那の素手の中、その五つの指へ擦れるように狙ってみる。
しかし、そんな動きが友希那に、ママにばれていないわけがない。
「こら」
という少し厳しい声と共に緩んでいた両手が引き締まる。根本の位置に指が終結し、射止めるように縛られる。
さらに友希那の唇は弱った彼の右耳を擦る。
「駄目よ。おちんちん、気持ちいいのはわかるけれど、だからといって、私に無理に押し付けないで」
みっともないわ、と友希那は続けて耳そのものが温まる。
「ご、ごめんなさい……」
「謝るのではなく、腰を動かすのをやめて、と言っているのよ」
友希那の声に対し彼は肩身を震わせる。
確かに今、友希那の素手も、腕も全て停止している最中に彼はゆっくりと腰を動かしていた。だって、だって我慢ができない。だってつらい。だから少しでいい。ちょっとだけでも友希那の中で、ぬとぬと転がりたい。
「勝手に腰を動かさないで」
彼のそんな思惑だってこの恐妻に縛られてしまう。素手どころか友希那の腰、あのほっそりと組み上がる安産の部分が後方からせり上がって確保されてしまう。
「はやく射精したいのはわかるけれど、だからって、妙なことはやめて」
ああ、こうなってしまうともう、男のほうに逃げ場はない。いいやそもそも、四つん這いの男に女が被さる時点で、男のほうに自由はなくなった。
彼はそんなことさえ上手く理解せず腰を震わせるのだが、それはこの女豹の気質を高ぶらせるだけだった。
「これはお仕置きであるということを、あなたには忘れないでほしいの」
友希那は今、右手で竿を、左手は亀頭に対する蓋を担当しているがそんな体勢だって長くは続かない。左手はやがて親指と人差し指で輪を造り、その形は竿と亀頭の中間部分、首のような溝部分に当てはまる。
「私の許可も何もなしに、勝手に気持ちよくなるなんて許さないわ」
まさしく躾のように、また激しく両手が前後するがすぐに停止してしまう。
「あなたはいい子だから、私が居ない間に勝手にベッドに入って、パジャマや下着も勝手に使うような人だけど、それでもいい子だわ」
そうした拘束に続いて友希那の肩が彼に迫り、吐息が含まれる。
「だから、私の言うこと、あなたはしっかり聞くことができるって、信じているの」
「う、うんっ。言うこと聞ける、聞けるから――」
彼は弱弱しく叫んでいた。友希那の両手はまだまだ絡み付き、前後に動くことはないが、彼の形を擦ってくれる。
「本当に?」
「うん。ほんとう……」
「しっかりできるのね?」
「できる、できるよっ、だから……」
彼の湿った声に続いて、友希那の両手がようやく再開してくれる。もう、何度も行き先を見失い、その度、身体の中でより濃厚に育つそれを、やっぱりこの友希那が、最後まで面倒みてくれる。
「ああ、イく――」
ひねり出した声、その次の瞬間、また友希那の素手はぴたりと停止し動かなくなる。
彼がそんな様子に目を丸くしていると、友希那は唐突に軽い声質を造る。
「お腹が減ったわ」
「え、ゆ、友希那……?」
彼が振り向く間もなく、股間から友希那は退散する。
「残念だけれど、ここでもう終わりにしましょう」
「ゆ、友希那……」
「ほら、四つん這いになっていないで、はやく立って、退いてちょうだい」
「やだ……」彼は肩を震わせる。「さ、最後まで」
「嫌よ」
けれど友希那はきっぱりと、彼に声を突き付ける。
「だってあなた、反省していないじゃない」
「し、してるよ……」
「いいえ。していないわ。それに今の寸止めも、あなたからすればただのご褒美、それじゃあもう、続ける理由がないわ」
「友希那……」
「私はあなたにお仕置きしたいの。そしてあなたは、それを受けるべきなのよ。でもお仕置きがご褒美になっているのなら、やるだけ無駄よ」
冷静に呟く友希那の声を追うように彼は「ねぇ……」と囁いてそれからすぐに「やだよ……」と懇願した。竿だけを握らない友希那は「うるさいわね」と 責する。
「さっきからヤダ、ヤダ、ヤダ。ヤダばかり。あなた、そんなことしか言えないのかしら」
「だ、だって……」
「今の状況が嫌であるのなら、お願いのやり方も、考えるべきじゃないかしら」
友希那の声がさらにさらに鋭く突いてくる。
「お、お願いっ、お願いしま――」
「ちゃんと全部口にして」
冷静な友希那に向かって彼は全力で雄を披露する。
「お願いします、お射精。お射精したいですうっ!」
そんな満身創痍を後ろから女王たる友希那が握り締めて走り出す。もう、我慢だとか堪えるというものはどこにもない。ただ熱心に突き進むのみであり、彼は四つん這いのまま絶頂する。それでも友希那の素手は止まらなかった。勢いよく唸り、尿道部分が強張って暴れているというのに友希那は高速の運動を停止しない。そんな躾も手伝って彼は何度も、何度もやり直すように友希那の寝具に精液を排泄した。
「まだよ」
「うううっ……」
「あなたのキンタマの中身、全部吐き捨てるまで許さないわ」
そこに彼の意思は存在していなかった。射精の勢いが衰えたというのに友希那は強引に素手を続け、そんな刺激も雄としては嬉しい。発射もうは止まらない。彼は友希那を目印にして排泄を続け、その隙だらけの口元を今度、友希那が覆って、二人の唾液はかき混ぜられる。
ああ、なんて豪華な射精だろう。
友希那の寝具に飛沫をまき散らしつつ、彼はこの恵まれた感覚に酔っていた。
自主的に献上するのではなく、友希那から、与えられるように射精するなんて。ああ本当に、こんなもの、味わっていいのだろうか。だが友希那の舌先はそれを肯定してくれている。それはたとえば保育園初日、がやがやと盛んな園児たちに向かって歩めない独りのところに手を差し伸べて、いいんだよと引っ張ってくれる保育士先生のような温かさがある。
やがて勢いが途絶え、完全に発射もなくなると今度、萎んだ彼のものを友希那は撫でてくれる。
そうした微妙な刺激がまた嬉しくって、彼は自作のクレヨン絵画を披露する男児のように何度も追尾で漏らしておく。
「私が寝る場所なのに、精子をまき散らすなんて」
男女二人の動きが完全に停止した後、最初に友希那が額を上げる。そうして彼の懐、股間の部分を覗き視てスンスンと意識する。
「においも、凄まじいわ……」
友希那は彼の根本を撫でながら続ける。
「ここで眠ったら、それだけで全身が、あなたの精液のにおいになってしまうわ」
友希那の声が、彼の脳裡で妄想を拡張させてくれる。
「これはまた、お仕置きが必要ね……」
今、管理の時期は終わって、次に猛攻の時間がはじまってしまう。男はもちろんこれにだって逆らえない。
男体の上から、そういう波を乗りこなすように友希那は身体をぴったり合わせて、揺れる腰や、男の肩幅を押さえ込む。そうして股間、素手は猛烈な速度で動いており、彼はもう、隠し持った精液さえ吐き出すしかない。
「イけ」
その重たい声により彼の細胞は射精へ一斉に向かう。
彼はもう、友希那から許可をいただかなくては射精へのたった一歩でさえ踏み入れることができない。性的な場面における彼の絶対がなんなのか、友希那は徹底的に教え込むつもりらしく、本当にこの人じゃないと興奮しない身体になる。