※この作品はR-18です。

その配信画面の裏側で、女神が愛に狂うとき。   作:あやりゆるゆれ

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──「悪魔」は陶う。



醸造.肉の調律

 

 

 

どこまでが床で、どこからが壁なのか、その境界は曖昧だった。 

 

世界は脈動していた。

 

生々しい肉色が、胆汁をぶちまけたような濁った黄色と、腐敗を思わせる黒ずんだ茶色の斑に侵されている。

 

ぬるりとした粘液が、天井とも地面ともつかない起伏を覆い、どこからか差し込む光を鈍く反射していた。 

 

人の腕より遥かに太い肉柱が、林のように天を衝いているのか、あるいは地から生えているのか。

 

その表面を、血管じみたものが絶えず浮かび上がっては、みみずのように蠢きながら消えていく。

 

その中心。

 

ひときわ大きく盛り上がった肉の玉座に、悪魔アムリタは退屈そうに頬杖をついていた。

 

「……ふぁあ」

 

陶器のように白い肌。

 

豊満すぎる乳房と腰の曲線とは裏腹に、その紅い唇から漏れた吐息は、熟れすぎた果実が腐敗する寸前の、甘ったるい倦怠に満ちていた。 

 

噎(む)せ返るような芳香。蜜とムスクが混じりあった濃密な官能が、鉄の錆びたような微かな血臭と混じり合い、この領域の空気をじっとりと生暖かく揺らした。

 

くちゅ、くちゅ、と粘着質な水音が響いている。 

 

一定のリズムで。 

 

びしゃ、びしゃしゃっ。 

 

じょぼ、じょぼり。

 

アムリタは、その音のする方へ、気だるげに視線を向けた。 

 

彼女の玉座のほど近く。 

 

ひときわ見事な一本の「肉柱」が、機械的に、小刻みに痙攣を続けていた。 

 

元は、天堂梨花という女だったもの。 

 

彼女の『歪な愛』は極上の魂となり、今やこの牧場(ここ)で最も優れた「精気」を生み出す、アムリタお気に入りの家畜と成り果てている。

 

「んー……」

 

アムリタは、その白い指で、梨花だったものが放つ粘液の飛沫を空中で受け止めた。 

 

指先でこねると、それは芳醇な匂いを立てて霧散する。

 

「ふふ、あの子は相変わらず優等生ね。魂が極上だっただけあって、『精気』の“質”も最高だわ」

 

腹部は異様に膨れ上がり、内側で何かが激しく蠢き、その刺激によって、股からは絶え間なく「びしゃ、びしゃしゃっ!」と潮が噴き出され続けている。 

 

顔には壺状の肉が被さり、声という抵抗すら奪われ、無音のまま、ただ永遠に快楽の責め苦に喘ぎ続ける、完璧な生産ライン。

 

アムリタは、その完璧な光景に、再び小さなあくびを漏らした。

 

「でも……」

 

完璧すぎた。 

 

歪な愛が完成し、絶望の中で収穫され、調教され、そして見事に「柱」となった。 

 

だが、一度「完成」してしまえば、それはもうアムリタの心を動かす「作品」ではなく、ただの「製品」だ。

 

「完璧に“完成”しちゃうと、見てても面白くないのよねぇ」

 

アムリタは玉座に深く座り直し、退屈しのぎに指を振った。 

 

目の前の空間が、粘液の水面のようにぐにゃりと歪み、やがていくつかの「窓」となって、彼女が“仕込んで”おいた、いくつかの欲望の光景を映し出す。

 

「さて、次の“熟れ頃”は……っと」

 

窓の一つには、権力に溺れる男。 

 

窓の一つには、嫉妬に狂う女。 どれもこれも、アムリタが少しだけ後押しした欲望が、順調に育っている。 

 

だが、どれも「梨花」を超えるほどの芳醇さには欠けていた。 

 

所詮はありふれた人間の業。デザートにするには、まだ青い。

 

「んー、不作だわ。もっとこう、背徳的で、グズグズに熟れたやつは……」

 

アムリタが、つまらなそうに窓を消そうとした、その時。 

 

ひときわ異様な“熱”を放つ、小さな窓に、彼女の目が留まった。

 

「あら?」

 

そこは、薄暗いマンションの一室だった。 

 

二人の男女が映っている。 男は疲れ果て、生気を失った目で虚空を見つめ、女は、その男の喉元を、まるで遺品に触れるかのように執拗に撫でている。

 

女の身体は、異様に小さかった。 

 

身長は百三十五センチほどか。

 

痩せぎすで、胸も薄く、まるで成長が止まった少女のようだった。 

 

アムリタは、その魂の“歪み”に、すぐに気づいた。 

 

ああ、これだ。

 

覚えてるわ。VTuberのコハルちゃん。賢吾さんの『声』に異常執着してた子。

 

アムリタは、あの『声の檻』が完成した時、その歪な共依存の匂いだけは嗅ぎつけていた。 

 

だが、その時はまだ「梨花」という極上のデザートがあったため、放置していたのだ。

 

「あらあら、どうしたの。あんなに熱烈だったのに、すっかり『空っぽ』じゃない」

 

窓の中の二人は、生ける屍だった。 賢吾は声を失い、結衣は快楽(こえ)を失った。 

 

『声の檻』は、その中身(こえ)を失い、ただの『肉の檻』として、空虚な共依存だけが残っていた。

 

アムリタは、がっかりして唇を尖らせた。 

 

「なーんだ。枯れちゃったの? 期待外れだわ。もう収穫どきも過ぎて……」

 

そう呟いた、瞬間だった。

 

窓の中で、結衣がキッチンでよろめき、熱い鍋に手を伸ばした。 

 

それまで虚無に沈んでいた賢吾の目が、カッと見開かれた。 

 

反射だった。 危機感が、ストレスで閉ざされていた彼の声帯を、強制的にこじ開けた。

 

「危ない!」

 

賢吾の喉から、失われたはずの「声」が迸った。

 

その瞬間。 

 

アムリタは、肉の玉座から、思わず身を乗り出していた。

 

「きゃーーっ! 嘘! このタイミングで『声』が復活!? しかも、この“歪み”!」

 

アムリタの瞳が、愉悦に見開かれた。 

 

枯れたと思っていた果実が、最後の最後に、ありえないほどの糖度を凝縮させて爆発したのだ。 

 

『声フェチ』と『ロリコン』の共依存。

 

失われた麻薬(こえ)の再供給。 禁断症状の果てに与えられた、究極の救済(ぜつぼう)。

 

「これよ! これ! これが一番“美味(おい)”しいのよ!」

 

アムリタは、最高のドラマを鑑賞するように、窓に映る結衣の姿に釘付けになった。

 

「ひ……ぁあ……っ」

 

結衣の全身が、電流に打たれたように硬直した。 

 

小さな身体が、ビクンッ!と激しく跳ねる。 

 

白目を剥き、全身が激しく痙攣した。 

 

痩せぎすの身体が、制御を失い、その太ももを熱いものが伝っていく。

 

アムリタは、その微かな音すら聞き逃さなかった。 

 

「あー! 見て! 結衣ちゃん、白目剥いて痙攣してる! あ、漏らしたわね♪ 最初の絶頂(それ)で!」

 

崩れ落ちる結衣を、賢吾が慌てて抱きしめた。 

 

彼もまた、自分の声が出たことに混乱していた。

 

「ゆ、結衣さん!」

 

ダメ押しだった。 

 

焦りを含んだ、あの渇望し続けた『低音』が、耳元でダイレクトに響いた。

 

「あ"、あ"あ"あ"ーーーっ!!」

 

結衣の痩せぎすな身体が、快感のキャパシティを完全に超えた。 

 

奥から、何かが強制的にこじ開けられる。

 

「(びゅ、びゅるるっ!)」

 

水っぽい、激しい音が響いた。 

 

「きゃー! ダメ押しの一声! 低音(バス)が響く! うわぁ! 潮(しお)まで噴いちゃった! もう最高!」

 

アムリタは、興奮に頬を紅潮させ、手を叩いて喜んだ。

 

窓の中。 

 

結衣は、涙と涎と、自ら垂れ流した体液(しお)にまみれながら、賢吾を見上げていた。 

 

その瞳は、狂気に満ちた、独占欲の光を宿していた。

 

「おかえりなさい…、私だけの"ムラサキ"さん…!」

 

結衣は、震える小さな手で賢吾を床へと押し倒した。 

 

「もう二度と、この声の檻から出られないわ…!」

 

彼女の快楽と、彼女の支配欲が、今、まさに最高潮に達しようとしていた。

 

それを見たアムリタが、三日月のように紅い唇を吊り上げた。 

 

「残念だったわね、コハルちゃん」

 

アムリタは、肉の玉座からゆっくりと立ち上がった。 

 

「その『檻』、私が横取りするから」

 

結衣の快楽と支配欲が最高潮に達し、彼女が「永遠の支配(きずな)」を確信した、まさにその瞬間。

 

アムリタは、目の前の「窓」に、その陶器のように白い手を、容赦なく突き刺した。 

 

空間が、粘液のように歪む。

 

アムリタの手は、窓の中の現実、ベッドの上にいる結衣の胸元に、直接現れた。 

 

賢吾には見えない。 

 

だが、結衣の魂には、それがはっきりと見えた。

 

「え…?」

 

結衣の、快楽に歪んだ顔が、一瞬、困惑に凍りついた。 

 

アムリタは、ニヤリと笑った。

 

「はぁい、ごちそうさま♪ あなたのその“てぇてぇ”魂、最高に熟してて“美味(おい)”しそう!」

 

アムリタは、結衣の魂――まばゆい光の塊――を、その指で鷲掴みにした。

 

「ぶちり」

 

何かが引き千切られる、おぞましい感覚。

 

「いやあああああ! 賢吾さんっ! 私の麻薬(こえ)をかえしてぇぇぇ!」

 

結衣の魂が、絶叫した。 

 

だが、その叫びは、もはや賢吾のいる世界には届かない。

 

アムリタは、窓から手を引き抜いた。 

 

その掌には、激しく抵抗し、明滅する光の塊が握られていた。 

 

窓の中では、賢吾が、突然ぐったりと意識を失ったかのように見える結衣の小さな身体を、必死に揺さぶり続けていた。

 

「んーっ、絶品!」

 

アムリタは、極上の魂の抵抗を楽しみながら、自らの『人間牧場』の奥深く、梨花の柱が待つ、あの広間へとゆっくりと歩き出した。 

 

新たな家畜(デザート)のための、特別な「器」を用意するために。 

 

遠くで、梨花だったものの「びしゃ、びしゃしゃっ」という、無機質な噴出音が響いていた。

 

 

 

───

 

 

 

水底(みなそこ)だった。 

 

ぬるい、生温かい羊水のような闇に、桜庭結衣の意識は浮上した。 

 

最後の記憶。 

 

賢吾さんの、あの復活した「声」。 

 

脳髄が焼き切れ、全身が噴き上がった、あの究極の絶頂。 

 

そして。 「もう二度と、この声の檻から出られないわ」 そう、彼を支配したはずの、あの瞬間に。 

 

白い手が、空間を裂いて現れた。 アムリタの、嘲笑うかのような甲高い声。

 

「いやあああ! 私の声(まやく)をかえしてぇぇぇ!」

 

魂だけの絶叫。 

 

賢吾さん……。

 

身体の感覚が戻ってくる。 

 

手足が動く。 

 

だが、その感触は、決定的に間違っていた。 

 

軽い。 

 

軽すぎる。 

 

賢吾さんと「共犯」になり、大人の女のつもりでいた、あの重みがない。 

 

指が、骨張っている。 

 

手首が、細すぎる。 

 

これは、知っている。 

 

これは、私が一番、嫌いだった。

 

「……あ、」

 

音。

 

視界が開けるより先に、「音」が、彼女の鼓膜を襲った。 

 

『声フェチ』だった彼女の耳は、異常に鋭敏だった。 

 

違う、これは賢吾さんの『低音』じゃない。 

 

これは、なんだ。 

 

ねち、ねち、と。 

 

粘液が擦れ合うような、湿った音。 

 

くちゅ、くちゅ、くちゅ……。 

 

じょぼ、じょぼ、じょぼり。 

 

何かが、絶え間なく溢れ、滴り落ちる音。 

 

そして。

 

びしゃ、びしゃしゃしゃっ! 激しく、何かが噴き上がる音。 

 

不快だ。 

 

おぞましい。 

 

ここは、どこ。 

 

聞きたくない。 

 

結衣の心臓が、恐怖に早鐘を打った。

 

重い瞼(まぶた)を、こじ開ける。 世界は、脈動する肉色だった。 

 

あの、アムリタの領域。 

 

『人間牧場』。 

 

腐った蜜とムスク、そして強烈な「性」の匂いが、鼻腔を焼いた。

 

「う、ぐ……っ」

 

吐き気がこみ上げる。 

 

結衣は、ぬるりとした床に手をつき、かろうじて上体を起こした。 

 

そして、自分の手を見た。 

 

小さい。 

 

骨張っている。 

 

肌は、生気のない、蝋のような白さ。

 

違う。

 

すぐ傍にあった粘液の水溜まりに、自分の姿が映っていた。 

 

怯えた顔は、自分《コハル》のもの。 

 

だが、その下にある身体は。 

 

平らな胸。 

 

骨の浮いた鎖骨。 

 

小枝のように細い手足。 

 

あの日、賢吾さんに会うために捨てたはずの、コンプレックスの塊。 

 

『身長百三十五センチの、痩せぎすな身体』 そのものだった。

 

「あ……あ……?」

 

乾いた喉から、空気が漏れた。 

 

「うそ……なんで……? この身体……!」

 

絶望が、理解に変わる。 

 

アムリタは、「声」だけではなく、賢吾さんに唯一認められた「武器」だと思っていた、この身体(コンプレックス)すらも、利用したのだ。 

 

最も「歪んだ」欲望の器として。

 

「いやあああああああーーーーっ!!」

 

甲高く、痩せぎすな身体にしか出せない、薄っぺらな絶望の悲鳴が、生温かい空間に木霊した。

 

その悲鳴が、粘液にまみれた壁に吸い込まれ、消えていく。 

 

後に残ったのは、あの、おぞましい音の“コーラス”。 

 

くちゅ、くちゅ、くちゅ……。 

 

びしゃ、びしゃしゃしゃっ!

 

「あら、お目覚め?」

 

声がした。 

 

すぐ傍に、アムリタが立っていた。 

 

最初から、ずっとそこにいたかのように、完璧な美貌で、結衣の絶叫を鑑賞していた。 

 

「コハルちゃん♪ その身体、懐かしいでしょ? あなたの“一番てぇてぇ”姿よ」 

 

アムリタは、その場にしゃがみ込むと、結衣の冷たい頬を、楽しそうに指で突いた。 

 

「コンプレックスだったからこそ、欲望の“歪み”が深かったのよねぇ」

 

結衣は、粘液まみれの床を、必死に後ずさった。 

 

震えながら、絞り出す。 「賢吾さんは……!? 私の声(まやく)はどこ! 返してよ!」

 

「声?」 アムリタは、心底おかしいというように、クスクスと喉を鳴らした。 

 

「あんなもの、もう必要ないわ。だって、これからあなたは『声』なんかじゃなくて、『全身』で、もっと“奥”まで響く快楽を感じるんだから♪」

 

その時だった。 

 

アムリタの白い手が、蛇のように伸びてきた。 

 

その指が、結衣の痩せぎすな首根っこを、無造作に掴む。 

 

「ぐっ……!」 

 

そのまま、アムリタは、百三十五センチの軽い身体を、まるで子猫でも持ち上げるかのように、軽々と引きずり起こした。

 

「ほら、あなたの“先輩”にも挨拶しなきゃ」

 

アムリタは、結衣の顔を掴んだまま、強制的にある一点に向けさせた。 

 

「あの子も、あなたと同じで“歪んだ愛”を極めた、私の可愛い優等生よ」

 

結衣の、恐怖に見開かれた瞳が、ピントを結ぶ。 

 

すぐ、そこ。 

 

あの、おぞましい「音」の発生源。 

 

一本の、ひときわ太い『肉柱』。 

 

元は人間だったものが、壁と融合させられ、機械的に痙攣を続けている。 

 

顔は壺状の肉に覆われ、原型を留めないほど膨れ上がった腹部が、内側から激しく蠢いている。 

 

そして、その股からは、休むことなく「びしゃ、びしゃしゃっ!」と、生温かい液体が噴き出され続けていた。

 

「ひっ……な、なに、あれ……うそ……」

 

「あなたの“未来(ゴール)”でもあるわ」

 

アムリタは、その絶望の表情に満足すると、結衣の身体を、まるでゴミでも捨てるかのように、その「肉柱」の隣へと引きずっていった。 

 

場所は、あの梨花だったものの柱の、すぐ隣。 

 

あの、おぞましい噴出音が、BGMのように耳元で鳴り響く、特等席。

 

「ぐちゅり」

 

結衣が引きずられてきた地面が、盛り上がった。 

 

生きている。 

 

脈動しながら、結衣の『百三十五センチの痩せぎすな身体』に、完璧にフィットするように、ぬるぬるとした『肉の壺』が「完成」していく。

 

「いやっ! やめて! 離して!」 

 

結衣は、最後の力を振り絞って暴れた。 

 

「賢吾さん、助けてぇぇぇ!」

 

だが、アムリタは、その小さな背中を、ハイヒールで無情に蹴り倒した。 

 

「あぐっ!?」 

 

結衣の痩せぎすな身体は、完成したばかりの肉の壺の底へと、無様に転がり落ちた。

 

生温かい粘液が、全身を包む。 

 

落ちた、と思った瞬間。 

 

壺の縁から、ぬるりとした肉質の触手が何本も瞬時に伸びた。 

 

それらは結衣の痩せぎすな両手首、両足首、そして腰に、まるで意志を持っているかのように絡みつき、抵抗する彼女を容赦なく締め上げた。 

 

「放してっ…! いやっ!」

 

結衣は、手足を開かれた無備な姿で、肉の壺の底に仰向けに「固定」された。 

 

真横には、痙攣と噴出を繰り返す、梨花だったもの。 

 

真上には、自分を覗き込む、愉悦に歪んだアムリタの完璧な顔。

 

「さぁ、コハルちゃん♪」 アムリタが、楽しそうに手を伸ばす。 

 

「あなたのその“小さな器”(うつわ)で、どこまで“快楽”を受け止められるか…楽しみだわぁ!」

 

結衣は、絶望に引きつる喉で、アムリタが手に取った「何か」を見た。 

 

それは、壺の脇から生えていた、ひときわ赤黒くテラテラと光る、肉触手。 

 

結衣の痩せぎすな身体の、その「腕」よりも遥かに太いそれが。 

 

ねっとりとした粘液を滴らせながら、ゆっくりと、彼女の眼前へと迫ってきた。

 

 

 

───

 

 

 

結衣は、手足を開かれたまま、生温かい肉の壺の底で喘いだ。 

 

拘束された痩せぎすな両手首と両足首に、ぬるりとした肉の触手が食い込んでいる。 

 

真上からは、悪魔アムリタの、愉悦に歪んだ完璧な美貌が、自分を覗き込んでいる。 

 

そして、耳。 

 

『声フェチ』だった彼女の鋭敏すぎる鼓膜を、すぐ真横から、おぞましい音が延々と蹂躙し続けていた。

 

「……びしゃ、びしゃしゃっ!……」

 

「(ひっ……!)」

 

「…びく、びく、びく……」

 

「(やめて…!)」

 

隣の『肉柱』――元は天堂梨花だったもの――が、機械的に痙攣し、潮を噴き上げ続ける、その無機質な“音”(ね)。 賢吾さんの『低音』とは対極にある、ただただ不快な、粘液と快楽の残滓。 

 

結衣は、聞きたくなくて必死に首を振った。だが、拘束された身体は、耳を塞ぐことすら許さない。

 

「(いや……! やだ…! 聞きたくない…!)」

 

目の前には、アムリタが手に取った、あの赤黒くテラテラと光る『腕より太い触手』が、ぬるりと粘液を滴らせながら迫ってくる。 

 

先端が「びくん」と脈打つたび、腐った蜜の匂いが濃くなる。

 

恐怖が、彼女の喉をこじ開けた。 必死に絞り出す。 

 

「賢吾さんは!? 私の声(まやく)はどこ! 返してよ!」

 

その叫びを聞いて、アムリタは心底おかしいというように喉を鳴らした。 

 

「声? あんなものより、もっと“奥”まで響く快楽が欲しいんでしょ?」 

 

アムリタは、結衣の痩せぎすな身体を見下ろし、嘲笑を浮かべた。 

 

「あなたのその『小さな身体(うつわ)』、私が完璧に“調律”(ちようりつ)してあげる♪」

 

「いやっ! むり!」 

 

結衣は、本能的な恐怖で叫んだ。あの太さが、自分の痩せぎすな身体に入るはずがない。 

 

「そんなの入れたら、この身体じゃ…壊れちゃう! 死んじゃう!」

 

その悲痛な叫び――梨花が、かつて発した言葉と寸分違わぬそれ――を聞いて、アムリタは、鈴を転がすように甲高く笑った。 

 

「大丈夫よぉ、心配いらないわぁ!」 

 

明るすぎる、場違いな声。

 

「この空間(ここ)では、肉体も精神も、決して壊れずに、常に最適な状態でい続けられるように“調整”してるから♪」

 

結衣の動きが、止まった。 

 

今、この悪魔は、何と言った? こわれない。 

 

せいしんも。

 

じっとりとした生温かい空気が、肌にまとわりつく。 

 

隣からは「びしゃ、びしゃしゃっ!」という音が聞こえ続ける。 

 

死ぬことができない。 

 

気を失うこともできない。 

 

狂うことすら、許されない。 

 

永遠に。 

 

この、意識がはっきりとした「正常」なまま、この仕打ちを受け続けなければならない。

 

結衣の顔から、血の気が引いた。 

 

その瞳に浮かんだ、新たな、底なしの絶望の色を見て、アムリタは最高に満足そうに目を細めた。

 

「さあ、コハルちゃん。あなたのその『小さな器(うつわ)』が奏でる、最初の“音色(ねいろ)”…聞かせてちょうだい?」

 

「やめて!」

 

結衣が叫ぶ、その間もなかった。 

 

アムリタは、粘液でテラテラと光る触手の先端を、結衣の痩せぎすな身体の、硬く閉じられた肛門に、容赦なく押し当てた!

 

「いやあああああっ!!」

 

ひやり、とした粘液の冷たさと、おぞましい圧迫感。 

 

梨花の時と同じ、裂けるような激痛! 結衣の括約筋が、必死に抵抗する。 

 

だが、触手は止まらない。 

 

その先端が、生き物のように「ねじ込む」ようにして、閉ざされた入口をこじ開け、侵入を開始した。

 

(痛い! 裂ける! 焼ける!)

 

結衣の脳が、絶叫した。 

 

人間だったならば、間違いなく腸が破裂し、あまりの激痛に失神していたはずだ。

 

だが。

 

この「調整された」肉人形の体は、その信号を『痛み』として処理しなかった。 

 

裂けるような激痛の感覚は、脳に届く寸前で、強制的に『変換』された。 

 

脳天を直接焼き切るような、暴力的で、強烈な。 電撃的(でんげきてき)な『快楽』の奔流に。

 

「あ、ぁアアアッ!?」

 

掠れた喉が、意味のない音を張り上げる。 

 

「な、に、これ…っ、あ、あああっ! い、や、あああああーーーーっ!!」

 

拘束されたまま、結衣の『痩せぎすな身体』が、快感に耐きれず「ビクンッ! ビクンッ!」と激しく弓なりに反った! 恐怖と、そして制御不能な絶頂によって、涙と涎が垂れ流される。

 

『声フェチ』として、他人の「声」で快感を覚えてきた彼女が。 

 

今、自分の喉から、意図しない、おぞましい「快楽の声」が漏れ出す、その屈辱!

 

「あぎゃっ!? ぎ、いぃぃっ!?」

 

違う、こんな音、聞きたくない! 自分の声が、こんなに汚い!

 

痙攣しながら、かろうじて息を継ぐ。 

 

「ひ、ふ…ぁ…あ、あう…?」

 

賢吾さんの『低音』とは似ても似つかない、甲高く、引きつった、ただの雌(めす)の喘ぎ。 

 

ハッと我に返り、恐怖に目を見開く。 

 

「な、なに、これ…? い、痛い、はず、なのに…き、もち…ぃ…?」

 

自分が「快感」を認めてしまった。 

 

その事実に、結衣の精神がパニックになる。 

 

こんな、賢吾さん以外の「快楽」など、あってはならないのに!

 

アムリタは、その「混乱」の嬌声を聞いて、最高に満足そうに笑った。 

 

「ふふ、いい“声”(こえ)じゃない♪ さあ、まだ始まったばかりよ?」

 

結衣の肛門に捩じ込まれた触手は、止まらない。 

 

彼女の絶叫と葛藤を養分にするかのように、その『痩せぎすな身体』には不釣り合いな太さのまま、さらに奥へ。 

 

腸壁を押し広げ、ゆっくりと、しかし確実に、その『拡張』を開始する。 結衣の、薄い腹部を歪ませながら。

 

 

 

───

 

 

 

結衣の精神がパニックに陥っている間も、侵入者は止まらない。 

 

最初の絶頂の波が、まだ脳の芯を痺れさせているうちに、肛門をこじ開けた『それ』は、本格的な活動を開始した。

 

奥へ。 

 

もっと、奥へ。

 

それは、結衣の腸壁を、まるで「ねじ込む」かのように、粘液でぬめりながら擦り上げ、内臓を押し分けていく。

 

「あ、ぐ……っ! ひ、ぅ……!」

 

『痩せぎす』。 

 

それは、彼女の最大のコンプレックスだった。 

 

だが今、その痩せぎすな身体は、最悪の形で裏目に出た。

 

ボコッ、と。

 

彼女の薄い皮膚を、内側から何かが押し上げた。 

 

左の下腹部。 

 

そこに、明らかに『腕より太い』異物の「形」が、歪に浮き上がったのだ。 

 

薄い皮膚一枚を隔てて、その蠢きが、丸見えだった。

 

「ひっ……!?」

 

結衣は、拘束されたまま、自分の腹部が変貌していく様を、恐怖に見開かれた瞳で見ているしかなかった。

 

その膨らみは、止まらない。 

 

ぐるり、と。 

 

巨大な蛇が、皮膚の下を這うように、鳩尾(みぞおち)の下を通り過ぎる。 

 

ぬるり、と。 

 

右の脇腹へと移動していく。

 

痩せぎすだったはずのお腹が、異物によってだんだんと拡張されていく。 

 

その動きに合わせて、内壁が、腸が、おぞましいやり方で擦り上げられる。

 

そのたびに。 

 

脳を焼く『絶頂』の波が、強制的に、連続で、結衣の痩せぎすな身体を襲った。

 

「あ、あうっ…! ま、まっ…! ああっ!」

 

(いや、やだ、こんな音…!)

 

 結衣の『声フェチ』としてのプライドが、悲鳴を上げた。 

 

(私の喉は、賢吾さんの『声』を聞くための…! あ、でも、そこ、擦られると…! ああっ!)

 

「…びしゃ、びしゃしゃっ!…」

 

真横からは、相変わらず、梨花だったものの柱が、無機質な噴出音を立て続けている。 

 

絶望的なBGM。 その音と、自分の内側から響く「ぐちゅ、ぐちゅ」という水音が混じり合い、彼女の正気を削り取っていく。 

 

自分の身体が、“堕とされていく”感覚。

 

結衣が、アナル側の拡張の快感に意識を奪われ、拘束された身体をビクビクと痙攣させている、その瞬間。

 

「あら、後ろばっかりじゃ不公平よねぇ?」

 

アムリタの、楽しそうな声が降ってきた。 

 

結衣が、その声に「ひっ」と喉を鳴らした、その隙。

 

二本目の触手が。 

 

梨花を堕としたものと同じ、粘液にまみれたそれが、結衣の小さな女陰(ほと)に、容赦なく突き立てられた!

 

「ひっ…!? あ、あ、あああっ!?」

 

鈍く、内側から広げられる圧迫感とは違う。 

 

鋭く、直接的で、抗いようのない侵入の感覚。

 

アナル側からの拡張と、ヴァギナ側からの侵入。 

 

二重の快感が、結衣の痩せぎすな身体を、一瞬で貫いた。

 

触手は止まらない。 

 

小さな膣の最奥、硬く閉じられた子宮口に、その先端が突き当たる。 

 

(ダメッ! そこは、ダメ!) 

 

結衣の魂が、本能的な恐怖に絶叫した。

 

だが、触手は容赦しなかった。 

 

その先端が、まるでドリルか楔(くさび)のように硬く変形し、閉ざされた「扉」を、ぐりぐりと、こじ開け始めた。 

 

肉が引き裂かれるかのような、おぞましい感覚。 

 

それが、またしても強烈な、脳髄を揺さぶる『絶頂』に変換された。

 

もう、無理だった。

 

後ろからは内臓を拡張される快感。 

 

前からは子宮をこじ開けられる快感。

 

『声フェチ』として、“音”に異常なこだわりを持っていた彼女の、か細い理性が、その二重の奔流によって、完全に焼き切れた。 

 

喉が、快感の圧力に耐きれない。 意味のある「音」を構成することを、彼女の身体が、放棄した。

 

喉が引きつる。 

 

「…ッ! ぎ、ぎぃぃぃ…!」

 

それは、もう「声」ではなかった。 

 

甲高く、耳障りな、ただの異音。 内側から拡張され、こじ開けられる苦痛という名の快感に、彼女の喉が、獣の咆哮を上げた。

 

「ぐる、うううぅ…! あ"あ"あ"あ"あ"っ!!」

 

賢吾さんの『低音』にしか反応しなかったはずの身体が、自ら、獣の咆哮を上げている。 

 

その絶望的な事実が、結衣の壊れない精神を、さらに深く抉った。

 

その、獣の叫びと、同時。 結衣の痩せぎすな身体が、ついに限界を迎えた。 

 

内側からの二重の蹂躙が、彼女の器の制御を奪う。 

 

ダムが決壊するように、奥から、熱いものが迸った。

 

「(びゅる、びゅるるっ!)」

 

水っぽい、激しい音が、壺の底に響き渡った。 

 

拘束された痩せぎすな身体が、初めて激しく潮を噴き上げた。

 

アムリタは、その「獣の声」と「噴出音」の、完璧なハーモニーを聞いて、満足そうに手を叩いた。 

 

「うんうん、いい“音色”(ねいろ)になってきたわ♪ 『声フェチ』のプライド、綺麗に壊れたわね!」

 

獣の声を上げ、潮を噴き出し、涙と涎にまみれて痙攣する結衣を見下ろし、アムリタは、さらに愉しそうに目を細めた。 

 

子宮に侵入した二本目の触手が、その内部で「びくん」と脈打つのに合わせて。

 

「でも、まだまだよ?」 

 

「せっかくの『小さな器(うつわ)』だもの。もっと“豊(ゆた)か”にしてあげないと…ね?」

 

アムリタが、その子宮の中の触手に、ニヤリと笑った。

 

 

 

───

 

 

 

「でも、まだまだよ?」 

 

「せっかくの『小さな器(うつわ)』だもの。もっと“豊(ゆた)か”にしてあげないと…ね?」

 

アムリタの、その愉しげな囁きは、命令だった。 

 

結衣が、獣の嬌声を上げた直後、潮を噴き上げる。

 

その理性が焼き切れた、まさにその瞬間。 

 

彼女の痩せぎすな身体の内部で、二本の侵入者が、その役割を変えた。

 

子宮の奥深くまで侵入していた二本目の触手が、びくん、と脈打った。 

 

それはもう、こじ開けるための「楔」ではない。 

 

その側面から、ぶちゅ、ぶちゅ、と。 

 

おびただしい数の『卵』――ぬるぬるした、黒いタピオカのような粒――が、子宮の内壁に、腸の内側にまで、容赦なく『産み付(うみつ)け』られていく。 

 

同時に、肛門から拡張を続けていた一本目の触手も、その内側で、同じように卵を産み付け始めた。

 

「(あ……あ……?)」

 

痛みはない。 

 

この「調整された」肉人形の体には、痛みは存在しない。 

 

ただ、内側が「満たされていく」異様な、おぞましい圧迫感。 

 

卵の粒が、内壁を「ぞわぞわ」と擦る、むず痒い感触。 

 

それら全てが、脳を焼く『快感』へと強制的に変換されていく。

 

結衣は、拘束されたまま、その変貌を、ただ見ているしかなかった。 

 

彼女の、最大のコンプレックスだった『痩せぎす』の腹部。 

 

それが。 

 

産卵のペースが止まらず、みるみるうちに『膨張(ぼうちよう)』していく。

 

平らだったはずの、骨張っていたはずの腹が、内側からの圧力で、ぷっくりと、ありえないほどに膨れ上がっていく。 

 

皮膚が、薄く引き伸ばされていく。 

 

その半透明になった皮膚の直下で、産み付けられた無数の黒い粒が、ボコボコと蠢いているのが、見えた。 

 

まるで、生きている虫袋(むしぶくろ)のように。

 

(いや、なに、これ……わたしの、おなか……)

 

コンプレックスだった『痩せぎす』の真逆。 

 

妊婦のようにパンパンに膨れ上がっていく、おぞましい光景。 

 

彼女の壊れない精神が、その視覚的な恐怖に絶叫する、その間もなく。

 

産み付けられた卵が、即座に『孵化(ふか)』を始めた。

 

「(!?)」

 

内側で、何かが一斉に「這い出した」。 

 

『ヒルのような幼生(ようせい)』が、何百、何千という数で。 

 

結衣の腸内や子宮内、内臓と内臓の隙間を、一斉に『這い回(はいまわ)り』始めたのだ!

 

「(あ、あ、あ、あ、あ、ああっ!!)」

 

もう、だめだった。 

 

これまでの『太い触手』による、一点集中の快感とは、まったく質が違う。 

 

『内側から、無数の小さな何かに、隅々まで這い回られ、舐められ、吸われる』 逃げ場のない、全方位からの、おぞましい『快楽』の奔流! 

 

幼生たちは、結衣の身体《器》を養分にしながら、その体表から『快楽の粘液』を分泌している!

 

結衣の脳は、この「全方位からの、無数の快感」に、もう処理が追いつかない。 

 

「獣の叫び」を上げた喉は、もはや正常な音を出す機能を失っていた。

 

喉が痙攣する。 「…っ! ぐ、ぼ…ぉ……」

 

快感の粘液(よだれ)が、自らの意思とは関係なく、口の端から溢れ出す。 

 

呼吸が、うまくできない。 その溢れた粘液が、必死に吸い込もうとする空気と混じり合う。

 

「…くちゅ、くちゅちゅ……」

 

呼吸が引きつる。 

 

「…ひゅっ…か、ふ……」

 

『声フェチ』だった彼女の喉から、もう声にならない、ただ『泡立つような音』だけが、よだれと共に漏れ続ける。

 

彼女の身体《器》は、内側からの幼生の刺激に、もはや絶頂を『固定(こてい)』された状態になっていた。 

 

獣のように叫び、激しく噴き上げた、あのクライマックスは、もうない。 

 

ただ、機械のように。

 

「じゅく、じゅくぅ…!」 

 

「びちゃ、びちゃ…」

 

快感の潮が、もう止まることなく、壊れた蛇口のように、痩せぎすだった身体から垂れ流され続けていた。

 

アムリタは、その光景を、うっとりと見下ろしていた。 

 

『泡立つ音』を泡と共に口元から漏らし、パンパンに膨れ上がった腹部を痙攣させ、ただ粘液を垂れ流し続ける、元『コハル』。

 

「ふふっ、最高の『苗床(なえどこ)』になったわね」

 

アムリタは、その変わり果てた姿に、最高に満足そうに頷いた。 

 

「もう『声』なんていらないでしょ?」

 

アムリタが、ゆっくりと手を振る。 

 

すると、結衣が拘束されている『肉の壺』の縁から、梨花を『無音』にしたものと同じ、あの平たく粘液にまみれた『壺状の触手』が、ぬるり、と生え出してきた。

 

それが、結衣の泡を吹く口元へと、ゆっくりと、ゆっくりと、近づいていく。

 

 

 

───

 

 

 

「ふふっ、最高の『苗床(なえどこ)』になったわね」 

 

「もう『声』なんていらないでしょ?」

 

アムリタが、その『泡立つ音』を漏らす口元に、ゆっくりと『壺状の触手』を近づける。 

 

結衣だったものは、もはや抵抗しない。 

 

いや、抵抗できない。 

 

内側から無数の幼生に這い回られ、その意識は快感の奔流に沈みきっている。

 

べチャリ。

 

生温かい肉が、顔面を覆う鈍い音。 

 

梨花を『無音』にしたものと同じ、あの『壺状の触手』が、結衣の顔に、容赦なく被さりついた。

 

視界が、粘液にまみれた肉の暗闇に閉ざされる。 

 

呼吸は、触手に組み込まれた管を通して、強制的にあの腐った蜜の匂いの空気が送り込まれてくる。 

 

あの、よだれと空気の混じった「ぐ、ぼ…ぉ…」「くちゅちゅ…」という『泡立つ音』すら奪われた。 

 

梨花の柱と同じ、完全な『無音(むおん)』の状態にされたのだ。

 

だが。 

 

『声フェチ』だった結衣への、アムリタからの“最後のプレゼント”は、それで終わりではなかった。

 

顔を覆った触手は、ただ塞ぐだけではない。 

 

その触手の内側から、直接鼓膜、あるいは脳に、“音”が流し込まれ始めた!

 

(……あ……?)

 

それは、結衣が渇望し、執着し、そのために全てを歪ませた、あの『声』。 

 

賢吾さんの、『低音』だった。

 

『――キミのような、小さな存在の純粋な声を聞いていると……守ってあげたい衝動に駆られるよ』

 

「(あ、あ、ああっ!)」

 

魂の奥で、声にならない声が木霊する。

 

『――君は私の全てだ。その小さな存在の全てを、私が支配する』

 

幻聴、あるいはアムリタが完璧に再現した音が、快感のトリガーとして、脳内で無限にリピートされる!

 

もう、だめだった。

 

内側では、パンパンに膨れ上がった腹部では、『幼生』が無数に蠢き、内臓の隅々まで這い回り、快感を撒き散らす。

 

聴覚では、賢吾さんの『声』の幻聴が、その快感を無限に、際限なく増幅させる。

 

結衣の魂の意識は、この『内側からの幼生』と『聴覚からの声』の、二重の快楽地獄に、完全に焼き切られた。

 

もう、賢吾さんへの執着も。 

 

『痩せぎす』というコンプレックスも。 

 

何もかも、考えられない。 

 

思考が、明瞭なまま快感のノイズに溶けていく。

 

ただ、機械のように。 無音で。 

 

痙攣を繰り返すだけの『肉の柱』が、ここに「完成」した。

 

結衣の柱は、パンパンに膨れ上がった腹部を、内側から幼生にボコボコと絶え間なく蠢かされながら。 

 

無音のまま、ただ「びく、びく、びく…」と、全身を小刻みに震わせ続ける。

 

股からは、もう止まることなく、快感の潮が**「びしゃ、びしゃしゃっ!」**と噴出され続け、肉の壺から溢れ出していく。 

 

時折、腸内で幼生がひときわ激しく動くと、後からも「どゅく、どゅくっ!」と、卵の粘液が噴き出した。

 

アムリタは、その「完成品」を、うっとりと眺めていた。 

 

真横には、同じように無音で痙攣と噴出を繰り返す、梨花の柱。 

 

見事な『肉柱』が二本、並んで『精気』を生産している。

 

アムリタは、新しい柱である結衣の、パンパンに膨れた腹を、愛おしそうにそっと撫でた。 

 

「ふふっ、梨花ちゃんの隣に、可愛いのが増えたわね♪」

 

アムリタは、結衣の顔を覆う肉壺に、そっと耳を寄せるフリをした。 

 

もちろん、音などしない。

 

「『声フェチ』が最後に出す、この“無音(むおん)の嬌声(ハルモニア)”……」 

 

「これこそ、最高の芸術(デザート)だわ」

 

彼女は、心の底から満足した声で、独りごちた。 

 

「んーっ! 今日もいい収穫でしたわー♪」

 

アムリタが、その場を鼻歌交じりに去っていく。 

 

彼女の背後では、二本の『肉柱』――梨花と結衣――が、永遠に、機械的に、同じリズムで。 

 

「びく、びく、びく……」 

 

「びしゃ、びしゃしゃっ!」 

 

「どゅく、どゅくっ!」 

 

と、痙攣と噴出を、ただ、繰り返し続けていた。

 

 

 

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