※この作品はR-18です。

The Sky Blessing ~R-18 Edition~   作:ella_coat

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狩る兎は、狩られる

 ラビリアは、天井の丈夫な梁から吊り下げられた両腕の拘束に逆らうことなく、ただぴたりと息を呑む。逃げ場のない甘い絶望が、背筋をぞくぞくと這い上がっていくのを感じながら、彼女はギュッと固くピンク色の瞳を閉じた。

 

 静寂に包まれた交易島の拠点。窓の外からはもはや島民の生活音は一切聞こえず、夜の冷たい空気が密やかに世界を覆い尽くしている。寝室の中を支配しているのは、微かに揺らめくオレンジ色のランプの光と、ラビリア自身の早鐘のように打ち鳴らされる心臓の鼓動、そして、背後にぴったりと張り付いているアキシャの少し荒くなった呼吸音だけだった。

 

 リビングに設けられた簡易ベッドでは、先刻までの狂おしい快楽の余韻に身を委ねたエクアルが深い眠りについているはずだ。その事実が、ラビリアの心に奇妙な重圧と緊張感をもたらしていた。

 もしここで自分が情けない大声を上げてしまえば、彼女の安らかな微睡みを邪魔してしまうかもしれない。その無意識の配慮が、ラビリアの喉に目に見えない蓋をし、これから与えられるであろう快感を内側にぎゅっと濃縮させていく原因となることを、彼女自身も薄々と予感していた。

 

 相変わらず、ラビリアの手首は布製のロープで拘束されており、天井の丈夫な梁から吊り下げられたまま。

 ただ、ラビリアの胸を覆っていた、彼女の手作りである艶やかな黒いレースの下着は、アキシャの手によって、すでに完全に剥ぎ取られてしまっていた。どこか遠くへと投げ捨てられたであろうその布地の不在が、夜のひんやりとした空気を直接肌に触れさせ、彼女の透き通るような白い素肌がいかに無防備な状態に晒されているかを残酷なまでに突きつけてくる。

 ほぼ位置を固定されてしまっている腕のせいで、二つの柔らかな膨らみは不自然なまでに前へと張り出し、その先端で外気に晒されて硬く引き締まっている薄紅色の突起が、今か今かと次の刺激を待ちわびて微かに身震いしていた。

 

 ふと、背後から再びアキシャのしなやかで力強い腕が回り込み、ラビリアの華奢な身体をすっぽりと包み込んだ。

 背中に押し当てられるアキシャの柔らかな胸の感触と、レクシエルとの死闘で負った傷を覆う包帯の少しざらついた感触。そして、何よりも圧倒的なまでの命の熱量が、ラビリアの冷え切った肌にじんわりと流れ込んでくる。

 視界の端、ベッドサイドの小さなテーブルの上には、精巧なガラス細工の砂時計が置かれている。深い紺色を基調とした砂の中に金や銀の微小な粒子が散りばめられたその幻想的な星空の砂は、まだ上のガラス球にたっぷりと残ったままであり、下の球にはほんの五分の一程度しか降り積もっていなかった。

 さらさらと、極めて微細な音を立てて落ちていくその砂の煌めきは、この途方もなく甘く、そして恐ろしい「お仕置き」の時間が、まだほんの序章に過ぎないことを無言で告げている。

 

 アキシャの両手が、再びラビリアの無防備な胸の膨らみへと這い上がってきた。

 先程までの愛撫で塗り広げられたローションの粘り気がまだ肌に残っており、アキシャの手のひらが触れた瞬間、ちゅるりという生々しい水音が静かな寝室に微かに響き渡る。

 

 アキシャの手つきには、普段の前線で巨大な大剣を豪快に振り回す戦士としての姿からは想像もつかないほどの、繊細さと的確さがあった。まるで、どこをどう触れればラビリアの身体が最も心地よく反応するのかを熟知しているかのような恐ろしさが、そこにはあった。

 揉みほぐされるたびに、ラビリアの下腹部の奥底で、キュンと締め付けられるような甘い疼きが生まれる。ただゆっくりと……胸を揉まれているだけだというのに。

 

「んっ……ふぁ……」

 

 ラビリアの口から、意志に反してとろけたような甘い嬌声が漏れ落ちた。

 アキシャの指先が、胸の柔らかな曲面を滑り、時には先端の硬い突起を指と指の間で挟み込むようにして軽く押しつぶす。かと思えば、指の腹でピンと張り詰めたそれを弾くようにして刺激し、またすぐに周囲の柔らかな肉を揉む動作へと戻っていく。

 予測のつかない不規則な刺激の連続に、ラビリアの神経は限界まで研ぎ澄まされ、快感の波が寄せては返すたびに、頭の芯がじんわりと白く痺れていく。

 

 先程、アキシャに力強く抱きしめられ、互いの体温を確かめ合うようなキスを交わしたことで、ラビリアの心の中にあった僅かな抵抗感すらも完全に溶け去ってしまっていた。しかし、その変な休憩を挟んでしまったせいか、あるいは快楽の頂点へと至れなかったせいか、ラビリアは依然として言葉に表せないもどかしさを、じわじわと味わう羽目になっていた。

 激しく貪られるような暴力的な責めではない。ただひたすらに優しく、的確に、ラビリアの敏感な部分を見つけ出し、そこへ熱を注ぎ込み続けるような愛撫。だからこそ、身体の奥深くに熱い快感が澱のように蓄積されていき、逃げ場のない拘束状態の中で、それが飽和していくのをしみじみと感じるしかなかった。

 普段は頭上でピンと張っている白いウサ耳も、今は完全に力を失い、ラビリアの感情の緩みを示すように、へにゃっと力なく倒れ伏している。聴覚だけが過敏になり、背後で微かに上がるアキシャの吐息や、自分の肌の上を滑るローションの摩擦音を、直接脳内に響かせるかのように拾い上げていた。

 

「ラビリアはその……なんか好きな責められ方とか、そういうのあるのか?」

 

 不意に、耳元でアキシャの少し掠れた、それでいて純粋な好奇心に満ちた声が囁かれた。

 その言葉は、相手を気遣う思いやりであると同時に、これからの責めの方針を決定するための恐ろしい尋問でもあった。アキシャの吐息が首筋をくすぐり、ラビリアは背筋をゾクッと震わせる。

 

 頭の片隅で、ラビリアは必死に冷静な思考を繋ぎ止めようとした。

 アキシャの手つきは、想像を絶するほどに上手い。もしここで自分の「弱点」を素直に伝えてしまえば、あの砂時計の砂が全て落ちきる頃には、自分は本当の意味で自我を失い、あられもない姿で快楽の底に沈められているに違いない。普段、あまり感情を表に出さず、独特なペースで他者を翻弄するラビリアにとって、快楽に完全に溺れきった無様な自分を晒すことは、例えその対象がアキシャであったとしても、あまりにも恥ずかしく、恐ろしいことだった。

 

「恥ずかしいから内緒ー……」

 

 ラビリアは潤んだピンク色の瞳を伏せ、少しだけ強がるようにして、直接的な答えを避けた。

 その言葉には、必死に自分の理性を保とうとする最後の防波堤のような意地が含まれていたが、震える声色がすでに彼女の余裕のなさを雄弁に物語ってしまっている。

 アキシャは、そんなラビリアの強がりを聞いて、喉を鳴らしながら楽しげな笑い声を漏らした。

 

「素直になっても……いいと思うんだけどなぁ」

 

 背中越しに伝わってくるアキシャの言葉は、普段のガサツで男勝りな口調のままでありながら、どこか甘く、ラビリアの心の奥底を溶かそうとするような熱を帯びていた。

 そして、アキシャの手は一切の躊躇いを見せることなく、ラビリアの胸を揉みしだき続ける。ちゅちゅっ、という水音が激しさを増し、ラビリアの息遣いも次第に荒くなっていく。

 

「折角だし、色々と試してみるか」

 

 アキシャがポツリと呟いたその言葉に、ラビリアの心臓がドクンと大きく跳ね上がった。少なからず嫌な予感がラビリアの背筋を駆け抜けたが、吊り下げられた腕では抵抗のしようもない。

 

(大丈夫、リラックスー……)

 

 心のなかでラビリアは自分自身に必死に言い聞かせ、呼吸を深くして流れに身を任せることにした。しかし、隠しきれない心拍数の上昇が、胸の奥で激しく打ち鳴らされる太鼓のように響き、彼女の緊張を余すところなく伝えてしまっていた。

 アキシャの片手が胸から離れ、ベッドサイドへと伸びる気配がした。カチャリと、ガラスの小瓶が擦れる微かな音が響く。

 再びラビリアの肌に戻ってきたアキシャの指先は、先程よりもずっと冷たく、そしてたっぷりのローションでひたひたに濡れそぼっていた。

 

「ひぅ……っ」

 

 その冷たい液体が、熱を持ちきった胸の膨らみに触れた瞬間、ラビリアの身体がビクリと小さく跳ねる。

 アキシャは、そのぬるぬるとした粘り気を利用して、ラビリアの先端で硬く尖りきっている薄紅色の乳首を、親指と人差し指の腹で優しく、しかし確かな圧をかけて摘み上げた。

 そして、そのまま根本から先端へ、先端から根本へと、ゆっくりと滑らせるようにして上下に動かし始めたのだ。

 それはただ指先で弾かれたり、乾いた肌を擦られたりするのとは全く次元の違う刺激だった。ローションによる滑らかで摩擦のない感触が、乳首の敏感な神経を直接撫で上げ、凄まじいまでの気持ちよさが脳髄を直撃する。

 すでにこれまでの焦らしと愛撫によって、痛いほどに感度が高まっているというのに……そこへもたらされた、ぬるぬると滑る指の感触は、ラビリアの理性を根っこから揺さぶる破壊力を持っていた。

 

「んっ……あぅ……っ」

 

 気持ちよすぎて、思わずとろけたような甘い嬌声が喉の奥から這い上がってくる。

 ラビリアは、下品な自分をアキシャに見られたくないという羞恥心から、必死に唇をキュッと固く噛み締め、漏れ出そうになる声を喉の奥へと押し殺した。

 しかし、アキシャの指の動きは止まらない。上下に滑らせる速度が少しずつ上がり、乳首が引き伸ばされては戻るたびに、下腹部の奥底から熱い快感の火花が散り、それが全身の血管を駆け巡って手足の指先まで、痺れさせていく。

 アキシャは、ラビリアの反応を背中越しに感じ取りながら、さらに責め手を変えていく。

 上下の動きをピタリと止めると、今度はローションで濡れた人差し指の腹を使って、乳首の頭頂部をトントン、トントンとリズミカルに軽く突き始めた。

 

「んぅっ……!」

 

 微弱だが連続した刺激が、硬い先端から胸の奥深くへと響き渡る。

 さらにアキシャは、その指先で頭頂部を中心にして、くるくると小さな円を描くように滑らせ始めた。滑らかなローションが、微かな粘着音を立てながら、最も敏感な部分を執拗に蹂躙し続ける。

 

「んー……」

 

 背後で、アキシャが真剣に悩むような、低い唸り声を上げた。

 その声色には、決してふざけている様子はなく、どうすればラビリアがもっと強い快感を得られるのか、どこをどう刺激すればその強がりの仮面を剥ぎ取ることができるのかを、本気で模索している熱意がこもっていた。ラビリアを本気で気持ちよくさせたいという深い愛情と、彼女を自分の手でとろけさせたいという嗜虐心が入り交じった、アキシャの不器用な情熱。

 そんなアキシャの熱意に対して、ラビリアは内心で自分の淫らな姿を見られるのではないかという羞恥心と、このまま彼女の指先に身を任せ続けていれば、自分でも知らない快楽の深淵へと連れて行ってもらえるのではないかという強烈な好奇心が、ぐるぐると渦巻いて激しく衝突し合っていた。

 快感に身をよじり、拘束された腕を軋ませながら、ラビリアが悶々とした思考の迷路に囚われていると、不意にアキシャの指の動きが止まった。

 

「そう言えば……」

 

 アキシャが、何かを閃いたかのように小さく呟く。

 次の瞬間、アキシャは人差し指の腹で撫でるのをやめ、指先をくいっと曲げて、その適度に手入れされた爪の先を、硬く尖った乳首の側面の薄い皮膚へと意図的に立てた。

 そして、ローションのぬるぬるとした滑りを利用しつつ、カリッと一回だけ、適度な力加減で引っ掻くように刺激したのだ。

 

「あぅ…………っ!?」

 

 予想だにしなかった鋭い快感の電撃が、乳首から脊髄を一直線に駆け抜け、ラビリアの口から隠しきれない甲高い声が弾け飛んだ。

 決して痛いわけではなかった。だが、爪先という点に凝縮された刺激が、過敏になりきった皮膚を掠めた瞬間の、その脳が焼き切れるような凄まじい快感。それを受けたラビリアの身体はビクッと大きく跳ね上がり、吊り下げられたロープがギシッと悲鳴を上げた。

 

 しまった……と思った頃には、時すでに遅し。

 

 完全に虚を突かれ、素の反応を引き出されてしまったラビリアの背後で、アキシャが獰猛な笑みを深める気配がはっきりと伝わってきた。

 

「おっ……当たりか?」

 

 勝利を確信したようなアキシャの低い声。

 その言葉を合図にするかのように、アキシャは無駄のない動きで、ラビリアの乳首の側面を爪先でカリカリ、カリカリと、様々な角度から連続して刺激し始めたのだ。

 ローションの滑りがあるため、皮膚が傷つくことは決してない。ただひたすらに、神経の最も敏感な部分だけを、爪の硬質な感触が擦り上げていく。

 

(やば……これ、すごい……っ)

 

 ラビリアは内心で悲鳴を上げながら、必死に口を閉じようと唇を噛み締めた。

 しかし、左右の乳首に対して、不規則なリズムと角度で加えられるカリカリという鋭利な刺激の連続に、彼女の理性の堤防は瞬く間に決壊していく。

 頭の芯が真っ白に明滅し、視界の端でランプの光がチカチカと点滅する。下腹部の奥で燻っていた熱が、一気に沸点へと近づいていき、それが全身の筋肉を痙攣させるような快楽の奔流となって溢れ出そうとしていた。

 

「あぁっ……! んっ、くぅ……っ!」

 

 我慢しようとすればするほど、漏れ出す嬌声は甘く、そして乱れたものになっていく。

 呼吸は浅く激しくなり、胸が大きく上下するたびに、アキシャの爪先がさらに深く皮膚に食い込むような錯覚に陥り、快感が倍増していく。

 

「ちょっ……アキシャ、ストップ……っ!」

 

 耐えきれなくなったラビリアは、涙声になりながら、拘束された両腕をよじって必死に懇願の言葉を絞り出した。

 このままこの鋭い刺激を与えられ続ければ、本当におかしくなってしまう。自分の意志とは無関係に、ただ快楽だけを貪る兎に成り下がってしまうという根源的な恐怖が、警笛を鳴らす。

 しかし、背後のアキシャは、そんなラビリアの悲痛な叫びを、涼しげな声で一蹴した。

 

「お仕置きだから駄目だ」

 

 冷酷なまでの宣告。

 アキシャの指の動きは、少しの淀みも見せることなく、むしろさらにリズムを速めてラビリアの乳首をカリカリと削るように責め続ける。

 味わったこともない、脳が溶け出すような凄まじい気持ちよさに、ラビリアの身体はビクビクと小刻みに震え続けている。逃げ出したいという本能と、もっとこの快感に溺れていたいという矛盾した欲望が激しくせめぎ合い、彼女の思考をドロドロの泥沼へと引きずり込んでいく。

 まだ胸しか責められていないというのに、下半身の奥底からは、じわりじわりと自身の生み出した熱い蜜が溢れ出し、下着をぐちょぐちょに濡らしているのをラビリア自身も自覚し始めていた。はっきり言って、このままのペースで責められ続ければ……どうなってしまうか、想像に難くない。

 

「気持ちよさそうで、良かったよかった」

 

 背後から投げかけられた、アキシャのどこか楽しげで、余裕に満ちた軽口。

 ラビリアは視界を滲ませる生理的な涙を瞬きで散らしながら、精一杯の虚勢を張って恨み言を口にした。

 

「私は……全然、良くないんだけどなー……っ!」

 

 語尾が震え、嗚咽のように途切れてしまう。

 背中を向けた状態のラビリアからは、アキシャが今どんな表情をしてその言葉を吐いているのか、確認する術はなかった。声色からしか推測できないその状況が、アキシャという存在の底知れなさを強調し、ラビリアの不安と興奮をさらに煽り立てる。

 虚勢を張ったラビリアの言葉を聞いて、アキシャの責め手がさらに一段階、恐ろしい領域へと踏み込んだ。

 アキシャは、カリカリと側面を刺激していた指の動きを変え、今度は二、三本の指の爪を同時に立てた状態で、硬く尖った乳首を根本からギュッと摘み上げたのだ。

 そして、ローションの滑りを利用しながら、爪先を立てたままの状態で、根本から頭頂部へ、頭頂部から根本へと、しごき上げるようにして激しく上下に動かし始めた。

 

「ふにゅっ……!? あぁぁっ……!」

 

 今までの刺激のすべてを内包し、さらに増幅させたような暴力的なまでの快感が、ラビリアの全身を雷のように貫いた。

 爪先が皮膚を擦る感触、根本から引き抜かれるような圧迫感、そして頭頂部を掠める時の脳が弾けるような鋭い痺れ。そのすべてが同時に押し寄せ、ラビリアの思考回路をショートさせにかかる。

 最初のうちは、なんとか口を閉じて我慢しようとしていたラビリアだったが、もはやそんな無駄な抵抗は意味を成さなかった。

 

「ああっ! うぅんっ、アキシャ……っ、すご、これぇ……っ!」

 

 何度も短く、しゃくり上げるように喘ぎながら、ラビリアの身体はベッドの上で反り返りそうになる。

 吊り下げられた両腕が限界まで引き伸ばされ、手首のロープが皮膚に食い込む痛みすらも、すべてが快楽のスパイスとなって彼女を狂わせていく。

 徐々に、しかし確実に、身体の奥底に溜まっていた熱い快楽の塊が、限界のラインを超えて弾け飛ぼうと膨張していくのが分かった。

 息が詰まり、視界が真っ白に染まりかける。足の指先がギュッと丸まり、全身の筋肉が硬直していく。

 

(く……くるっ、イッちゃう……っ!!)

 

 ラビリアは、訪れるであろう爆発的な絶頂の波を迎え入れるため、無意識のうちにキュッと身体の奥に力を込めた。

 

 ――その、まさに完璧なタイミングだった。

 

 パッ、と。

 今までラビリアの乳首を激しく責め立てていたアキシャの指が、嘘のように一瞬にして離れたのだ。

 肌から急激に温度が奪われ、ローションの冷たい感覚だけが取り残される。

 頂点へと手をかけようとしていた快楽の波が、行き場を失って空中で凍りつき、そのままガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。

 

「…………えっ?」

 

 ラビリアの口から、間の抜けた、かすれた声が漏れた。

 急激な刺激の喪失。ようやく訪れるはずだった解放が、最も残酷な形でお預けにされたのだ。

 全身の力が抜け、ラビリアは肩で大きく息をしながら、ベッドの上にへたり込むようにして脱力した。

 責めが終わったことへの安堵感は、確かにあった。しかしそれ以上に、折角達することができそうだったのに、その手前で梯子を外されたことへの強烈なもどかしさと、内側にくすぶったままの熱い喪失感が、彼女の心をドロドロに掻き乱していた。

 呼吸を整えようと深く息を吸い込むが、胸の奥で燻り続ける快感の残滓が、神経をチリチリと逆撫でして落ち着かせてくれない。

 寸止めされたことへのもやもやとした焦燥感。そして、こんなにもイきたいと、快楽を求めてしまっている自分自身の淫らさに対する強烈な羞恥心がこみ上げ、ラビリアの白い頬と、へにゃっと倒れたウサ耳の根元までが、沸騰したように真っ赤に紅潮していく。

 

 ふと、ベッドのマットレスが軋む音がして、背後にいたアキシャの気配が動いた。

 アキシャは、ラビリアの背中から離れると、ゆっくりと彼女の側面を回り込み、正面へと移動してきた。

 そして、少し上体を屈めるようにして、荒い息を吐きながら俯いているラビリアの顔を下から覗き込んできた。

 

「どうだった?」

 

 その声は、先程までの余裕ぶった軽口とは少し違い、どこかラビリアの反応を本気で伺うような、真剣さと期待が入り交じった色を帯びていた。

 ラビリアは、羞恥心から思わず視線を逸らし、乱れた自分の表情を隠そうと顔を背けた。

 しかし、アキシャはそれを許さなかった。彼女は敢えてラビリアが顔を背けた方向へと自分の顔を動かし、逃げ場を塞ぐようにして視界の真正面へと入り込んでくる。

 そして琥珀色の双眸を輝かせ、白い歯を見せて、太陽のように明るく、ニカッと笑ってみせたのだ。

 その底抜けに明るく、自分の欲望にも相手の反応にも真っ直ぐな笑顔を見せられては、ラビリアの中にあった意地や反抗心も、すべて毒気を抜かれてしまう。

 

「アキシャの意地悪…………」

 

 ラビリアは、ボソッと恨み言のように呟くと、観念したようにゆっくりと目を閉じ、少しだけ口をすぼめてみせた。

 それは責められたことへの抗議でありながら、同時に宙ぶらりんになったままの熱を鎮めるための、そしてアキシャの愛情を確かめるための、無言のキスのねだりでもあった。

 アキシャは、そんなラビリアの不器用な甘えを受け止めるように、喉の奥で優しく笑うと温かい唇を、ラビリアのすぼめられた唇へと、ゆっくりと重ね合わせた。

 

※※※

 

 互いの熱を貪り合うような、それでいてどこまでも優しい口付け。

 名残惜しそうに唇が離れると、二人の間に生まれた微かな銀色の糸が、ランプの淡い光を反射してキラリと瞬き、そしてふつりと切れて空中に溶けていった。

 

 アキシャは、ラビリアの唇から自らの顔をゆっくりと遠ざけると、少しだけ荒くなった呼吸を整えるように小さく息を吐き、自らの口元を手の甲で無造作に拭った。二人の熱が混じり合った証である水気を拭い去るその何気ない仕草すらも、今のラビリアの目には酷く色っぽく映ってしまう。

 そして、ラビリアの両脚の間に陣取ったアキシャは、ベッドの上で膝立ちになりながら、その琥珀色の瞳で真っ直ぐにラビリアの姿を見つめてきているのだ。

 オレンジ色のランプの光が、アキシャの少しだけ汗ばんだ肌と、熱を帯びて赤く染まった頬を柔らかく照らし出している。獲物を前にした肉食獣のような不敵な笑みと、年相応の少女らしい不器用なはにかみが入り交じったその表情が、ラビリアの視界の中心にはっきりと捉えられていた。

 

 暫くの間、アキシャは見惚れていたかのようにラビリアの顔をジッと見つめた後、その視線をゆっくりと下半身へと向けて、少しだけ照れくさそうに微笑んだ。

 

「そろそろ、下行くか?」

 

 その言葉は、確認を求めるような優しい響きを持っていたが、同時に逃げ場のない宣告でもあった。

 ラビリアは、天井の丈夫な梁から吊り下げられた両腕の拘束に逆らうようにして、わずかに手首を引いてみるが、布製のロープが軋むだけで、身体を隠すことはできない。ベッドの上に投げ出された両脚を、落ち着きなくもじもじとすり合わせる。

 これからアキシャの手が触れようとしている場所。そこを覆っている黒い下着は、すでにラビリア自身の生み出した熱い蜜によってじっとりと湿り気を帯びてしまっているのだ。自分がどれほどまでに淫らな状態に陥っているのかを、アキシャの目の前に晒さなければならないという事実に、ラビリアの心は激しい羞恥と躊躇いに揺れ動く。

 しかし、アキシャの真っ直ぐな眼差しに見つめられていると、拒絶の言葉を紡ぐことなどできはしなかった。

 

「うん……分かった、いいよー……」

 

 ラビリアは、消え入るような小さな声でそう呟くと、ぎゅっと固くピンク色の瞳を閉じて、小さく頷いた。

 その承諾の言葉を聞き届けると、アキシャの少し荒れた温かい両手が、ラビリアの膝の辺りにそっと触れた。

 肌と肌が触れ合った瞬間に伝わってくる、アキシャの確かな体温。その温もりが、ラビリアの冷え切った素肌にじんわりと染み渡っていく。アキシャの手は、決して強引にこじ開けるようなことはせず、あくまでラビリアのペースに合わせるように、ゆっくりと、優しく外側へと力を加えていく。

 

 ラビリアは、アキシャの手の動きに導かれるまま、抵抗したい気持ちを必死に抑え込みながら、自らの意思で少しずつ両脚を開いていった。

 その動きに伴って、ラビリアが身につけている灰色のミニスカートが、さらりと音を立ててめくりあがっていく。布地が太ももの上を滑り落ちる感覚と共に、今までスカートの裾によって辛うじて隠されていた、ラビリアの秘部を覆う黒い下着が、ついにランプの光の下へと完全に顕になった。

 

 それは、ラビリアが密かにこだわりを持って手作りした、大人びた艶やかな黒を基調とする下着だった。

 まるで夜空の最も深い部分を切り取って、そのまま縫い付けたかのような深い色合いの布地。サイドには細いリボンが可憐に結ばれており、縁を彩るごくごく細やかなレースが、ラビリアの透き通るような白い肌との鮮烈なコントラストを描き出している。

 ラビリアの内に秘められた女の子らしさと、彼女が常に追い求めている「ロマン」の具現とも言える、複雑で美しいデザイン。しかし今、その布地は本来の美しさだけを保っているわけではなかった。

 最も布地が集中している中心部分は、布が本来持っている乾いた質感とは明らかに異なり、水分を含んで僅かに色を濃く変えている。じっとりとした湿り気が、光の加減によって微かな艶を放ち、ラビリアがすでにどれほどの熱を孕んでいるのかを、残酷なまでに物語っていた。

 

 ラビリアの下着が完全に顕になった瞬間、アキシャの動きがピタリと止まった。

 彼女は息を呑み、目を丸くして、目の前に広がる光景にただただ見入っていた。琥珀色の瞳が黒いレースの精緻な模様と、湿り気を帯びた布地、そしてそこから伸びるしなやかな白い太もものラインを、一つ残らず網膜に焼き付けようとするかのように、じっと固定されている。

 普段から同じ拠点で生活を共にし、着替えや入浴の際にも互いの下着姿を目にする機会は幾らでもあったはずだ。しかし、薄暗いランプの光に照らされた寝室という閉鎖的な空間で拘束され、自分にすべてを委ねて脚を開いているラビリアの姿は、アキシャの動きを止めてしまうほど魅力的だったのだろう。

 

 アキシャが言葉を失ったまま見つめ続けることで、寝室の中にはどこか気まずくも、甘く濃厚な静寂が流れ始める。

 ただでさえ自分の濡れた下着を見られているというだけで死にそうなくらい恥ずかしいのに、こうして無言のまま穴が開くほど見つめられ続けては、ラビリアの理性が耐えられるはずもなかった。

 ラビリアは、沸騰したように顔を真っ赤に染め上げると、上目遣いでアキシャを睨みつけ、震える声で抗議の言葉を口にした。

 

「ジッと見過ぎだよー…………」

 

 消え入るような、それでいて涙ぐんだようなその声を聞いて、アキシャはハッと我に返ったように肩をビクッと跳ねさせた。

 アキシャの顔にも、みるみるうちに朱が差していく。自分が無遠慮にじろじろと見過ぎてしまったことへの罪悪感と、どうしようもない照れ隠しが、彼女の表情を忙しなく変化させる。

 

「あーもう! これはこれで我慢ならねぇ!」

 

 アキシャは突然大きな声を上げると、自らが身に纏っていた白いブラウスの胸元に手を掛けた。

 そして、流れるような手つきでボタンを次々と外し、ブラウスを乱雑に脱ぎ捨てると、ベッドの床へと放り投げた。さらに彼女は躊躇うことなく腰に手を伸ばし、トレードマークである赤色のショートパンツのベルトを引き抜き、そのままショートパンツごと一気に脱ぎ捨ててしまったのだ。

 バサリ、という衣擦れの音が響いた後、アキシャは純白の下着だけの姿となって、再びラビリアの前に膝立ちになった。

 装飾の少ない、シンプルな純白のコットン地。それが、日々の厳しい鍛錬によって培われたアキシャの健康的な太ももや、引き締まった腹部の美しいラインを、隠すことなく晒し出している。

 アキシャは、少しだけ頬を引きつらせながら、両手を腰に当てて、胸を張ってみせた。

 

「こ、これでおあいこだ! いいな!?」

 

 真っ赤な顔で、よく分からない理論を堂々と並べ立てるアキシャ。

 ラビリアだけが服を脱がされて無防備な姿を晒しているという不公平感を、自分も同じように脱ぐことで解消しようという、アキシャらしい不器用で真っ直ぐな気遣いだった。

 そのあまりにも唐突で、突拍子もない行動を目の当たりにして、ラビリアは呆気に取られて瞬きを繰り返した。そして、アキシャの極度の照れ隠しから来るその態度のおかしさに、思わず唇を綻ばせた。

 

「なにそれ……意味分かんないよー?」

 

 ラビリアの口から、ふふっ、と小さな笑い声が吹き出した。

 先程まで寝室に立ち込めていた、あの息の詰まるような気まずさと、極度の緊張感が、アキシャのその一言によって見事に吹き飛んでいくのを感じる。

 自分の恥ずかしい部分を見られているという事実自体は変わらないが、アキシャも同じように素肌を晒してくれているという事実が、不思議とラビリアの心を軽くしてくれた。

 

 アキシャは、ラビリアの笑い声を聞いて少しだけホッとしたように肩の力を抜くと、大きく、そして深く深呼吸をした。

 部屋の空気をいっぱいに吸い込み、そしてゆっくりと吐き出す。その一回の呼吸で、アキシャの顔から照れや迷いの色がすーっと引いていき、代わりにラビリアを本気でとろけさせようとする、熱を帯びた真剣な表情へと切り替わった。

 そして意を決したように、黒い下着の布地の上から、ラビリアの秘部を手のひら全体で優しく、そっと触れたのだ。

 

「ひゃぅっ……!」

 

 布地越しとはいえ、アキシャの指先から伝わってくる確かな熱と、少しだけ圧迫される感覚に、ラビリアの身体がビクリと小さく跳ねた。

 アキシャの手のひらに、黒いレースの布地が直接押し当てられる。その瞬間、アキシャの指先は、布がすっかりと水分を含み、じっとりとした重さを持っていることを確信したはずだ。

 濡れに濡れた下着の不快感と、それを押し当てられることで生じる生々しい感触が、ラビリア自身にもはっきりと伝わってくる。自分が責められ続けたことで、どれほどまでに身体の芯から蜜を溢れさせてしまっているのかを、アキシャの手を通じて改めて思い知らされることになり、ラビリアは耳の先まで真っ赤にして身をよじった。

 

 アキシャは、そんなラビリアの反応を見ると、ふっと表情を綻ばせた。

 一度触れてしまえば、案外気が楽になったのか、アキシャの顔からは先程までの強張った緊張感が徐々に抜け落ちていく。だが、その琥珀色の瞳だけは、一切の油断を見せることなく、ラビリアの微細な表情の変化や、呼吸の乱れ、ひくつく微かな反応を少しでも逃すまいと、真剣な光を宿して観察し続けている。

 

 アキシャの手のひらが、下着の布地の上から、秘部の入り口の辺りをゆっくりと、円を描くように撫で始めた。

 布の繊維が、敏感になりきっている肌の表面を擦るたびに、微かな摩擦が生じ、それがじわりとした温かい快感に変換されて内側へと送られてくる。アキシャの手つきは、まるで壊れ物を扱うかのように優しく、それでいて、ラビリアが心地良く感じる箇所を、驚くほど的確に捉えていた。

 

 一方のラビリアも、アキシャがリラックスし始めたのを感じ取り、自分も同じように力を抜こうと試みる。

 しかし、頭で分かっていても、身体は正直だった。自分の内側から止めどなく溢れ出る熱い蜜が、下着をぐちょぐちょに濡らしているという事実。そんな淫らな状態の自分を、アキシャの的確な手つきによってさらに責め立てられているという現実が、強烈な羞恥心となってラビリアの心を焼き焦がしていく。

 恥ずかしさと、それに反比例して高まっていく快感の狭間で、ラビリアは悶々としながら、ただ呼吸を荒くすることしかできなかった。

 

 秘部全体を優しく撫で回していたアキシャの指先が、不意に動きを変えた。

 手のひら全体で包み込むような撫で方から、人差し指と中指の二本だけを立てるような形になり、下着の布地の上から、秘部の上部に位置する、最も敏感な硬い突起の辺りを探り当てたのだ。

 そして、その部分に触れたか触れないかという、まるで鳥の羽根で撫でるかのような、極めて軽い力加減で、すーっと一度だけなぞった。

 

「んっ……」

 

 ほんの僅かな接触。しかし、的確に急所を掠めたその微小な刺激は、ラビリアの背筋にゾクッとした痺れを走らせるのに十分だった。

 アキシャは、すぐに指を離し、再び秘部全体を撫でる動作へと戻る。

 それは、ただ場所を確認しただけのような、何気ない動作だったのかもしれない。だが一度急所に触れられ、すぐに放置されたことによるもどかしさが、先程から鳴りを潜めていたラビリアの焦燥感を、再び呼び起こすきっかけとなってしまった。

 

 もっと触れてほしい。もっと強く、あの場所を刺激してほしい。

 そんな淫らな欲求が頭をもたげ始めた矢先、アキシャが思いもよらない行動に出た。

 

 アキシャは撫でていた手を止めると、うつ伏せのような状態となり、ラビリアの股の間、まさに黒い下着のすぐ目の前まで、自分の顔を近づけてきたのだ。

 

(まさか…………)

 

 ラビリアの心臓が、恐怖と羞恥でドクンと大きく跳ねた。

 吊り下げられた両腕のせいで逃げることもできず、ラビリアはビクビクと軽く身動ぎをして、腰を引こうとする。

 しかし、アキシャの顔は容赦なく近づき、ついに下着の布地の数センチ手前でピタリと止まった。そして、アキシャは鼻をひくつかせ、スンスンと意図的に匂いを嗅ぐような仕草を見せたのだ。

 

「ちょっと……甘くて酸っぱい匂いがするな…………」

 

 数秒の静寂の後、アキシャの口から、あまりにも率直で、身も蓋もない感想が漏れ落ちた。

 その言葉が意味するものを理解した瞬間、ラビリアの頭の中で、羞恥心の導火線に完全に火がついた。

 自分の最も隠したい部分の、しかも溢れ出た愛液の混ざった匂いを、至近距離で嗅がれた挙句、言葉にして指摘される。これほどの辱めがあるだろうか。

 ラビリアの白い頬は限界を超えて朱に染まり、ピンク色の瞳には、恥ずかしさのあまり生理的な涙がじわりと浮かび上がった。

 

「あっ…………アキシャー……?」

 

 ぷるぷると全身を震わせながら、ラビリアは涙声で親友の名前を呼んだ。

 そして、羞恥と怒りで限界に達したラビリアは、ベッドの上に投げ出されていた右脚を勢いよく突き出し、アキシャの顔面に向けて渾身の蹴りを食らわせようとした。

 だが、拘束されて踏ん張りが効かない状態から放たれた蹴りなど、百戦錬磨の戦士であるアキシャの敵ではない。

 アキシャは、飛んできたラビリアの足首を、凄まじい反射神経でいとも容易くガシッと片手で受け止めてみせた。

 

「おっと、わりぃわりぃ……その、つい言葉に出しちまった」

 

 アキシャはラビリアの足首を掴んだまま、苦笑いを浮かべて素直に謝罪した。

 その飄々とした態度に、ラビリアはジト目を向けて抗議しようとするが、アキシャはラビリアの足をゆっくりとベッドの上に下ろすと、有無を言わさぬ手つきで、次の段階へと駒を進めた。

 

 アキシャの両手が、ラビリアの腰骨の辺りへと伸びる。

 そして、黒い下着のサイドに可憐に結ばれていた、あの細いリボンの結び目へと指先を掛けた。

 

 ――するり、と。

 

 一切の抵抗なく、リボンが解ける微かな音が寝室に響いた。

 右側、そして左側。両方の結び目が解かれた瞬間、ラビリアの秘部を覆っていた最後の防壁は、完全にその役目を終えた。

 アキシャは解けた布地の端を掴むと、ゆっくりと、ラビリアの太ももを滑らせるようにして、取り去ってしまった。

 

 夜の冷たい空気が、今まで布に守られていた最もデリケートな部分に直接触れ、ラビリアの身体はブルッと大きく震え上がる。

 ランプの淡い光の下に、ラビリアの秘部が晒される。透き通るような白い肌の奥に隠されていた、薄紅色の柔らかな花びら。それは、先程までの愛撫の熱をたっぷりと蓄え、朝露に濡れた蕾のように、じっとりとした艶やかな輝きを放っていた。

 

 ついにすべてを晒されてしまったという事実に、ラビリアは軽く狼狽し、顔を背けて唇を強く噛み締める。

 しかし、アキシャの行動は止まらない。彼女は下着を取り去った手をベッドに突き、再びラビリアの股間へと深く顔を近づけてきた。

 先程のように匂いを嗅ぐだけではない。アキシャの呼吸が、直接肌に吹きかかるほどの至近距離。

 そして、アキシャは自らの唇をわずかに開き、温かく湿った舌の先を、ラビリアの秘部の入り口あたりへと、そっと這わせたのだ。

 

「ひぃぅぅっ……!!」

 

 あまりにも生々しい温もりと柔らかな感触が、最も敏感な粘膜に直接触れた瞬間、ラビリアの口から、今まで聞いたこともないような、艶かしく甲高い悲鳴が弾け飛んだ。

 指先や布越しの感触とは全く次元の違う、圧倒的なまでの体温と湿り気が直接伝わってくる。熱い衝撃に打たれたかのように、ラビリアの身体がビクリと大きく震え上がり、吊り下げられた両腕のロープがギシギシと悲鳴を上げる。

 アキシャは、驚きに目を見開くラビリアを見上げると、口元を拭いながら、ニヤリと不敵に笑ってみせた。

 

「ラビリアでも……これは体験したことないだろ?」

 

 その言葉と共にアキシャは再び顔を沈め、今度はただ触れるだけでなく、自らの舌を薄紅色の花びらの隙間へと、ぬるりと強引に割り込ませていった。

 

 温かく、しなやかで少しザラザラしたアキシャの舌が、ラビリアの柔らかな粘膜のひだをかき分け、その奥に隠された蜜の源泉を直接味わうように這い回る。

 ちゅるっ、れろっ、と唾液と愛液が混ざり合う、卑猥な水音が寝室に生々しく反響し始めた。

 

「ひぅ……ふわぁ………っ、あ……」

 

 想像を絶する未知の快感の波に呑み込まれ、ラビリアの口からは、悲鳴とも嬌声ともつかない、完全にとろけきった甘い声がとめどなく漏れ出し始めた。

 頭の芯が真っ白に明滅し、思考が熱に溶け出していく。普段の若干気だるげで飄々とした表情は見る影もなく、口元はだらしなく緩み、ピンク色の瞳は焦点が定まらないまま潤んでいる。

 自分がどれほどまでに無様で、淫らな顔をしているのか、ラビリア自身にも容易に想像がついた。反射的に両手で顔を覆って隠そうとするも、無情にも手首は天井から吊り下げられている。手首を捻って抵抗しようとしても、腕が張るだけで、自分の表情を取り繕うことは絶対に不可能だった。

 

「そんな……汚いところぉ…………舐めないでよぉ……っ」

 

 ラビリアは羞恥に耐えきれず、涙声でそう訴えかける。

 しかし、口では拒絶の言葉を紡ぎながらも、彼女の身体は正直だった。アキシャの舌が動くたびに、腰がビクビクと跳ね上がり、下腹部の奥からさらなる熱い蜜を生み出して、アキシャの舌を歓迎してしまっている。内心ではこの圧倒的な快感に身を委ねることの甘美さに、すっかりと絡め取られて満更でもない状態になっていたのだ。

 

 暫くの間、入り口付近の柔らかなひだを執拗に舐め回し、ラビリアの蜜をたっぷりと味わっていたアキシャだったが、不意に顔を上げ、濡れた唇を舐めながら、低く甘い声で囁いた。

 

「入れるぞー?」

 

 それは、問いかけの形をとっていながらも、拒否を許さない明確な宣言だった。

 アキシャはラビリアの愛液で十分に濡れそぼった自らの人差し指を一本、ラビリアの秘部の入り口へとそっと押し当てた。そして、ゆっくりとラビリアの身体の奥へ、その指を這い進めていったのだ。

 

 指先が柔らかな肉の壁を押し広げ、侵入してくる感覚。最初は僅かな異物感にラビリアの身体がビクッと強張ったが、アキシャの指は少しだけ入ったところで止まり、決して奥深くまで無理に突き入るようなことはしなかった。

 ラビリアの身体が慣れるのを待つように、アキシャは指をゆっくりと引き抜き、そして再び浅く挿入する。

 ちゅく……ちゅぷ……という水音が、指の動きに合わせてリズミカルに響く。

 アキシャの指がラビリアの蜜でひたひたに濡れ、摩擦が完全に快感へと置き換わるまで、優しく、丁寧に出し入れが繰り返された。

 

 指の滑りが完全に滑らかになったのを確認すると、アキシャは挿入した指の第一関節あたりを、くいっと上向き、つまりラビリアのお腹側へと向けて曲げ始めた。

 そして、身体の中にある特別な場所を探り当てるように、柔らかな肉の壁を、指の腹でトントン、トントンと優しく押し始めたのだ。

 

 激しく擦るのではなく、あくまで様子を確かめるような、軽やかなノック。

 しかしその指先が触れた場所は、ラビリアの身体の奥底に眠っていた神経を、直接揺り起こすスイッチだった。

 トントンと押されるたびに、下腹部の奥深くから、じんわりとした温かい快感が波紋のように広がり、それが内側へと伝わっていく。今まで表面だけを責められていたのとは全く違う、身体の内側から直接響いてくるような重く、深い快楽。

 

「…………っ」

 

 ラビリアはこれ以上情けない声を漏らすまいと、唇をぎゅっと固く結び、必死に息を殺してその感覚に耐えようとした。

 しかし、声を出さないように我慢すればするほど、快感の行き場を失った身体は正直な反応を示してしまう。指が特別な場所をノックするたびに、ラビリアの白い太ももがピクッ、ピクッと痙攣するように跳ね、お腹が波打つようにひくついているのだ。

 どんなに取り繕おうとしても、抵抗しきれていないその様子は、アキシャの目から見れば一目瞭然であり、あまりにも愛らしい無防備さだった。

 

 当然、アキシャはそんなラビリアの微細な反応の変化を、決して見逃さなかった。

 指先から伝わってくる内側の柔らかな収縮と、ラビリアの呼吸の乱れ。迷いのない手つきで、アキシャはそのポイントを正確に特定する。

 

「あー、ここら辺が良いのかぁ」

 

 まるで宝の隠し場所を見つけたかのような、納得と優越感が混ざったアキシャの声。

 アキシャはラビリアの弱点であるその場所を、今度はトントンと押すだけでなく、指の腹を使って念入りに、軽くグリグリと円を描くように刺激し始めた。

 

「んぅーーーー…………っ!!」

 

 的確に急所を撫で上げられるような、深く、逃げ場のない快感のうねりに、ラビリアの我慢はついに限界を迎えた。

 固く結んでいたはずの唇から、とろけきった甘い吐息が長く漏れ出し、彼女は拘束された腕を軋ませながら、ベッドの上でどうしようもなく身動ぎをしてしまう。

 

 暫くの間、ラビリアの内に秘められた柔らかな場所を、優しく弄んでいたアキシャの指先だったが、ある程度その中を楽しむと、名残惜しむような微かな水音を立てながら、ゆっくりと外へと引き抜かれた。

 満たされていた熱がふっと失われ、ぽっかりと空いた空洞に夜の冷たい空気が忍び込んでくると、ラビリアは行き場のないもどかしさに細い肩を震わせ、浅く乱れた呼吸を繰り返した。

 アキシャは、ラビリアの甘い蜜でしっとりと濡れそぼった二本の指を、ランプの淡いオレンジ色の光にかざし、愛おしそうに眺めている。

 

「それじゃあ……次は、こっちかなー」

 

 少しだけ悪戯っぽい響きを含んだアキシャの声が、静寂の寝室に落ちる。それと同時に、ラビリアの愛液に塗れた指先が、彼女の最も敏感な花びらの頂に隠された、小さな薄紅色の膨らみをそっと指し示した。

 その言葉と仕草を認識した瞬間、ラビリアの胸の奥で心臓がドクンと大きく跳ね上がった。

 

 今まで表面を撫でられたり、中を優しくほぐされたりしただけでも、頭の芯が白く濁るほどの快感に翻弄されてきたのだ。もし……その最も過敏な部分を、アキシャに直接責め立てられたら、自分は一体どうなってしまうのか。

 限界まで引き絞られた弓の弦のように張り詰めた緊張感と、未知の快楽の深淵を覗き込んでみたいという強烈な好奇心。そして、こんなにも淫らな自分を親友に晒し続けることへの羞恥心。それらすべての感情がマーブル模様のように混ざり合い、ラビリアの思考をぐちゃぐちゃに掻き乱していく。

 両手首を縛られている以上、逃げ場はどこにもない。ならばせめて、これから訪れるであろう激しい波に備えようと、ラビリアはギュッと固くピンク色の瞳を閉じ、震える顎を引いてこくりと頷いた。

 

 しかし、次にラビリアの肌に触れたのは、先程まで彼女の蜜を纏っていたアキシャの指先ではなかった。

 温かく、ひどく湿り気を帯びた柔らかな何かが、秘部の頂にある小さな膨らみを、すっぽりと優しく包み込んだのだ。

 

「ふぇ…………?」

 

 予想外の感触に、ラビリアは思わず間の抜けた声を漏らし、閉じていた瞳をパチリと開いた。

 視線を下に落とすと、そこには信じられない光景が広がっていた。アキシャが、ラビリアの柔らかな脚の間に深く顔を埋め、自らの唇で直接、その最も敏感な場所を含み込んでいたのだ。

 頭でその事実を理解するよりも早く、アキシャの温かい口内という熱の牢獄が、ラビリアの急所を完全に支配し始めた。

 

 ちゅっ、ちゅうぅ……という、水気を帯びた卑猥な吸引音が、静まり返った夜の部屋に生々しく響き渡る。

 アキシャは、唇で薄紅色の膨らみを軽く挟み込むと、そのまま吸い上げるようにして、しなやかな舌の先を絡ませた。

 

「ひっ……!? あ゙ぁ゙っ……!!」

 

 指先や布越しとは全く次元の違う、粘膜と粘膜が直接触れ合い、熱と湿気が絡みつく強烈な刺激。それが引き起こす凄まじい気持ちよさに、ラビリアの口から悲鳴じみた高い嬌声が弾け飛んだ。

 

「アキシャ……っ! それ、やばい……っ、頭溶けちゃゔぅ゙…………!」

 

 ラビリアは、吊り下げられた腕をよじり、ベッドの上に投げ出された足をばたつかせて、本能的にその圧倒的な快感から逃れようとする。しかし、アキシャの顔はしっかりとそこにとどまり、吸い付いた唇を決して離そうとはしない。

 アキシャの舌先が、硬く引き締まった小さな粒の周囲をくるくると舐め回し、時には少しだけ強く吸い上げては、また優しく解すように転がす。その動きの端々には、相手をどうすれば最も気持ちよくさせられるのかを知り尽くしているかのように、恐ろしいほど丁寧で的確だった。

 決して痛みはなかった。ただ純粋に、甘く、とろけるような快楽だけが、ラビリアの下腹部から背筋を伝って、頭上の耳の頂点まで駆け上がっていく。

 

「ひぅ゙っ……あ゙っ、あ゙ぁ゙っ……! んんっ……!」

 

 普段は気だるげで、どこか達観したような不思議な雰囲気を纏っているラビリアの仮面が、音を立てて剥がれ落ちていく。

 口元はだらしなく緩み、呼吸は浅く激しく乱れ、規則性のない甘い声がとめどなく溢れ出し続ける。時には濁点のついたような、自分でも聞いたことのないような艶かしい喘ぎが混ざり、それが自身の耳に届くたびに、強烈な羞恥心がラビリアの白い頬をさらに赤く染め上げた。

 おおよそ一定の心地よいリズムで吸われ続け、時折意図的にペースを乱されるたびに、身体の奥底から熱い火花が散る。快楽のあまり視界がチカチカと点滅し、ラビリアの潤んだ目尻からは、生理的な涙がひとすじ、ふたすじと、つうっと頬を伝い落ちていった。

 自分が自分ではなくなってしまうような、ただ快感だけを貪る生き物に作り変えられてしまうような恐怖。しかし、それを施しているのが大好きな親友であるという事実が、その恐怖すらも甘い依存へと塗り替えてしまう。

 

 ラビリアが口での責めに完全に思考を溶かされていると、アキシャは唇を離すことなく、さらなる追撃を仕掛けてきた。

 彼女の蜜で濡れそぼった二本の指が、再びラビリアの柔らかな入り口を滑るようにかき分け、熱を持った内側へと滑り込んできたのだ。

 

「あ゙ひっ……!? は……入っ、てるぅ゙ぅ゙……っ!!」

 

 最も敏感な外側の頂を吸われながら、内側の奥深くを指で満たされる。

 アキシャの指は、先程見つけ出したあの特別な場所――ラビリアの内に秘められた弱点を、コリコリ、グニグニと、丁寧かつ執拗に責め立て始めた。

 外からの吸引と、内からの圧迫。二つの異なる快感のうねりが、ラビリアの下腹部で激しく衝突し、凄まじい熱量となって膨れ上がる。

 

「あ゙あ゙ぁ゙っ! だ、駄目……っ、そんなことされたら…………もう駄目だっでぇ゙……っ!」

 

 ラビリアの足の指先がギュッと丸まり、白い太ももが痙攣するように震え始める。

 頭の中の理性が完全に焼き切れ、目の前が真っ白な光に包まれそうになる。身体の奥底に溜まりに溜まった熱いエネルギーが、限界のラインを超えて、今まさに外へと弾け飛ぼうとしていた。

 

(今度こそ……、今度こそ、イッちゃう……ッ!!!)

 

 ラビリアは、訪れるであろう強烈な解放の波を受け止めるために、無意識のうちに全身に力を入れ、ぎゅうっと身体を縮こまらせようとした。

 

 しかし、その波が頂点に達しようとした、まさにその刹那。

 

「ぷはっ……」

 

 微かな水音と共に、アキシャの温かい唇が、吸い付いていた頂からパッと離れた。それと同時に、内側を激しく責め立てていた二本の指も、すっと引き抜かれてしまったのだ。

 極限まで高められていた熱が、行き場を失って空中で凍りつく。

 アキシャは、濡れた口元を手の甲で無造作に拭うと、顔を上げてラビリアを見つめた。

 

「流石にキツそうだし、ちょっと休憩すっか」

 

 その声色は、息を切らすラビリアを本気で気遣うような、優しさに満ちたものだった。

 

「あっ…………」

 

 ラビリアの口から、無意識のうちに、どうしようもなく残念そうな、情けない声が漏れ落ちた。

 折角、溜まりに溜まった快感が外へと解放されそうだったのに、その手前で無慈悲にまた梯子を外されてしまった。ぽっかりと空いた身体の隙間に、ウズウズとした耐え難い焦れったさが入り込み、全身の神経をチリチリと逆撫でする。

 

(でも……アキシャの責め、本当に強烈だったし……休憩できて、よかった、のかも……)

 

 半分放心状態の頭で、ラビリアは荒い呼吸を繰り返しながら、必死に自分を納得させようとする。

 これ以上、あの責めが続いていたら、本当に頭がおかしくなっていたかもしれない。そう思えば、この休憩はありがたいもののはずだ。しかし、ラビリアがそんな風に思考を巡らせ、少しだけ身体の力を抜いた、まさにその直後だった。

 

「じゃっ、再開するか」

「えっ……?」

 

 アキシャの短く、楽しげな宣言と共に、再びあの温かく湿った唇が、ラビリアの急所をすっぽりと含み込んだのだ。

 

「ふにゃあ゙あ゙っ!?」

 

 唐突に再開された強烈な刺激に、ラビリアの身体がビクンと大きく跳ね上がる。

 同時に二本の指が内側へと侵入し、先程よりもさらに的確に、最も心地よい場所を擦り上げるように刺激し始める。

 

「待っで、待っでぇ゙ー……! あ゙あ゙ぁ゙っ、んんっ……!」

 

 ラビリアは涙を散らしながら首を激しく横に振り、この暴力的なまでの快感の渦から逃げ出そうとする。しかし、天井から吊り下げられた両腕の拘束が、彼女の逃亡を決して許さない。

 もはや、溢れ出る喘ぎ声を我慢しようという気力すら残っていなかった。アキシャの舌が動き、指が内側を抉るたびに、ラビリアはただひたすらに、ありのままの甘い嬌声を寝室に響かせることしかできない。

 

 再び、下腹部の奥底から熱い塊がせり上がってくる。

 今度こそ、今度こそ解放される。そう確信してラビリアが身をよじらせた瞬間。

 

「よっと……また、休憩はさむか」

 

 アキシャは、まるで散歩の途中で立ち止まるような気軽さで、またしても責めの手を完全に止めてしまったのだ。

 

「あぁ…………っ、はぁっ、はぁっ……」

 

 ラビリアは、ベッドの上にへたり込むようにして脱力し、激しく肩を上下させて呼吸を繰り返した。

 すぐ目の前まで来ていた絶頂が、またしても遠のいていく。身体の内側でくすぶる熱が、行き場を求めて暴れ回り、ラビリアの心をドロドロの焦燥感で満たしていく。

 

(イきたい……イきたいのに……っ)

 

 そんな本音が喉の奥まで出かかるが、それを言葉にしてしまえば、完全にアキシャの意のままに堕ちてしまう気がして、ラビリアは必死に俯き、唇を噛み締めて耐え忍んだ。

 

 だが、ここからがラビリアにとっての、甘く残酷な地獄の始まりだった。

 アキシャは、責め方自体は大きく変えないまま、口と指を使った濃密な愛撫でラビリアを絶頂の縁まで追い詰めては、あと一歩のところで「休憩」と称して中断する。それを、三度、四度と、容赦なく繰り返したのだ。

 

「んあ゙っ……! あ゙あ゙ぁ゙っ……! くるっ、くる……っ! くるぅ゙ぅ゙ーっ!!」

「よし、休憩だな」

「はぁっ、はぁっ……どう、してぇ……。どぅしてぇ…………」

「んじゃ、次いくぞー」

「ひゃあ゙あ゙ぁ゙っ! あ゙、あ゙ぁ゙っ……!」

 

 アキシャの責めは、回を重ねるごとにラビリアの感度を狂わせ、少し触れられるだけでも雷に打たれたような快感をもたらすようになっていた。

 どんなカラクリかは分からない。だがアキシャは、ラビリアの呼吸の乱れや、筋肉の微細な硬直、あるいは内側から溢れ出る熱の揺らぎを読み取っているのか、決まってラビリアがイきそうになる、その寸前の完璧なタイミングを見計らって責めを中断してしまうのだ。

 すでに何度もお預けを食らい、宙ぶらりんの快感に晒され続けているラビリアの精神は、限界をとうに超えていた。

 

 幾度目の再開が訪れようとした時。巧妙すぎる寸止め地獄に耐えきれなくなったラビリアは、ついにその意地を曲げ、上目遣いでアキシャを見つめた。

 

「ねぇ……アキシャ」

 

 涙に濡れたピンク色の瞳が、すがるように親友を捉える。

 

「休憩、短くても……いいよー……?」

 

 それは、遠回しな懇願だった。これ以上お預けにされたら本当におかしくなってしまう。だからどうか、そのまま最後までイかせてほしい。そんな切実な思いが、震える声に滲み出ている。

 たまたまタイミングが噛み合って寸止めになってしまっているだけかもしれない。いくらアキシャでも、そんなに器用に人の快楽をコントロールできるはずがない。そう思いたかったラビリアの、最後の足掻きでもあった。

 

 アキシャは、ラビリアの懇願を聞くと、ふっと目を細めて優しく微笑んだ。

 

「そうか……分かった、そうするか」

 

 その言葉通り、アキシャは休憩を早めに切り上げ、再びラビリアの秘部へと顔を寄せた。

 変わらぬ温もりと、的確な指の動き。クリを優しく吸い上げられ、内側の壁をマッサージするように刺激されると、ラビリアの身体は待ってましたとばかりに歓喜の声を上げる。

 

「あ゙ぁ゙っ……! アギ、シャ、好きぃ゙……っ、それえ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙……っ!」

 

 休憩が短かったこともあり、ラビリアは瞬く間に快楽の頂へと駆け上がっていく。

 今度こそ、このままイかせてくれる。そう信じてラビリアが快感の爆発を受け入れようとした、まさにその瞬間。

 

「それじゃ、休憩だな」

 

 無慈悲な声と共に、すべての刺激がパッと取り払われた。

 

「えっ…………?」

 

 ラビリアは、信じられないものを見るような目でアキシャを見つめた。

 ここまで来て、まだ焦らすというのか。どんなに足掻いても、どんなに懇願しても、アキシャが主導権を握っている限り、自分が解放されることはないのだという絶望的な事実が、ラビリアの心に重くのしかかる。

 

 何度目かも分からない、重苦しい「休憩」の時間。

 身体の芯で燃え盛る炎は鎮まることを知らず、ただひたすらに燃料を求めてラビリアの理性を焼き尽くしていく。

 

「止め……ないで…………止めないでよぉ…………」

 

 限界を迎えたラビリアの口から、ついにそんな小さな、恨み言のような声が漏れた。

 それを聞いたアキシャは、ピクリと頭上の白いウサ耳を動かすと、ベッドの上に手をついたまま、少しだけ顔を上げてラビリアの顔を覗き込んできた。

 

「どうかしたか?」

 

 とぼけたような、それでいてすべてを見透かしているかのような問いかけ。

 ラビリアは、ジト目でアキシャを睨みつけようとしたが、その瞳は涙で潤み、頬は熱で赤く染まりきっており、全く威嚇の体を成していなかった。それでも、完全にプライドを捨てて「イかせてください」と泣きつくことだけは、まだどうしてもできなかったのだ。

 

 そんな意地を張り続けるラビリアの表情をじっと見つめていたアキシャは、不意に少しだけ意地悪そうな、それでいてどうしようもなく優しい笑みを浮かべた。

 

 

 

「ラビリアも……素直になれよ」

 

 

 

 その言葉に、ラビリアは息を呑む。

 アキシャは、一度大きく深呼吸をすると、少しだけ照れくさそうに視線を泳がせながら、ぽつりぽつりと、不器用な言葉を紡ぎ始めた。

 

「私はその……普段のお前の、なんというか……掴みどころがなくて、ちょっと意地悪で、でも本当は誰よりも皆を気にかけてくれてる、そういうラビリアが好きでよ……」

 

 ガサツで勝ち気な普段の口調のまま、一生懸命に自分の想いを伝えようとするアキシャ。その言葉の端々には、幼馴染として、そしてかけがえのない相棒として、ラビリアへ向ける深い愛情が溢れていた。

 

「でも、そういうラビリアじゃねぇやつも……ちょっと、見たかったんだよ。私だけに見せる、お前の……その、なんだ……」

 

 言葉に詰まり、アキシャは自らの頬を朱に染めながら、ラビリアの目を真っ直ぐに射抜いた。

 

「だからその……もっと見せてくれないか?」

 

 その琥珀色の瞳の奥に宿る、純粋な願いと情熱。

 

「だらしなくたって、はしたなくなって、構わねぇよ。ありったけの欲望、全部……私に吐き出しちまえよ」

 

 アキシャはそう言い切ると、顔を真っ赤に紅潮させながら、じっとラビリアの答えを待った。

 

 その不器用で、熱を帯びた告白を聞いた瞬間……ラビリアの心の中に頑なにそびえ立っていた最後の防波堤が、音を立てて崩れ去っていくのを感じた。

 こんなにも真っ直ぐに自分を求め、自分のすべてを受け入れようとしてくれている。強がりも、弱さも、淫らな欲望も、すべてを委ねてもいいのだと、アキシャが言ってくれている。

 ならば、これ以上意地を張る意味など、どこにもない。

 

「………………せて」

 

 ラビリアの口から、震えるような小さな声がこぼれる。

 アキシャが黙って耳を傾ける中、ラビリアは吊り下げられた両腕の拘束に身を委ね、今まで隠し続けてきた羞恥心も、不安も、すべてを投げ捨てるようにして、自らの好奇心と欲望をアキシャへとぶつけた。

 

 

 

「イかせて…………イかせてっ!! 頭ぐちゃぐちゃになってもいいから……っ!! いっぱい、いっぱいイかせて、欲しい………………なー?」

 

 

 

 それはラビリアが完全に快楽に身を任せ、アキシャにすべてを委ねることを決断した、吹っ切れの宣言だった。

 その言葉を聞き届けたアキシャは満足そうに、そして力強く静かに頷いた。

 

「任せとけ」

 

 その一言と共に、アキシャは再びラビリアの柔らかな秘部へと顔を埋め、クリに吸い付いた。同時に、濡れそぼった指がラビリアの内側へと深々と滑り込んでいく。

 再開された責めは、今までのような優しく焦らすようなものではなかった。

 ちゅちゅっ、ちゅるるっ、と激しく貪るようにクリを吸い上げ、舌先で弾く。内側に挿入された指は、ラビリアの最も感じやすい特別な場所を、ゾリゾリと削るように、情熱的に擦り上げ始めた。

 

「お゙っ……!? お゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙……っ!!」

 

 今までとは明らかに違う、鋭く暴力的なまでの刺激の連続に、ラビリアの口から叫び声にも似た、濁った喘ぎ声が飛び出した。

 普段のラビリアからは想像もつかないような、生々しく、はしたない声。しかし、アキシャにすべてをさらけ出してほしいと言われた今のラビリアにとって、その声を我慢する理由など存在しなかった。

 

「あ゙あ゙ぁ゙っ……ホント、すごい゙ぃ゙ぃ゙……! すごい゙よぉ゙ぉ゙……っ!!」

 

 狂おしいほどの快楽が、足の指先から頭のてっぺんまでを容赦なく駆け巡る。

 視界がチカチカと激しく明滅し、呼吸の仕方を忘れてしまったかのように喉が鳴る。反射的に全身の筋肉に力が入り、吊り下げられたロープがちぎれんばかりに軋み声を上げた。

 

 

 

「イ゙ッ…………イ゙ッッッグヴヴゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ッ!!」

 

 

 

 ラビリアの身体が、ベッドの上で弓のように大きく反り返った。

 その瞬間、何度も何度も寸止めを繰り返され、極限まで高められていた熱の塊が、ついに臨界点を突破した。

 身体の奥深くに秘められていた泉が、抗いようのない力によって決壊する。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ…………!!!!」

 

 鼓膜を震わせるような甲高い嬌声と共に、目も眩むような強烈な快楽の波が、ラビリアの全身を内側から食い破るようにして溢れ出した。

 熱く、甘い痺れが波紋のように広がり、指の先から髪の毛の一本一本に至るまでを歓喜で震わせる。頭の中の思考回路が完全に溶け落ち、ただ光の海の中を漂っているかのような、圧倒的な多幸感と浮遊感。

 そして、その快楽のうねりに呼応するように、ラビリアの柔らかな入り口から、透明な熱い波がしぶきを上げて外へと溢れ出した。

 

 ここまで強烈な絶頂を……ラビリアは体験したことがなかった。

 びくびくと痙攣する内側の壁がアキシャの指をきつく締め付け、溢れ出た熱い雫がアキシャの口元や指先を濡らしていく。永遠にも思えるような長い時間、ラビリアはただその圧倒的な快感の奔流に身を委ね、魂の底から震え続けていた。

 

 やがて、狂騒の嵐が少しずつ収まり、荒れ狂っていた呼吸が徐々に落ち着きを取り戻していく。

 ずっと待ち望んでいた至上の解放を得たラビリアは、全身からガクリと力が抜け落ち、吊り下げられた腕に体重を預けるようにして脱力した。

 自分一人での慰めでは絶対にたどり着けなかったであろう、底なしの充足感と多幸感。ラビリアは、ぼんやりと霞む視界で、拠点の木目の天井を見上げていた。

 ふと視界の端に、ベッドの上に膝立ちしたアキシャの顔が映り込んだ。

 

「気持ちよかったか……?」

 

 アキシャの声は、少しだけ掠れており、彼女自身もまた、快楽に身を委ねるラビリアの姿を目の当たりにして、激しく興奮していることが伝わってくる。

 その問いかけに、ラビリアはゆっくりと視線をアキシャへと向けると、ふにゃりと、まるで雪解けのようにとろけた笑顔を浮かべた。

 

「うん……すごく、気持ちよかったー……」

 

 一切の虚飾のない、心からの本音だった。

 

「そりゃ良かった……」

 

 アキシャは安心したように優しく微笑むと、手を伸ばし、涙と微かな潮の飛沫で濡れていたラビリアの頬を、指の腹でそっと拭ってやった。

 そして、脱力してぐったりとしているラビリアの身体を支えるようにして姿勢を戻してやると、そのまま彼女の華奢な背中に腕を回し、ぎゅーっと力強く抱きしめた。

 アキシャの少し汗ばんだ肌の匂いと、ラビリアの甘い蜜の匂いが混ざり合い、寝室の空気をさらに濃密なものに変えていく。互いの心臓の鼓動が、まるで一つの生き物のように重なり合って響いていた。

 

 アキシャの温もりに包まれながら、ラビリアはふと視線をベッドサイドの小さなテーブルへと向けた。

 そこには、ランプの光に照らされて星空のように煌めく、あのガラス細工の砂時計が置かれている。

 あれほどの長い時間、何度も焦らされ、絶頂の果てまで連れて行かれたというのに。信じられないことに、上のガラス球に残された砂は、まだ半分程度しか落ちていなかったのだ。

 

「まだまだ一杯気持ちよくなってもらうから、覚悟しとけよ?」

 

 ラビリアの視線に気づいたアキシャが、耳元で不敵に、そしてどうしようもなく嬉しそうに笑う。

 その言葉を聞いて、ラビリアは小さく息を吐いた。

 

 この砂がすべて落ちきる頃、未来の自分が一体どんな淫らでだらしない姿に成り果てているのか、想像に難くない。きっと、今の何倍も恥ずかしい姿を晒し、声も枯れるほどに鳴かされるのだろう。

 けれど、今のラビリアにとって、そんなことはもうどうでもよかった。

 

 レクシエルとの死闘で、親友の命の灯火が消えかけるのを目の当たりにした。いつまたあのような恐ろしい敵が現れ、理不尽にすべてを奪っていくか分からない。明日の命すら保証されていない、この過酷な空島世界。

 だからこそ、今こうして肌を重ね合い、互いの命の熱と鼓動を感じられるこの一瞬が、何よりも尊く、奇跡のように思えるのだ。

 未来の自分がどうなろうと構わない。少なくとも今だけは、このありったけの愛情と快楽を、余すことなくこの身に受け止めたい。

 ラビリアは、背中に回されたアキシャの腕の温もりを全身で感じながら、ゆっくりと、幸せに満ちた瞳を閉じた。




アキラビはもう一話だけ続きます。
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