※この作品はR-18です。

The Sky Blessing ~R-18 Edition~   作:ella_coat

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第1章閑話 兎は快楽を知る
兎と兎の秘密の療養


 拠点として貸し与えられた交易島の家屋、その寝室。窓から差し込む午後の穏やかな日差しは、この空島世界が持つ幻想的な美しさを静かに照らし出していた。木の温もりを感じさせる壁や床が、柔らかな光を浴びて黄金色に輝いている。しかしその光景とは裏腹に、その部屋に留まるアキシャは、簡素なベッドの上で大きなため息をついた。

 

 寝返りを打とうとするだけで、脇腹から背中にかけて巻かれた真新しい包帯の下で、肉が裂け、骨が軋むような鈍い激痛が走る。まるで身体の内側に、灼けた鉄の杭を打ち込まれたかのようだ。

 

「……ん、くっ……!」

 

 思わず顔をしかめ、浅い呼吸を繰り返しながら動きを止める。エクアルの回復魔法でも治癒しきれないほどの深い裂傷と、恐らくヒビが入っているであろう肋骨。とある敵との死闘で受けた代償は、アキシャの予想以上に大きかった。

 

 この世界に来てからというもの、本来持っていたはずの様々な能力は著しく制限されている。中でも自身の種族の大きな特徴でもある超回復能力が、故郷にいた頃のように機能しないのが、何より歯痒かった。

 

(ちくしょう、この程度……! いつもなら一晩寝りゃ治るってのによ……!)

 

 ――安静第一。

 それが、妹であり一行の医療担当でもあるエクアルから厳命された、アキシャにとって最も性に合わない苦行だった。『最強』を目指す自分が、ベッドの上でただ時が過ぎるのを待つなど、屈辱以外の何物でもない。動けない自分への不甲斐なさが、胸の奥で渦巻いていた。

 

 手元には、エクアルが「少しは頭を使って戦うことも覚えなさい」と、半ば呆れ顔で置いていった小難しい魔法理論の専門書が転がっている。

 

「わけわかんねーことばっか書きやがって……やっぱ魔法は性に合わねぇよ!」

 

 苛立ち紛れにぱらぱらと適当にページをめくるが、全く初心者向けではない難解な文字列は、アキシャの思考を素通りしていく。やがて飽きたのか、アキシャは本をベッドサイドに放り投げた。ドサリ、という鈍い音と共に、そのわずかな衝撃すら脇腹の傷に響き、アキシャは小さく呻いた。

 

 その時だった。ガチャリ、と控えめな扉の開く音が響いた。

 

「ただいまー。アキシャ、起きてるー?」

 

 ひょこりと顔を覗かせたのは、白寄りの薄いピンク色の髪を揺らすラビリアだった。彼女の頬や腕にも、先の戦闘の痕が痛々しく包帯で覆われている。だが、ベッドに縛り付けられているアキシャに比べれば、その足取りは遥かに軽かった。彼女が羽織るベージュのロングコートの裾には、探索の痕跡である土汚れがわずかに残っている。

 

 ラビリアはその細くてしなやかな腕に、かご一杯に詰め込まれた色とりどりの瑞々しい果物を抱えていた。赤、青、紫と、まるで宝石箱をひっくり返したかのように鮮やかで、見ているだけでも生命力が湧いてくる気がした。

 

「お、ラビリア。おせーぞ、どこ行ってやがった」

 

 アキシャがベッドから上半身を少し起こして、ぶっきらぼうに声をかける。

 

「んー、ちょっと遠くまで『ロマン』を求めて……ね。そのおかげでほらっ、美味しそうなの見つけたよ」

 

 ラビリアは悪びれもせず、いつもの口調で柔らかな笑みを浮かべる。そして、かごから真っ赤なリンゴのような、水滴を弾く艶やかな光沢を放つ果物を一つ取って、アキシャに手渡した。甘酸っぱい、濃厚な香りがふわりと漂う。

 

「お、サンキュ! 丁度腹が減ってたところだ!」

 

 差し出された果物に、アキシャの白いウサ耳がぴんと嬉しそうに反応する。彼女は威勢よく上半身をさらに起こし、ガブリ、と大きな口で果物にかじりついた。

 

「……いっ……!」

 

 だが、その勢いで脇腹の傷が激しく痛み、アキシャの顔が引きつる。

 

「……うめぇ」

 

 それでも食欲が勝り、渋い顔で痛みを堪えながらも、シャクシャクと夢中で果物を頬張る。新鮮な果汁が口いっぱいに広がり、乾いた喉を潤していく。あまりの美味さに、一瞬だけ痛みを忘れた。

 

「相変わらずだねー、アキシャは。無理しちゃダメだよー? それで……調子、どう?」

 

 ラビリアはアキシャのそんな様子を見て、楽しそうにくすりと笑うと、ベッドサイドの椅子に腰かけ、自身も紫色のブドウに似た小さな果実を一つ、口に運んだ。宝石のように光を反射するその実を、小さな口で器用に食べている。

 

「ん、こんなもん、大したことねぇよ。むしろウズウズしてんだ。早く次の島に行きてぇってな!」

 

 アキシャは強がって胸を張ろうとしたが……やはり身体の節々から放たれる痛みに顔を歪めた。

 

「安静にしてないと、またエクアルにこっ酷く怒られるよー?」

 

 ラビリアがやんわりと釘を刺す。普段は「もう……お姉ちゃんったら!」で許してくれる彼女だが、本当に怒った時のエクアルの説教は長く、理詰めで、アキシャが最も苦手とするものの一つだ。

 

「うぐ……。そういや、エクアルはどこ行ったんだ? 朝から見てねぇけど」

 

 アキシャはバツが悪そうに話題を変えた。

 

「んー、エクアルなら朝早くから交易島の書庫に行ってるよー。この世界の呪いとか、天使のこととか、何か情報がないか探すんだって」

「ふーん、相変わらず真面目だな。まぁ、小難しいことはあいつに任せるか」

 

 アキシャはそう言って、食べ終えた果物の芯をベッドサイドの皿に放った。

 二人はしばし無言で果物を頬張り、やがて食べ終える。穏やかな静寂が、午後の部屋を満たしていた。ラビリアは食べ終えた果物の種を手のひらの上に転がしながら、ベッドの上で背中を丸めているアキシャをじっと見つめた。先ほどは威勢よく果物にかじりついていたが、今は無意識に傷を庇っているのか、その背中は普段よりも小さく、そしてひどく強張って見えた。

 

「……アキシャ、ずっと同じ体勢で、身体凝ってるんじゃない? マッサージ、してあげよっかー?」

 

 ラビリアが、そんなアキシャの背中を見つめながら、唐突にそう提案した。

 

「お、マジか! そりゃ助かる! やってくれ!」

 

 アキシャは目を輝かせた。退屈を持て余していたところへの、願ってもない申し出だった。

 直ぐ様、ベッドの上でうつ伏せになろうとするが……再び走る激痛に彼女は再び、顔を歪める。

 

「ぐっ……!」

「無理しないの、座ったままでいいからねー」

 

 ラビリアはそう言うと、持っていたかごを床に置き、自らもベッドの上に音もなく上がり込み、アキシャの背後に正座した。ベッドが二人の重みでわずかに軋む。アキシャはラビリアに背を向け、ベッドの縁に腰掛ける形となった。

 

「じゃ、いくよー」

 

 ラビリアの細く、しなやかな指が、アキシャの強張った肩を掴んだ。

 

「うわ……ガチガチだねー。これじゃ治るもんも治らないよ」

 

 指先に力を込め、ゆっくりと揉みほぐしていく。それはまるで、凍った土を解きほぐすような、丹念な作業だった。

 

「うっせ。あっ……そこ、きもちい……」

 

 アキシャの口から、素直な感想が漏れる。強すぎず、弱すぎず、的確に凝りの芯を捉えるラビリアの指使いは、存外に本格的だった。

 普段は常にとてつもない闘気を纏っている彼女だが、今はそれもすっかり鳴りを潜めている。ラビリアの指が凝り固まった筋肉を捉えるたび、アキシャの背中が小さく震え、白いウサ耳がぴくりと反応した。

 

「ん、ふ……っ。お前、こういうの意外と上手いんだな……なんかやってたのか?」

 

 アキシャが、半分寝ぼけたような、とろりとした声で呟く。

 

「んー? まぁ、人体の構造とか、どうすれば効率よく力を伝えられるかとか、そういうのを研究するのは魔動機械の設計にも通じるからねー」

「わけわかんねぇよ……。あー……そこ、もうちょい右……」

「ん……、アキシャはいつも力みすぎなんだよー。もうちょっとリラックスすればいいのに」

「うるせぇ……。強くなるには大事なことなんだよ……」

 

 強がるアキシャだったが、その声にはいつもの覇気がなく、むしろ心地よさに蕩けている。ラビリアはそんなアキシャの様子が微笑ましく、口元が自然と緩んだ。

 ラビリアは肩を入念にほぐした後、次にアキシャの脚に手を伸ばす。アキシャが履いている、赤色のショートパンツ。その裾から惜しげもなく晒されている、引き締まった白い太ももを、ラビリアはゆっくりと揉みほぐし始めた。

 

 普段の激しい戦闘を支える、しなやかな筋肉の張り。それは女性のものとは思えないほど硬質だが、同時に驚くほど滑らかで、上質な絹織物を思わせる肌触りだった。先の戦闘でついたであろう小さな擦り傷の痕が、彼女の激戦の歴史を物語っている。傷のせいで微熱を帯びているのか、アキシャの肌から伝わる熱が、ラビリアの指先にじわりと吸い付くようだった。

 

「ふ、ぁ……。気持ちいいな……」

 

 アキシャはすっかりリラックスし、強張っていた身体から徐々に力が抜けていく。いつしか背中を完全にラビリアに預け、その体重を委ねていた。呼吸も深く、穏やかなものになっている。

 

 普段は警戒心の強さから常に周囲の音を拾おうとピンと立っている白いウサ耳が、今はすっかり安心しきったように、気持ちよさそうにピコ、ピコと小さく揺れていた。

 

(アキシャの無防備な姿……珍しいなー)

 

 ラビリアは、普段の豪快なアキシャからは想像もつかない、油断しきったその様子を間近に見ていた。戦闘狂で、暴走してばかりな彼女の、こんなにも無垢で安心しきった背中。

 

(いつもは戦いに飢えているかのようにギャーギャー騒いで、暴れまわってるけど……こういうところが可愛いんだよねー)

 

 アキシャの無防備な様子と、普段とのギャップ。そして、自分のマッサージに素直に身を委ねるその姿に、ラビリアの胸の奥で、ふと悪戯心が芽生えた。魔が差した、と言う方が正しいだろうか。それは、未知の現象に対する好奇心にも似た、抗いがたい衝動だった。

 

(……そういえば、アキシャの弱点って……確か……)

 

 ラビリアは、かつてエクアルから「お姉ちゃんは、あそこだけは本当にダメみたい」と、こっそり聞いた話を思い出していた。それに「見通しの書」を使って覗いた情報にも……そう書かれていたのだ。

 

 意を決したラビリアの指が、アキシャの肩から滑らかな首筋を伝い……そしてアキシャの白いウサ耳の付け根――その根本部分の柔らかいくぼみに、そっと触れた。

 

「ひゃうっ!?」

 

 ビクンッ、とアキシャの全身がベッドから飛び跳ねるほどに揺れ、彼女の口からは今までに聞いたこともない甲高い声が漏れた。

 

「な、なにすんだラビリア!? ど……どこ触って!」

 

 アキシャは慌てて耳元を押さえようとするが、ラビリアは素早くその手をかわす。ふと見ると、アキシャの頬は真っ赤に染まっていた。その反応は、ラビリアの予想を遥かに超えていたのだ。

 

「んー? ここも凝ってるのかなーって。すごい反応だねー」

 

 ラビリアは面白そうに口元を歪めると、わざと耳の根本の最も敏感な箇所を、指の腹で優しく、慈しむようにモミモミ……と揉み始めた。

 

「あっ、う、ぅ……! や、やめ……そこ、マジでダメだって……!」

 

 アキシャは、ラビリアの手を振り払おうと腕を伸ばすが、脇腹の傷が激しく痛み、力が入らない。しかしそれ以上に問題だったのは、耳の根本から脳髄を直接揺さぶるような、甘い痺れが全身を駆け巡り、身体がいうことを聞かないことだった。

 

「へぇー……ここ、そんなにダメなんだ?」

「ん、ぁ……! だめぇ……だって……ふ、にゃ……っ」

 

 アキシャの口から、戦闘中には決して聞けないような、情けない悲鳴が漏れる。

 

 アキシャの必死な抵抗と、漏れ聞こえる可愛らしい喘ぎ声。そのどちらもが、ラビリアの好奇心をさらに加速させてしまった。これはもう、未知の領域に対するロマンの探求に近い。

 

 そしてラビリアは、ゆっくりとアキシャの耳元に顔を寄せた。アキシャの琥珀色の瞳が、すぐ間近に迫ったラビリアのピンク色の瞳を、戸惑いがちに見返す。ラビリアの唇が、アキシャの白いウサ耳の根本、その敏感な皮膚に触れるか触れないかの、もどかしい距離まで近づく。

 

 まず、吐息だけが先に届いた。熱っぽく、湿ったラビリアの息が、耳の付け根の柔らかな産毛をふわりと撫でる。それだけで、アキシャの背筋にぞくりとした悪寒にも似た、未知の快感が走った。

 

「ひゃぃ!?」

 

 そして次の瞬間、柔らかく、わずかに湿った感触が肌に触れた。ラビリアの唇だ。

 アキシャの身体が、今度は雷に打たれたかのように大きく跳ねる。肩が強張り、指先がシーツを強く握りしめた。

 

 ラビリアはその反応を楽しむかのうように、構わず続けた。今度は開かれた唇が、アキシャの耳の根本の柔らかい皮膚を、そっと、しかし確実にくわえ込んだ。

 

「―――――っ!!」

 

 声にもならない息が漏れる。唇が触れるのとは全く違う、包み込まれるという直接的で生々しい感触。熱と湿り気が、その一点からじわりと神経を侵食していく。アキシャの身体が、息を呑んだまま硬直し、どう反応していいのか分からずに固まった。

 

 ラビリアはそのまま、アキシャが逃げられないことを知ってか、温かく湿った舌をゆっくりと出した。その舌先が耳の付け根の複雑な窪み、その最も敏感な神経が集まる一画を、ねっとりと、ねぶるように舐め上げた。

 それは、まるで貴重な花の奥に隠された甘い蜜を、一滴たりとも逃さまいと味わうかのような、執拗で丹念な愛撫だった。舌のざらりとした感触と、滑らかな動きが、アキシャの理性を容赦なく削り取っていく。

 

「―――――っ!! ん、ぁ、あぁっ……! あ、あぁっ!」

 

 アキシャの全身がゾクゾクと粟立ち、ビクビクと小刻みに身体を震わせ始める。まるで強力な雷魔法を直接流し込まれたかのように、抗いがたい快感が背筋を駆け上っていく。

 

「や、やめ……! ら、らび……やめ……ふ、ぅあ……!」

 

 我慢しようと口元を両手で必死に押さえるが、指の隙間から「くぅ」「ふぅ」と甘い嬌声が絶え間なく漏れ出てしまう。

 

「……アキシャ、すごい声。そんなに、気持ちいいの?」

 

 ラビリアが、アキシャの耳元で悪魔のように囁く。その声は、いつもの響きとは裏腹に、わずかな熱を帯びていた。

 

 囁きながら、今度は左の耳の根本を指先で丹念に揉みしだき、右側は甘噛みするように、歯を優しく立てた。二方向からの同時攻撃に、アキシャの思考は完全に麻痺していく。

 

「あ、あ、あぁっ! む、り……! ほんと、に……んくっ! だめ……!」

 

 アキシャはもはや何を言っているのかも分からず、ただ快感から逃れようと首を振る。だが、それがかえってラビリアの舌や指を、より深く、敏感な場所へと導いてしまう結果となった。

 

 アキシャの身体が、その強すぎる快感に耐えきれず、ベッドの上で弓なりにしなっていく。脇腹の傷から鈍い痛みが走るが、それを遥かに凌駕する、脳髄を直接灼くような甘い痺れが全身を支配する。傷の痛みなど、もはやこの圧倒的な感覚の前では、どうでもよかった。

 

 シーツを握りしめる指先に力が入り、真っ白な布がくしゃりと歪む。腰が自分の意思とは関係なく、ラビリアの愛撫から逃れようとするかのように……しかし実際にはより深くその刺激を求めるかのように、無意識に浮き上がり、小さく震え始めた。

 

 

「や、ぁ……! き……きちゃ、ぅ、う……! あ……ああっ!!」

 

 

 もはや我慢の限界だった。アキシャは、これまで自分でも聞いたことのないような、切なく、そして甲高い嬌声を上げた。それは悲鳴にも似て、しかし確かに快感に濡れた甘い響きを伴っていた。

 

 声と共に、アキシャの身体がベッドの上でビクビクッと白魚のように大きく痙攣した。足先がピンと伸び、白いウサ耳がその衝撃で激しく震える。耳の付け根から注ぎ込まれた快感の奔流が、一気に身体の中心を突き抜け、腹部の奥で熱く弾けた。思考が真っ白に染まり、目の前で火花が散る。汗がじわりと額に滲み、生理的な涙が琥珀色の瞳の端に浮かんだ。

 

 信じられないことに、耳の根本を執拗に責められただけの刺激で、彼女は――達してしまったのだ。

 

「はっ、はぁ……、ぁ……ぅ……っ……」

 

 数秒間の激しい痙攣が収まると、アキシャの身体から急速に力が抜け落ちていく。糸が切れた人形のようにぐったりとベッドに沈み、荒い息を繰り返す。焦点の合わない瞳は潤み、頬は熱っぽく上気していた。

 

 ラビリアはアキシャが完全に脱力し、呼吸を整えることしかできなくなったのを見て、ようやくその唇を離した。目の前で起こった驚愕の反応――信頼する相棒が自分の悪戯によって、あんなにも無防備で可愛らしい声を上げ、そして絶頂したという事実――を、目を丸くしてまじまじと見つめていた。

 

「……え、うそ。……ほんとに、イっちゃったの?」

 

 アキシャは荒い息を繰り返し、肩で喘ぎながら、涙目になった琥珀色の瞳でラビリアを恨めしそうに睨みつける。

 

「…………」

 

 アキシャは、震える唇で何かを言おうとして、やめた。ゆっくりと顔を上げる。その目は屈辱と、別の何かに燃えていて、口元には不気味な笑みが張り付いていた。

 

 ベッドから這い出すように、アキシャはゆっくりと、だが確実な動作で起き上がる。傷が痛むのか一瞬顔をしかめるが、その目はラビリアから逸らさない。

 

「……ラビリア」

 

 立ち上がりながら、アキシャは指の関節をポキポキと鳴らした。その音は、静かな部屋に不気味に響いた。

 

「あ……ご、ごめん、アキシャ。私、つい、面白くって……」

 

 ラビリアはベッドの上でじりじりと後ずさる。さすがにやりすぎた、と今更ながらに反省していた。目の前のアキシャは、先ほどまで快感に喘いでいた姿が嘘のように、今は静かに、しかし荒い呼吸を繰り返している。その潤んだ琥珀色の瞳が、じっと自分を射抜いていた。

 

「お前……。私が怪我人だからって、やりたい放題しやがって……」

 

 アキシャの声は怒りよりも、何か得体の知れない熱を帯びていた。それは耳を責められたことで呼び起こされた、彼女自身も持て余しているような、原始的な熱だった。

 

「絶対に許さねぇからな……?」

 

 その言葉と同時に、アキシャの口元に張り付いていた不気味な笑みが、さらに深くなる。

 

「ま、待って、落ち着いて! ほら、アキシャの傷に響くよ!?」

 

 ラビリアが必死に制止しようと、両手を胸の前に突き出す。それが唯一の、そして無意味な抵抗だった。

 

「うるせぇ! 覚悟しろよ!?」

 

 アキシャは猛獣のような瞳で、ベッドの上で後ずさるラビリアに、容赦なく飛びかかったのだった。

 

 

※※※

 

 

「わわっ!?」

 

 ラビリアの視界が反転する。アキシャの、怪我をしているとは到底思えないほどの瞬発力と、それを上回る純粋な腕力に、ラビリアは成す術もなくベッドに押し倒されていた。ギシリ、とベッドが大きく軋む音が、静かな部屋に響き渡る。

 

 アキシャは冒険者が常に携帯しているサバイバル道具の一つである丈夫なロープを掴むと、ベッドの四隅にある木製の柱を使い、あっという間にラビリアの細い両手首と両足首をベッドに拘束していく。その手際は、ダンジョンの罠を解除する時のように、恐ろしく迅速かつ正確だった。

 

「ちょ、アキシャ!? なにするの……っ!? 痛いって!」

 

 ラビリアは、ベッドに大の字の状態で拘束され、芋虫のように身をよじってジタバタする。ロープが白い肌に軽く食い込み、抗議の跡を残す。

 

「ご、ごめんって……! 反省するから、これ外して? ねっ……?」

「ダメだ。さっき散々無視しやがったくせに……お前にはお仕置きが必要みたいだからなぁ?」

 

 アキシャはラビリアの上に馬乗りになると、先ほどの屈辱を晴らすかのように、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。その琥珀色の瞳は、獲物を見つけた肉食獣のように爛々と輝いている。

 

「覚悟しろよ、ラビリア! くすぐりの刑だ!」

 

 アキシャは高らかに宣言すると、ラビリアの服――ベージュのロングコートや白いブラウスの上から、両脇と抵抗で力の入った横腹を、遠慮なくこちょこちょとくすぐり始めた。

 

「ん、ふふ……! あっはははは! や、やめて、アキシャ! そこ弱いの知ってるでしょ!」

 

 ラビリアは身をよじって必死に抵抗するが、強固に拘束されているため、その動きはアキシャの指先から逃れる術を持たない。

 

「おらおらっ、どうだ! 反省しやがれ!」

 

 アキシャは次に、ラビリアの履いている黒いブーツと靴下を器用に、しかし逃がさないように素早く脱がせる。白く滑らかな、ラビリアの生足が露わになった。その足は、彼女の華奢な身体を支えるには少し小さめで、精巧な硝子細工のようだった。

 

「ちょっ……ま、まさか……足の裏はダメだって……!」

 

 ラビリアが青ざめた声を上げるが……アキシャは彼女の言葉を一切無視し、その小さな足の裏、特に敏感な土踏まずの辺りを、指先でこちょこちょと執拗にくすぐった。

 

「ひゃっ、あはははは! だめ、そこ、あはははは! 息が、ふ、ふふっ!」

 

 ラビリアは爆笑しすぎて涙目になり、呼吸困難に陥りかけている。ベッドの上で拘束された身体を必死によじり、シーツにちょっとした涙の染みを作っていた。

 

「まだだ! まだ反省が足りねぇ!」

 

 アキシャはその弱りきった姿に満足げな笑みを浮かべると、ラビリアの履いている灰色のミニスカートの裾を掴んだ。一瞬のためらいが彼女の指先にあったが、すぐに先ほどの耳への仕打ちを思い出し、そのためらいを振り払い、アキシャはスカートの裾を勢いよくまくり上げた。

 

「あっ……! だめっ……!」

 

 ラビリアの、笑い声とは明らかに質の違う、悲鳴じみた声が部屋に響いた。

 

 そこにはラビリアのしなやかな白い太ももと、その付け根を恥ずかしげに覆う、彼女の普段の雰囲気にはそぐわないほどに大人っぽく、そして繊細な黒色の下着が露わになっていた。

 

 それは……彼女の透き通るような白い肌とのコントラストを際立たせる、艶やかな黒。まるで夜空の最も深い部分を切り取って、そのまま縫い付けたかのような深い色合いだ。サイドには細いリボンが結ばれ、縁にはごくごく細やかな、精緻なレースがあしらわれている。

 ラビリアの隠された女の子らしさと、彼女が追い求める「ロマン」の具現のような、複雑で美しいデザインだった。そのあまりのあけすけな姿に、仕返しをしているはずのアキシャの心臓が、不意にドクリと高鳴った。

 

 だが、アキシャはすぐにその動揺を振り払い、その露わになった太ももの付け根、鼠径部の柔らかくて最も無防備な部分を、指先で集中的にくすぐり始めた。

 

「んひゃっ! あはははは! やめて、そこ、一番、あはははは! お願いだから、やめてぇー!」

 

 ラビリアは、もはや羞恥と可笑しさで限界だった。彼女の白い頬は真っ赤に染まり、目尻には生理的な涙が浮かんでいる。拘束された手足がシーツの上で意味もなくバタつき、アキシャの指から逃れようと必死に身をよじるが、その動きすらも新たな笑いを誘発してしまう。

 

「おらおら! これで少しは反省したか?」

「は、反省した……からっ! ひひっ、あはははは! や、やめてぇっ!!」

 

 アキシャが夢中で太ももの付け根をくすぐっていた、まさにその時だった。

 

 暴れるラビリアから逃がすまいとしたアキシャの指が、偶然……その黒いレースの下着の布地の上から、ラビリアの秘部の柔らかく膨らんだ筋を、こするように深くなぞってしまった。

 

 

「っ……! ん、ひゃぅ……!?」

 

 

 ラビリアの甲高い笑い声が、一瞬……明らかに熱を帯びた、種類の違う嬌声に変わった。

 

「……あっ」

 

 アキシャは、その声の変化に驚き、くすぐる手をピタリと止める。指先に、下着越しでもわかる、確かな熱と湿り気を感じ取ってしまった。

 

 ラビリアは、はっと我に返ったように口をつぐむと、アキシャから視線をそらした。その頬は、先ほどまでの笑いによるものではない、深い紅潮に染まっている。

 

(今、の声……。さっきの、私みたいな……)

 

 アキシャは、自分がさっき、耳を責められてなすすべなく絶頂させられた、あの屈辱的な記憶を思い出す。だが不思議なことに、あんなことをされても、ラビリアを嫌いだとは微塵も思わなかった。嫌いになれないどころか、むしろ、今まで知らなかったラビリアの一面を知り、もっとこの幼馴染に歩み寄りたいとさえ感じている自分がいた。

 

(もしかして……今なら。私と同じように、ラビリアを……?)

 

 自分も、あんな無防備な姿を見られたのだ。

 だからラビリアの可愛い姿を……普段は絶対に、誰にも見せないような一面を見たとしても、バチは当たらないだろう。

 普段の脳筋な彼女からは考えられない、悪魔的としか言いようのない思考が、一度芽生えると急速に育っていく。高鳴る鼓動が、脇腹の傷の痛みとは全く質の違う、甘くねっとりとした熱となって全身を駆け巡り、アキシャの理性をじりじりと焼いていた。

 

「……すまん、ラビリア」

 

 アキシャは短く、掠れた声でそう謝罪した。それが、今までの過激なくすぐりに対してなのか、それともこれから行う未知の行為に対してなのか、アキシャ自身にも分からなかった。

 

「え? ……あ、アキシャ? なに……?」

 

 ラビリアが不安そうにアキシャを見上げる。いつものような怒鳴り声でも、ふざけた笑みでもない。くすぐりが止まった安堵よりも、目の前のアキシャが放つ、静かに熱を帯びた琥珀色の瞳に、ラビリアは得体の知れない緊張を感じ取っていた。

 

 アキシャは、ラビリアの上に馬乗りになっていた体勢を崩すと、拘束された彼女の隣に、ごろりとゆっくり横になった。ベッドが軋む音も、今はやけに大きく響く。

 そして自分でも驚くほど震えている手を、ゆっくりとラビリアの胸元へと伸ばした。それは怪我のせいなのか、それとも初めての行動への緊張と興奮のせいなのか。その震える指先が、ラビリアの白いブラウスの、一番上の小さなボタンに触れた。

 

「え、ちょ……。アキシャ、流石にそれは……冗談に、ならないよ……?」

 

 ラビリアのマイペースでほんわかした口調から、いつもの余裕が消え、そのピンク色の瞳が不安げに揺れる。

 

 アキシャは答えず、震える指先でボタンを一つ、また一つと外していく。

 ボタンが三つほど外され、白いブラウスがはだける。その隙間から、あの繊細な黒いレースのブラがはっきりと姿を現した。細いストラップがラビリアの白い肩にかかり、その黒が彼女の肌の透明感を一層際立たせている。

 アキシャは意を決して、そのブラウスの内側、ラビリアの素肌と布地とのわずかな隙間に、そっと手を滑り込ませた。

 

 ひんやりとしたアキシャの指先が、ラビリアの熱っぽい肌に触れる。

 ラビリアの胸に、その大人っぽい黒色のブラの上から優しく触れた。レースのわずかな硬さと、その下に隠された柔らかな感触。控えめだが、確かに女性的な、アキシャの手のひらにすっぽりと収まるほどの柔らかな膨らみが、そこに在った。

 

「……っ! ん、ふ……」

 

 ラビリアの身体が、驚きと未知の感覚に小さく震える。

 

 戸惑いながらも……アキシャはその柔らかさを確かめるように、ゆっくりとその膨らみを揉み始めた。指を立てず、手のひら全体で包み込み、その形と熱を感じ取る。

 

「ぁ……」

 

 ラビリアの唇から、か細い吐息が漏れた。

 アキシャは指先で、下着のレースの上から、その中心にある小さな硬い突起を、探り当てるようになぞった。

 

「ひぅ……。は、ぁ……」

 

 ラビリアの呼吸が、アキシャの指の動きに合わせて次第に荒くなっていく。

 アキシャが指先でその突起を軽く押し、転がすように弄ぶたび、とろりとした甘い喘ぎ声がラビリアの喉から漏れ始める。

 

 熱に潤んだピンク色の瞳が不安と、それからアキシャ自身にも理解できない何かを混ぜた色を浮かべて、じっと自分を見つめ返してくる。

 それが、アキシャの胸の奥に眠っていた未知の衝動を、容赦なく煽り立てた。

 アキシャはまるで何かに導かれるように、ラビリアのわずかに開かれた唇に、自分の唇を重ねた。

 

「ん……!?」

 

 唇に触れた、柔らかく、そして熱い感触。

 ラビリアの目が、驚きで大きく見開かれる。まさか、アキシャがこんなことをするとは思ってもみなかったのだろう。拘束された身体が、驚きでわずかに強張った。

 

 最初はただ、戸惑いながら押し当てるだけだった。アキシャにとっても、それは初めての経験だった。だが一度触れてしまうと、もう止められなかった。

 ラビリアの唇の柔らかさと、そこから伝わる熱が、アキシャの理性を麻痺させていく。

 アキシャは、訳も分からないまま、本能に従うように、わずかに角度を変えて唇を深く押し付けた。それはお互いの熱を確かめ合い、貪るかのような、不器用で……しかしひどく濃厚なものへと変わっていく。ラビリアの驚きを含んだままの吐息が、アキシャの口内へと流れ込んできた。

 

 どれくらいの時間が経ったのか。やがて苦しくなってきた呼吸と、限界に達した羞恥心に、アキシャは我に返った。そして、アキシャは名残惜しそうに、ゆっくりと唇を離したのだ。

 二人の間をつないでいた熱が、ぷつりと断ち切られる。

 

「……ラビリア」

「……アキシャ」

 

 こんな状態で……ラビリアの顔をまともに見ることなんてできなかった。アキシャの顔は純粋な熱で、耳まで真っ赤に染まっていた。

 だけど……これは言うべきだ。恥ずかしさで彼女は視線をそらしながら、ゆっくりと口を開く。

 

「……わかんねぇ。さっき、お前にやられて……すげぇムカついたけど……でも、それ以上にドキドキした」

 

 アキシャの不器用な言葉が、静かな部屋に響く。

 

「お前は私の大事な幼馴染で……一番頼りにしてる相棒で……。だから、その……なんだ、魔が差した、っていうか……」

 

 何を言っているんだ、と自分でも思った。だが、一度動き出した鼓動は止まらない。アキシャは意を決して、ラビリアの潤んだピンク色の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。

 

「……私も、お前に……触りたい、って……思っちまったんだよ」

 

 しどろもどろな、精一杯の告白だった。

 

 ラビリアは、アキシャのその言葉を聞いて、驚いたように目を丸くした後、ふっと緊張を解くように柔らかく微笑んだ。その笑みは、先ほどの悪戯っぽいものではなく、どこか安堵したような、慈しむような色を帯びていた。

 

「……そっか。アキシャも、私と同じだったんだね」

 

 その言葉は、アキシャの告白に対する答えのようでもあり、独り言のようでもあった。

 

 ラビリアは、拘束された手足をわずかに動かしながら、続けた。ロープが肌に擦れる、かすかな音がする。

 

「……ねぇ、アキシャ。……拘束されたままは、やだ」

 

 その瞳が、再びいつもの、悪戯っぽく細められたものに変わる。だが、そこには先ほどまでの不安はなく、アキシャの告白を受け入れた上での、確信に満ちた光が宿っていた。

 

「これ、外してくれたら……。アキシャの、好きにしていいよ?」

 

 アキシャはラビリアのその言葉に一瞬驚きつつも、こくりと頷くと、急いで四肢の拘束を解いた。ロープが肌から離れ、わずかな解放感がラビリアを包む。

 

 自由になったラビリアは逃げるどころか……すぐにアキシャの首に腕を回し、その身体を優しく抱きしめた。

 

「……アキシャも、無茶しちゃダメだよー。痛むでしょ?」

 

 それはアキシャの傷を気遣う、優しい声色だった。

 

「ん、いや……もう、痛くねぇ」

 

 アキシャは、相変わらず強がってそう答えた。だが、その声は微かに震えていた。それは、まだ残る傷の疼きからか、それとも未知の感情の高ぶりからか……アキシャ自身にも、もうよく分からなかった。

 

 二人は至近距離で見つめ合った。アキシャの琥珀色の瞳には、まだ消えない戸惑いと、先ほど芽生えたばかりの抑えきれない熱が宿っている。ラビリアのピンク色の瞳は、そのアキシャの熱を、そして戸惑いごと全てを受け入れるかのように、穏やかで……そしてわずかに潤んで揺れていた。言葉は、もう必要なかった。

 

 今度は確かに同意の上で、再びそっと唇を重ねた。先ほどのような衝動的で、互いの熱を確かめ合うような激しいものではない。ラビリアの柔らかな唇の感触を、その温もりを、アキシャがゆっくりと味わうような、深くて長いキス。

 

 どちらからともなく、二人は互いの服に手をかけた。

 アキシャのまだ震える指が、ラビリアのベージュのロングコートを、その肩から滑り落とす。続いて、先ほどアキシャがボタンを外した、白いブラウスの残りのボタンにも指がかかる。ラビリアもまた、アキシャが着ていた療養用の簡素なシャツの裾を掴み、その脇腹の傷に響かないよう、慎重に、しかし迷いなく脱がせていく。

 

 シーツが擦れる音と、服地が肌を離れる音だけが、午後の静かな部屋にやけに大きく響く。

 ラビリアの灰色のミニスカートがベッドの脇に落ち、アキシャの赤いショートパンツがその鍛えられた太ももから抜き去られる。

 

 やがて、二人の間を隔てるものは、互いの下着だけになった。

 

 アキシャの下着は、彼女の性格を映したかのような、スポーティな純白のコットン地だった。動きやすさを重視したシンプルなデザインだが、それがかえってアキシャの引き締まった腹筋や、鍛えられた胸の形を素直に映し出し、その肌の白さを際立たせている。

 

 普段は裸になっても恥じらいなど見せないアキシャだが、今この状況では、照れで顔から火が出そうだった。ラビリアに優しく抱きつかれる形で、アキシャの心臓は激しく高鳴っていた。

 

 アキシャの手が、おずおずとラビリアの黒い下着の、すでに熱っぽく湿り気を帯びたレースの縁にかかった。繊細なレースのわずかな硬さと、その下にある肌の熱、そしてじっとりとした潤いの気配が、指先に伝わる。

 

「……ん」

 

 ラビリアが、それを促すかのように小さく息を漏らす。

 

 アキシャは意を決して、その薄い布の内側へと、震える指を滑り込ませた。指先が、熱く湿った柔らかな肌に直接触れる。

 そこはすでに、アキシャの指を待ち焦がれていたかのように熱っぽく、じっとりと愛の蜜で潤んでいた。

 

「ん、ふ……ぁ……っ」

 

 ラビリアの口から、可愛らしく、けれどどこか蕩けるように大人びた喘ぎ声が漏れる。とろりとしたピンク色の瞳が、熱に浮かされたように潤み、目の前のアキシャの顔をじっと見つめている。

 

 そのあまりに無防備で可愛らしい表情に、アキシャは耐えきれず、思わず目をそらしてしまった。

 

「……やだ。アキシャも私の顔、ちゃんと見て?」

 

 ラビリアが少しだけ我儘な、しかし抗いがたいほどに甘えた声でそう言った。

 

 アキシャはラビリアのその言葉に、心臓を掴まれたかのようにドキリとしながらも、言われるがまま視線を戻した。

 そこには頬を上気させ、自分に全てを委ねようとしている、愛しい幼馴染の姿があった。

 

 意を決したアキシャは、ラビリアの秘部にある、小さく……しかし確かに熱を持って膨れ上がった突起を指の腹で優しく擦った。

 

「あっ、ん……! ふ、ぅ……! そこ、だめ……」

 

 ラビリアの声が、次第に切なげに大きくなる。シーツの上で、彼女の身体が心地よさそうに小さく震えていた。その反応の一つひとつが、アキシャの庇護欲と、初めて知る征服欲を刺激する。

 

 アキシャはラビリアの潤んだ秘部の入り口に、探るように指先をそっと触れさせた。蜜が指に絡みつく。

 

「……ん、ぁ……!」

 

 ラビリアの反応を確かめるように、ゆっくりと指を一本、その熱く狭い内側へと少しだけ受け入れてもらう。

 

「ひぅ……! あ、きシャ……! ふか、い……」

 

 ラビリアが、苦しさと快感が混じったような悲鳴に近い喘ぎを漏らす。その内側が、アキシャの指をきつく、それでいて拒絶しないように締め付けた。まるで、アキシャの指を歓迎するかのように、柔らかく、熱く脈打っていた。

 

 アキシャはその脈動を感じながら、指をゆっくりと動かし、内側の柔らかく、ひだのある壁を優しくなぞった。

 

「だ、だめ……。もう、……イきそう……、だから……!」

 

 ラビリアが、懇願するようにアキシャの腕を掴む。その指先には、快感に耐えるように強く力が込められていた。

 

 そしてアキシャは、その切羽詰まった声に応えるように、一番敏感に反応する場所を、指先で軽く押し込んだ。

 

 

「―――――っ! ん、ぁあああっ!」

 

 

 ラビリアはアキシャの背中を、ありったけの力で強くかき抱きながら、ビクンと身体を大きく痙攣させた。甲高い、全ての理性を手放したような甘い声が、部屋中に響き渡る。アキシャの指先が、ラビリアの内側で起こる痙攣をはっきりと感じ取っていた。

 

 自分の指の中でラビリアが絶頂する様子に、アキシャは見とれてしまった。その自分だけに見せる無防備な姿が、どうしようもなく愛おしいと感じた。

 

(……かわ、いい)

 

 ラビリアは、絶頂の余韻に脱力し、アキシャの胸に顔をうずめる。「はぁ……、はぁ……っ」と、荒い息がアキシャの肌にかかる。

 しばらくして、ラビリアが顔を上げ、屈託のない笑顔を見せた。それは……今までに見たことがないほど幸福感に溢れた笑顔だった。

 

「……ふふ。これでお相子、だね」

「……っ! ば、バカ! こいつ……!」

 

 アキシャは、照れ隠しにそう叫ぶしかなかった……。

 

 その後、二人は少しぎこちない空気を漂わせながらも、素早く脱いだ服を着直し、互いに服装を整えた。シーツには、先ほどの出来事を物語るかのように、生々しい湿り気の染みが残っていた。

 

 行くところまで行ってしまったという、どうしようもない事実。

 アキシャは、自分の指先に残るラビリアの感触と、脳裏に焼き付いた幼馴染の無防備な姿を思い出し、顔から火が出そうだった。ショートパンツやコートを慌てて身につけたものの、昂ったままの熱は身体の内側に燻り続けている。

 

 対するラビリアは、灰色のミニスカートのしわをパンパンと手で払い、ベージュのロングコートを羽織ると、もうすっかりいつものマイペースな調子に戻っていた。その表情は、先ほどまで快感に蕩けていたのが嘘のように、落ち着き払っている。

 

「んー。でも、アキシャにやられるのも、悪くなかったかもー」

 

 ラビリアが、ベッドの上であぐらをかいているアキシャに、にじり寄ってきた。そのピンク色の瞳が、楽しそうにアキシャを覗き込む。

 

「でも今度は、私が責め役ねー。耳だけじゃなくて、もっと色々」

 

 その言葉には、先ほどの報復を受けてなお、全く懲りていない響きがあった。

 

「う、うるせぇな! 誰がやるか! 二度とごめんだ!」

 

 アキシャは、さっきの記憶がフラッシュバックし、慌ててラビリアから距離を取ろうとベッドの上を後ずさる。

 

「えー? 本当にー?」

 

 ラビリアはさらに顔を近づけると、その白いウサ耳の根本に、「ふー」と悪戯っぽく息を吹きかけた。

 

「ひゃっ!? ……わ、分かったよ! 次は、その……気が向いたらな!」

 

 アキシャは、これ以上ないというほど真っ赤な顔でそっぽを向く。しかしその白いウサ耳は、彼女の言葉とは裏腹に、正直に小さく揺れていた。

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