(完結済)元冒険者の俺、入り婿先の義理の娘に逆レイプされてしまう 作:埴輪庭
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この日、朝のガナッシュ伯爵邸は静まり返っていた。
居間の窓から差し込む光が、磨き上げられた床に長い影を落としている。その光の中に座っているのはエレオノーラ・ガナッシュ。伯爵夫人。この屋敷の真の主人である。
細く長い指が白磁のカップを持ち上げ、紅茶を一口含む。かすかに眉が動いた。温度が気に入らなかったのだ。ほんの二度か三度、適温から外れているだけで、彼女の繊細な舌はそれを正確に感知する。
しかし、口には出さない。
カップをそっとソーサーに戻しただけで、傍らに控えている執事の青年はすべてを察した。
「失礼いたしました。もう少し熱いものをお持ちします」
リュシアン。ガナッシュ家に仕えて三年になる若い執事である。白いシャツに黒のベスト、一分の乱れもなく整えられた亜麻色の髪。切れ長の碧い瞳は知性と冷徹さを等分に湛え、その端正な顔立ちは社交界でも十分通用するほど整っている。
彼が紅茶を淹れ直すために居間を出ようとした時、入れ違いに侍女が現れた。
「奥様。旦那様が、先ほど離れの館へお出かけになりました」
報告を受けたエレオノーラの表情にはいかなる変化も浮かばなかった。美しい顔は完璧な無表情を保ったまま、ただ長い睫毛がわずかに伏せられ、「そう」と一言呟いたのみだ。
侍女は何かを付け加えたそうにしていたが、エレオノーラがそれ以上の言葉を求めていないことを悟って、黙って退室した。
居間に残されたのはエレオノーラと、足を止めたリュシアンの二人だけである。
「また、ですか」
リュシアンが低い声で言った。報告ではない。感想ですらない。ただ事実を口にしただけのように聞こえるが、その声にかすかな冷笑が混じっていることを、エレオノーラは聞き逃さなかった。
「ええ、また。彼はよほど暇らしいわ」
ウォーレン・ガナッシュ。名ばかりの伯爵。元冒険者。泥と血と汗にまみれて生きてきた野蛮な男。不義の子供を宿した自分を貰ってくれる都合の良い男──それがウォーレンだった。
屈辱だった。
ガナッシュ家は二百五十年の歴史を持つ名門だ。代々優秀な文官を輩出し、王宮の政務に欠かせない存在であり続けてきた。その名門の当主がただの冒険者崩れ。社交界での笑い種であることは、エレオノーラ自身が最もよく知っている。
だが、選択肢はなかったのだ。
あの時の自分には。
「類は友を呼ぶとは、よく言ったものですわね」
エレオノーラにとって、トリシャの失敗は自身の過去を鏡に突きつけられたようなものだった。かつて婚約者に捨てられた屈辱。あの男の子を宿してしまった己の浅はかさ。二度と繰り返すまいと誓って築き上げた鉄壁の矜持を、娘が内側から崩壊させた。
まあトリシャを離れに閉じ込める理由はそれだけではないのだが。
だがウォーレンは──。
勘当を止めさせ、修道院送りにも反対し、あまつさえ自分から離れの館に通い詰める。「哀れだから」「かわいそうだから」と、まるで捨て犬を拾うような安っぽい感傷で。
エレオノーラの薄い唇がかすかに歪んだ。
「あの御方は何がしたいのかしら。壊れた人形を集めて慰めるのがお好きなのかしら。冒険者というのは、ガラクタ拾いも仕事のうちですものね」
本心ではないのに、憎まれ口が出てしまう。
「旦那様は善良な方なのでしょう。善良すぎて、己の分というものを弁えていらっしゃらない」
リュシアンの返答には穏やかな声の裏に仄暗い毒が溶けていた。
彼はウォーレンに対して良い感情を持っていない。執事として仕える主人を尊敬する気持ちなど、リュシアンには欠片もなかった。冒険者という粗暴な出自。礼儀作法の欠如。貴族社会における振る舞いのぎこちなさ。全てが彼の美意識に触る。
何より、リュシアンにとってウォーレンは邪魔な存在だった。
紅茶を淹れ直す手つきが、いつもの几帳面さに少しだけ余分な力を含んでいる。そのわずかな変化を、エレオノーラは見逃さない。
「怒っているの、リュシアン」
「まさか。執事が主人に対して怒りを抱くなど、あってはならないことです」
「あら。では何に対して」
「……差し出がましいことを申しました」
リュシアンは完璧な微笑を浮かべてカップを差し出した。新しい紅茶の湯気が、二人の間で揺れる。エレオノーラはそれを受け取る時、意図的に彼の指先に自分の指を触れさせた。
ほんの一瞬の接触。
しかしそれは二人の間で交わされる暗号のようなものだった。
リュシアンの碧い瞳が、わずかに温度を持つ。氷のように冷たかった視線が、融解するように柔らかくなる。ほんの一瞬だけ。
エレオノーラは紅茶を口に含んだ。今度は完璧な温度だった。
「今夜」
その一言だけを唇に載せた。
リュシアンは一礼した。その所作は執事としてこれ以上なく完璧で、しかしその目の奥に灯った光は、主従の関係とは明らかに異質なものだった。
「かしこまりました、奥様」
扉が閉まる。
居間に一人残ったエレオノーラは窓の外に目をやった。敷地の片隅に建つ離れの館が、朝の光の中で小さく見えている。
刺客
夜が来た。
本邸の二階、エレオノーラの私室。蝋燭が三本だけ灯されている。明るすぎず、暗すぎない。顔の輪郭がそれとわかる程度の、曖昧な光量を彼女はいつも選んだ。
鏡台の前で髪を下ろしたエレオノーラは、寝間着に着替えるでもなく、ドレスの胸元のレースを弄んでいた。宵の口を過ぎ、屋敷が寝静まるまでの沈黙。隣室のウォーレンはとうに眠りについているだろう。
もし今、私が彼の部屋に行き──と詮無き考えが頭をよぎった所で、コツコツと二度扉を叩く音がした。
「入りなさい」
エレオノーラの声に応じて、リュシアンが音もなく滑り込んできた。執事の制服はそのままだが、ベストのボタンが二つ外されている。
「お呼びいただき光栄でございます、奥様」
完璧な敬語。しかしその碧い瞳は、蝋燭の灯りを受けていつもとは違う熱を帯びていた。瞳孔がわずかに開き、唇が微かに潤んでいる。
エレオノーラは立ち上がり、リュシアンの正面に歩み寄った。
「今夜もお前は私の言うことを聞いてくれるのでしょう」
「もちろんでございます」
リュシアンの手が伸び、エレオノーラの頬に触れた。冷たい指先だった。この男の手はいつも冷えている。ウォーレンの手は温かかった。一度だけ、婚礼の夜にぎこちなく握られたあの手は、冒険者の無骨さと体温を持っていた。
比べるべきではない。
だが比べずにはいられなかった。
「鍵を」
リュシアンが背後の扉に手を伸ばし、錠を落とした。乾いた金属の音が室内を横切る。
エレオノーラはドレスの留め具に手をかけた。背中のボタンを一つずつ外していく。布地が肩から滑り落ち、胸元が露わになる。薄い肌着の下で、白い肌が蝋燭の灯りを受けて淡く輝いていた。
リュシアンの喉が鳴った。
「……奥様」
「触っていいわ。上だけ」
リュシアンの手が肌着越しにエレオノーラの乳房に触れた。慣れた手つきだった。もう何度もこうしてきた。冷たい掌が布の上から形をなぞり、乳首の位置を探り当てて親指で圧迫する。
エレオノーラの睫毛が伏せられた。快感がないわけではない。身体は正直に反応する。乳首が硬く尖り、肌着に小さな突起を作った。
だが。
この手は違う。
この手に触れられても、心は動かない。身体が反応しているのは魅了の残響がリュシアンを通じてエレオノーラ自身に還ってきているだけだ。鏡に映った自分の力を感じているに過ぎない。
リュシアンが肌着を脱がせにかかった。エレオノーラはそれを許した。乳房が露わになり、夜気に触れて肌が粟立つ。リュシアンの唇が鎖骨を這い、首筋を舐め、耳朶を甘く噛んだ。
「……ん」
小さな声が漏れた。エレオノーラはそれを恥じた。この男に声を出すことは、自分への裏切りに感じられるのだ。ウォーレンの前でなら声を出してもいい。ウォーレンに抱かれるなら、どれだけ乱れてもいい。だがそのウォーレンはエレオノーラに触れようとしない。
リュシアンの手がスカートの裾に向かった。
エレオノーラはその手首を掴んだ。
「そこは駄目」
低く、しかし絶対的な声だった。
リュシアンの動きが止まる。碧い瞳に困惑が浮かんだが、すぐにそれは諦めの色に変わった。何度目かのこのやり取りだった。
「かしこまりました。では――」
「ええ。後ろだけ」
エレオノーラはベッドの縁に歩み寄り、自らスカートを捲り上げた。下着を片手で膝のあたりまで下ろし、ベッドに両手をついて上体を倒す。背中からウエストにかけての白い曲線が蝋燭の灯りに浮かび上がり、臀部が露わになった。
リュシアンの呼吸が荒くなるのが背後から聞こえた。
「早く済ませなさい」
エレオノーラの声は冷徹だった。まるで使用人に洗濯を命じるかのような、感情の欠片もない口調。しかしベッドのシーツを掴む指先だけは、かすかに震えていた。
小瓶の栓が抜かれる音がした。リュシアンが指先に油を塗り、エレオノーラの臀部の谷間に手を伸ばす。冷たい油の感触がぬるりと窄まりに触れ、エレオノーラの背筋が強張った。
「力を抜いてください、奥様」
「わかっているわ」
わかっている。だが身体は抗う。そこは本来受け入れるための場所ではない。指一本が輪をこじ開けようと圧力をかけるだけで、内臓を押し込まれるような鈍い異物感が下腹を突き上げた。
リュシアンの指が、ゆっくりと侵入していく。
「……っ」
歯を食いしばった。痛みではない。正確には、痛みとも不快とも形容しがたい、身体の奥を異物が押し広げていく感覚だ。腸壁が指の形に沿って変形し、入ってくるなと叫ぶ身体の防御反応を、意志の力でねじ伏せる。
一本目が根元まで沈み込む。リュシアンは慎重だった。油を追加し、指をゆっくりと出し入れしながら、少しずつ拡張していく。二本目が加わった時、エレオノーラは短く息を吐いた。
「奥様、お辛いようでしたら――」
「黙って続けなさい」
辛くないわけがなかった。
だが、それでいいのだ。
この苦痛こそがエレオノーラにとっての贖罪だった。ウォーレンに愛されない自分への罰。魅了という呪いを持って生まれた自分への罰。そして、その呪いでリュシアンを縛り、偽りの情事に溺れている自分への罰。
膣だけは許さなかった。
あそこはウォーレンのためのものだ。あの人がいつか自分を求めてくれた時のために、あそこだけは穢さずにおきたかった。たとえそれが永遠に訪れない未来だったとしても。
愚かだとわかっている。浮気をしておきながら操を立てるなど、矛盾の極みだ。だがその矛盾こそが、エレオノーラにとっての最後の砦だった。あそこさえ守っていれば、まだウォーレンの妻でいられる。まだ裏切りきってはいないのだと、自分に言い訳ができる。
その代償として、この苦痛を受け入れる。
これは罰だ。
自分が選んだ罰なのだ。
◆
リュシアンが指を引き抜き、自身のものを宛がった。
油にまみれた亀頭が窄まりを押し広げる感触。指よりも遥かに太い。エレオノーラの肛門は反射的に収縮して拒もうとしたが、リュシアンは執拗に圧力をかけ続けた。
「入れます、奥様」
「……ええ」
一息に押し込まれた。
「ぐっ……!」
声が喉の奥で詰まった。亀頭が括約筋を押し広げて内部に滑り込む衝撃は、何度経験しても慣れることができなかった。腸壁が異物の侵入に悲鳴を上げ、下腹に鋭い圧迫感が走る。内臓を掻き回されるような不快感と、尾てい骨のあたりを痺れさせる奇妙な電流が同時に駆け抜けた。
リュシアンのものがゆっくりと奥へ沈んでいく。腸壁がぴたりと竿に密着し、襞が引きずられるように内側へ巻き込まれていく感覚。膣とは違う。膣は受け入れるための器官だ。柔らかく、濡れ、相手を包み込む。だがここは違う。ここは拒絶するための場所だ。どれだけ油を塗っても、身体は侵入者を押し出そうとする。
その抵抗感が快楽に似た何かを生むことも、エレオノーラは知っていた。
嫌だった。
こんな場所で感じる自分が、心底嫌だった。
「奥様……きつい……」
リュシアンの声が掠れていた。魅了に灼かれた男の、欲望に溺れた声だ。エレオノーラの腸がリュシアンのものを万力のように締め上げているのだろう。自発的な力ではなく、異物を排除しようとする身体の防御反応が、結果として凄まじい圧迫を生んでいる。
「動きなさい」
エレオノーラは声を押し殺して命じた。
リュシアンが腰を引き、ゆっくりと押し込む。ずるり、と粘膜が擦れる感触。油のおかげで表面は滑らかだが、奥を突かれるたびに腹の底を殴られるような鈍い衝撃が響く。
「あ゛……っ」
声が漏れた。快感ではない。苦痛の声だ。だがリュシアンにはそれが悦びの喘ぎに聞こえたのだろう、腰の動きがわずかに速くなった。
ぬちゅ、ぬちゅ、と油が泡立つ粘着質な音が室内に反響する。ベッドがかすかに軋み、エレオノーラの乳房がリュシアンの律動に合わせて小さく揺れた。
シーツを掴む指が白くなるほど力を込める。
(これでいい)
エレオノーラは歯を食いしばりながら、自分にそう言い聞かせた。
(これが正しい。ここで罰を受けている限り、私は――)
だが今、エレオノーラの頭の中を支配しているのは理性ではなかった。ウォーレンの背中だ。いつか見た、あの広い背中。冒険者だった頃の名残を留める、傷だらけの無骨な背中。
(私は、彼を──)
リュシアンのものが奥を突き上げるたびに、その背中の映像がちらついた。
壁を隔てた向こう側で、ウォーレンは安らかに眠っているのだろう。エレオノーラが別の男のものを尻に受け入れていることなど、夢にも思わずに。いや、もし知っていてもきっと何も言わないだろう。それくらい二人の関係は冷え切ってしまっている。
「奥様……もう、限界が……」
リュシアンの腰が痙攣するように震え始めた。ピストンが不規則になり、竿がぶるぶると脈打つのが腸壁越しに伝わってくる。
「中に出しなさい」
低い声で命じた。
リュシアンが深く腰を沈めた。
「っ……奥様……!」
どくっ、どくっ、と脈打つ感触が腸の奥で弾けた。熱い液体が内壁を濡らし、異物感がさらに増す。精液が腸壁にべったりと張りつく感触は、快楽とは程遠い、ただ生々しい湿り気でしかなかった。
リュシアンが力尽きたようにエレオノーラの背中に額を預けた。荒い呼吸がうなじにかかる。汗の匂いが鼻腔を掠めた。
エレオノーラは微動だにしなかった。
数秒の沈黙の後、リュシアンが身体を離した。ずるり、とものが引き抜かれる。肛門が収縮して閉じようとするが、拡張された弛みはすぐには元に戻らない。精液が少量垂れ、太腿の内側を伝いゆく。
「……顔を拭いて、部屋に戻りなさい」
「かしこまりました」
リュシアンが身繕いを済ませて退室するまで、エレオノーラは振り返らなかった。
扉が閉まる。
錠の音。
静寂。
◆
エレオノーラはベッドに倒れ込んだ。
下腹がじんじんと鈍く痛む。腸壁が擦れた不快感が尾を引き、少し身体を動かすだけで内側がずきりと訴えた。
仰向けになり、天井を見上げる。蝋燭の光が天井に揺らめく影を作っていた。
それを目で追っているうちに、エレオノーラの頬を一筋の涙が伝った。
泣いているのは痛みのせいだ。そう自分に言い聞かせた。あの場所が痛むから涙が出るのだ。それだけのこと。断じて、断じて寂しさなどではない。
シーツの下でそっと自分の腹に手を当てた。冷たい掌が自分の肌に触れる。そこには何の温もりもなかった。
リュシアンの温かさはとうに消え、ウォーレンの温もりは最初からなかった。
この身体は誰のものなのだろう。
欲しい男には触れてもらえず、欲しくない男には呪いで触れさせている。たった一箇所、あの場所だけを守り続けることが、エレオノーラの最後の矜持だった。いつかウォーレンが振り向いてくれた時、あそこだけはあの人のために差し出せるように。
その「いつか」が来るかどうかについては、考えない様にしていた。