凌辱閲覧注意です。
プロローグ
何でこんなことになってしまったんだろう。
衣類を引きちぎるようにひん剥かれ、馬乗りになるように押し倒されて見上げた先には、下卑た目をこれでもかと煮詰めたような形容し難い強烈な臭さを放つ浮浪者。
必死に抵抗するも男の力に叶うはずもなく抑え込まれ、抵抗が無駄だと理性ではなく本能が悟ったとき、これまでの人生を振り返っていた。
それはこれから起きようとしていることからの逃避。しかし悲運な出来事故に思い返すのは自分の不幸だった。
あれ程愛していた母の死、地面師詐欺に騙され、膨大な借金の責任を取らされたうえ祖父に見捨てられた父の荒んだ姿。
そして……父が補導され警察の厄介になりこれ以上迷惑の掛けられないとかつて組んでいたCRYCHICというバンド抜けたあの日。
あの曲を聴いて、本当は戻りたかったなんていう身勝手な思いが爆発して、それが耐えられなくて走り出した先が
禁止領域。お祖父様から絶対に近づくなと、口を酸っぱく言われた場所。
外の世界にいられなくなった失敗者や凶悪犯罪者たちが住む無法地帯。
プロの格闘家が1日も持たずに帰って来れないわたくしにとって空想でしかなかった場所は確かに存在して、その場所にわたくしはいる。
「女だ、女だうっひょーきれーな肌だなあ……こんな上玉表でもなかなかいねぇよぉ。ラッキー」
「ひっ!?」
男に覆い被られ、首を舌で舐められた。ダラダラたれる涎を拭こうともせず垂れ流しのまま興奮していて抵抗を諦めていたわたくしもその気持ち悪さに小さく悲鳴を上げる。
それがさらに男の興奮を刺激したのか舌舐めずりをして嬉しそうにわたくしの胸に手を伸ばして……
「ぐげっーーー!?」
「きゃうっ!?」
触れかけた瞬間男は殴られカエルが潰れたような声を上げながら吹き飛ぶ。その時汚く歪んだ気持ちの悪い顔を見てしまって叫んでしまう。
男から解放され、身体が自由になる。しかしそれは助かるを意味しない。
「俺の獲物取ろうとしてんじゃねえよボケが!」
「ぐぎゃっ、ぎぎう、ぎゃ!? た、たす……」
何度も何度も踏み潰す音と悲鳴が響き渡る。そこには男に襲われている少女を助ける正義感など皆無で、殴り飛ばした男もまたわたくしを犯す事を考えていた故の行動だった。
男に気を取られている間に逃げようとするが、足がすくんで動けない。それでも何とか動こうとした瞬間何かが飛びかかってきた。
「うめぇ、うめぇなお前の舌ぁはよぉ! 外の人間ってのは涎まで甘えのか!?」
「ひうっ? や、やめ……んぐっ、んん!? おえっ!」
男を殴り飛ばした人とは別の人間がわたくしに覆い被り、強引に舌を入れてきた。
わたくしのファーストキス。それが最も簡単に、最低最悪の形で為される。
臭い、臭い!? 気持ち悪い!!
わたくしは操が奪われた事に涙するよりも、男の余りに臭い口臭で吐きそうだった。
「うひょー!! でっけえ!! おっぱいキレーすぎてそれだけでいっーーーギャ!?」
犬のようにはあはあと舌をだらしなく出し、薬物を決め込んだように奇声上げる男もまたわたくしを好きにできる時間は長くない。
腹を掬い上げるように蹴り上げられ宙を舞う。その際の衝撃で胃の中の物が出たのだろう。一部吐瀉物が顔にかかる。
「いやぁぁ!? お、おえぇぇぇぇぇーーーーッッ!!???」
「汚ねえなぁ。女の叫びは大好物だがちょっと煩え……ほらゾロゾロときやがる」
匂いと汚物にもう我慢の限界で盛大に吐いてしまう。それを見ても蹴り上げた男は愉しそうにしていたが、顔を険しくする。
足音が四方八方からやってくる。闇夜に紛れて顔は見えないがいる。そしてその全員がわたくしを襲おうとしていた。
少しの間だっだが、ここで会った全員が等しくわたくしを襲ってきた。だから今何人いるかもわからない人間が、わたくしを狙っていることは理解できていた。
獲物は一つ、狙っている狩人は複数。なら狩人は何を考えるかーーー答えは一つだ。他の狩人を排除する。
瞬間ーーーわたくしを取り合う闘いが始まった。
もう嫌だ。何でわたくしばっかりこんな酷い目に……
今すぐ意識を手放したい。こんな嫌な思いするなら死んだ方が……なんて。
どうせもうわたくしの運命なんて決まってる。もう考えたくない。考えるのに疲れてしまった。もうどうにでもなってしまえと諦めたその時ーーー
「ぐぎゃぁぁぁ!!?」
「ぎゃっ!?」
「がぁぁぁぁぁ!!!?」
投げ出した意識がこれまでとは比較にならない殴打音と叫び声により覚醒する。
「なにもんだお前!!」
「通りすがりの昆布豆豆太郎だ」
「ふざけてんのかオメェ! そんな名前のやついるわけねぇだろーが!」
「いるだろ目の前に。母ちゃんに付けてもらった大切な名前を馬鹿にしてんのか? ああ!?」
「す、すまん。昆布豆豆太郎」
「分かればいいんだ分かれば。因みにオレはそんなへんてこりんな名前じゃないが」
「ふざけんじゃねぇぞぼーーーがっ!?」
屈強そうな男が180センチくらいの青年のアッパーによって一撃で沈む。
ここでは似つかわしくない白い制服姿の鋭い眼光が特徴の美青年が両膝をついて腰が抜けたわたくしが見上げた先に立っていた。
「あ、あんたまさか……朝霧海斗か?」
「あん?」
「ど、どうしてここに! あんたが……」
「だから通りすがりだって言ったんだろ。うじゃうじゃうるさかったからどかしたけどな」
「じゃあコイツ目当てじゃないってことか?」
「コイツ……?」
朝霧海斗と呼ばれた青年はわたくしが目当てではなかったらしく、倒された男とは別の男がこちらを指差した事でようやく認識したらしかった。
「アンタもここの人間なら分かるだろ? これほどの上玉一生で一度出会えるかどうかだ。こいつ目当てじゃねえってんなら道は開ける。アンタの邪魔はしないからここはどうか勘弁してくれ」
「あー確かにこりゃ上玉だ」
「だろ? 何ならアンタも一緒にーーーぶびゃら!?」
結局この人も同じなんだ。目踏みするような視線は、獲物を見定める肉食獣のそれだ。
わたくしは草食動物が肉食獣に自らの肉を食い破られる瞬間、己の死期を悟って諦めるのに似た感覚で青年を見ていた。
下衆な提案を一蹴し、殴り飛ばした青年がこちらに向かってくる。
「大丈夫か?」
「え?」
「大丈夫かって聞いてるんだが」
わたくしが考えていた事は一向に起こらず、それどころか腰を抜かして立てないわたくしに手を伸ばしていた。
わたくしは目の前の青年の思惑が分からず戸惑ってしまうが、恐る恐る伸ばされた手を取った。
「あ、ありがとうございます。大丈夫ですわ」
「そうか。それは良かった」
まさにわたくしにとって救いの光でした。こんな場所でも優しい方はいる……そんな甘い事を考えてしまったのです。
わたくしが安堵した瞬間、腹に衝撃が走って意識を失う。
どんなに身なりがちゃんとしていて優しく見えてもここは禁止領域、善人などいない事を数秒経たずに思い知る事になりました。
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