※この作品はR-18です。

暁のアベムジカ   作:アメリカンショコラ

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再会

 

 

 

 弾くはずのなかった『春日影』の演奏から数日が経った。

 祥子ちゃんを傷つけてしまったことをLINEで何度も謝ったが反応は一切ない。

 それでも謝り続けた。学校を休んでベットに寝転び、トーク画面から目を離さず返事を待ち続ける。

 千早愛音……私がCRYCHIC復活の為、元メンバーである立希ちゃんと燈ちゃんを繋ぎ止める為に利用した存在。ただその為だけの存在からの通知。

 ブロックしてやろうか、そう思い当たり、手を伸ばしたところで自分がそうされている可能性に思い当たった私はネットで調べる。

 その結果を見た時、私は振り切ることにした。

 

 

「返ってきてない? 睦ちゃんからも?」

「そう」

 

 

 3日ぶりの登校。心配で声をかけてくれるお友達にいつも通り当たり障りなく返して過ごして放課後。 

 中庭で待ち合わせをした元メンバーの一人で同じ学校の睦ちゃんから返ってきた言葉は意外な言葉だった。

 てっきり私だけに反応がないと思っていたのだ。

 

 

「祥子と一緒にライブハウスに来た後、春日影の演奏が終わった後に追いかけたけどどこに行ったか分からなかったから電話した。繋がらなかった。お家の人にも聞いたけど帰って来てないって」

「ライブハウスから……って3日も前じゃない! 警察には?」

「お家の人が行ったみたい。だけど連絡ないって」

 

 

 嘘でしょ……私が引き篭もっている間にそんな大事なことになっていたなんて。私そうとは知らずに謝ることばっかり考えてた。

 

 

「探さなきゃっ!」

「どこを?」

「どこって……何で睦ちゃんそんなに落ち着いてられるの!? 祥子ちゃん行方不明なんだよ!? 心配じゃないの!?」

「心配」

「だったら!」

「探した。祥子の行きそうなところ。けど見つからなかった。何の手掛かりもないまま当てもなく探し回れない」

「それでも探し続けるでしょ普通!」

 

 

 だって友達の一大事なのだ。それが幼馴染なら見つかるまで探し続けるでしょ!

 

 

「もしかしたら」

「え?」

「祥子の家の包囲網でも見つからないってことは………禁止領域にいるのかも」

「ッ!?」

 

 

 禁止領域。日本各地にある凶悪犯罪者たちや戸籍のない者が住むと言われる危険地帯。

 プロの格闘家が入って1日も持たない無法者たちが跋扈する日本のアンタッチャブル。そこにいるんじゃないかと睦ちゃんは言う。

 

 

 

「そよ、やめて。分かってるでしょ、あそこがどれだけ危険な場所か。私たちは特に口を酸っぱく言われてるはず」

「だけど」

 

 

 

 私がやろうとしていることを悟ったのか咎めるように睦ちゃんは口で制する。

 月ノ森はお嬢様学校。多数のお偉い方の娘が在籍している。お金持ちは狙われやすい、だから学校の教員たちから入るどころか近づくのもいけないことだと教育されているのだ。

 

 

「私はそよまで失いたくない……」

「睦ちゃん……」

 

 

 

 表情からは窺い知れないが睦ちゃんの心配する声は伝わった。親友が行方不明なのだ不安にならない筈はない。それが幼少期からの親友なら尚更だ。

 

 

「ごめん睦ちゃん言い過ぎた。行かない」

「そう」

 

 

 

 ごめん本当は嘘。私は外面を取り繕って生きてきた。相手が求める言葉を引き出すのは得意だ。

 だから外では睦ちゃんが安心する言葉を言いつつも、心の中は祥子ちゃんを探し出すと決意した。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 翌朝、またも学校を休み私服で探し回る。祥子ちゃんの通う学校周りから始め、皆で行ったカラオケ屋など私が思いつく場所を全て回る。

 しかし睦ちゃん程仲良くない私はすぐに行き詰まってしまう。

 やっぱりあそこにいるのかな……?

 睦ちゃんのいった通りなら私も覚悟を決めないといけない。

 RING周辺を探していなかったら行ってみようと、覚悟はしつつもこの時はあの場所に対しては軽すぎる気持ちで探索を再開した。

 

 

 

「……ここが禁止領域」

 

 

 やはり見つからずライブハウスから一番近い禁止領域……その近くまでたどり着く。

 明確な境界線などない筈なのに今立つ場所から一歩でも踏み込めば超危険地帯だと本能で悟った。

 今は昼前で日が照っている筈なのに薄暗い、何かを取り壊して放置した後のようなコンクリートや鉄筋から至る所に散らばっている。

 放置されているのだから雑草が至る所から生えてる筈なのに一切なく、澱んだ空気に私は飲み込まれる。

 

 

「おい」

「…………」

 

 

 危険のアラートが鳴り続けて、逃げてはいけない祥子ちゃんを探さないと分かっているのに今すぐここから逃げろと警告され一歩が踏み出せない。

 踏み込めず、かといって恐怖で動けず後退も出来ないで固まっていると……

 

 

 

「おいっ!」

「うひゃうっ!? な、なに!?」

 

 

 

 突然後ろから女の人の声と共にガッと肩を掴まれ、飛び上がって驚く。

 ばっと声とは逆に飛び退き、振り返ると赤髪がの女の子が立っていた。

 

 

 

「なにじゃないだろ。何で外の人間がこんなところに来てんだ」

「えーと、あなたは? ひっ!?」

「質問をしてるのはこっちだ。さっさと答えろ」

 

 

 私の顔を横切る風。それが人の腕だと理解し尻餅をつく。

 こ、答えないと、この人に殺され……! 

 私は他人の為ではなく自分の命の為にここに来た経緯を必死に話した。

 剥き出しの獣のような彼女には、私の外面の裏の裏まで剥がされる。命には変えられないという動物としての私の本能を暴き出した。

 

 

 

「ふーん、それは気の毒にな」

 

 

 

 話した結果返ってきたのは何の感情もない淡々としたものだった。

 他人事とはいえ、ここまで無感動だと怒りが湧いてくる。人の命を何だと思ってるんだと。

 

 

「ど、どう言う意味……ですか?」

「言葉の通りだよ。死んだ人間の為にこんなところまで来て取り越し苦労をしたお前に対して気の毒だって言ったんだ」

 

 

 

 こんな状況でも外面は働こうとして、怒りを必死に隠しつつ立ち上がって尋ねる。

 すると返ってきたのは行方不明になった事や、心細くしている祥子ちゃんのことでもなく、無駄足を踏んだ私に対しての気の毒だった。

 

 

「何でそんな事……言うんですか? そうだって決まったわけじゃないのに……」

「外の人間がここにくるってのはそういう事なんだよ。よくニュースで見ないか? 遊び半分でここにやってきた連中が残らず行方不明になってること」

「ーーーッッッ!!!???」

 

 

 それは良く知っている。自分には関係のない話だと聞き流してはいたがそれでも何度もニュースで報道されているのは覚えていた。

 

 

 

「お前は幸運だぞ。見つけたのがあたしじゃなくて他の連中だったらお前はとっくに終わってた」

「ひっ!?」

「分かったら今すぐここから離れるんだな」

 

 

 ニヤリと浮かべた笑みに、物々しさを感じ恐怖で震える。分かってる。彼女の言うことは正しい。このまま進んでも止まっていても私は死ぬ。

 でも引くわけにはいかなかった。

 

 

「それは……出来ません」

「なに?」

「祥子ちゃんが生きてる可能性があるなら、諦められません」

「……」

 

 

 無言で何か奇妙な生き物を見る目で観察し、鼻で笑った。

 

 

「ふん、威勢だけは一丁前。どうするの? 万が一生きてるとしてどうやって探すの? 日中は明るい場所に連中は現れにくいとはいえそれは住人に限った話。外の人間が無事でいられる訳がないでしょ」

「それは……」

「考えなし。外の人間てのはバカしかいない訳?」

「くっ……」

 

 

 馬鹿にされた凄く直球に。取り繕い仮面を被る私とは正反対の、睦ちゃんみたいな色々考えた結果本心が出てしまうタイプとは別種の思ったことは全部口に出すタイプ。正直者といえば聞こえはいいけどこれは自分第一で他人の気持ちなんてどうでもいいと思ってるから気にしてないだけだ。だからすぐ口に出る。

 

 

「お前、財布あるか?」

「え、あるけど……ちょっと!?」

 

 

 

 何の脈絡のない問い。思わずバッグから取り出してしまったからか奪われてしまう。

 

 

「お、結構入ってる。さてはお前金持ちだろ、合点がいった」

「だからなに……?」

 

 

 こんな人相手に愛想良くする必要もないだろう。私は睨みつけて乱暴な口調で返した。

 

 

「なに睨みつけてんの? 折角私が財布の中の金全部出したらちょっとくらい護衛してやろうと思ったのに」

「え……」

 

 

 女の人の意外な提案に耳を疑う。何でそんな提案をこの人はするんだろう。何か企んでるのだろうか。

 

 

「いいんだよあたしはどっちでも。嫌だったら勝手死んでくれてもあたしは全く問題なしだ」

「ちょ、ちょっと」

 

 

 そう言う割に財布ごと去って行こうとするこの人を私は慌てて止めた。

 

 

「分かった。分かったから護衛の件よろしくお願いします」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 お金で1日だけ護衛を雇った(半ば強制的に)私はいよいよ危険領域に足を踏み入れる……前に何故かホームセンターによる事になっていた。

 女の人はバケツと何かの液体、ナイフを購入した後禁止領域近くまで戻ってきた。

 バケツの中に水と液体を混ぜチャプチャプ揺らす。なにをしてるんだろうと覗き込んだ瞬間、女の人にバケツの中身を頭からひっくり返される。

 

 

 

「い、いきなりな、なにするんですか!? くさっ!?」

「お前は臭い」

「臭くないです! いや、今は臭いですけど、私ちゃんと匂いには気を遣ってますから!」

 

 

 私の体から腐った生ゴミのような匂いが充満する。いきなりの訳のわからない行動に私も思わず憤慨した。

 

 

「女ってだけで匂いでやってくんのにそんな香水振りまいたら目立つ」

「振りまくってません! ナチュラルです!……うう臭い」

「大袈裟だな、生ゴミの匂いくらいで」

「じゃあ嗅いで見てくださいよ」

「あのなぁ……あたしはガキの頃からここにいるんだぞ? そんな匂い、匂うとすら思わないーーくさっ!?」

「ふざけてるんですか……」

 

 

 

 何ともない風に近づいて服に顔を近づけ、後退する。コントのようなフリオチをして怒りが湧いてくる。

 その精一杯の睨みもなんのその、今度はナイフで服を切り裂いてきた。

 

 

「な、なにするんですか!?」

「動くな。動くと肌が切れる。これはカモフラージュだ。さっきの匂いもそうだがこれはあたしがお前に暴行をやった後だって勘違いさせる為のフェイクだ」

「そうならそうと早く言ってくださいよ……」

 

 

 

 何の説明もないから、従わざる得ない立場を利用して楽しんでるだけだと思っていた。

 そしていよいよ禁止領域内へ。幸い私たち以外の人影はなかった。

 

 

「これは……バッグか……中身は……財布とバキバキの携帯。珍しいな金はないけど身分証は無事だぞ。名前はとみかわ? しょうこ?」

「ッ! ちょっと見せてください!「おいっ」 これ祥子ちゃんの保険証だ」

「いきなりビンゴか? 運いいな。いやこの場合ここに来たのが確定してお友達が死んでる可能性が高くなったな」

「っ、行きましょう」

 

 

 

 踏み込んで少し進んだ先に落ちていたのは女物の肩下げバッグ。中身を漁って取り出した財布の中身の身分証を読み上げるこの人から出た名前にもしかしたらと思って奪って見てみると本当に祥子の保険証だった。

 彼女の言うようにここに祥子ちゃんが来たのは確定、死の確率も上がる。私は急いで探しに回る。

 しばらく禁止領域内を歩いて探したが見つからない。それでも探した。女の人はそれに文句を言うわけでもなく無言でついてくる。

 しかし探し回っても一向に進展はない。

 

 

 

「おい、もういいだろ」

「いいってなにが!?」

「ここまで探してもいないならもう……」

「そんな事ない……祥子ちゃんは……」

「はあ……まあないと思うけど一応行くか?」

「行く……?」

「特区だ」

「ッ!」

 

 

 

 特区……特別禁止区域。禁止領域の中でも特に危険な、警察や自治区の出入りすら禁止されている場所。

 彼女の後をついていき、暫く歩いた先。そこは別世界だった。禁止領域というだけで本能がヤバいと感じ取っていたが、あそこは格が違った。

 ゾロゾロと禁止領域では感じなかった人影が、私たちを囲う。そして数秒後霧散した。

 

 

「どうして」

「海斗……ここのドンみたいな奴の女だって気付いたからだ。それにしても出て行ってたらそれも効かないはずだけど……もしかして戻ってきてるのか」

「ちょ、ちょっと……!」

 

 

 何かを察したのか、先ほどよりもスピードを上げてどんどん先に進んでいく。私は慌てて早足でついていき……アパートの一室にたどり着いた私は、その中の探し人、祥子ちゃんを発見した。

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

「祥子ちゃん! 良かった……良かったよ!!」

「そよ……どうしてここに……くさっ、そよすごい匂いですわよ」

「…………それは色々あったんだよ」

 

 

 

 

 煮え切らない態度だった。あの日以降、睦以外のメンバーとは会わないように、連絡もブロックして無視していた。会えばわたくしの弱さが露呈してしまいそうな気がしたから。

 でも今は凪のように静かで童謡の一片すら抱かない。だから無理に拒絶する態度もなく普通に対応が出来ていた。

 

 

 

「取り敢えずあたしは海斗に話があるから」

「いや、オレには別にな……」

「海斗ぉぉ!!」

「わ、分かった……そんな振りかぶらんでもいいですやん」

 

 

 

 あの傍若無人の朝霧さんがあの女性には敵なしなのか外に連行されていく。

 気になる……あの方は一体朝霧さんの何なんだろう。

 

 

「これ……祥子ちゃんの鞄でしょ? 入ってすぐ近くで見つけたの」

「ありがとうございます……中身は見ましたか?」

「身元確認に財布の中を見たくらいかな。携帯は壊れててお金は抜かれてた」

「そうですか……」

 

 

 住所バレや誰かに悪用されることはひとまずなさそうですわね

 

 

「それでそよ。話があって態々こんなところまで来たのでしょう?」

「それは……今はそんな事よりここから離れよう? ここが危険なのは分かってるでしょう?」

「どうやって?」

「それはほら……さっきの女の人、私が祥子ちゃんを探すのを手伝ってくれた人に付き添ってもらうから。祥子ちゃん帰ろう?」

 

 

 きっと今すぐここから離れたいのはそよなのだろう。一般論でここが危険な場所で近寄っていけないということもある。わたくしだって本当は離れるべきだと思っている。けれど……

 

 

「……わたくしは今のところここから離れるつもりはありませんわ」

「……どうして」

「……」

「どうして……またあの時みたいに何も理由を言ってくれないの?」

 

 

 言えるわけありませんわ。わたくしは強くならなければいけません。大抵のことでは響かない鋼の精神……それが今のわたくしには必要なものなんですの。言ってしまえば弱音に取られてしまうから。

 

 

「……話はそれだけですの? ならお引き取りくださいませ。わたくしのことなら心配は無用、そよは早く先ほどの方に連れ帰ってもらいなさい」

「な、なんで……私間違ったこと言ってるかな? ここは危険で私たちとは住む世界が違ういてはいけない場所だって。怒ってるから? 私たちが勝手に違うバンドを作ってCRYCHICを裏切ったから……だから聞いてくれないの? ごめんなさい! そういうつもりじゃなかったの! 私はCRYCHICの為に……」

 

 

 

 ……そよにはわたくしが怒っているように見えていた。自分から解散を切り出しておいて怒るなんてお門違いにも程がある。わたくしが弱さをありのままに曝け出す事が許せないだけ。

 

 

「勝手にすればよろしいでしょう。わたくしはもうCRYCHICとは関係のない身、他にバンドを組もうがわたくしが作った曲を演奏しようが好きになさってください。何も気に致しませんわ」

「でも春日影は……CRYCHICの大切な……!」

「……いつまでもしがみついてみっともないですわね」

「……ッ!」

「気にしていないと言っているでしょう。あなたもいい加減に忘れては?」

 

 

 嘘。本当にしがみつきたいのはわたくしで、だからこそ忘れたいのもわたくしで。そんな弱いわたくしだから強くならなくてはいけなくて……

 

 

「なんでそんなこと……言うの? 私たちあんなに仲良かったじゃない! 毎日楽しくて……みんな一緒で、離れ離れになるなんておかしいよ……! バンドは運命共同体だっていってたの祥子ちゃんじゃない!」

 

 

 

 運命……

 

 

「ならあのバンドはなんですの?」

「ち、違うの!」

「何が違うんですの? 言葉と行動が矛盾してますわよ」

 

 

 そういうとそよは一瞬顔を逸らす。後ろめたい事がある証拠ですわ。それが本心を隠してあのバンドを利用している後ろめたさか、他のメンバーの意志を無視していることの後ろめたさなのかは知りませんがそこにはそよの都合が隠れている。

 

 

「CRYCHICがやりたいならそもそもの話違うバンドを組んでいる事が筋違いですわ。例え繋ぎだったとして銀髪の方や千早さんはどうするんですの? 捨てるのですか? それでもしCRYCHICが再結成したとしてメンバーに遺恨は残りませんの? 少なくともわたくしは二人への罪悪感でバンドどころではないのですが」

「そ、それは私がなんとかするよ!」

「なんとかとは? 二人が円満に辞めたと今のそよから聞いたところでわたくしは納得出来ませんわね。それでどうやってわたくしの心を変えるおつもりで?」

「そ、そんなの……」

「どうしようもない……なら今度こそ話は終わりです」

 

 

 この場を離れることは出来ないので目を閉じた。これ以上問答をするつもりはないと言う合図だ。

 

 

「待って! どうしても駄目なの? 私はどうしてもCRYCHICをやり直したい! 燈ちゃんや立希ちゃんもそれを望んでる」

 

 

 嘘だ。あの二人の演奏を聴いて今のバンドをいずれ辞める繋ぎでしかない歌とは思えない。

 未練はあるだろう、だが今のバンド活動に真摯なのは伝わった。そよだけなのだ。CRYCHICをやりたいと思っているのは。

 

 

「……兎に角CRYCHICが復活することはありません。CRYCHICはもう終わ……」

「終わってない! 勝手に、唐突に終わったなんて言われても次になんて進めないよ! 私CRYCHICのみんなが一緒にいないと……!」

 

 

 そよがわたくしの手を掴んで縋る。

 

 

「離して」

「祥子ちゃんが戻ってくれるようになる方法なんてわかんない。でも祥子ちゃんが戻ってきて欲しい。私に出来ることならなんでもするから……!」

 

 

 簡単に言いますわね。責めるのはお門違いとは理解はしていても流石に苛立ちは隠せない。

 

 

「どれくらいの覚悟で言っているんですの?」

「えっ?」

「あなたに他人の人生抱えきれますの? なんでもするとはそれ程重い言葉ですのよ。出来もしないことを簡単に言わないで」

「でも……私、本当に……!」

 

 

 本当に未練がましい。これだけ言ってもそよは諦めきれていないようだった。だからトドメを刺す。

 

 

「……あなたご自分のことばかりですのね」

「へ…….?」

 

 

 わたくしは縋る手を振り払って冷めた目でそよを見下した後、朝霧さん達のいる玄関の外へ出て行った。

 

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