ゾンビ世界で拠点を作って女の子ゾンビとイチャイチャするお話 作:フレキシブルコーギー
カケルは、目を凝らした。
学校の正門前に立っているのは――巨大な怪物のようなものだった。
「なんだ、あれは……?」
それは人間の形をしていた。いや、かつては人間だったのだろう。
だが、今はもう――化け物だった。
身長は3mを超えている。
全身の肉が異常に肥大化し、ぶよぶよと垂れ下がっている。特に、腹部が恐ろしく膨れ上がっており、まるで妊婦のように――いや、それ以上に、グロテスクに膨らんでいた。
皮膚は灰色に変色し、ところどころが裂けて、中から腐敗した肉が見えている。
顔も、原型を留めていなかった。
目は片方が潰れ、もう片方は白く濁っている。口は裂けており、黒ずんだ歯が剥き出しになっている。そこから、ドロドロとした唾液が垂れ流れている。
「上位種……?いや……」
カケルは、直感した。
爆発紳士のような、知性を感じさせる存在ではない。
あの冷徹な瞳はない。ただ、本能のままに動く――まさに化け物だ。
「あれは……」
カケルの鑑定能力が、自動的に発動した。
視界の端に、透けた文字列が浮かび上がる。
【中位種ゾンビのステータス】
基本情報
名前: 不明
称号: 肉塊の貪食者
派閥: 腐肉帝国派
累計殺害人数: 189人
概要: 中位種ゾンビ。通常のゾンビが大量の人肉を食らい続けた結果、突然変異した存在。知性は失っているが、肉体能力が大幅に強化されている。特殊能力『胃袋爆弾』を持ち、腹部を自爆させて周囲を巻き込む攻撃が可能。腐肉帝国派閥に属しており、「肉を食らうこと」を至上の喜びとする派閥の尖兵。非常に危険。
特殊能力
胃袋爆弾: 膨れ上がった腹部を自爆させ、半径10m以内の全てを腐敗した肉片と胃酸で覆い尽くす。一度発動すると、本体も死亡するが、周囲の生物を確実に殺す。
怪力: 常人の10倍以上の力を持つ。車を片手で投げ飛ばすことが可能。
再生能力: 頭部以外の損傷は、時間経過で再生する。
弱点
頭部: 脳を破壊すれば即死。
腹部を攻撃すると暴走: 腹部にダメージを与えると、即座に自爆行動に移る。
「中位種……」
カケルは、息を呑んだ。
上位種ではない。だが、通常のゾンビよりも遥かに強力な存在。
そして――派閥が違う。
「腐肉帝国?」
爆発紳士は「腐り王女派」だった。だが、この化け物は「腐肉帝国」に属している。
ゾンビの世界には複数の派閥が存在し、互いに争っているのだ。
「くそ……学校に、こんなのがいるのか」
カケルは、歯噛みした。
せっかく学校を拠点にしようと思ったのに、こんな化け物が陣取っている。しかも、特殊能力が「胃袋爆弾」。自爆して周囲を巻き込む。
「厄介だな」
だが、弱点もある。
頭部を破壊すれば即死。動きが鈍い。そして――腹部を攻撃すると暴走する。
「ライフルで、頭を狙えば……」
カケルは、対ゾンビライフルを構えた。
スコープを覗き、化け物の頭部に照準を合わせる。距離は約500m。だが、このライフルなら届くはずだ。
化け物は、まだカケルたちに気づいていない。
ただ、正門前でぼんやりと立っているだけだ。今がチャンスだ。
カケルは、対ゾンビライフルを肩に構えた。
スコープを覗き、照準を化け物の頭部に合わせる。その瞬間――不思議な感覚が、カケルを包み込んだ。
「……?」
ライフルの扱い方が、全て分かる。
引き金の引き方。反動の抑え方。呼吸の整え方。風向きの計算。照準の微調整。まるで、何年もライフルを扱ってきたかのように、全ての動作が自然に頭に浮かんでくる。
「この力は……なんだ?」
カケルは、困惑した。
自分は、ライフルなんて撃ったこともない。素人だ。だが、今この瞬間――プロの狙撃手のような知識と技術が、身体に染み付いている。
「クラフト能力の……おまけなのか?」
クラフトで作った武器には、使い方の知識も付属しているのかもしれない。そう考えれば、納得がいく。
「いや、今はどうでもいい」
カケルは、思考を切り替えた。
理由なんて後で考えればいい。今は――あいつを一撃で倒す。それだけだ。
「……」
カケルは、呼吸を整えた。
深く息を吸い、ゆっくりと吐く。心拍が落ち着き、手の震えが止まる。スコープの中で、化け物の頭部がクリアに見える。
狙いを定める。
照準は完璧だ。風はない。距離500m。このライフルなら、届く。
「行けるっ」
カケルの指が、引き金にかかった。
あと、少し――
その時だった。
「オ……オェェェ……」
化け物が、声を上げた。
ドロドロとした、吐瀉物を吐き出すような、おぞましい声。そして――化け物の白く濁った目が、こちらを向いた。
「っ!?」
気づかれた。
カケルが驚く間もなく、化け物が動いた。
ドンッ!
地面が揺れた。
化け物の巨大な脚が、地面を蹴る。その瞬間――あの巨体が、空中に舞い上がった。
「――まずい!!」
カケルは、思わず叫んだ。
信じられない光景だった。3mを超える巨体。数百キロはあるだろう肉の塊。それが――建物を飛び越えるかのように、軽々と跳躍したのだ。
しかも、跳躍の軌道がこちらに向かっている。
500mの距離を、一跳びで詰めようとしている。
「嘘だろ……!?」
化け物が、空中でカケルたちへと迫ってくる。
膨れ上がった腹部が、太陽の光を遮る。その巨大な影が、地面に落ちる。
「ユイ! 逃げろ!」
カケルは、ユイの手を掴んで走り出した。
だが――間に合わない。
化け物の巨体が、カケルたちの真上に迫っている。あと数秒で、叩き潰される。
「横に転がれ!」
カケルは、ユイの手を引きながら全力で横に飛んだ。
直後、化け物の巨体が地面に激突した。
轟音とともに、地面が砕ける。アスファルトが割れ、破片が飛び散る。衝撃波が空気を震わせ、カケルとユイの身体を吹き飛ばしかけた。
「くっ……!」
カケルは、地面を転がりながら何とか体勢を立て直した。
ユイも、器用に受け身を取って立ち上がる。二人とも、無傷だ。ギリギリで回避できた。
「はぁ……はぁ……」
荒い息をつきながら、カケルは化け物を見た。
巨大なクレーターができている。その中心に、肉塊の貪食者が立っていた。
膨れ上がった腹部から、ドロドロとした液体が垂れ流れている。口からは、唾液と何かの肉片が吐き出されている。
「オ、オォォォ……」
化け物が、再びこちらを向いた。
白く濁った目が、カケルとユイを捉える。そして――
「ギャアアアアァァッ!!」
絶叫とともに、再び跳躍しようとした。
「させるか!」
カケルは、ライフルを構えた。
今度は、腰だめで撃つ。照準を合わせる余裕はない。だが、至近距離だ。外さない。
青い光が、銃口から放たれた。
対ゾンビライフルの弾丸が、化け物の頭部へと飛んでいく――
だが、化け物は動いた。
首を横に振り、弾丸を回避する。弾丸は、化け物の肩を掠めただけだった。
「っ、外した!?」
カケルは、驚愕した。
あの速度で首を動かせるのか。知性がない?ふざけるな、普通にあるじゃないか!
「オォォォ!」
化け物は、跳躍を中止し、地面を蹴ってカケルへと突進してきた。
巨大な腕が、振り下ろされる。怪力の一撃。これを受けたら、即死だ。
「ユイ!」
その時、ユイが動いた。
クロスボウを構え、矢を放つ。矢が、化け物の目に突き刺さった。
「ギャアアアッ!!」
化け物が、悲鳴を上げた。
残っていた片目を矢で貫かれ、視界を失う。巨大な腕が、空を切った。カケルの頭上を通り過ぎていく。
「ナイスだ、ユイ!」
カケルは、すぐに距離を取った。
だが――
「……あ、あれは……!」
カケルは、周囲を見回して愕然とした。
ゾンビが、集まってきている。
学校の中から。周囲の建物から。道路の向こうから。
数十体――いや、数百体のゾンビたちが、こちらへと向かってきている。
「ガアアアッ!」
「ウゥゥゥ……」
「ギィィィ……」
呻き声が、四方八方から響いてくる。
肉塊の貪食者の絶叫が、周囲のゾンビたちを呼び寄せたのだ。手下を呼び集めるかのように。
「手下なのか……!?」
カケルは、歯噛みした。
中位種ゾンビは、通常のゾンビを従える力があるのかもしれない。
あるいは、同じ派閥のゾンビたちが集まってきているのか。
「くそっ……完全に囲まれる!」
前方には、視界を失った肉塊の貪食者。
そして、四方八方から迫ってくる大量のゾンビたち。
「ユイ……!」
カケルは、ユイを見た。
ユイは、バットを握り直し、クロスボウを構えている。
戦う気だ。だが――この数を相手にするのは、無謀だ。
「どうする……!」
♢ ♢ ♢
【現在の状況】
現在地: 大通り(学校正門前)
旧拠点: 郊外の一軒家(放棄)
新拠点候補: 廃校
お嫁さんゾンビ: 1人(ユイ・愛情度★★★★★)
保有物資: 大幅に増加(医薬品多数、食料品多数、水多数、衛生用品多数)
同行者: セーラー服の少女ゾンビ・ユイ(愛情度★★★★★、武器:改良型バット+クロスボウ)
カケルの装備: 対ゾンビライフル(特殊弾薬1発装填済み、通常弾残弾不明)、牛刀
敵: 肉塊の貪食者(中位種ゾンビ・視界喪失)+ 通常ゾンビ数百体
クラフトポイント: 200pt(残り)
時刻: 昼
緊急度: 最大!
♢ ♢ ♢
「ユイ! 通常ゾンビは任せた!」
カケルは叫んだ。ユイは、既に動いていた。
身軽な動きで、迫ってくるゾンビたちの間を駆け抜ける。改良型バットを振り抜き、最初のゾンビの頭部を叩き潰す。
釘が食い込み、頭蓋が砕ける。
ゾンビが崩れ落ちる間もなく、ユイは次のターゲットへと移動する。クロスボウを構え、矢を放つ。
矢が、ゾンビの目に突き刺さる。
倒れたゾンビから矢を回収し、再び次へ。バットとクロスボウを使い分け、次々とゾンビを倒していく。
「すげえ……」
カケルは、一瞬だけユイの戦いぶりに見惚れた。
だが、すぐに視線を前に戻す。
自分の相手は――
「オォォォ!!」
視界を失った肉塊の貪食者が、こちらへと突進してきた。
巨大な腕を振り回し、闇雲に攻撃してくる。目が見えなくても、音や気配で位置を察知しているのだろう。カケルの方へと、一直線に向かってくる。
「くそっ……!」
カケルは、ライフルを構えて引き金を引いた。
青い光が放たれ、弾丸が化け物の頭部へと飛んでいく――だが、化け物は首を横に振り、回避した。
弾丸は、耳の部分を掠めただけだった。
「また外した!?」
カケルは、歯噛みした。
動きが素早すぎる。視界を失っているはずなのに、なぜこんなに正確に回避できるのか。
もともと、ライフルは遠距離から静止した目標を狙うための武器だ。こんな至近距離で、動き回る相手を撃つのは難しい。
「くそっ、くそっ!」
カケルは、後退しながら連射した。
だが、弾丸は全て外れる。
化け物の肩、腕、胴体を掠めるだけで、致命傷には至らない。
「このままじゃ……!」
その時だった。
周囲の状況が、変わった。
「……ぁ……」
「……ぅ……」
女性のゾンビたちが、動き出したのだ。
カケルの周囲にいた、数十体の女ゾンビたち。彼女たちは、カケルを襲うことなく――むしろ、男ゾンビたちへと向かっていった。
「っ!?」
カケルは、驚愕した。
女ゾンビが、男ゾンビを攻撃している。
爪で引っ掻き、噛みつき、押し倒す。男ゾンビたちは抵抗するが、女ゾンビたちは容赦しない。
まるで、カケルを守るために――男ゾンビたちを排除しようとしているかのように。
「な、なにが起こってる……?」
カケルの特異体質。
女ゾンビを惹きつけ、襲われない力。それは、ただ襲われないだけではなかった。女ゾンビたちを味方にする力……。
「信じられない……だがチャンスだ!」
周囲では、女ゾンビと男ゾンビの乱戦が始まっていた。
ユイも、それに助けられている。男ゾンビの数が減り、戦いやすくなっている。
「なら……!」
カケルは、チャンスだと判断した。
周囲のゾンビたちが互いに争っている今、肉塊の貪食者に集中できる。カケルは、ライフルを構え直した。
だが、通常弾では倒せない。
ならば――
「特殊弾薬を使うしかない……!」
カケルは、ライフルのマガジンを確認した。
特殊弾薬は、既に装填されている。あとは、撃つだけだ。
「一発しかない……外せない!」
カケルは、呼吸を整えた。
化け物は、まだこちらへと突進してくる。距離は、約10m。
「……今だ!」
カケルは、照準を化け物の頭部に合わせた。
スコープを覗き、完璧なタイミングを待つ。化け物の動きを予測する。
引き金を引いた。
特殊弾薬が放たれた。
赤く光る弾丸が、空気を裂いて飛んでいく。
化け物の頭部へと――