※この作品はR-18です。

The Sky Blessing ~R-18 Edition~   作:ella_coat

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章タイトルにある通り、この短編は本編の第2章と第3章の閑話にあたるものとされています。本編を読まなくても楽しめるとは思いますが、本編を読んでからの閲覧をおすすめしておきます。


第2章閑話 兎のじゃれ合いは激しく
行き過ぎた好奇心は兎を狂わす


 交易島の拠点として貸し与えられた石造りの家屋。そのリビングには、窓から午後の柔らかな日差しが差し込み、空中に舞う微細な塵をキラキラと照らし出していた。先の死闘から数日が経過し、島には平穏な日常が戻りつつある。だが、この部屋の一角だけは、何やらきな臭い熱気と、金属が擦れ合う硬質な音に支配されていた。

 

「ふふん、ふふーん♪ 出力回路はこっちで……っと」

 

 上機嫌な鼻歌を口ずさみながら、リビングの大きなテーブルを占拠しているのはラビリアだ。

 彼女は愛用の精密ドライバーやペンチを片手に、机の上に広げられた雑多な素材と格闘していた。今まで白い頬に貼られていたガーゼは取れていたが、捲り上げたベージュのコートの袖から覗く華奢な手首には包帯が巻かれている。激戦の爪痕はいまだ癒えていないが、そんなことを気にする様子はない。彼女のピンク色の瞳は真剣そのものであり、同時に危うい輝きを宿していた。

 

 テーブルの上には、これまでの冒険で手に入れた戦利品の中でも、特に精密で魔力伝導率の高いパーツ類が所狭しと並べられている。

 「空賊島」の動力炉から回収した、複雑な幾何学模様が刻まれた真鍮色の歯車。「ピアノ島」の不気味な迷宮から持ち帰った、微弱な魔力を帯びて震える銀色の金属弦。そして「虹島」の湖底で採取した、水を弾く特殊なぬめりを持つ透明な皮膜などだ。それらは一般人から見ればただのガラクタの山に過ぎないが、技術屋である彼女にとっては、新たな魔道具を形作るための至高の宝石箱だった。

 

 ラビリアはピンセットで銀色の金属弦を摘み上げ、指先で軽く弾く。ピィン、と空気を震わせる澄んだ音色と振動を確認すると、慎重に歯車の隙間へと通していく。自身の魔力を指先から糸のように流し込むと、弦が淡い光を帯びて微細に、しかし力強く振動し始めた。

 

「んー……振動の波長がちょっと荒いかなー。もっと優しく、深くまで届くように……」

 

 彼女は独り言を呟きながら、極小の調整用ネジをミリ単位で回していく。集中しすぎて、額に浮かんだ汗が頬を伝い、机の上のオイルでコートの袖口が汚れても気にする素振りはない。

 彼女が作っているのは、掌にすっぽりと収まるほどの流線型のフォルムを持つ、奇妙な魔動機械だった。先端部分は丸みを帯びており、人肌のように柔らかく、吸い付くようなシリコン状の素材で丁寧に覆われている。

 

 数時間に及ぶ格闘の末、ついに最後の回路が繋がり、機械が「ウゥン……」と低い駆動音を立てて安定した。それはまるで、小さな生き物の鼓動のように静かで、なめらかな震えだった。

 

「……ふぅ。できたー」

 

 ラビリアは額の汗を手の甲で乱雑に拭い、完成品を満足げに陽光に透かして見つめる。滑らかな曲線を描く白いボディが、光を受けて艶めかしく輝いた。

 

「小型魔力振動機、試作型……うん、悪くない出来だねー」

 

 

 そのタイミングを見計らったかのように、玄関のドアがガチャリと重い音を立てて開いた。

 

「よいしょ……ただいまー」

 

 少し息の切れた声と共に、エクアルが姿を現す。

 彼女の両腕には、彼女の顔が隠れてしまうほど高く積み上げられた、分厚い本の塔が抱えられていた。古書特有の紙とインクの匂いが、ふわりと室内に流れ込む。その重さに足元をふらつかせながらも、彼女はバランスを崩さないよう、慎重にリビングへと入ってきた。

 エクアルの身体に刻まれた、先の戦いの傷も癒えきっていない。重い荷物を持ったせいで脇腹の傷が痛むのか、わずかに眉を寄せている。だが、その琥珀色の瞳には痛みに抗うかのように、知識への飽くなき渇望と、自分を律しようとする真面目さが宿っているように見えた。

 

「おかえりー、エクアル。すごい量だねー」

 

 ラビリアは完成したばかりの機械を、手元の布の下へとサッと隠しながら、何食わぬ顔で出迎える。その手際は、まるで手品師のように鮮やかだった。

 一方でラビリアの作業スペースを避けるように、エクアルはテーブルの端へ本の塔をドサリと置いた。埃が舞い上がり、午後の日差しの中で星々のように煌めく。

 

「ええ、交易島の書庫に面白そうな文献がたくさんあって……借りられるだけ借りてきちゃった」

 

 エクアルが額の汗を拭いながら、満足そうに本の山を見上げた後、散らかったテーブルを一通り見回す。

 

「相変わらず、なにか新しい道具でも作ってるの?」

 

 テーブルに散乱した金属片や工具を見て、呆れたように、しかし慣れた様子でエクアルが尋ねる。そこには、ラビリアの趣味嗜好に対する深い理解と諦めが混在していた。

 

「そうだよー。リハビリも兼ねてねー」

 

 ラビリアは笑顔で答えつつ、素早く工具を端に寄せ、エクアルが座るスペースと彼女のために入れておいたお茶を置く場所を確保したのだった。エクアルは椅子に腰を下ろし、ふぅと深く一息つくと、ラビリアに向かって疑わしげなジト目を向けた。

 

「……変なものは作らないでよー? この前みたいに、爆発したりしないでしょうね?」

「いやいや、今回は世のため人のためになる、癒やしの道具だよー?」

 

 ラビリアは心外だと言わんばかりに肩をすくめてみせる。

 温かいお茶で喉を潤し、一息ついたエクアルは、キョロキョロと部屋の中を見回し、不思議そうに眉をひそめた。部屋の静けさに、あるべきはずの騒がしい気配が欠けていることに気づいたのだ。

 

「……あれ? お姉ちゃんは? まだベッドで寝てるの?」

 

 その問いに、ラビリアは「あー……」と言葉を濁し、視線を宙に遊ばせる。その仕草だけで、エクアルの中に嫌な予感が走った。

 

「実はねー……アキシャなら、出かけちゃったよ」

「えっ? 出かけたって……どこに?」

 

 エクアルのカップを置こうとする手が止まる。カップの中の茶柱が揺れた。

 

「んーとね、島民の子供たちとか、自警団の人たちに剣術を教えに行くって。『身体が鈍って仕方ねぇから、素振りついでにな!』ってさー」

 

 その言葉を聞いた瞬間、エクアルのこめかみに青筋がピキリと浮かんだ。手にしたティーカップにヒビが入るのではないかというほど、指先に力がこもる。

 

「あのバカお姉ちゃんは……! まだ安静にしてなきゃダメだって、あれほど言ったのに!」

 

 エクアルは頬をリスのようにぷくーっと膨らませ、怒りを露わにする。だがその瞳の奥には、無茶ばかりする姉を心から案じる、深い愛情と心配の色が滲んでいた。

 

「傷が開いたらどうするつもりなのよ……ラヴィも止めてよねー!」

「私があの猛獣を止められると思う? 止めようとしたら道連れにされそうだったしー」

 

 ラビリアが苦笑いしながら弁解する。アキシャのあの有り余るエネルギーは、彼女が怪我人であろうと誰にも止められないことを、二人はよく知っていた。エクアルは深いため息をつき、諦めたようにガックリと肩を落とした。

 

「……はぁ。それもそうね。お姉ちゃんを止められるのは、重傷を負って動けなくなった時だけだわ……」

 

 姉の話題が一段落し、部屋に再び午後の静寂が戻る。

 その静けさが、エクアルにとっては針のむしろのように居心地が悪かった。なぜなら、ラビリアの興味の矛先が、テーブルの端に積み上げられた、エクアルが持ち帰ってきた巨大な本の山へと向いてしまったからだ。

 

「それにしても、こんなに本を持ってくるなんて……大変だったでしょ?」

 

 ラビリアは何気なく、山の一番上にあった本を手に取り、パラパラとめくる。羊皮紙の乾いた音が、静かな部屋にカサカサと響いた。その音が鳴るたびに、エクアルの心臓が早鐘を打つ。

 

「『神器による魔法のすすめ』……ふーん、流石はエクアル、真面目だねー」

 

 その瞬間、エクアルの肩がビクリと大きく跳ねた。

 頭上の黒い立派な耳が、驚いた猫のようにピンと逆立ち、小刻みに震える。彼女はあからさまに動揺し、視線を右へ左へと激しく泳がせた。いつもの冷静沈着な彼女からは想像もつかない、過剰な反応だ。

 

「あ、ええ! そ、それは……この世界の地理とか、魔法の理論とか、そういうのを勉強しようと思って! つ、次の島へ行く前に、知識を蓄えておきたかったし!」

 

 早口でまくしたてるエクアル。その様子は、単に勉強熱心であることを褒められた時の反応とは明らかに違っていた。

 顔は若干ではあるが紅潮し、額には玉のような冷や汗が浮かんでいる。膝の上で握りしめられた両手は、それとなく力がこもっているように見える。まるで、親に見られてはいけないものを隠している子供のような、分かりやすい狼狽ぶりだ。

 ラビリアの眠たげな目は、当然のごとくその違和感を見逃していない。

 

「ふーん……?」

 

 彼女は手に持った本を山に戻しながら、エクアルの横顔をじっと観察する。

 エクアルの視線が、本の山の中腹あたり――特定の一点に、磁石のように吸い寄せられては、ハッとして逸らすのを繰り返している。何かを必死に隠そうとしている、後ろめたい気配が全身から立ち昇っていた。

 誰にでも隠し事はある。普段なら「へー、そうなんだー」と流すところだが……今のラビリアの中には、いつになく挙動不審なエクアルへの、嗜虐的な悪戯心が巣食っていた。

 

(エクアルがこんなに慌てるなんて……絶対になにか面白いものを隠してそー)

 

 ラビリアの口元が小悪魔のように、わずかに吊り上がる。彼女はテーブルに肘をつき、積み上げられた本の背表紙を、人差し指でツーっとなぞるように確認し始めた。

 ラビリアの指先が古びた革表紙を一つひとつ撫でるたびに、エクアルの身体が強張っていくのが手に取るようにわかる。

 

「地理に、歴史に、魔法理論……うんうん、どれも難しそうな本ばっかりだねー」

「そ、そうでしょ? だから、触らないでくれる? まだ分類もしてないし、整理しなきゃいけないから……!」

 

 ラビリアの指が特定の位置に近づくと、エクアルが思わず身を乗り出して遮ろうとする。その必死さが、逆に答え合わせとなっていた。

 おおよそ当たりをつけたラビリアは、山の中腹あたりに差し込まれた、一冊だけ装丁の雰囲気が違う、妙に分厚い本に触れる。

 他の古びた羊皮紙の本とは違い、どこか艶のある黒革の表紙で、厳重に閉じられている気配がある。そこから漂う雰囲気は、学術書というよりは、どこか背徳的な匂いを帯びていた。

 

「……ん? この本、なんか違和感があるねー」

「……ッ!?」

 

 エクアルが息を呑む。ヒュッという短い吸気音が漏れ、その顔からサーッと血の気が引いていくのが見えた。

 

「そ、それは……ただの、古い魔導書よ! 触らないで!」

「魔導書にしては……なんか変な感じがするんだよねー」

 

 ラビリアはその本を、本の山からゆっくりと引き抜く。その動作は、まるで爆弾の信管を抜くかのように慎重で、そして残酷なほどゆっくりだった。本が完全に引き抜かれた瞬間、エクアルの中で何かが切れた。

 

「ダメ! 返して!」

 

 彼女は座っていた椅子を蹴倒す勢いで飛びかかってきた。普段の冷静な彼女からは想像もつかない、なりふり構わぬ特攻。テーブルの上のティーカップがカチャカチャと音を立てて揺れる。

 

 だが、ラビリアはひらりと身を翻し、エクアルの決死のタックルを華麗に躱した。三人の中でも最も身軽で素早いラビリアの身のこなしは当然、常人の域を超えている。エクアルの手は空を切り、彼女はつんのめってテーブルに手をついた。

 

「おっと、危ないよー」

 

 ラビリアは距離を取り、手にしたその「分厚い本」をしげしげと眺める。

 それは一見すると重厚な装丁の古書だが、ラビリアの技術屋としての指先は、その表紙に施された微細な違和感――隠蔽のための工作を敏感に察知した。表紙の厚みが不自然であり、蝶番の部分に隠しスイッチのような引っかかりがある。彼女は表紙の裏に隠された爪掛けへと指をかけ、パカリと開く。すると、中身がくり抜かれており、そこには別の「薄い本」が隠されていた。

 

「へぇ……本のダミーケースかぁ。凝ってるねー」

「やめて、見ないで! お願いラヴィ!!」

 

 エクアルが顔を真っ赤にして懇願する。その目は潤み、今にも泣き出しそうだったが、時すでに遅し。ラビリアは隠されていた本を取り出し、そのページを無慈悲にも開いた。

 

 そこには、高尚な魔法理論など一行も書かれてはいなかった。

 描かれていたのは、肢体を絡ませ合う男女の、あまりにも艶めかしく、そしてハードな行為の数々。緻密な挿絵と共に、羞恥心を煽るような言葉が書き連ねられた、正真正銘の「成人向けのいかがわしい本」だった。しかも、その内容はラビリアの目から見ても「結構マニアック」な部類に入るものだ。拘束された女性が快感に溺れる様子が、克明に描かれている。

 

「…………わぁお」

 

 ラビリアは数秒間硬直した後、ぱちくりと瞬きをした。そして、ゆっくりと顔を上げ、石像のように固まっているエクアルを見る。

 

「エクアル……これ、なにかなぁ?」

 

 エクアルは顔を茹で上がったタコのように真っ赤にし、目には涙を溜めて首を振る。

 

「し、知らない! そんな本知らないわ! きっと書庫の司書さんが間違えて……!」

 

 苦し紛れにもほどがある言い訳だった。その声は裏返り、視線は本とラビリアの顔を行ったり来たりして定まらない。額からは玉のような汗が噴き出し、膝の上で握りしめられた拳は白くなるほど震えていた。

 ラビリアはそんなエクアルの様子を生温かい目で見つめると、手元の本をパラパラとめくり、あるページで指を止めた。

 

「ふーん、間違えてねぇ……。でもさー、見てよこれ」

 

 ラビリアがひらひらと見せたのは、ページに挟まれていた一枚の栞だった。それは丁度、作中の女性が複数の触手に捕まり、快楽に溺れている挿絵のページに挟まれていたのだった。

 

「この栞ってさー、エクアルのじゃなかったっけ?」

 

 決定的な証拠を突きつけられ、エクアルの喉からヒュッという短い呼吸音が漏れる。

 

「それに……わざわざこんな隠し方をして、司書さんが渡すかなぁ?」

「うぅ……!」

 

 追い詰められたエクアルは、言葉を失ってしまう。

 ラビリアは手の中の本をパタンと閉じると、ニタニタと意地悪な笑みを浮かべながら、後ずさるエクアルにじりじりと近づく。まるで追い詰めた小動物を弄ぶ捕食者のようだ。

 

「なるほどねぇ、エクアルってこういうのが好きなんだー。意外だなー。……もしかして、前に私としたえっちなこと、気に入っちゃった?」

 

 かつての記憶――ラビリアに身体を弄られ、理性を手放して快感に溺れた時の甘い記憶が蘇り、エクアルはブンブンと首を振る。

 

「ち、違う! 違うの! 気に入ったわけじゃない! あの時は勉強したかっただけ……」

「勉強ねぇ……。じゃあ、このことはアキシャにも報告しないとね。『エクアルがこんなすごい本で勉強してましたー』って」

 

 ラビリアが玄関の方へ向かう素振りを見せる。それは彼女にとってあまりにも強烈な一撃だった。

 

「そ……それだけは絶対にダメ!!!」

 

 エクアルが悲鳴のような声を上げて、ラビリアのコートの裾を掴む。その指には彼女らしからぬほど力がこもっており、生地が引きちぎれんばかりに握りしめられていた。

 

「お、お姉ちゃんにだけは……知られたくないの……!」

 

 最も尊敬し、愛する姉に、こんないかがわしい趣味を知られること。そんな本を隠し持っていたと知られれば、どんな顔をされるか……。それはエクアルにとって、死よりも辛い恥辱だった。

 ラビリアはそんなエクアルを見下ろし、その潤んだ瞳と真っ赤な頬を楽しそうに見つめ、瞳を細める。

 

「ふーん……? じゃあ、本当のこと言ってくれる?」

 

 逃げ場は完全に塞がれた。エクアルは観念したようにガックリと項垂れ、消え入りそうな声で呟く。

 

「……そうです。私が……交易島で秘密裏に売られているものを……買っちゃいました……」

 

 その言葉を吐き出した瞬間、エクアルの身体から力が抜け、魂が口から出ていくようだった。普段の理知的で真面目な彼女からは想像もつかない、あまりにも恥ずかしい告白。

 ラビリアは満足げに頷くと、本を大切そうに両手でしっかりと握りしめた。それは「この弱みは逃さない」という無言の意思表示でもあった。

 

「なるほどねー。そっかそっかぁ」

「……うぅ」

 

 肯定の代わりに、顔を覆って小さく頷くエクアル。彼女の立派な黒い耳は恥ずかしさからか、内側がほんのり赤色に染まっている。

 その敗北宣言を聞いたラビリアは、エクアルの耳元に顔を寄せ、甘く、ねっとりとした声で囁いた。

 

「よく言えましたー♪」

 

 耳にかかる吐息と、見透かされたような言葉に、エクアルは羞恥のあまりその場でうずくまりそうになる。だがラビリアは逃がさない。

 

「でもさー、私たち『運命共同体』だよね? 隠し事は良くないと思うなー」

「うぅ……この悪魔……!」

 

 エクアルが涙目で睨みつけるが、弱みを握られた今、彼女に勝ち目はない。その潤んだ瞳は、もはや抵抗ではなく慈悲を乞うていた。

 ラビリアは楽しそうに笑うと、とんでもない提案を持ちかける。その笑顔の裏には、危ない欲求が見え隠れしているのが分かる。

 

「じゃあこうしよう。私の『新しい実験』を手伝ってくれたら、この本のことはアキシャには内緒にしてあげる……どう?」

「じ、実験……?」

 

 エクアルが警戒心を露わにする。ラビリアの実験といえば、良い思い出がほとんどない。

 

「どうせまた、ろくな実験じゃないんでしょ……?」

「そんなことないよー。ただの魔道具のテストだよー」

 

 エクアルは迷った。だが、この本がアキシャに見つかり、そして大声で読み上げられるような未来を想像すると、選択肢は一つしかなかった。彼女は唇を血が滲みでそうなほど噛み締め、断腸の思いで頷く。

 

「……分かったわ。協力する。その代わり……絶対に、絶対に言わないでよ!」

「よし、交渉成立だねー」

 

 ラビリアは満面の笑みで頷いた。その笑顔は、獲物がかかったことを喜ぶ狩人のそれだった。

 

「じゃあ、早速準備するから、寝室に来てねー」

 

 ラビリアの口車に乗せられたとも知らず、エクアルは重い足取りで、自らの運命が決まる寝室へと向かうのだった。

 

 

※※※

 

 

 拠点の奥まった場所にある寝室は相変わらず、昼下がりの静寂に包まれていた。普段は三人で賑やかに過ごすこの安らぎの場所も、今はどこか張り詰めた、実験室のような独特の緊張感が漂っている。エクアルにとって、その部屋の静けさは自身の心臓の音を際立たせるだけの、居心地の悪い空白でしかなかった。

 

 部屋の中央に置かれた背もたれのある木製の椅子に、エクアルはちょこんと座らされていた。

 彼女はいつもの黒いロングコートを脱がされ、清楚な白いブラウスと膝丈の青いスカートというラフな姿になっている。膝の上で両手をきゅっと固く握りしめ、ソワソワと落ち着かない様子で視線を彷徨わせていた。時折、スカートの裾をぎゅっと掴んでは離す仕草が、彼女の内にある葛藤を物語っている。

 

「……ねえ、ラビィ。本当にマッサージだけなのよね? 変なこと……しないわよね?」

 

 エクアルが上目遣いで、目の前で準備を進める幼馴染の背中に、縋るように不安げに問いかける。

 先ほどの「いかがわしい本」の一件で決定的な弱みを握られているとはいえ、ラビリアの実験台になることへの本能的な警戒心はどうしても消えない。彼女の頭上の黒い耳が、見えない危険を探るアンテナのようにピクリと震えている。

 

 ラビリアはベッドサイドのテーブルで背を向け、カチャカチャと何かの準備をしていたが、その問いかけに振り返ってにっこりと笑った。その笑顔は、春の日差しのように無邪気で、一点の曇りもないように見えた――少なくとも、表面上は。

 

「もちろん、ただのマッサージだよー。エクアルも最近、根詰めて勉強してたから肩凝ってるでしょ?」

 

 そう言いながら、ラビリアは水の入ったガラスのコップを二つ持ち、片方をエクアルに差し出した。コップの表面には薄く水滴がつき、冷たさを指先に伝えてくる。

 

「ほら、まずは水でも飲んで落ち着いて。緊張してると筋肉が強張って、正確なデータが取れないからねー」

 

 エクアルは疑いつつも、緊張で喉がカラカラに乾いていたため、おずおずとコップを受け取る。ガラスの冷たさが、火照った掌に心地よい。

 

「……ありがとう」

 

 そう短く礼を言って、素直に水を口にした。冷たい水が乾いた喉を通り、胃に落ちていく感覚が、少しだけ高鳴る鼓動を鎮めてくれる気がした。水面が揺れ、彼女の不安げな顔を映し出す。

 ラビリアも自分の分の水を一口で飲み干すと、ほっと息をついて安心させるように微笑み、懐から先ほど完成させたばかりの魔動機械を取り出した。

 

「じゃあ、始めるねー」

 

 ラビリアの取り出したのは、掌にすっぽりと収まるほどの大きさの魔道具――先程完成したばかりの小型魔力振動機だった。

 無機質な金属の冷たさはなく、どこか人肌のような温かみを感じさせる質感。滑らかな曲線を描くそのフォルムは、道具というよりは、手の中で眠る小動物のような愛らしさがあった。

 

「これが……新しい魔道具?」

「うん、マナを動力源にして微細な振動を発生させる、携帯型マッサージ機だよ。苦労して作ったんだー」

 

 エクアルがまじまじと見つめる中、ラビリアが魔力を少し込めると、機械は「ウゥン……」と低い音を立てて振動し始めた。その音は静かで、耳障りな機械音ではなく、どこか生き物の鼓動のようにも聞こえ、奇妙な安らぎを空間に満たしていく。

 ラビリアはエクアルの背後に音もなく回り込むと、彼女の華奢な肩にそっと手を置いた。

 

「じゃあ、いくよー」

 

 彼女は振動する機械の先端を、エクアルの凝り固まった右肩に優しく、沈み込ませるように押し当てた。

 

「んっ……」

 

 エクアルが小さく肩を震わせる。

 機械から伝わる振動は、想像以上に細やかで繊細だった。皮膚の表面を撫でるだけでなく、奥深くの凝り固まった筋肉の繊維一本一本を解きほぐすように、さざ波のような振動がじんわりと浸透していく。強すぎず、弱すぎず、絶妙な圧力が凝りの芯を捉え、溶かしていくような感覚。

 

「……どう? 痛くない?」

「う、うん……。思っていたより……気持ちいいわね、これ」

 

 エクアルの強張っていた表情が、次第に緩んでいく。機械的な無機質さはあるものの、その振動は的確にツボを捉え、蓄積した疲労を吸い取っていくようだった。肩から首筋へ、そして背中へと広がる振動の波に、彼女は無意識にため息をつく。

 

「よかったー。じゃあ次は比較実験ね」

 

 ラビリアは空いている左手をエクアルの左肩に置く。

 

「右は機械、左は私の手。どっちが気持ちいいか教えてねー」

 

 ラビリアの細くしなやかな指が、エクアルの左肩を丁寧に揉みほぐし始めた。機械の規則的な振動とは対照的に、体温を持った指先が強弱をつけて筋肉を捉え、優しく愛撫するように揉みしだく。

 機械の正確なリズムと、人の手の不規則だが温もりのある力。二つの異なる心地よさが同時に脳を刺激し、エクアルの思考を甘く痺れさせていく。

 

「うーん……難しい質問ね」

 

 エクアルは目を閉じ、真面目に分析を始める。その眉間の皺はすでに消え、口元はわずかに緩んでいる。

 

「機械の方は……振動が一定で奥まで届く感じがするわ。効率的に凝りをほぐしてくれる感じ。でも、ちょっと無機質かも」

「ふむふむ」

 

 ラビリアはメモを取るふりをして、楽しそうに相槌を打つ。

 

「ラビィの手の方は……やっぱり、温かさを感じるわね。安心するというか……人の手ならではの良さがあるわ」

 

 エクアルの頬がほんのりと朱に染まる。幼馴染の手によるマッサージは、身体だけでなく心もほぐしてくれるようだった。そこには、長年連れ添った相手への信頼と、肌が触れ合うことへの微かな照れくささが混じり合っていた。

 そんなエクアルの無防備な言葉に、ラビリアの胸の奥で、愛おしさと嗜虐心が同時に疼く。

 

「なるほどねー。どっちにも利点はあるわけか……参考になるねー」

 

 ラビリアは満足げに頷くと、機械を左肩へ移動させ、今度は右肩を手で揉み始めた。

 心地よい振動と、ラビリアの優しい手つきへの安心感に、エクアルの警戒心は完全に解けていた。普段はピンと立っている黒い耳が、ふにゃりと力なく垂れ下がり、彼女はうっとりと目を閉じて身体を預けている。吐く息も深く、穏やかになっている。

 

「はぁ……気持ちいい……」

 

 ラビリアはエクアルのそんな様子を背後から観察し、口元を悪戯っぽく歪めた。

 こんなにも自分を信頼して落ち着いている愛らしい幼馴染。その理知的な瞳が快感に濡れ、恥じらいに染まる瞬間が見たい。そんな抑えきれない衝動が、ラビリアの心を動かす。

 

(……ふふ、いい感じに力が抜けてきたね)

 

 獲物が網にかかったことを確信した蜘蛛のように、ラビリアの瞳が妖しく輝いた。

 

 彼女は一旦機械のスイッチを切ると、マッサージを続けるふりをしながら、機械を持つ手をゆっくりと下へと滑らせていく。肩から背中、そして腰へ。機械の感触が背骨を伝うたびに、エクアルの身体がビクンと小さく跳ねるが、彼女はまだマッサージの一環だと思っているようだ。その無防備な背中は、これから訪れる甘美な罠など露ほども知らず、ただ心地よさに身を委ねていた。

 

 そして、ラビリアの持つ機械が腰を過ぎ、青いスカートの布地の上を滑った瞬間――彼女は素早くスカートの裾を捲り上げ、機械を持った手をその中へと滑り込ませた。

 

「ひゃっ!?」

 

 太ももに直接触れた冷たい空気に、エクアルが弾かれたように目を見開く。予期せぬ場所への侵入に、彼女の理性的な瞳が揺らぐ。

 

「ラ、ラビィ!? なにを……」

 

 ラビリアは返事をせず、機械の先端をエクアルの下着越しに、その秘部へとそっと押し付けた。

 硬質な機械の感触が、最も柔らかく敏感な場所に触れる。まだスイッチが入っていない静寂が、嵐の前の不穏さを告げる。エクアルの心臓がドクンと大きく跳ねた。淡い水色の下着越しに伝わる熱が、ラビリアの指先にまで届く。

 

「ここはどうかなー?」

「……ッ!?」

 

 エクアルが言葉を失う。彼女でも理解が追いつかなかった。

 エクアルの反応を楽しむようにラビリアは一拍置き、その潤んだ瞳を見つめながら、ゆっくりと魔力を流し込んだ。

 

「スイッチ、入れるよー」

 

 すると……先ほどまでは「心地よい」と感じていた振動が、秘部という最も敏感な場所に直接叩き込まれる。

 

「ああっ……ん、うあっ!!」

 

 エクアルの口から、予期せぬ甲高い嬌声が飛び出した。くすぐったいような、それでいて脳髄を直接揺さぶるような甘い痺れが、下半身から全身へと一気に駆け巡る。頭の芯が麻痺して、視界が揺らぐほどの衝撃。

 

「や、やめてっ! 何してるの……!」

 

 エクアルは反射的に身体をよじり、スカートの中にあるラビリアの腕を掴んで引き抜こうとする。震える指先がラビリアの腕に食い込む。

 だが――力が入らない。腕を掴む指先は震え、握力は赤子のように弱々しい。立ち上がって逃げようとしても、膝がガクガクと笑って言うことを聞かないのだ。まるで身体の芯が溶けてしまったかのように、筋肉が弛緩している。

 

「あれ……? 力が……入らない……!?」

 

 エクアルが恐怖と困惑に瞳を揺らす。自分の身体が言うことを聞かない焦燥感が、振動の快感と混ざり合い、混乱を加速させる。

 ラビリアはエクアルの耳元に唇を寄せ、楽しそうに囁いた。その吐息が、敏感になったエクアルの耳朶をくすぐる。

 

「あ、ごめんごめん。さっきの水に、ちょっと筋肉の緊張をほぐす薬……まあ、筋弛緩薬みたいなものを混ぜておいたんだー」

「なっ……! えぇっ……!?」

 

 エクアルが涙目でラビリアを睨みつけるが、その表情には怒りよりも、抗えない快感への戸惑いが色濃く浮かんでいる。頬は上気し、荒い息遣いが漏れる。

 

「ふふっ、緊張してるとデータが取れないからねー。……それに、エクアルも気持ちいいでしょ?」

「ちが……っ! んぁっ、あうっ! 振動が……っ!」

 

 ラビリアは否定する言葉を許さないように、魔力の供給量を増やし、振動の出力を上げた。機械の先端が下着越しに秘部を執拗に刺激し、エクアルの思考を快感で白く塗りつぶしていく。

 下着の布地が擦れる感触、機械の硬さ、そして容赦のない振動。すべてが渾然一体となってエクアルの理性を削り取っていく。

 

「や、ぁ……! 変な感じ……する!」

 

 エクアルは椅子の上で身をよじり、太ももを擦り合わせるが、それが余計に機械を秘部に押し付ける結果となり、快感を増幅させる。逃げようともがくほどに、振動は深く、甘く、身体の奥へと浸透していく。秘部から溢れ出した愛液が下着を濡らし、じわりと太ももを伝い始めるのがわかる。

 

(逃げなきゃ……逃げなきゃいけないのに……身体が……動かない……)

 

 薬の効果はそこまで強力なものではない。本気で抵抗すれば、椅子ごと転倒してでも振りほどけるかもしれない。だが、エクアルの身体の奥底で燻っていた「快感への渇望」が、薬の作用と相まって彼女をその場に縫い止めていた。

 あの本を読んで想像していた世界、かつてラビリアに触れられた時の記憶……それらが今、現実となって襲いかかってくる。拒絶したい理性と、受け入れたい本能。その狭間で揺れ動く彼女の姿は、あまりにも扇情的だった。

 

「顔、真っ赤だよ? 本当は期待してたんでしょー?」

 

 ラビリアの言葉責めが、エクアルの羞恥心を煽る。見透かされたような言葉に、身体がさらに熱くなる。

 

「ちがっ……そんな、こと……っ! ひぐっ、んんっ!」

 

 否定しようと首を振るたびに、乱れた黒髪が汗ばんだ額に張り付く。

 エクアルの呼吸が荒くなり、身体が弓なりに反る。快感の波が高まり、絶頂が近づいてくる気配。彼女の身体がキュッと縮こまり、何かが弾けそうになった――その瞬間。

 

 

 唐突に、その振動が止まった。

 部屋に重苦しい静寂が戻るが、エクアルの耳奥ではまだ幻聴のように機械の唸りが響いている。行き場を失った熱が、下腹部でどろりと重く渦巻いた。

 

「……え?」

 

 エクアルが虚ろな目でラビリアを見上げる。焦点が定まらない瞳には、涙が溜まり、梯子を外されたような呆然とした色が浮かんでいる。

 ラビリアはスカートの裾から、ゆっくりと手を引き抜く。ぬちゅ、という卑猥な粘着音が静寂に響き、エクアルの頬をさらに火照らせる。

 

「んー……流石に刺激が強すぎたかなー。気持ちよくなさそうだし、実験中止しよっか」

 

 ラビリアのわざとらしいほど残念そうな声。だがそのピンク色の瞳は、追い詰められた獲物を愛でるかのように、爛々と楽しげに輝いていた。

 

 

「あ……」

 

 エクアルの口から、間の抜けた声が漏れる。

 高まった熱の行き場がなくなり、身体の奥が疼いて仕方がない。あと少し、あと一押しで楽になれたはずの波が引いていき、代わりに耐え難い飢餓感が身体を支配する。満たされなかった欲求が、波のように押し寄せてきて、指先が震える。

 

(なんで……止めるの……? あと、少しだったのに……)

 

 そんなふしだらな思考が頭をよぎり、エクアルは自分の浅ましさに顔をカッと赤らめて俯いた。自分の口から「もっと」なんて言えるわけがない。でも、身体はこのまま終わることを許さないほどに火照り、疼いている。

 

「じゃあ、片付けるねー。協力ありがとうー」

 

 ラビリアが背を向けようとする。その背中が遠ざかっていくのは、今のエクアルにとって何よりも恐ろしかった。このまま放置されるなんて耐えられない。

 

「……やだ」

 

 消え入りそうな、震える声が静寂に落ちた。

 

「ん? どうしたのー?」

 

 ラビリアが足を止め、意地悪く聞き返す。彼女は分かっているのだ。エクアルが何を求めているのかを。それでも、彼女の口から言わせようとしている。

 エクアルはスカートの裾を両手でぎゅっと握りしめ、シワになるほど力を込めた。恥ずかしさに膝を震わせながら、それでも本能に抗えず、言葉を紡ぐ。

 

「……途中で、やめないで……」

「んー、どうしてほしいの?」

 

 ラビリアは小首を傾げながら肝心な言葉を言わせようとしてくる。その表情は、完全に嗜虐的な喜びに満ちていた。

 エクアルは涙を瞳いっぱいに溜め、上目遣いでラビリアを睨みつけるように、そして縋るように見つめた。プライドも、理性も、全て投げ捨てて。

 

 

「最後まで……してくれないと、嫌……。お願い……私を、イカせてください……!」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、ラビリアの表情から意地悪な色が消え、とろけるような愛おしさが溢れ出した。

 ふと彼女はエクアルを優しく抱きしめ、汗ばんだその頭を撫でる。

 

「……ふふっ、可愛い。素直でいい子だね、エクアル」

「うぅ……っ」

 

 エクアルはラビリアの胸に顔を埋め、羞恥と安堵で小さく嗚咽する。ラビリアの匂いに包まれ、少しだけ安心するが、身体の芯の疼きは収まらないどころか、期待でさらに熱を帯びていく。

 エクアルの耳元で悪魔のように、そして恋人のように甘く、ラビリアは囁いた。

 

「じゃあ……その夢を叶えてあげる。……たっぷり、可愛がってあげるからねー」

 

 そう言って彼女は懐から、滑らかなシルクの拘束用リボンを取り出した。その瞳には、深い愛情と嗜虐的な喜びが入り混じるように湛えられている。これから始まる甘い地獄へと誘い込むかのように。

 

 

※※※

 

 

 拠点の寝室に、午後の日差しが長く伸びていた。

 窓の外は穏やかな昼下がりだというのに、この部屋の中だけは異様な静けさと、甘く、そして重苦しい緊張感に支配されていた。先ほどまでの実験という名目のマッサージで火照らされた熱が冷めるどころか、これから始まる背徳的な行為への予感で、空気そのものが粘り気を帯びているようだ。

 

 部屋の中央に置かれた背もたれのある木製の椅子に、エクアルは拘束されていた。

 身につけていた白いブラウスと青いスカートは無惨にも脱がされ、床に散らばっている。今の彼女が身に纏っているのは、淡い水色の清楚な下着のみ。フリルのついたブラジャーとショーツが、彼女の白くなめらかな肌を際立たせ、その無防備さを残酷なほど強調していた。

 

 エクアルの両手首は頭上でまとめられ、椅子の背もたれの高い位置にしっかりと結びつけられている。二の腕が露わになり、脇も隠すことができず晒されている。リボンが食い込む手首の白さが、彼女の抵抗不能な状態を物語る。

 さらに、彼女の両足首は左右に大きく開かれ、それぞれ椅子の手すりに固定されていた。いわゆる恥ずかしい体勢で開脚させられているのだ。膝が曲げられ、太ももが大きく開かれたその体勢は、彼女の秘部を隠しようもなくラビリアの視線へと晒していた。下着の布地一枚隔てただけのそこは、羞恥と期待ですでにじんわりと湿り気を帯び始めている。

 

「どう? 動けないでしょ?」

 

 ラビリアが椅子に座らされ、自由を奪われたエクアルを見下ろしながら尋ねる。その声は楽しげで、実験動物を観察する科学者のように冷徹でありながら、幼馴染を愛でるようなねっとりとした熱っぽさも含んでいた。

 

「……うん」

 

 エクアルは顔を真っ赤にして小さく頷くことしかできない。逃げ場のない状況と、これからされることへの期待と不安で、心臓が早鐘のように激しく打ち鳴らされている。ドクン、ドクンという自身の鼓動が耳元でうるさいほどだ。

 彼女の潤んだ視線は、ラビリアの細い指先に釘付けとなり、乾いた喉でゴクリと唾を飲み込んだ。

 

 ラビリアはゆったりとした足取りでエクアルの背後に回り込むと、ひんやりとした指先で、エクアルの無防備な背中をツーっとなぞった。

 背筋を走る悪寒にも近い電流に、エクアルが「ひぅっ」と声を漏らしてビクリと背を反らす。ラビリアの指はそのままブラのホックへと掛かり、慣れた手つきでパチンと外した。

 拘束された腕が邪魔をしてブラは完全には脱げないが、ラビリアはそれをゆっくりと上へとずり上げ、エクアルの慎ましやかで美しい、形の良い胸を露わにした。

 

「……綺麗だねー」

 

 ラビリアは感嘆の声を漏らすと、背後から両手を回し、エクアルの胸を優しく包み込んだ。

 手のひら全体でその柔らかさを確かめるように転がし、指先で弾力を楽しむようにむにゅむにゅと揉みしだく。エクアルの肌は上気して熱を持っており、ラビリアの少し冷たい手が触れるたびに、その温度差が刺激となって彼女を震わせた。

 

 静寂の中、下着の衣擦れ音と、エクアルの口から漏れる「んっ……ふぅ……」という甘い吐息だけが響く。自分の胸が他人の手によって変形させられる感覚。恥ずかしいのに、身体の芯が疼いて仕方がない。

 

 ラビリアは十分な時間をかけて手で愛撫した後、懐から先ほどの実験で使用した「小型魔力振動機」を取り出し、再びスイッチを入れた。

 

「機械の味も、試してみる?」

 

 ヴヴヴ……と低く唸る機械の振動音が、エクアルの鼓膜を揺らす。ラビリアはその先端を、硬く尖り、充血して桜色に染まったエクアルの右胸の突起に押し当てた。

 

「ひゃぅっ!?」

 

 機械的な連続刺激に、エクアルが大きく身体を跳ねさせる。

 人間の指では再現できない微細で高速な振動が、敏感な突起を直接揺さぶり、神経を過敏にさせていく。ジジジジ……と身体の奥まで響く振動に、頭の中が白く霞む。

 さらにラビリアは、右を機械で責め立てながら、空いた左手の指先で左胸の突起をコリコリと摘み、転がした。

 

「あっ、ああっ! だめ、変な感じ……! 左右、ちがうの、やだぁっ!」

 

 異なる種類の刺激による挟み撃ち。機械の無機質な振動と、人の指の生々しい感触。その二つが同時に襲いかかり、エクアルの脳は処理が追いつかず、嬌声が高くなる。

 拘束された手足がリボンを張り詰めさせ、逃げようともがくたびに椅子がガタガタと音を立てて揺れた。だが、どれだけ暴れても固定された身体は逃げられず、与えられる快感を全て受け入れるしかない。

 

 エクアルがのけぞり、汗ばんだ首筋を晒して快感に震える様子を背後から眺め、ラビリアは満足げに口角を上げた。

 

(やっぱり、いじめ甲斐があるなー。こんなに感じちゃって……可愛い)

 

 胸への愛撫でエクアルの全身が桜色に染まり、呼吸が「はぁ、はぁ……」と荒くなった頃、ラビリアは機械を離した。

 

「じゃあ、そろそろこっちかなー」

 

 そう言って彼女はエクアルの前に回り込み、大きく開かれた脚の間にしゃがみ込んだ。

 ラビリアの手が、エクアルの淡い水色のショーツの縁にかかる。そのままゆっくりと、焦らすように中に手を滑り込ませると、彼女の指先はすでに愛液でじっとりと濡れ、熱を帯びた秘部に触れた。

 

「あ……」

 

 エクアルが息を呑む。熱を持った粘膜に冷たい指が触れる感覚。

 ラビリアは濡れた秘部に指を這わせ、ぬるりとした蜜を絡め取りながら、わざとらしく「くちゅ、くちゅ」と粘着質で卑猥な水音を立ててみせる。静寂な部屋に、濡れた音が反響し、エクアルの羞恥心を煽る。

 

「うわぁ……こんなに濡らして。エクアルってば、本当はえっちなんだねー」

「ち、ちが……っ! うぅ……」

 

 否定しようにも、指先に絡みついた証拠を見せられたエクアルは、涙目で顔を背けることしかできない。耳まで真っ赤に染まり、全身が小刻みに震えている。

 ラビリアはショーツを指で少しずらし、秘部を露わにすると機械の先端を、濡れそぼり、充血して赤く腫れた秘部の突起に直接あてがった。

 

「いくよー?」

 

 スイッチが入れられた瞬間、先ほどの肩や胸とは比較にならない強烈な快感が、エクアルの脳髄を直撃した。

 

「ああっ!! ひ、あぁっ!! んぐっ!!」

 

 エクアルは喉を反らせ、悲鳴のような嬌声を上げる。

 逃げようと腰を浮かせ、椅子の上で暴れるが、手すりに固定された足は動かず、振動から逃れることはできない。大きく開かれた開脚姿勢は、振動機をより深く、より的確に秘部に押し当てるための受け皿となっていた。

 ヴヴヴ……という機械の唸り声と共に、硬質な先端が敏感な突起を押し潰し、高速の振動を神経の芯まで叩き込む。

 

「逃げられないよー? 全部受け止めてねー」

 

 ラビリアは楽しそうに笑いながら、機械をぐりぐりと押し付ける。シリコンの感触と振動が混ざり合い、エクアルの思考を白く塗りつぶしていく。

 

「ら、ラビィ……! すご、い……! あ、あたま、おかしくなりゅぅ……!」

 

 拘束された興奮と、機械の無慈悲な振動。エクアルの理性が徐々に削り取られていく。彼女は椅子の上で白魚のようにビクビクと痙攣し、快感の波に翻弄され続けた。

 視界が明滅し、思考が快楽の泥沼に溶かされていく。秘部から溢れ出した愛液が太ももを伝い、椅子を濡らす。

 

「ひぅ、くぅ、んんっ!」

 

 漏れ出る声はもはや言葉にならず、ただ快感を訴える喘ぎとなっていた。

 やがて限界が訪れる。お腹の奥底から、熱い塊がせり上がってくる感覚。

 

「あ、ああっ! くる、きちゃう! イクッ、イクぅぅぅッ!!」

 

 エクアルの身体がビクンと大きく跳ね、足の爪先までピーンと硬直する。

 頭の中が真っ白に弾け飛び、目の前で火花が散るような衝撃。秘部の奥から新たな蜜がどろりと大量に溢れ出し、ラビリアの手と機械を汚しながら滴り落ちる。太ももが小刻みに震え、椅子ごとガタガタと揺らしながら、彼女は長い絶頂を迎えた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 数秒間の痙攣の後、完全に脱力し、椅子に沈み込んで荒い息をつくエクアル。汗ばんだ黒髪が額に張り付き、焦点の合わない瞳は潤んでいる。

 ラビリアは機械を止めて尋ねた。

 

「どうだった?」

「……気持ち、よかった……すごく……」

 

 エクアルはとろんとした目で、正直に答えた。快感の余韻で頭が痺れ、嘘をつく余裕などなかった。身体の芯がまだ熱く疼いている。

 

「ふふっ、素直でよろしい」

 

 ラビリアは機械をサイドテーブルに置くと、今度は小瓶に入った透明な液体と、どう見ても赤子用である極細の綿棒を取り出した。

 

「じゃあもっと、気持ちよくなろうかー」

 

 エクアルはそれを見て、本能的な危機感を覚える。背筋がぞくりとし、座っている椅子ごと後ろへ下がりたい衝動に駆られるが、固定された脚はそれを許さない。

 

「それ……なに?」

「これは『ローション』っていうんだー。滑りを良くする魔法の液体だよ」

 

 ラビリアはドロリとした液体を指に取り、エクアルの水色のショーツを完全にずらして、露わになった秘部全体にたっぷりと塗りたくった。ひんやりと冷たくてぬるぬるした感触が、熱を持った粘膜を覆い、空気に触れるだけで過敏さを煽る。

 ラビリアは綿棒の先にもローションをたっぷりと絡ませ、糸を引くほどとろとろにする。そして、エクアルの秘部の突起を指で優しく摘み、その包皮を親指と人差し指で剥いて、中の敏感な核を完全に露出させた。赤く充血し、外気に晒されたそこは、ほんの僅かな風圧にさえ震えるほどに敏感になりきっていた。

 

 その瞬間、エクアルの脳裏に、かつてラビリアに同じ場所を責められた時の甘くも恐ろしい記憶が鮮烈に蘇る。

 

「あっ……! ダメ! それ、ダメぇ!」

「ダメじゃないよー」

 

 エクアルの必死の拒絶など意に介さず、ラビリアは容赦なく、露出した敏感な突起と包皮の隙間、そのごくわずかな空隙に、ぬるりとした綿棒をゆっくりと滑り込ませた。

 

「んんんんぁっ!?」

 

 声にならない悲鳴が漏れる。柔らかな粘膜の間に異物が入り込んだ感覚に、エクアルの全身がビクンと強張る。ラビリアはにっこりと残酷な笑みを浮かべ、手首を捻って綿棒をくるくると回し始めた。

 

「あああっ!! ん、んんっ!! あぁん!!」

 

 直接神経を削られるような鋭利で強烈な快感が、脊髄を駆け上がり脳を灼く。指や機械の面的な振動とは違う、逃げ場のない点の刺激。それが最も敏感な粘膜の裏側を擦り上げる感覚は、快感を通り越して痛みに近いほどの衝撃だった。

 エクアルは狂ったように首を振り、涙を散らす。

 

「お願い、止めてぇ! 許してぇ!」

「私もこれ、刺激が強すぎるから滅多にやらないんだけど……今のエクアルは逃げられないからねー」

 

 ラビリアは小悪魔の顔で、綿棒をグリグリと回し、包皮の中を蹂躙する。繊細な粘膜を硬い綿棒が擦るたびに、エクアルの脳内で火花が散るようだ。

 拘束された手足のリボンがギチギチと悲鳴を上げるほど、エクアルは暴れるが、椅子に固定された腰は逃げ場を失い、ラビリアの責めを全て受け入れるしかない。

 

「あ゙あ゙あ゙っ! そこ、そこぉっ! おかしくなる、こわれるぅ!」

 

 腰が自分の意思とは関係なく跳ね、敏感な突起を包む皮が、入り込んだ綿棒に吸い付くように絡みつく。じゅちゅ、じゅちゅと、ローションと溢れ出した愛液の混ざり合う音が、綿棒の動きに合わせて卑猥に響き渡る。

 

「壊れないよー。ほら、もっと声聞かせて?」

 

 ラビリアは楽しげに回転速度を上げる。さらに奥へ、もっと敏感な包皮の深部へと綿棒を食い込ませる。

 

「やだ、むり、むりぃぃぃ!! あ、あ、あぁぁぁっ!! イクッ! イッちゃうううぅぅ!!」

 

 耐えきれず、エクアルは二度目の絶頂を迎えた。

 身体が弓なりに反り返り、拘束された手足がピンと張り詰める。白目を剥きかけるほどの衝撃が脳天を貫き、秘部の奥が激しく脈打って、パシャパシャと愛液の潮を吹き上げた。

 通常の精神状態ならば、ここで意識が途切れてもおかしくないほどの強烈な快感。だが、極上の快楽地獄はここで終わらなかった。

 

 絶頂の痙攣が続き、最も敏感になっているその瞬間を狙い澄ましたラビリアは残酷にも手を止めなかったのだ。それどころか、包皮の隙間をさらに蹂躙すべく、綿棒を優しく押し込んで、くるくると回した。

 

「ふふっ、まだやめないからねー。我慢だよー」

「うそ……!? やだやだやだ! もう無理ぃぃぃ!」

 

 絶頂直後の、神経が剥き出しになったかのような過敏な場所に、再び硬質な綿棒が這い回る。それはもはや快感を通り越して、脳髄をヤスリで削られるような拷問に近い刺激。

 ジュル、ジュルル……と、溢れ出した愛液とローションを綿棒によってかき混ぜる卑猥な音が、エクアルの鼓膜を内側から叩く。

 

「あひぃッ!? そんなに回しちゃ、やぁッ!」

 

 ラビリアは綿棒の角度を巧みに変えた。敏感な突起を覆う包皮の内側で突起の裏筋を執拗になぞり上げる。

 ザリザリとした綿の感触が、充血した粘膜を直接擦る。そのたびにエクアルの背骨に稲妻のような痺れが走り、彼女は魚のように椅子の上で跳ねた。逃げようと腰を浮かせれば、ラビリアはその動きに合わせて腕を追従させ、絶妙な手つきで逃さず責め立てる。

 

「そんなに感じてくれるなら、もっと綺麗にしてあげるねー」

 

 ラビリアの瞳が妖しく細められる。彼女は綿棒を包皮の袋小路に押し当てると、そこを支点にして円を描くようにクリクリと抉った。

 

「ひぐぅっ!? やめ、やめてぇぇ! イッたばっかりなのにぃぃ!! 頭とけちゃうぅぅ!」

 

 よだれが口端から銀色の糸を引いて垂れ、涙でぐしゃぐしゃになりながら、エクアルは狂ったように首を振る。

 だが、どれだけ拒絶の言葉を叫んでも、身体は正直だった。快感の波は止まるどころか、絶頂の余韻が引く間もなく、より大きな津波となって押し寄せてくる。下腹部が熱く煮えくり返り、秘部がキュウキュウと収縮するのが分かる。

 

「ふふっ、そんなにこれが気持ちいいんだねー」

「や、やぁ! 気持ぢよずぎて……あ゙ぁッ!」

 

 ラビリアは容赦なく、皮の中で敏感な突起を押しつぶすように動かしたり、激しく綿棒を出し入れしたり、回転させたりした。

 やがてエクアルの理性は敵わず、激しい音を立てて崩れ落ちる。

 

「こんなの……こんなの無理いぃぃぃ!! ん゛ん゛ん゛っ!!」

 

 エクアルは言葉にならない絶叫を上げ、獣のように喉を鳴らした。

 涙と涎、そして下の口からは愛液と潮を垂れ流しながら、彼女は三度目の絶頂へと叩き落とされた。

 

 理性が完全に吹き飛び、ただ快感に踊らされる肉人形と化して、椅子ごとガタガタと揺らしながら激しく痙攣し続ける。

 永遠にも思える三度目の絶頂の痙攣がようやく収まりかけた頃、ラビリアはようやく、ゆっくりと綿棒を抜いた。

 

 エクアルは椅子の上でぐったりと項垂れ、「はぁはぁ……ひゅぅ……」と過呼吸気味に息をしている。全身は汗でびっしょりと濡れ、瞳は潤みきって焦点が定まっておらず、虚空を見つめたままピクピクと瞬きを繰り返している。

 無防備に開かれたままの太ももは痙攣し、だらしなく口を開けた秘部からは、蜜がだらりと垂れ、床に小さな水たまりを作っていた。

 

「お願い……これ以上は、本当におかしくなっちゃう……やめて……」

 

 エクアルが潤んだ瞳で、弱々しく懇願する。その姿はラビリアの嗜虐心と庇護欲を同時に、そして強烈に掻き立てた。

 汗で張り付いた黒髪、涙でぐしゃぐしゃになった顔、そして自身の愛液とローションでべとべとになった秘部。普段の冷静な彼女からは想像もつかないその堕ちた姿は、ラビリアが求めていたものなのかもしれない。

 

 ラビリアは少し考える素振りを見せると、流石にこれ以上は可愛そうだと思ったのか、優しく微笑んだ。

 

「仕方ないなぁ……じゃあ、あと一回……気持ちよくなろっかー」

 

 そう優しく告げると、ラビリアはローションで濡れた指を、ゆっくりとエクアルの秘部の穴へと挿入した。

 ヌチュッ、という粘着質な音が響き、熱を持った肉壁が指を迎え入れる。

 

「……んっ」

 

 エクアルがびくりと震える。指ならまだ……と油断した隙に、ラビリアは内部の感触を探り、前回の「授業」で見つけた性感帯――内壁のザラザラとした部分を、指先でギュッと押し込んだ。

 

「ひゃうっ!?」

 

 内側からの重い衝撃に、エクアルの腰が浮く。だが、それは序章に過ぎなかった。

 ラビリアは空いているもう片方の手で、あの恐ろしい極細の綿棒を持ち直していたのだ。

 

 彼女はエクアルの秘部の突起を覆う皮を指で広げると、露出した過敏な粘膜と皮の狭い隙間に、再び綿棒を滑り込ませた。そして、容赦なく回転させ始めた。

 

「あ、ああっ!? うそ、同時に……!?」

 

 内側からは指による重く鈍い圧迫感が、外側からは綿棒による鋭く尖った擦過感が。質の異なる二つの波が同時に、しかも最大出力で襲いかかり、エクアルの脳内を焼き尽くす。

 

「やだやだっ!! 許して、ゆるしてぇっ!!」

 

 エクアルは子供のように泣き叫び、必死に腰を振って逃れようとする。だが、椅子に固定された太ももは逃げ場を許さず、むしろ動くたびにラビリアの指と綿棒をより深くへと招き入れてしまう。

 ラビリアは執拗だった。指で内壁の急所を抉りながら、綿棒で包皮の内側を削るように擦り上げる。硬い綿の繊維が充血した粘膜を直接刺激する感触は、脳髄を溶かす毒のようだった。

 

「ひぃぃッ! そこ、そこぉ! 動かさないでぇぇ!」

 

 エクアルの首がガクガクと折れそうなほど激しく振られ、黒い髪が汗と共に飛び散ちり、口からは大量の涎が糸を引いて垂れ落ちた。内と外、両方からの絶え間ない刺激に、彼女の理性は再び消し炭となって吹き飛んだ。

 

「あ、くる……! おっきいの、きちゃう!! あ゙あ゙あ゙っ!! イッ、イグゥゥッ!!」

 

 エクアルは全身を弓なりに反らせ、足の指先までピンと伸ばして硬直した。

 秘部の奥底からマグマのような熱い奔流が込み上げ、子宮が激しく収縮する。激しい痙攣と共に、秘部からパシャリ、パシャリと大量の潮を吹き上げながら、彼女は四度目にして最大の、魂ごと持っていかれるような絶頂を迎えた。

 

 視界が真っ白に弾け飛び、意識が飛びそうになるほどの快楽の彼方へ吹き飛ばされる。

 椅子ごとガタガタと激しく揺らしながら、彼女は長く、あまりにも深い絶頂の余韻に浸り続け、その口からは「あぁー……うぅー……」という、壊れたような喘ぎ声だけが漏れ続けた。

 

 全てが終わった後、ラビリアはようやく満足して指と綿棒を抜き、拘束のリボンを解いた。

 支えを失ったエクアルは、椅子から崩れ落ちるようにカーペットの上に倒れ込み、ピクピクと痙攣しながら放心している。焦点の定まらない瞳で天井を見つめ、口元はだらしなく緩み、舌先がわずかに覗いている。秘部からは白濁した液と愛液の混ざり合ったものが溢れ出し、太ももを伝って床を濡らしていた。

 

 ラビリアはそんなエクアルの頭を、愛おしそうに優しく撫でた。

 

「夢は叶った?」

 

 その問いかけに、エクアルはすぐには答えられなかった。

 荒い呼吸を繰り返すたびに、胸が大きく上下し、汗ばんだ肌がカーペットに擦れる。視界はまだ快感の涙で滲んでおり、世界がゆらゆらと頼りなく揺れていた。

 身体の芯、特に執拗に責め立てられた秘部の奥が、ドクンドクンと熱い脈動を続けている。その疼きは、苦痛ではなく、脳髄を溶かすような甘美な痺れとして全身に広がっていた。指先一本動かす気力も残っていないが、その無力感さえもが心地よい。

 

「……っ、はぁ……。これは……流石に……やり過ぎ、よ……」

 

 しばらくして、エクアルはようやく掠れた声で恨み言を紡いだ。だが、その表情には拒絶の色など微塵もない。とろんと潤んだ瞳、だらしなく緩んだ口元、そして上気した頬は、彼女が与えられた快楽で心身ともに満たされ、蕩けきっていることを雄弁に物語っていた。

 

「ふふっ。でもね、まだ実験したい道具があるんだよねー」

 

 悪戯っぽく言い放つと、ラビリアは再び、道具箱をガサゴソと漁り始めた。

 

「えっ……!?」

 

 エクアルの顔からサーッと血の気が引く。まだやるのかと、ブンブンと首を振って拒絶するが、身体は鉛のように重く、逃げることすらままならない。

 ラビリアが「あれー?」と言いながら箱の中身を探っていると、ふと、その華奢な肩に、ガシッと力強い何者かの手が置かれた。

 

 

 

「……なんか面白そうなことやってんな、私も混ぜてくれよ」

 

 

 

 ドスの効いた、しかし底抜けに明るく、そしてどこか獰猛な響きを含んだ声。

 ラビリアが油の切れた人形のように恐るおそる首を回すと、そこには満面の笑みを浮かべ、額に青筋を立てたアキシャが仁王立ちしていた。

 握りしめられた拳からバキバキと関節の鳴る音が聞こえ、その全身からはラビリアですら竦み上がってしまうような凄まじいプレッシャーが立ち昇っている。

 

「あ……あわわ……」

 

 最も帰ってきてほしくないタイミングで帰宅してきたアキシャの手前、ラビリアの顔が引きつる。

 

「ア、ア、アキシャ……帰ってたの……? どうかしたー?」

「ん? お前にお仕置きをしに来た」

 

 アキシャは笑顔を崩さず、無言の圧力を放ちながら一歩踏み出した。

 

「エクアルばっかりズルいだろ? ……今度は、お前の番だ」

 

 その言葉の意味を悟った瞬間、ラビリアの顔色が徐々に青ざめていく。

 

「えっ、ちょ、アキシャ!? それは聞いてな――」

「問答無用だ! 覚悟しやがれ!」

 

 アキシャが逃げようとするラビリアに飛びかかり、その身体をベッドへと押し倒した。部屋にラビリアの助けを求める悲鳴と、アキシャの楽しげな笑い声が響き渡る。

 その騒がしくも幸せな光景を、カーペットに転がったままのエクアルはぼんやりと眺めて「もう……バカ……」と愛おしそうに呟きながら、深い安らぎと眠りへと落ちていくのだった。

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