十代のMTFが年上MTFと年の差カップルになって処女を捧げる話 作:喋家月餅太
オリジナル:現代/恋愛
タグ:R-18 ガールズラブ 性転換 百合 女同士 男同士 初エッチ 初体験 トランス女性 トランスジェンダー MTF
ジェンダークリニックに通い始めたばかりで身体は男性のままだが、高校時代に性別移行を始めて女性として見られる程度のパス度にはなれている。
Mは高校時代にバイト先で知り合いMTFの先輩として慕っているAとこの秋に交際を始めた。
MはAを女性だと認識していて身体的にも性自認的にも同性であるAを好きになった事に戸惑ったがもしかしたら自分は女性を好きなのかもしれないと考えて気持ちを打ち明けた。
AもMの告白に驚いたが受け入れて恋人になってくれた。
お互いに距離を縮めていくが自分の男性器がAを求める事に苦しむ日々の始まりでもあった。
男性ホルモンの分泌を促すからと避けていたオナニーもAへの気持ちが募るに従ってせずにはいられなくなった。
台風が近づいたある日、MはAの家に遊びに行くが電車の運転見合わせで帰れなくなってしまう。
恋人同士の二人、体にまだ何もしていないM、玉無し竿ありで数年にわたってホルモン治療を受けているA、お互いの身体についてどんな感情を持っていいのかずっと悩んできた。
Aはそんな気まずい空気を変えてMを抱くために優しくエスコートした。
AはMに初めてを捧げる事になったのだった。
カフェの入り口近くにあるテーブル席でMはポケットから鏡を出したり店内を広く見せるために壁に埋め込まれている鏡の方を見て髪型を何度も直していた。
メイクも気になる。
こんな格好でいいのか、相手は今日の自分に何を期待してるのか想像がつかない。
だから、出来る事なら何度でもメイクも髪のセットもどうせなら服の選択もやり直したいくらいだ。
店に来てしまえばどうしようもない。家にいる時にした選択を信じるしかないのは分かってる。
それでもがっかりされたらどうしようと怖くもなるのだ。
Mは今日、19歳にして人生初めてのデートをする。
自分が誰かとデートをする日が来るとは思わなかったがその相手が自分と同じ属性の人だとはもっと思わなかった。
できる限り可愛くとがんばったわけだが、相手はそれを求めてるのか。それとも「反対方向」を求めているのか。
考えれば考えるほどわからなかった。
覚悟は決めたが怖い。楽しみだし前からの知人でこのデートの前に会った日から自分たちは付き合ってる。
カップルらしいかは分からないがメッセージのやり取りも何度もしている。
これから来る恋人との生まれて初めてのデートへのプレッシャーでMは押しつぶされそうだった。
「お待たせ、待ったかな?」
軽い足取りで店内に入ってMのいるテーブルまでやってくると顔を覗き込んだ長身の女性がいた。
「Aさん!」
Mはさっきまでこの瞬間を怖がっていたのが嘘のように胸をときめかせて顔を上げた。
現れたのは今日の待ち合わせの相手、先日、帰り道に他の友人たちと別れた後に告白して付き合い始めたMの恋人だ。
「注文してくるからもうちょっとだけ待っててね」
そうMの耳元で言うとAはカウンターに向かった。
(どうしよう、わたし、好きだ……!)
関係が変わったことに対する実感が一気に爆発したようだった。
告白したのは自分だ。だから自分はAの事を好きだ。
それを受け入れてくれた事に何処か信じられない気持ちがあったが自分がAを想ってる気持ちは確かなものだと分かる。
「ごめんね、思ったより混んでたよ」
Aは笑いながらMの向かいの席に着く。
「あぁ、あ、はい!」
「緊張してるな?」
「そんな!」
Mは声が上擦っていた。これでは緊張してるのが丸わかりだ。
「初めてのデートだからね。わかるよ。でも、安心して私はもうMちゃんの恋人だし、きちんとエスコートするから」
Aは手を口に添えて小さな声で言った。
傍目に見れば女性二人だ。カップルだと知られるとまだ今の時代、いろんな目で見てくる人はいる。
「エスコートならわたしが! だってわたし!」
MもAがしてたように手を添えて小声で言う。
「君は年下。お姉さんに任せて。それに今日が初めてでしょ?」
「そうですね」
「私はありがたい事にこれまで恋愛するチャンスは何度かあったの。だから、Mちゃんが喜んでくれるかはわからないけど、恋人同士がどうやって過ごすかは色々思いつくから」
「はい」
MはAの言葉に体温が上がるのを感じた。
AはMにとって憧れてた人だ。「同性」に恋をするなんて想像もしていなかった頃から恋愛感情とは別に尊敬する先輩としての意味で憧れてきたのだ。
そのAが今、自分をエスコートしてくれると言う。
とても嬉しいし、その嬉しいという気持ちは初めて経験するくすぐったいものだった。
「Mちゃん、いちごフラペチーノ? かわいい。似合うね」
「本当ですか!? ちょっと変じゃないかなって」
「私なんてブラックコーヒー。だからうまくいってるってのもあるけど女らしさが足りないんだよね」
「わたしは今、あんまり女の子っぽくしたら変じゃないかなって自信なくて」
「そんな事ないよ。Mちゃんはここにいる女の子で一番ではないにしろ可愛い方だよ」
「信じて、いいですか?」
「いいよ。今のままでも女の子らしいんだから自信持っていい」
「はい……」
Mはいつも外に出かける時に気にしている道行く人の視線に対して気持ちで対抗しても大丈夫だったんだと思えた。
Aが言ってくれるなら信じられる。それは単なる憧れだけじゃなくAはそれだけ「色々と見ている」人だからだ。
「あ……」
しばらく会話しているとMはAに気づかれないようではあるがモジモジしていた。
Mは気づかれないようにしているがそこにはAは気がついた。
「どうにかした?」
AはすかさずMに耳打ちする。
「その、お手洗い行きたいんですけど、ここ……」
「あ、そうか」
Aは店の奥のトイレを見た。人一人分奥に出ているスペースがありその左に女子トイレ、右に男子トイレという構造だ。
奥に出ているスペースに手洗い場があるところを見るとどちらも個室一つというトイレだろう。
「行ってきなよ」
「この格好してるからさすがに……!」
「君は女の子なんだよ。大丈夫だから。彼女としては君を男子トイレに行かせるわけにはいかないし、お店の人に止められる」
「女子トイレも……!」
「そっちしかないでしょ。ていうか、足をそれだけモジモジしてるんなら無理しない方がいいよ」
MはAの言葉と身体のコンディションに困り果てた。
SNSで見た自分たちのような人間への発言も連想する。
「行ってきなさい。何かあったら私がどうにかするし何も起きない!」
「限界です……!」
「大丈夫だから」
そう言われるとMはAの言葉を信じる事にした。
Mの股間には尿意が限界に達しつつある。Mは立ち上がりすり足気味に小走りで女子トイレに向かった。
「大丈夫でした。多分」
Mはスッキリした感覚と恐れた気持ちを抱えて席に戻ってそう言った。
「誰も何も気にしてないよ」
AはMに笑顔で言った。
Mは周囲をちらちらと見た。
「堂々としてたほうがいい」
「はい」
不安がではあるがMは怖がっていた様子が和らいだようだった。
Aはかつての自分を思い出しつつ、そんな様子を可愛く思えた。
「よし、じゃあ、そろそろ行こうか」
「はい! でも何処へ?」
「私の考えてきた定番コースだよ」
そう言うとAは立ち上がった。Mもそれに続く。
二人はカップを返却口に返すと店を出た。
その際にMは店にいた人たちに自分がどう見られてたのか気になり出口で店内をチラリと見たが誰もMたちに意識を向けていなかった。
自分たちを認識してないだろうと思え、安心した。
「大丈夫だったでしょ?」
「そう、ですね」
「私たちが店を出た時もMちゃんがトイレに行った時も誰か席を立ったなくらいしか思わないし、それすら気づいてない人の方が多いよ」
「よかった」
視線を下に落としたままMは安心したように言う。
AはそんなMの背中にそっと手を添える。
(触ってみると、まぁ、そうか)
「ひゃっ!」
「ああ、ごめん、嫌だった?」
「いえ、その、慣れてなくて」
Mは顔を赤くした。
(なるほど。可愛いなぁ)
「私たちさぁ、付き合ってるじゃない? これならこういうのからもっと、その、密って言うの? そういうスキンシップをしてきたいんだけどMちゃんはどうかな? 嫌?」
Aがそう言うとMは目を見開いて赤い顔のままAを見る。
「い、嫌じゃないです。ただ、わたし、その、まだ……」
「自分の身体のこと?」
「そうですね。触れたり見たりしたらAさんがどんな風に思うか怖くて」
「なるほどね。まぁ、私としては今のMちゃんの方が興奮するけど、それは嫌だよね。それは私も治療を始めるまでは元カレでそう言う人がいたから分かる」
「はい。ごめんなさい」
「謝らないで。でも、私はMちゃんのことを女の子だって思ってるし、きちんと女の子だって知ってるよ。私だってこれでも女の子だからね。まぁ、女の子を好きになるなんて自分でも意外だったけど」
Aは笑いながら言う。
MはAが軽い感じでそう言う事に安心を覚えた。
Aはいつもノリが良く明るい。
最初は単に前向きなんだと思ってたが、深刻に考えがちな自分たちのような人たちを安心させる意図があるのだと色々な場所で関わるうちにわかってきた。
そういうところがMがAに憧れてるところだし、好きになったところだ。
「Mちゃんは私の彼女なんだからね」
AはMの顔を覗き込んで言う。
間近に見るAの顔にMはドキッとする。
(本当にきれいな人。わたし、この人の「彼女」なんだ)
Mは体温が上がるのを感じた。彼女という言葉に気恥ずかしさと嬉しさを感じる。
「あの、Aさん、今日はどこに行くんですか? 任せてって言ってたからわたし、何も考えてなくて」
Mは照れてる自分を見せるのがむず痒く感じて話題を変えた。
何も考えてないというのは嘘だ。MもMなりにデートコースを考えてきてる。
だが、エスコートしてくれるというし女の子がデートするなら相手に任せるものだろうとも思った。
ただ、相手も「女の子」なのでそれでいいのかはよくわからないのだが。
「この先の駐車場に車停めてあるんだ。今日はドライブしようと思ってね」
「ドライブ、ですか?」
「そうだよ。どう?」
「嬉しいです! デートって感じで」
「それはよかった。車の中ならいろんな話を出来るでしょ? 私たちは人に聞かれたくない事も色々あるし」
「考えてくれて嬉しいです」
「私にとっても初めて尽くしのイレギュラーな恋愛だからね。どうやってお付き合いするかとか。あとイチャイチャしたり?」
Aは振り返ってMをじっと見る。
Mはイチャイチャという言葉に胸が高鳴った。
身体に強いコンプレックスのあるMは誰かと触れ合う事に怖いと感じていた。だが、Aを好きだと思ってから、触れたい、触れられたいという欲求が育っていった。
「Mちゃん、さっき、背中に触れたけどああいうの、どうなのかな?」
「嫌じゃないです! その嬉しくて。ただ……」
「ただ?」
「嬉しいけど、『反応』しちゃうのが怖くて。周りにもバレちゃうし、それに……」
Mは俯いて言う。
(ああ、それか)
「Mちゃんは『反応』することに抵抗ある?」
「はい。やっぱりわたしは女の子じゃないんだって思っちゃうから」
「私もさ、今でもMちゃんと同じ用に反応するんだけど、それは自分の気持ちが反映されてるって受け入れられたの。難しいのは私も経験したから分かるけど、私としては嬉しいよ」
「Aさん……」
「イチャイチャしたらどうしてもなっちゃうし、気持ちが盛り上がった証拠だから肯定的に考えるってのも有りだと思う」
「そうですね……」
Mはそう言うと足の付け根にそっと手を置いた。
今はまだ「反応」していないがこれからAと身体を触れ合えばすぐに反応してしまうだろうと思った。
「まぁ、まだエッチするとかは考えてないよ。でも、好きなら身体が勝手に反応しちゃうから」
「はい。それは、ずっとあったことだから分かります」
「でも、さっきみたいな時は『バレちゃう』から気をつけね」
「ですね。気をつけます。でも、多分大丈夫かな?」
Mがそう言うとAは小さく頷いた。
「Aさん、わたしの大事な所、見てますよね?」
「ああ、ごめん。うん。なんか、信じられないなぁと思って。Mちゃん、どう見ても女の子にしか見えないのに付いてるんだなぁって。時々、私と同類なのが信じられない時があるの」
「それはAさんも」
「そう? それは嬉しいな」
Aは笑顔で言った。
「ホルモンもまだのMTFでこんなに女の子にしか見えない姿と声なのは羨ましい」
MはAの言葉にドキッとした。
普段、女性として生活をしているがMは生物学的には男性だ。乳房はないし、この会話の通り股間には女性にないはずのものが付いている。
「頑張ったんだね」
「それはAさんも、ですよね?」
「まぁ、そうだけど。でも、私の場合は女らしくしない事でうまいこと逃げてる面はあるからね」
Aはこざっぱりとした姉御肌の女性といった雰囲気だ。
見た目もボーイッシュなタイプで有り体に言えば格好いい女性といった感じである。
「Mちゃんみたいに可愛いのが似合わないしボロを出さいないようにしてるだけだよ。本当は可愛い格好してみたいしね」
「そうなんですか?」
「そりゃもう。でも、似合わない私がそんな格好したら漫画に出てくるみたいな変なオカマになっちゃうし。ボーイッシュな格好もそれなりに可愛くできるから楽しいけどね」
「わたしはそういうの格好いいと思います」
「嬉しい」
「Aさんこそ女の人にしか見えないですよ」
「私は女の人だよ」
「あ、ごめんなさい!」
「まぁ、戸籍も身体もまだ男のままではあるか」
AはMを見つめていたが宙を仰いでシートに深く腰掛けた。
「Aさん、身体……あ、ごめんなさい。聞いていいことじゃないですよね!」
Mは途中まで言いかけると気まずそうに訂正した。
Aはキョトンとしてその様子を見た。
「別にいいよ。コミュニティの人とかには話してるし。身体の事は話題になるからね。あと、Mちゃんはこれから私の身体を誰よりも知ってる人になるから聞いちゃだめじゃないよ」
Mの顔を覗き込んでMは笑顔で言う。
その言葉の後半の内容にMは思わず想像して顔を赤くする。
「Mちゃん、恥ずかしがり屋だね。まだ経験してないからそうか」
AはMの様子を可愛いと感じつつ自分がMくらいの年の頃を思い出しながら言った。
「一人ではしてますけど……」
Mは顔を更に赤くして言う。
Aはその言葉に驚いて目を点にする。そして、少し間を置いて笑った。
「笑わないでください……!」
「いや、ゴメン。可愛いなと思って。そっかぁ、Mちゃんそっちは経験済みかぁ」
「変ですか!?」
「いや、私もしてるし。なんならMちゃんに会えるのが嬉しくて昨日もしたからね」
MはAがそう言うのを聞くと手で口元を抑える。そして、股間に無意識に力が入るのを感じた。
「想像したな?」
「ごめんなさい!」
「スカートがちょっと盛り上がってる」
AはちらりとMの鼠径部に目をやる。
「どうしよう……」
「大丈夫。私も」
「え?」
「私も勃ってる」
その言葉にMはそっとAの股間に目をやる。
「お互い様だよ」
「はい……。その、Aさん、付いてるんですね」
「うん。全部じゃないけどね」
「全部?」
「うん。タマタマは取っちゃったから」
「そうなんですね」
「そうだよ。三年くらいになるかな。ホルモンは大学時代に始めたんだけど、社会人になってすぐくらいに取ったんだ」
Aは静かな口調で言った。
Mはどんなふうに反応していいか分からず言葉を探している。
「話しておいた方が良いね。私はね。ホルモンは継続しててタマタマは取って、あとヒゲを永久脱毛してる所だよ。元々薄いからいいかなと思ったけど、やっぱりヒゲは嫌だからね」
Aは明るい口調で自分の身体の状況を説明した。
MはAの話に意外さを感じながら聞いている。MはAがMTFであることはずっと知っていたが女性にしか見えないと思っていたのでタマタマやヒゲという男性の身体的特徴がイメージできなかった。
「ちんちんは残ってるけど、ホルモンの影響もあって結構小さくなったよ。あと、おっぱいはあるけど小さい。ホルモンで膨らんだ以外何もしてないからね」
MはAの胸元を見た。
「小さいでしょ?」
「羨ましい……」
「やっぱりおっぱいは欲しいよね」
「はい。わたしはパット入りのブラを着けてますけど、服を脱ぐと男の胸だからそれがコンプレックスで」
「分かるよ。身体を変えるのを勧めるのも良くないけど、私は今の状態になって気持ちも安定したから」
「はい。でも、身体をどうするかはまだ決めてないし、急がないつもりです」
「うん。そうした方がいいね。ところで……」
AはMの目をじっと見た。
「Mちゃんがこっちも結論出てるかどうか分からないけど、『相手』としてはどっちが好みなのかな?」
MはAの言葉にネガティブな意味でドキッとした。
自分は男性の身体と女性の性自認を持つが性的指向がどうなのかという問いだ。
MTFがMTFに恋をしている。これについてどう自身が捉えているかをAは知りたがっている。
「わたしはずっと男の人が好きでした。女の人を好きになった事も女の人にエッチな気分になった事もないです。でも、Aさんの事は女性として好きです。Aさんが男性だって思ったことないです」
「そっか。私もびっくりしたんだよね」
MはAの返答に不安になった。MTFが女性を好きになるのは変だと自分も思っている。そんな人いるのかも分からない。
「Mちゃんが私に告白したこともだけど、Mちゃんに告白されて嬉しいと感じた自分も」
「それはわたしの身体が男だから……」
「違うよ。それこそ、さっき勃起の事を言ったけど、Mちゃんにちんちんがあるように思えないのはこっちも一緒」
「えっ……?」
「わたしは初めてエッチした相手が女の子なんだけど、Mちゃんに元カノと同じ物がついてるように思えたのにそれでも興奮しちゃったの。元カノのには全然興奮しなかったのに」
「でも、わたしに付いてるのは……」
「うん。昨日はMちゃんのちんちんを想像してしたの。Mちゃんが女の子であそこがどっちでも興奮するって分かった。というより、あんまり身体の事は関係なく好きって方が近いかな」
「わたしも似た感じです」
「身体がどうなのかは関係ないのかもね。どっちにしても私はMちゃんを好きだよ」
「それはわたしもです!」
MはあわててAの気持ちに返す言葉を言った。
その際に二人の顔はかなり接近した。Mはその距離に次にAがする行動を予測して胸を高鳴らせた。
次の瞬間、Aは軽くコツンと自分の額をMの額にくっつけた。
「初デートでする話じゃないね。ごめん」
「いえっ……」
Aは続けて前を向くとシートベルトを締めた。
Mはその様子を見てあわてて自分もシートベルトを締める。
「ドライブデートの予定だからそろそろ行こうか。身体の事はもっとデートを重ねてからね。それまではプラトニックで」
「はい……」
「Mちゃんの人生初の恋人になったんだからお姉さん張り切っちゃう」
「うれしい……」
「それじゃあ出発!」
そう言ってAは車のエンジンを入れた。
MはAの手元を見る。女性にしか思えなかったがよく見るとAの手は華奢とはいえ男の手だった。
自分の手を続けてみると同じ様に男の手だ。
性自認と性的指向、この二つが交差している関係がどうなるかはMには不安だったがそれでも初めてのデート、初めての恋人という関係が嬉しくてAをじっと見つめていた。
人生初めてのデートはこれまでのコミュニティの先輩後輩の関係と大きく変わらなかった。
多少のスキンシップはあった。
AがMの背中に手を添えたり、人目を盗んで手を繋いだり。
キスを始めとしてそれ以上はなかったがMにとって恋人として一緒の時間を過ごせることが何よりも嬉しい事だった。
Aが好きというのもあるがMTFに生まれて体を将来変えられるかも分からない。
そんな自分が恋愛をするチャンスなんてあるのかと思うと不可能に覚えて諦めた気持ちでいたのだ。
高校の頃も中学の頃も同じ学校の男子に恋をしては諦めてた。
10代のゲイのコミュニティに顔を出して見た事もあったが、そこにいた人たちと関係を築くの男性である事が必要だった。
恋愛対象が男性だって気がついて気づいた中学の頃よりずっと前から股間にちんちんがついていても自分を女の子だとしか思えなかった。
そんな自分の居場所じゃなかったのだ。
女の子になるために親に泣かれてそれから時間をかけて暫定的な理解を得て髪を伸ばして服装や化粧を覚えて自分を変えた高校時代。
そういった日々でようやく見つけたトランスジェンダーのコミュニティで出会ったサポート役の大人であるAにMはいつの間にか恋をしていた。
身体は男性だが身体を変えて女性になったAが好きである事に戸惑ったが、つい先日、告白してOKしてもらった。
正直、身体を変えていない自分をAは男の子だと思っているのかもしれない。
そうだったら辛いがそれでもAが自分の彼女である事実は嬉しい。
女の子だと今日、AはMに言ってくれた。
今はその言葉を信じようと思う。
部屋着に着替えてベッドに横になって天井を見ているMは今日のデートを思い出していた。
手や腕、肩から微かに感じたAの感触と体温はMの胸の奥をくすぐったくした。
その感覚に改めてAのことが好きなんだと思った。
「好き、です。Aさん……」
MはAを思い出して呟く。
Aの触れた感触は女友達と戯れあって触れた時より硬い。
自分自身もAへの気持ちがどうなのか分からなくなった。
他の大多数の男性よりや若い感触だったが女性よりも堅いAの肌の感触。
肌は女性に近いのかもしれない。だが骨格がガッチリとしてる。そこに自分はAの男性性を見出していないだろうか。
もしそうならAはどう思うだろう。
自分の気持ちが「女性として女性を好きになった」のか分からなくなった。
だが、その男性性を全く感じなかった頃に感じたAへの恋心は信じたかった。
気持ち自身は持てないが身体はAを求めているのは確かだ。
Mは股間に膨張感を覚えた。
ペニスが勃起して部屋着のパンツの布を持ち上げている。
その事に少しだけ安心した。
自分はAを求めているのが分かったからだ。
勃起をするようになってからMはこの減少が憎くてしょうがなかった。
だが、今は勃起がAへの恋心の証拠になってくれる。
Mはパンツに手を突っ込み自分が男性である証拠に触れた。
硬い。内側から血の巡りを増したその部分は膨らんで張り詰めていた。
「しようかな。Aさんもしてるし」
自分に言い訳をするように呟いた。
オナニー、時々どうしても我慢できなくてしてしまうがMの嫌いな行為だ。
男であることを思い知らされる。
特に溜まってしまって我慢をしきれない時はその嫌悪感が強い。
股間についている「いらないもの」が生産するものが溜まってせずにイられなくなるときがある。
それはMが紛れもなく男性である証拠だ。それも付いている事よりも強くM自身に思い知らせるものだ。
でも、同じ男性の体を持つ女性であるAは昨日の夜、自分のことを考えながらその行為をしていたと話してくれた。
自分のような人間でもしてもいいことなんだとその時、初めて思った。
性自認が女性でもこの部分を刺激することは間違っていないんだ。
Mは一旦起き上がりティッシュの箱を枕元まで持ってくるとパンツを膝くらいまで下げ、部屋着のシャツのボタンを外し上半身と股間を露出した。
まず手始めに裏筋を中指で撫でていく。
先っぽから漏れた少しだけ糸を引く液体が指につく。
この液体は股間が刺激してほしいと求めている証だ。
もう回り道をしている場合じゃない。今日のAとの恋人としての距離を思い出して身体を満足させてあげねばと思った。
まずは手で両方の乳首をいじっていく。
ペニスに触れるのに抵抗があるのでオナニーの時は乳首から始めたり、オーガズムに至らない前提で乳首のみの愛撫にしている事が多い。
乳首をいじる事が多いので十分に開発されて気持ちよくなれる。
こうしてくとペニスの膨張感も増していってしごくことを身体が求めてくるがオナニーの時はそれを我慢して眠る事も多い。
オナニーを乳首に留める理由は射精をしないためだ。
Mの身体は紛れもなく男性。だからオーガズムに達すると尿道口から精液を出す。それが嫌でたまらない。
射精は男性しかしないものだから嫌でも自分の身体の事を思い知らされる。
可愛く着飾って女の子に見えたって服の下にあるのは男の子の肉体だ。
受け入れる事は無理だし今でも射精をすると精通の時の絶望感を味わう。
Mは初めてオナニーをして射精した時、自分の身体に対するおぞましさを感じそれから数日誰とも口を聞けなかったくらいに落ち込んだのだ。
それでも身体は射精を求めるし、Mの気持ちとしてもオーガズムの気持ち良さを求めてしまう事もある。
乳首だけで達する事ができて射精もなければいいのにと思う。
実際、今、乳首を刺激しているのはとても気持ちいい。満足とそれ以上を求める欲の間をMは漂っている。
「はぁ、Aさん……」
恋人の名前を呼ぶ。
エッチな気持ちになるに従い、昨日、Aがオナニーをした光景を想像していってしまう。
まだ見たことのないAのちんちんを想像して興奮する。
その興奮は乳首だけで満足できない気持ちを湧き上がらせる。
「もう、だめ……!」
快楽で上気した顔から泣きそうな顔になりながらMは右手でペニスを握った。
(Aさんだってこうしてるんだ。ああしてきちんと女性になれてる人がしているんだから大丈夫)
そう自分に言い聞かせてペニスをしごく。
手を上下に激しく動かす。
乳首とは比べようのない気持ちよさが下半身に広がる。
苦痛だがそれも忘れて快楽をひたすら求める。
若いMが絶頂に達するまでそんなに時間はかからなかった。
(来る……!)
あわててMはティッシュを取りペニスにあてがう。
瞬間的にペニスの根本から不随意な力が入り生暖かい感覚が広がる。
ビクンビクンとMのちんちんは痙攣し射精をした。
(あぁ、しちゃった。出したく無かったのに)
Mは身体からティッシュの中に流れ出した白濁した液体に後悔と嫌悪感を覚える。
精液はMが男性の身体を持つ事の何よりの証拠だからだ。
出したくないが出す事を身体が求めて耐えられなくなる。
そして、好きな人を思えば出した瞬間の感覚を気持ちが求めてしまう。
好きという気持ちを持て余した時の慰めはこれしかないのだ。
身体のだるさと急激に感情が冷めていくのが後悔を加速させる。
もう身体の求める欲求はどこにもない。
だが、過度な冷静さの中でMはAが同じようにしているという昼間の話を思い出した。
「Aさん、タマタマを取ったんだよね。ホルモンもしてる」
Aは科学の力を借りて男性としての機能を捨てて女性に近づいた身体だ。
「多分、もう出ないんだよね。いいな……」
年上の恋人に対して性欲が治ると羨ましさを覚えた。
睾丸を摘出したAは今この瞬間のMの悩みを捨てることができたんだと思うと羨望を覚える。
「早く取っちゃいたい。わたしも早く女の子になりたい」
そう呟くと自然と目から涙が溢れた。
小さい頃から自分の身体が自分のものではない気がしていた。
初めて女の子の裸を見て自分についているものが無いのを見た時に本当の自分の姿はこうなんだって思った。
愛しい人はそれに近づいている。
彼女よりも若いから自分はまだその時が来ていないだけかもしれないが、それでも自分の欲しいものがそこにあった。
そしてまだ見ぬその人のそんな身体がとても愛おしかった。
自分は女の子としてAの事をどう見ているのか。それは裸を見る日まで分からないだろうがそれはまだ怖い。
だがまだそれは気が早い話だろう。
まだ付き合ったばかりで初デートを終えたばかりだ。
これからの自分とAに期待と不安を抱えつつMは眠りに落ちていくのを感じていた。
何ヶ月か経った。
Mは最初の頃は好きだという気持ちばかりが先走り付き合うということが分かっていなかった。
そんな中で年上で恋愛経験もそれなりにあるAはエスコートしてくれて少しずつ恋人という関係の事を知っていく事ができた。
MはAの事を女としてみてるのか男としてみてるのか、女としてみてると思っていても自信が持てないのは変わらなかった。
そしてAが自分がどっちとしてみてるのかも気にしてた。
だが、デートを重ねてそこが大事じゃない事は分かってきた。
一緒にいる時間が楽しい。それで十分じゃないかと思えたのだ。
今日は車で夜景を見に来た。
夜に出掛ける事に心配していた両親も最近は18歳になりMが大人になった事を理解して尊重してくれるようになった。
慣れない夜の外出にワクワクしながらもこの後の時間がMは気になっていた。
「人、少ないね。ここなら多分誰からも見えないよ」
そう言ってAはMを軽く抱き寄せた。
この数ヶ月で何回もあった事だがこのAの行動には今でも胸が高鳴る。
「照れてる?」
「だって、どうするか知ってるから」
「何するの?」
「Aさん、意地悪だよね」
いつの間にかMはAに敬語で話す事をやめていた。
コミュニティの公の場では敬語で話す事もあるが、それ以外は恋人だから距離の近い言葉遣いをしている。
迷うのは言葉遣いをどのくらい女の子にしていいかはあるが。
女の子らしい言葉遣いをしたいがやりすぎて不自然にならないか、自分には合わないのではないか。
敬語をやめても喋り方は定まらなかった。
「うん。好きだから意地悪したくなっちゃう」
「子供みたい」
「私は君よりお姉さんだよ」
「知ってる」
AはMの顎を手で上に引くと自分の顔をMに近づけた。
Mはあったりした顔をする。
(これで18回目。数えてるって知ったらAさん引いちゃうかな?)
Mはファーストキス以来、その回数を数えていた。
今は構えてキスをしてるがちょっとした隙の軽いキスとかするようになったら数えるのやめそうだと思いながらもその回数は知っていたいと思っていた。
Mの唇がAの唇に触れる。
柔らかい感触を口元で感じてMの胸はざわついてそれが落ち着くとうっとりした気持ちになった。
18回目の感触はいつもより長くそして経験のない感覚を伴った。
口の中に柔らかい何かが入って来たのだ。
Mはそれをすぐに何か理解した。Aの舌だ。
「んあっ……」
口と舌の動きを封じられた中でMは初めての快感に間抜けな声を上げた。
オナニーで乳首やペニスを刺激した時とは違う弱く曖昧な感覚だがしっかりと神経に伝わり腰の力が抜けるのを感じた。
Aの舌は巧みにMの口腔内を愛撫していく。
しばらく続けてからAは舌をMの口から出し唇を離した。
もっとしていて欲しいと思ったが言葉が出てこなかった。
どんな反応をしていいか分からず潤んだ目でMはAを見つめた。
数ヶ月前のファーストキスの時にも同じ反応をしたのを覚えている。
(ああ、わたし、興奮してる。でも、こうなるの嫌……)
Mのスカートの足の付根のあたりの布が前に押し上げられていた。
スカートの構造上、パンツの時よりは目立たないがそれでもしっかりと勃起が分かる状態だ。
(せめてもっと小さかったらいいのに。こうなってるのはしたないってAさんに思われちゃう)
女の子として相応しくない身体の反応に嫌悪感を覚えてAに目を合わせられずに下を向く。
(あ、Aさんも……?)
Mは目を向けた先でAのジーンズの股間部分が盛り上がっているのを見た。
(そうだよね。ついてるならこうなるのは自分じゃどうしようもないよね)
自分の「彼女」の勃起を見てMは安心を覚えた。
Mは気にしている様子もなさそうだし、これは自然な事だ。
「そろそろ行こうか」
「はい」
「照れてる?」
「うん」
「そういうMちゃん、可愛い」
AがMの身体の反応に気づいているかは分からないが少なくともそれを理由に嫌われるという事はなさそうで安心した。
やさしく手をMの腰に回すとAは車までエスコートしていった。
「今日だけどさ、私の家に来ない?」
「えっ……?」
「できれば泊まりで」
Mは車に乗ってすぐのAの申し出に胸が跳ねた。
恋人同士の関係で「泊まり」となれば何が起こるかは決まっている。
AはMと次のステップに進みたいと考えているのだろう。
さっきのキスはまさしくその前段階としてのものだ。
「いいの?」
「そりゃあ、お付き合いしてたら泊まったりとかするでしょ? もう私たち大人なんだし」
「嬉しい……。あ、でも、家に電話しないと」
「そうだね。いましちゃう?」
「そうね。ごめんなさい。こんな時に親に、とか」
「実家なら当たり前でしょ。私は一人暮らしだもん。私、親元に居た頃には恋人とか居なかったけど、ルームシェアしてた頃はルームメイトに連絡してたよ」
「Aさん、ルームシェアとかしてたの?」
「うん。こっち出てきてしばらくしたころね」
MはAの過去がどんなだったのかに興味が出た。ルームシェアなんて実家ぐらしのMからすれば未知の正解だ。
ただ、それは聞いていいことなのかは分からない。どちらの性別で生活していたころの話なのかも分からないし相手との関係によっては思い出したくない事かもしれないと思った。
「じゃあ、電話するね」
「どうぞ」
Mは気を取り直してスマホを出すと通話アプリで母親に電話をかけた。
「もしもし、お母さん? わたしね、今日、泊まりになるから。うん、相手の家に泊まる。ご飯はもう食べたよ。わかった。うん。朝に帰るね」
なるべく平静を装ってMは母親と離した。
だが、その間、Mの中で2つの感情が渦巻いていた。
一つは相手が恋人だと分かった状態でのこの話をする事の気恥ずかしさ。
もう一つは息子が女の子として恋人と一夜を過ごすという事への申し訳なさだ。
「Mちゃん、ご両親にとっても『娘』なんだね」
「どうして?」
「だって、今の電話で『わたし』って言ってたでしょ」
「ああ、そうね。中学の時に両親には話してるの。最初は喧嘩になったし認めてくれなかったけど高校に入る頃に女の子の格好で生活するの認めてくれたの」
「そっか。私は諦めて一回、家出てからになったから羨ましい」
「そんな羨ましいなんてものじゃないよ」
「羨まれておきなさい。親との関係が悪化して縁を切った人だっているんだから」
「そうね。ごめんなさい」
「謝らなくていいよ」
「でも、『娘』には慣れてないと思う。息子が女装して生活する事を認めたくらいかな。今でも飽きて男の子に戻ってくれる事を望んでるだろうし」
「そっかぁ。そういえば、私の事は話してるの?」
「恋人が居る事は話してる。でも、それが『彼女』だってのは話せてない」
「難しいよね」
「ごめんなさい」
「いいよ。女と付き合ってるってのがそこに加わったら混乱するだろうし。まして私みたいな女だと余計にね」
Aは笑いながら言ったがMは眼の前にいる恋人の話をできない状況に罪悪感を覚えて黙ってしまった。
「それはそうと」
Aは運転席から助手席に身を乗り出して軽くMを抱きしめた。
「今日、するよね?」
「えっ……。は、はい……」
耳元でAが囁くとすぐに意味を理解し咄嗟に同意した。
Aの言葉は「する」という曖昧なものだったがその意味はこの状況では一つしか無い。
Mも望んでいたことだ。だから「はい」以外の答えは無かった。
「楽しみにしてくれてたら嬉しいな」
AはMの鼠径部に目を向けていった。
Mはその視線に顔を赤くする。
「恥ずかしい……」
「でも、それは私も一緒。ほら」
Aは今度は自分の股間に目を向けた。それに合わせてMもAの股間を見る。
「わたし、初めてなの」
「分かってるよ。きちんとエスコートするから」
Mは顔が熱くなってまるで常夏の中にいるのではないかと錯覚をするほどだった。
Aはその様子を見ると笑顔になり車を走らせた。
(あ、でも……)
MはこれからAと身体を重ねる事が嬉しかったが引っかかった事があった。
自分たちのその行為はどうやってするのだろうか。
MTFが男性とする行為と男性同士がする行為、どちらも同じ事をするというのは知識として知ってる。
それだけじゃなくMは男性同士の行為の動画をおかずにして何度もオナニーをしてきた。
MとAは女同士のカップルだが身体的には男同士だ。
だから、Mが見てきた動画の行為をするのだろう。
だが、挿れると挿れられるのはどっちがどっちをするのだろうか。
どちらかが男の役割をしなければならない。
それはお互いにとってどんな気持ちなのか。
Mは浮かれた気持ちで居たがその行為の前にある現実に気が重くなり不安だった。
Aが走らせる車の中で複雑な気持ちでMはAを見ていた。
「可愛い部屋……」
Aが住んでいるのは1DKのマンションだった。
そのインテリアはナチュラル系でまとめられておりその中にインテリアに合うぬいぐるみや雑貨が飾られていて女の子らしい部屋だった。
「意外かな? 私、ガサツそうだしね」
Mは笑いながら言った。
「そんなことない。でも、もっと格好いい部屋かと思った」
「Mのわたしのイメージってそんな感じなの?」
「うん。だめ?」
「そっかぁ。いや、がっかりされてたらどうしようと思って」
「がっかりなんてしない」
「ならよかった」
Aはリビングを兼ねていると思われる寝室にMを案内するとキッチンでお茶の準備を始めた。
外が冷えてきたので身体を温めるためらしい。
「はい、どうぞ。生姜紅茶。温まったらお風呂準備するからね」
「お風呂!?」
「うん。そんなびっくりする? それとも、一緒に入ると思った?」
「ちょっと……」
「一緒に入る?」
「今は無理!」
「分かったよ。でも、お風呂入ってからしようね」
「うん……」
Mは曇った顔になった。
Aはそれに気がついてMの顔を覗き込んだ。
「怖い?」
「そうね。あと、どうしたらいいか分からなくて」
「どうやってエッチするかってこと?」
「やり方は知ってるけど、わたしはどっちの役割をすればいいんだろうって思って」
「それね。私も話そうと思ってた」
その時、Aはベッドに腰掛けてMはテーブルを挟んで向かい合わせに座椅子に座っていた。
AはMをベッドに座らせて隣り合わせになりMの肩に手を回して身体を密着させた。
「Mは今日が初めてなんだよね」
「そうね」
「単刀直入に言うとどっちとして初めてを向かえたい?」
「えっ?」
「まぁ、処女を捨てたいか童貞を捨てたいかって事なんだけど」
「それは。童貞……」
「本当に?」
Mは自信なさそうに言うとAはそれを見抜いて聞いた。
「Aさん、せっかく女性になれたのに。男の方をさせるの良くないから」
「それを気にしてたのか」
Aは口を尖らせて言う。
Mは怒らせてしまったのかと怖くなった。
「いや、どっちの役割でやっても私はMの彼女だし、身体は男だよ」
「でも、タマタマ取ったんでしょ?」
「身体的にはそれでも男。戸籍を変える要件を満たしてないしね」
「Aさんはちんちんでエッチしたくないんじゃ」
「それはMがじゃないの?」
「わたしは平気だし、わたしはまだ全部男だから」
「それは違う。私達は精神的には女同士、身体的には男同士。あとね、私はちんちんでエッチするのも好きだよ。Mが望んで私に挿れてくれるなら嬉しいけど、私もMに挿れたい」
「そうなの!?」
「そうだよ。でも、私に気を使って男の方をするならして欲しくないよ。私はMのしたいことをしたい。今日はMの『初めて記念日』なんだからね」
「『初めて記念日』……?」
MはAの口から出た想像していなかった言葉にときめいた。
「そうだよ。だから、私は今日はMにとって幸せなエッチをしたい」
「嬉しい……」
「だから、きちんとエスコートする。どうしたいか言って」
「わたし、女の子としてしたい。その、挿れる場所は女の子のじゃないけど」
「うん。男の子同士と同じだね。でも、女の子として抱かれるのと同じ」
「だから、わたし、Aさんに初めてをもらって欲しいの。Aさんは……」
Mは強い口調で言ったあと言葉をフェードアウトさせた。
「気にしなくていいよ。私、挿れるのも好きだから」
「Aさんこそ無理しないで」
「してないよ。過去の彼氏とも挿れる方をやった事はあったからね」
「それって男の子だった時?」
Mは驚いた顔をして言う。
Aからは女性に移行する前は同性愛者男性として生活してた事は聞いている。その時から彼氏が居たとも。
「どっちも。女子に移行してからもしてるよ。彼氏の方が嫌がって一回でやめちゃう事もあれば半々って事もあるからそれは相手によるけどね」
「そうなんだ。それってありなんだ……」
「うん。ありだよ。しなきゃいけないのは身体に付いてるもので幸せなエッチをする事だけ。具体的にどうするかは私が、相手が、つまり今はMが幸せならそれでいいの」
「女の子だから挿れられないといけないって思ってた」
「そんな事無い。生まれながらの女の子も道具を使って挿れる事だってあるんだから」
「そんなのあるの?」
「うん。エッチの仕方は色々。だから、私はMの今日望むエッチはやりたいと思う。どうかな?」
「うれしい。わたしは挿れられるのずっと夢に見てたの」
「それならよかった」
AはMの事をぎゅっと抱きしめた。
Mは突然のことに驚く。
「Mはちょっと杓子定規だね。私もMくらいの頃はそうだったけど、女の子になるって事はもっと多様だよ」
「うん……。わたし、女の子にならなきゃ、女の子らしくいなきゃってばかりで本当の女の子に興味持たなさ過ぎたかも」
「そうかもね。わかるよ」
MはAに頭を撫でられて胸の奥がくすぐったく感じた。
「そろそろする? その前にお風呂準備しないとね」
「シャワーでいいよ」
「そうか。その方が楽だね。そうしよう」
Aはポンと手を叩くと納得したような様子を見せた。
その直後にAは腕組をして何かを考え始めた。
「どうしたの?」
Mはその様子が気になり尋ねる。
「Mさぁ、そのお尻でエッチするための準備って知ってる?」
「え、知識としては。あっ、道具」
「シャワーで出来るからそれは大丈夫。でもやり方きちんと知ってるかなと思って」
「知らなかった。どうしよう、わたし、シャワーでやる方法は知らない」
MはAと付き合い始めた頃に元々知識として知っていた水浣腸の道具を通販で買って練習もしていた。
「道具を使う方法は知ってそうだね」
「うん。実は練習してて」
「それならやり方は一緒だよ。ちょっとおいで」
そう言うとAは手を引いてMを浴室に連れて行った。
それにMは驚いて戸惑った。
「怖がらないで。別にパンツ脱いでやってみてとは言わないから」
「よかった……」
「言うと思ったの?」
「ごめんなさい。つい」
「大事な所はエッチするまでの楽しみにしたいから大丈夫。シャワーヘッドの外し方を教えようと思ったの」
そう言うとAはシャワーヘッドを手にとって見せた。
Aの家のシャワーヘッドは回すとカチンとという音がして簡単に外れるようになっているそうだ。
「外す時は水は止めてね。飛び散ってびっくりするよ」
「こんなのあるんだ」
「ホームセンターで見つけたんだけど掃除とかをしやすいようにするためらしいよ。私はエッチの準備をするのにちょうどよくて買ったんだけど」
「マンションってシャワーヘッドとか変えてもいいんだ」
「このマンションはね。大体、退去時に元に戻せばいいみたいよ」
「やってみる。でも、お風呂汚くなっちゃう」
「だから、排水口の蓋を開けてここにしゃがんで出してね。あとはシャワーで流せばいいから」
「わかった」
「よし、じゃあ、シャワー浴びようか」
「あの、先にAさんが浴びて」
「いいけど、どうして?」
「なんか、うんち出した後のお風呂に入らせるの申し訳なくて」
「Mは優しいな。わかったよ」
それからMは先程座っていた座椅子に戻り、Aは脱衣所のカーテンを閉めた。
Mは脱衣所にいるAの様子が気になっていてチラチラとそちらの方に目を向けては戻してを繰り返していた。
カーテンの向こうで好きな人がこれから裸になる。裸でこの後、抱き合うのだがそれでも気になってしょうがなかった。
下半身もAのまだ見ぬ裸に反応してしまっている。
Aはすぐに脱がずにトイレに入った。
トイレの中から聞こえてきた音にMは驚いた。
おしっこの音がある程度の高さから水が落ちる音だった。つまり、Aは立っておしっこをしていた。
(Aさん、立ってするんだ……。びっくり)
Mは小さい頃から立っておしっこをするのが嫌でしょうがなかった。
家ではずっと座ってしているが学校では皆の手前、人に見られながら苦痛でしか無い立ちションを強いられていた。
それをAは普通にしている。
意外だが別にそれに特に思う所はないとはいえ、どんな心境でそうしているのかが気になった。
そこからはシャワーを普通に浴びていた。
カーテンの向こう、ドアの向こうでAが裸になっているのを想像した。
ホルモン治療を受けたMTFの身体は見たことがない。
想像すると思い浮かぶのは女性の身体だ。Aは女性にしか思えないから女性の身体つきで想像するのは自然に思えた。
それほど時間がかからずシャワーを終えて部屋着に着替えてAはカーテンを開けた。
「おまたせ。さっぱりした。Mも次だね。ちょっと待ってね、私の部屋着使って」
そう言うとクローゼットから部屋着を出してAに手渡した。
薄いピンクにドット柄の可愛いデザインだった。
よく見るとAは水色の色違いのものを着ていた。
(Mさんとおそろい……!)
恥ずかしくて口には出せなかったが恋人と色違いとはいえおそろいの服を着ている事に気恥ずかしさと嬉しさを覚えた。
「じゃあ、大変かもしれないけど頑張ってね。分からなかったら呼んで」
「うん。やってみる!」
Aとのおそろいに浮かれていたらそのAからの言葉に現実に戻された。
これから本来セックスをするためじゃない身体の部分でセックスをするための準備をしないといけない。
カーテンを閉めるとMは粛々と服を脱いでいった。
家で練習をした水浣腸の手順を確認しながらで夢中だったが風呂の戸を閉めて鏡に写った自分を見ると絶望的な気持ちになった。
そこに居たのは髪の毛を伸ばした男性の姿だ。
乳房はないし肩幅は写真で見たことのある女性のものよりも幅広い。
身体の線が曲線ではなく直線でできていてこの姿を見るのが苦痛だった。
これからAは見たらどう思うだろう。
男性が好きなのだから興奮してくれるだろう。
女としてみてもらいたいがこの姿で股間にぶら下げているものを見せてそれは虫が良すぎではないか。
(でも、そんな事を言ってる場合じゃない……!)
これから慣れないセックスの準備をしなければいけない。
Mは気を取り直してシャワーヘッドを外した。
Mはベッドに腰掛けてAに抱きしめられていた。
準備は終わった。水浣腸は無事に終わったが直腸に水を注ぎ込んだ時の腹の張る感覚が収まったとはいえ気持ちの悪さは尾を引いている。
だが、Aに抱きしめられてその感覚は好きな人の感触による喜びに塗り替えられようとしていた。
「ねぇ、Aさん」
「どうしたの?」
「一つ聞いていいかな?」
「どうぞ」
これから行為をするのは間違いない。
だが、その前に自分の性への向き合い方、Aの性への向き合い方を知るうえで気になっていた事がある。
セックスに関係はないがこれからAがセックスで使う身体の部位に関係があることだ。
「Aさんって立っておしっこしてるの?」
「聞こえちゃった?」
「うん。その、びっくりしちゃって」
「Mはどうしてるの?」
「いつも座ってしてる。立ってするなんて嫌。でも、Aさんの立ちションの音を聞いて気になっちゃって」
「ちんちん硬くしてるのはそれ?」
「いや、その、それもある……。Aさんのちんちんを想像しちゃって。ごめんなさい、女の人なのにちんちんで興奮するなんて」
「いいよ。私だってこれからMのちんちん見たら興奮しちゃうだろうし。女の子なんだから自然なことだよ」
「そう思っていいの?」
「いいの」
「でも、女性として抵抗ないのかなって」
「立ちション? 前はあったな。でも、家でだけはするようになったの」
「どうして?」
「出来るのはあと数年だけかもしれないからね」
「数年……?」
「もしかしたら2、3年したら私のお股からちんちんが無くなってるかもしれないから」
「それって……」
「今は決めきれてないけど性別適合手術は受けたいと思ってるからね。しちゃったらもう立ちションは出来ないから」
「そっか」
「親が産んでくれた身体を変えるから変える前まではしっかり一つ一つを楽しみたいからね」
「Aさん、強いね」
「そんなことないよ。でも、これが私なりの男の体に生まれた女であることの向き合い方」
「わたしには無理だなぁ」
「女の子としてはしたくないもんね。私は半分ヤケクソだから」
Aは笑いながら言う。
こうしてAが笑う時は真剣に考えた物を深刻に相手が捉えないようにする優しさだとMはこの数ヶ月で気がついた。
Mはそういう所も含めてAの事が好きだ。
「さてと」
「……!」
AはMを優しく抱きしめた。
「Aさん……」
「そろそろ、限界かも。始めようか」
「はい……」
一度、AはMを離すと着ている部屋着に手をかけて静かに服を脱がせ始めた。
Mは付き合う前から自分を女の子らしいと言ってくれてきたAが自分の裸を見てどう思うか怖くなった。
さっき浴室の鏡で見た髪を伸ばした男子にしか見えない姿にAはきっと興奮する。
だが、それは男性を好きな性的指向によるもの。女として見てほしいけどそうはいかないだろう。
Aは慣れた手つきでスムーズにMの服を脱がした。現れたのは平らな胸にカップ入りブラジャーを着けた姿だ。
「気持ち悪くない?」
「全然。かわいい」
「男がブラジャー着けてるの変でしょ?」
「それはお互い様」
そう言ってAは着ているMと色違いの部屋着を脱ぎそれに続けてブラジャーを外した。
「どうかな? 私の裸」
「思ったより胸小さい」
「言うね」
「ごめんなさい!」
「いいよ。小さいんだ、私。Mと同じ様にカップ付いたの着けてるの」
「そうだったんだ」
「Aカップ。ホルモンで育つのはこれが限界。人によってはCくらいまで育つけど、殆どの人はこのくらい。本物の女の子と違って骨格が広からね。同じだけ脂肪が付いても平べったいの」
「そうなんだね」
「ショック?」
「わからない。でも、もっと大きくなると思ったの」
「だから人によっては豊胸手術をするよ。私はしないけどね」
「それはどうして?」
「将来最後まで手術したらあそこは人工のものになっちゃうけど、それでも人工物なしで自前のものだけで女の子になりたいの。だから」
Mはおぼろげに生理や妊娠はないけど女性の身体になれると思っていたがそうでもないらしい。その事実に戸惑った。
自信の不勉強と夢が崩れたような残念な気持ちにどんな反応をしていいか分からない。
「Mはさ、写真とか動画でも女の子の裸を見たことある?」
「ない。興味が持てなくて」
「そっか。私は大学二年くらいまで普通の男子のふりをしてたから話合わせる為に男性向けのエッチなコンテンツを見たり、彼女もいたことあってその彼女とエッチもしたけど、女の子と男の子って全然違って完全になれないものだってのは痛感したよ」
「わたし、Aさんが好きだし女の子と付き合いたいなんて」
「別に浮気しろなんて言わないししないで。そうじゃなくてコンテンツで見れるくらいは女の子の身体を知っておいたほうがいいよ。見たら萎えちゃうと思うけど」
「そうなのかな」
「なろうとするものに対して何も知らないのはよくないしね。ちんちんを取りたかったとして、ちんちんのない人たちのあそこがどうなってるのかは知っておいた方がいい」
「そっか」
「そうすればどう可愛くなっていいか分かるでしょ? Mはせっかく可愛いんだから」
「そうね」
今、MはAを女性として好きだ。だが、男性の身体には興奮をするが女性の身体に興味が持てない。
見たこともないのだから実際に見たらどうか分からないが、女性の裸に勃起したら自分が女の子ではない事を突きつけられると思って怖いという気持ちもある。
「ごめん、これから愛し合うのに説教しちゃった。私の悪い癖だね」
「いいの。Aさんの言う事は本当だし、わたしの事を心配してるのわかるから」
「よかった。嫌われたかと思って心配しちゃった」
「嫌わないよ。でも、わたしにはまだ荷が重いかな」
「そうだね。じゃあ、愛し合っていいかな?」
「嬉しい」
Aは再びMを抱きしめた。
(あったかい。肌の感触ってこんななんだ……)
Mは肌と肌が服を挟まず直接触れ合うのを生まれた初めて経験した。
まだ前戯も始めていないがこれが身体で愛し合うことなのだと思った。
「膝立ちになってくれるかな?」
「うん」
Mは膝をついて立つ。Aに促されるとMはこれからどうするのか分かって怖くなった。
愛する人に一番見せたくないものをさらけ出すことだと分かっているからだ。
「怖い?」
「うん……」
「分かるよ。私も最初の彼女の時は違う心境だったけど、初カレとする時は怖かったもん。でも、私はMを女の子として見てる。たとえここが男の子だったって一緒だよ」
Mは小さく頷く。
Aはそれを見るとやさしくズボン、パンツの順番に脱がしていく。
するとMの男性器が顕になった。
「怖がってるんだね。小さくなってる」
「その……」
「頑張って興奮させてあげるからね」
「Aさん……」
そう言うとAも膝立ちになり自分のズボンに手をかけた。
(Aさんも付いてるんだよね。無いって思っちゃうけど)
そのままAはズボンとパンツを同時に下ろして男性器を露出する。
「どうかな? 私はMを見て勃っちゃってるんだけど」
「すごい……。誰かのちんちんなんて初めて」
MはAのペニスを見ると身体が素直に反応したようでメキメキとペニスが大きくなった。
「見せたら元気になったね」
「ごめんなさい」
「謝らないの。私たちこれからエッチするんだよ。勃たなきゃね」
そう言うとAはMのペニスの下側、つまり裏筋を中指で撫でた。
「あっ」
他人に触られるなんてMには生まれて初めての経験だ。
「Aさんのエッチ」
「そんな事言われたらお姉さん、ゾクっと来ちゃう。そりゃエッチだよ。これから私たちエッチな事するんだもん」
Aはそう言うとMのペニスを触り続ける。
Mのペニスの先端には透明な水滴が出ていた。
「我慢汁まで出てきて。ちゃんと興奮してくれて嬉しい」
そう言っているAのペニスも斜め上を向いてそそり立っており、先端は濡れていた。
「Aさんも勃ってる」
「可愛いMの姿を見たからだよ」
「わたしって男?」
「身体は完全にね。でも、君は私の彼女だよ。恥ずかしがって私の手で感じてる姿は完璧に女の子」
「Aさんも小さいけど胸があって肌もきめ細かで女性だと思う」
「嬉しい。怖い思いしてホルモン打ってタマタマを取った甲斐があるよ」
「袋、上から見たら無いのかってくらい小さくなってるのね」
「そうだよ。空っぽだし女性ホルモンで男性器は小さくなるからね」
「確かにちんちん、小さめ」
「元々大きい方じゃないのもあるね」
「私もホルモンしたら小さくなる」
「原理上はね。でも体質によるから。でもMも小さい」
「そうなの?」
「元カレは皆、Mより大きかったよ。声も高いし骨格も華奢だし女性ホルモンが多いとかなのかな。トランス女性は男性ホルモンが少ないとも言うし」
「でも、この身体は男」
「そうだね」
そう言うとAはMを優しく押し倒した。
ベッドに仰向けになったMは覆いかぶさるAを見上げていた。
(これがセックスをする視点なんだ……。あっ……!)
先程経験したばかりの感覚がMの身体をそっと流れた。
Aが指先でMのペニスの裏筋を撫でた感覚だった。それを何往復もする。
「あっ……!」
Mは思わず声を上げた。
「可愛いな。声高くて羨ましい。私がMくらいの頃は今の発声方法に慣れてなくて喘ぐと男の子の声に戻ってたからね」
「でも、声が高くても脱ぐと男だから、わたし……」
「そっちの方が興奮するんだけどね、私は」
「実はわたしもAさんの胸じゃなくて骨格に興奮するし、その、ちんちんが一番気になって」
「性的にはお互いの男である所に興奮しちゃうわけだ。ちょうどいいね、私たち」
「うん……」
「女同士として惹かれて、男同士としてエッチな気持ちになる。これってMみたいな女の子とじゃなきゃ出来ないことだから私は好きだよ」
「それでいいのかな?」
「もちろん。それじゃあ、Mの初めてもらっていい?」
「よろしく、おねがいします……」
Mは顔を片手で覆って真っ赤にして言った。
Aは枕元に置いてあった平べったくて四角いパッケージと自動販売機で打ってる350mlペットボトルを細長くしたくらいのプラスチックボトルを手にした。
「お尻の穴は女の子の穴みたいに濡れないからこういうの必要なんだよね」
「濡れる?」
「知らない?」
「うん……」
「女の子の大事な所の穴って興奮すると液体が滲み出て濡れるの。私たちが勃つのと同じように女の子は濡れるんだよ」
「濡れる……」
Mは女性器がどうなっているか知らない。興味もない。ちんちんがない事以外は膣という穴があるのと立って小用出来ないくらいしか認識していなかった。
濡れるという現象。そんな現象があるのは想像つかない。
知らなかったことも想像がつかない事もMは自分が男であることを突きつけられた。
「でも、これが変わりになってくれるから。ちゃんと女の子として初めてを向かえられるんだから大丈夫」
そう言ってAはMにボトルを見せるとMは目を瞬いた。
「これはね。お尻とちんちんに塗って穴の滑りを良くするためのローションだよ。あと、これはコンドーム」
今度は平べったい四角いものの方を見せる。
「それじゃあ、ここからは私に任せてね」
そう言うと、Aは四角いパッケージを破る。
中から丸い円盤状のものが出てくる。
それをAは自分のペニスの先端に当てると根本に向かって引っ張る。
すると円盤の中央がペニスの先端に引っかかってするすると伸びて筒状に広がっていく。それがペニスにピッタリとくっつき覆った。
「これがコンドーム?」
「そうだよ。お尻の穴はうんちを出すための場所だからね。子供が生まれる心配がないといってもこれを着けないと身体によくないから」
そう言うとAは続けて指にボトルからとろみのある透明な液体を指に塗り、その液体で塗れた手でMの肛門に手を伸ばした。
「少し気持ち悪いかもしれないけど我慢してね」
そう言うとAは優しくMの肛門の周囲を撫でて指につけた液体を塗っていく。
それが終わるとゆっくりと指を肛門の中に押し込んでいく。
そして少し挿れ、指を抜き、それから少しだけ深く挿れを繰り返していく。
Mは子供の頃に熱を出した時に座薬を挿入されるのが痛くて嫌いだったがそれよりは辛くなかった。
だがAの言う通り本来出すための場所である肛門に異物が入ってくる感覚は気持ちが悪かった。
だがゆっくりと繰り返していくとほぐれていくのかすんなりAの指を受け入れられるようになっていく。
Mもお腹の力を最初は入れていたが力の抜き方を覚えていきリラックスした気持ちでAの指が入っていくのを受け入れられるようになってきた。
「そろそろいいかな。じゃあ、指じゃなくて私のちんちんを挿れるからね」
そう言うとAはMのおしりの前に座っていたが起き上がりMの脚を持ち上げた。
「ふぅ……」
Aは小さく深呼吸をする。
そして腰をMのお尻に近づけていく。
「多分、痛いと思う。無理はしちゃ駄目だよ。痛かったら言ってね」
そう言うとさらにAの腰がMのお尻に近づき、次の瞬間、指よりも太い感覚がMの肛門に入ってきた。
「うっ!」
Mは経験したことのない種類の痛みに声を上げた。
「腰動かしていいかな?」
Mは力なく頷いた。
AはMの様子を見るとどんな感覚で辛そうな顔をしているか理解した。
ゆっくりと腰を前後に動かしてAはピストン運動を始めた。
「あっ! んっ! あぁっ!」
Mは喘ぎ声からは遠い痛みに耐えての声を上げていく。
Aはその痛みを自分のもののように感じた。
Mがこうして苦しんでいるのは20歳になる少しだけ前にAが初めて経験したものだ。
初めては痛い。
生まれながらの女性にとってだって、その為の穴に挿入するのだって痛い。
AもMも排泄器官で膣の代用をしている。
いわば無理やりセックスをしているのだ。
アナルセックスの経験のある女友達も肛門への挿入は膣への挿入よりも慣れるのに時間がかかったと言っていた。
実際、Aも気持ちよく慣れるまでに何ヶ月もの時間を使った。
苦しんでいるのMを見ると今すぐやめてあげたいと思った。
だが、Aは知っている。
自分がかつてそうだったようにMは肛門に挿入されることが痛いのを承知で自分のペニスを受け入れてるのだ。
初めてを経験しなければ慣れはやってこない。
普通のこととして女の子として抱かれる日のために耐えてるのだ。
だから少しでも慣れる日に近づけるように優しくペニスを突き上げてあげようと思った。
未来はわからないがもしAが性別適合手術を受けた時はAの身体に出来た膣で同じことを再び経験する。
その時に一緒にいるのがAなら挿れられる実感を持って挿れて欲しい。
そんな不確実な遠い未来だけじゃない。
Mにとって自分のちんちんを受け入れることが気持ちのいいことになって欲しい。
セックスに慣れて自分で感じて欲しい。Aはその未来に一日でも早くMを導きたかった。
「Aさん……」
「M、痛い?」
「でも幸せ。今、Aさんとわたし、大事な所が触れ合ってる」
「そうだね」
「んっ……! 痛いけど、もっとして欲しい」
「うん」
痛みに耐えながらMは笑顔を見せる。
AはMに自分の気持ちが伝わっているような気がして嬉しくなった。
今、Aはペニスが気持ちよくなっている。
だが、それ以上にMの肛門に自身のペニスを出し入れしていく行為の中でAは自分の持つ好意を精一杯伝えようとしていた。
Mはそんな事を感じ取れる余裕はないだろう。自分も初めてのセックスの時はそうだった。
だがそれでも好きだという気持ちを込めるのと込めないのでは同じ事をしていても違う。
それにAはMの事を好きだ。確かに男の身体でそこに興奮しているが、それでも服を着ている時に女の子にしか見えないMの一人の乙女である事を愛している。
正直言うと、痛い思いをさせたくない。
気持ちよくなるための経験を積むためは自分のエゴかもしれない。
だが、前の彼氏のペニスが自分の中に入った時の気持ちよさをMが味わう日が来てほしいのは心からの希望だ。
だからできるだけ痛みを最小限に抑えれるように気をつけながら腰を動かす。
それが今のAにとって出来る限りの愛だ。
「M、好きだよ」
「んっ。あっ、わ、わたしも!」
そろそろだ。
Mへの好きにAの身体が耐えられなくなってきた。
突然、Aは腰の動きを止めた。
Mの目には恍惚とした表情になったAの顔が見えた。
まだ肛門にAのペニスが入ったままで異物感はあるがピストン運動が止まったことで痛みが止んだ事でそこに意識を向けられた。
ゆったりとした動きでAはMのお尻からちんちんを引き抜く。
Aはとても穏やかな顔でMを見ている。
「Aさん……」
MはAのその表情をとても美しいと思った。
美人だと思っていたAがこれまで見せたことのない美しい表情。
「出ちゃった」
Aは少し気だるい感じだがとても柔らかい口調で言う。
痛みが完全に去って落ち着いたMはその顔と声に見とれながら身体を起こした。
Aは慣れた手つきでコンドームを自分の男性器から外す。
Mは冷静になった状態で改めてコンドームを見る。
ペニスの先端部分が補足突起状になっていた。
そこに液体が溜まっている。
「タマタマ、取ったんだよね?」
Mはそう言ってAの股間に目を向ける。
Aにはペニスがあるが陰嚢は縮んでしまっている。その中が空であることははっきり分かる。
「そうだよ」
「なのに出るの?」
「透明なのがね」
そう言うとAはMにコンドームを見せる。
「ホント、透明……」
「私も取ったら何も出なくなると思ったんだけどね。精子はでなくなったけど精子の含まれていない透明な精液が今は出るの」
「これがMさんの精子……」
「興奮してる?」
「その、女の人なのに精子ってのが……」
「それはMもでしょ」
「私はまだ白いのが出るし、見ての通り男だし」
「Mは女の子だよ。今、しっかり処女をもらったんだから分かる」
「それでいいの?」
「いいの。そんな可愛い声しててメラニー法出来るようになるまで男の声だった私からしたら羨ましいよ」
MはAがそう言うと衝動的にAに抱きついた。
「どうしたの?」
「なんか、我慢できなくて」
「M、あったかいな。可愛かったよ、エッチしてる間」
「恥ずかしい……」
「一番、無防備な姿を見せあったもんね」
「そうね」
MはAの肌の感触に意識を集中した。
女性の肌の感触は知らないがAの肌は自分のそれよりも柔らかく滑らかだった。
そして自分の完全に平らな胸に触れるAの乳房。
そういった感触たちにMのペニスは硬くなっていた。
「ねぇ、M」
「何?」
「痛かったでしょ?」
「あんなに痛いと思わなかった」
「初めてはね。痛くなくなるまで何度もかかるけど、Mは懲りてない?」
「ううん。もっとAさんに挿れてほしい。痛いけど、でも、Aさんの大事なところがわたしの中に入ってくるのはとても幸せだったよ」
「よかった」
「Aさんは前の彼氏とも痛かったの?」
「私はもう身体が慣れて気持ちよくなれるよ」
「そんな日がわたしにも来るかな?」
「来るよ。それまで私が頑張るから」
「今度はわたしがAさんに挿れるのは駄目?」
「大歓迎。今の私はお尻で気持ちよくなれるからMのちんちんを感じたいのもあるけど、Mに気持ちよくなって欲しいからね」
「うん。それ、したいなって思った」
「今日はさ、最初にMがちんちんでするって言った時にMが本当に望んでたなら歓迎だったんだよ」
「そうなの?」
「お尻ですると慣れるまでは痛いし気持ち悪しね。初エッチが気持ちいいなら幸せだなって思ったの」
「そんな風に考えてくれたのにわたし……」
Mが申し訳無さそうに言うとAはMを話して顔をじっと見た。
「でも、挿れて欲しいって気持ちは私も女の子だから分かるもん。だから、それが一番かなって思ったの。私のエゴなのかもしれないけど」
「そんなことない。わたし、幸せだよ。すごく、満たされた気分」
「そう思ってくれるんら嬉しい」
AはMの頭を撫でると、Mに横のなるように促して自分もその隣に横になった。
二人で天井を見て少しの時間だが間ができる。
その間にMは肛門の痛みの余韻が続いていることに気がついた。
「お尻、まだ痛い」
「処女を喪失したんだから痛いよ」
「この痛いのってわたしがAさんに愛された証拠、なんだよね?」
「そうだよ」
「わたしがAさんのちんちんで気持ちよく慣れる日って来るのかな?」
「時間はかかるけど来るよ。そうなるまで一緒に頑張ろうね」
Aはそう言うとMと手を繋いだ。
「うん。気持ちよく慣れる日が楽しみ」
「そうなるまでにMがどんな女の子になっていくのか私も楽しみにしてる」
「わたしもAさんが今よりも女の人になっていくのが楽しみ」
MはそれからAとかなり遅い時間まで話し続けた。
男性の身体に生まれた女の子としてお互いに好きという気持ちを持ち寄る時間がこれから楽しみに思えた。
近い内にMがAの肛門にペニスを挿入することもあるだろうし、Mは生まれて初めて自分の股間に付いている嫌なものが好きになれそうに思えた。