※この作品はR-18です。

ゾンビ世界で拠点を作って女の子ゾンビとイチャイチャするお話   作:フレキシブルコーギー

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11話

「――なんだ!?」

 

カケルは、反射的に身構えた。

爆発音。それも、かなり近い。モールの外、おそらく駐車場の方向から聞こえてきた。何かが爆発したのだ。

ユイも、バットを握り直し、警戒態勢に入った。

 

「……まずいな」

 

爆発音の後には――

 

「ギャアアアアッ!」

「グルルルルッ!」

 

複数のゾンビの呻き声が聞こえ始めた。

爆発音に引き寄せられたのだろう。ゾンビたちが、モールへと集まってきている。

 

「くそっ……」

 

カケルは、窓へと駆け寄った。

 

「取り敢えず、何が起きたのか見るしかない……!」

 

もしかしたら、生存者が戦っているのかもしれない。あるいは、何か別の脅威が現れたのか。カケルは、慎重に窓の隙間から外を覗き込んだ。

 

そして――その光景を目にした瞬間、カケルは息を呑んだ。

 

「!?」

 

モールの駐車場に、異様な存在が立っていた。

 

それは、男のゾンビだった。

だが、普通のゾンビとは明らかに違う。身長は180cmほど。痩せぎすの体型で、黒いスーツを完璧に着こなしている。

そして、頭には――シルクハットが被られていた。

 

顔は腐敗が進み、頬の肉が一部剥がれ落ちている。だが、その瞳には、明確な知性の光が宿っていた。

他のゾンビのような虚ろさはない。冷徹で、計算高く、そして――圧倒的な殺意を放っている。

 

──カケルの鑑定能力が、自動的に発動した。

 

【異形ゾンビのステータス】

基本情報

名前: 不明

称号: 爆発紳士

派閥: 腐り王女派

累計殺害人数: 2792人

概要: 腐り王女派閥の幹部。特殊能力『爆破操作』を持つ。知性と理性を保持した上位種ゾンビ。人間だけでなく敵対する派閥のゾンビも無慈悲に殺戮する。極めて危険。

 

「な、なんだ……これは……」

 

カケルは、表示された情報に戦慄した。

 

見たこともないステータス。称号、派閥、殺害人数――そして、『上位種ゾンビ』という言葉。

カケルの鑑定能力が、今まで見たことのない情報を提示している。

 

「なんなんだ、あいつは……」

 

窓の外では、爆発紳士が悠然と駐車場を歩いていた。

その周囲には、複数のゾンビが彷徨っている。普通のゾンビたちだ。だが――爆発紳士は、それらに目もくれず、ただ手を振った。

 

その瞬間――

 

ドォンッ!と、ゾンビの一体が内側から爆発した。

 

「っ!?」

 

血と肉片が、四方八方に飛び散る。

爆発したゾンビは、跡形もなく消し飛んだ。爆発紳士は、何の感情も浮かべず、次のゾンビへと手を向けた。

 

ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ!

 

次々と、ゾンビたちが爆発していく。

風船を潰すかのように、簡単に。爆発紳士の周囲には、血の海と肉片の山が広がっていく。

 

「なんで……ゾンビが、ゾンビを殺してるんだ……?」

 

カケルの理解を超えた光景だった。

ゾンビは、人間を襲う存在だ。それが常識だった。だが、目の前の爆発紳士は、同じゾンビを殺している。

しかも、何の躊躇もなく。まるで、邪魔な虫を潰すかのように。

 

「派閥……?腐り王女派……?」

 

カケルは、鑑定で表示された情報を反芻した。

 

派閥。それは、ゾンビたちが組織化されているということを意味する。『腐り王女派』という名前から推測すると、その頂点には『腐り王女』と呼ばれる存在がいるのだろう。

そして、この爆発紳士は、その派閥の幹部。

 

「まさか……ゾンビの世界にも、勢力争いがあるのか……?」

 

カケルの背筋に、冷たい汗が流れた。

 

もしそうだとしたら、この世界はカケルが思っていたよりも遥かに複雑で、遥かに危険だ。

ただ生き延びるだけではなく、ゾンビたちの派閥争いに巻き込まれる可能性もある。

 

「くそ……」

 

そして、爆発紳士が動きを止めた。

彼は、ゆっくりとモールの方を向いた。

その視線が窓の方へと向けられる。

 

「――っ!」

 

カケルは、反射的に身を引いた。

見られた。いや、もしかしたらまだ気づかれていないかもしれない。だが、このままここにいるのは危険だ。

 

ユイがカケルの袖を引いた。

彼女も危険を察知しているようだ。早く逃げよう、と訴えかけているかのように。

 

「……」

 

 

 

♢   ♢   ♢

【現在の状況】

現在地: モール内・(衣料品店)窓際

拠点: 郊外の一軒家(監視カメラ設置済み、簡易シャワー室完成)

お嫁さんゾンビ: 0人

保有物資: 大幅に増加(医薬品多数、食料品多数、水多数、衛生用品多数)

同行者: 元セーラー服の少女ゾンビ・ユイ(愛情度★★★☆☆、武器:改良型バット、服装:黒パーカー+グレースウェットパンツ+スニーカー)

状況: モール駐車場に『爆発紳士』が出現。ゾンビを殺戮している。カケルの存在に気づきかけている

クラフトポイント: 130pt(残り)

時刻: 朝

♢   ♢   ♢

 

 

 

カケルは、窓の外の光景を凝視した。

爆発紳士の周囲に、大量のゾンビが群がっていく。

駐車場から、道路から、建物の陰から――数十体、いや、数百体のゾンビたちが、爆発紳士へと殺到していく。凄まじい数だ。普通なら、圧倒されるはずだった。

 

だが、爆発紳士は動じなかった。

 

彼は、ゆっくりと右手を上げた。

そして――指を、ぱちんと鳴らした。

 

パチンッ

 

その瞬間――駐車場全体が、爆発に包まれた。

無数の爆発が、連鎖的に発生する。ゾンビたちが次々と内側から弾け飛んでいく。

血と肉片が、噴水のように宙を舞う。轟音が、空気を震わせ、モール全体に響き渡る。

 

そして――数秒後、静寂が訪れた。

 

駐車場には、もはや一体のゾンビも残っていなかった。

血の海と、無数の肉片だけが、そこに広がっていた。数百体のゾンビが、たった一度の指鳴らしで全滅したのだ。

 

「……嘘だろ」

 

カケルは、言葉を失った。

 

なんという力だ。

自分たちは、ゾンビ一体を倒すのにも苦労している。命がけの戦いを繰り返し、ようやく生き延びている。

それなのに、あのゾンビは――指を鳴らしただけで、数百体を一瞬で殺した。

 

「逃げるぞ、ユイ!」

 

カケルはもはや躊躇しなかった。

ユイの手を掴み、店から飛び出す。モールの一階へと駆け下り、出口へと向かう。周囲では、爆発音に引き寄せられたゾンビたちが徘徊し始めていた。

 

「邪魔だ……!」

 

カケルは、牛刀を抜き、迫ってくるゾンビの首を斬りつけた。

黒い血が飛び散り、ゾンビが崩れ落ちる。だが、すぐに次のゾンビが迫ってくる。

 

「っ、ユイ!」

「……ぁ!」

 

ユイが、改良型バットを振り抜いた。

バキィッ――!

釘の付いたバットが、ゾンビの頭部を叩き潰す。

軽量化された素材のおかげで、ユイの華奢な腕でも十分な威力が出ている。一撃でゾンビの頭蓋が砕け、脳が飛び散る。

 

「よし、その調子だ!」

 

二人は、協力してゾンビを蹴散らしながら、出口へと向かった。

カケルが前方を切り開き、ユイが後方を守る。息の合った連携。何度も共に戦ってきた成果だ。

 

やがて、出口が見えてきた。

 

「もうすぐだ……!」

 

カケルは、最後のゾンビを斬り伏せ、出口へと飛び出した。

ユイも、その後に続く。二人は、モールの外へと脱出した。

 

朝の冷たい空気が、肌を刺す。

自由だ。逃げ切った――

 

だが。

 

「……」

 

カケルの足が、止まった。

 

目の前に、誰かが立っていた。

 

黒いスーツ。シルクハット。腐敗した顔。知性を宿した瞳。

 

――爆発紳士が、無言で立ちふさがっていた。

 

「っ……!」

 

カケルの背筋に、冷たい汗が流れた。

いつの間に。どうやって。そんな疑問は、意味をなさなかった。目の前の現実だけが、圧倒的な恐怖としてカケルを襲う。

 

爆発紳士は、カケルとユイをじっと見つめていた。

その瞳には、何の感情も浮かんでいない。ただ、冷徹に――獲物を観察するかのように。

 

「……」

 

沈黙が、流れた。

 

カケルは、牛刀を握る手に力を込めた。

だが、それが何の意味も持たないことは分かっていた。指を鳴らすだけで数百体を殺せる存在に、この牛刀が通用するはずがない。

 

ユイも、バットを構えている。

だが、その身体は震えていた。本能が、危険を察知しているのだ。

 

そして、爆発紳士が――口を開いた。

 

「■■■■■■■……?」

 

掠れた、低い声だった。

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