※この作品はR-18です。

ゾンビ世界で拠点を作って女の子ゾンビとイチャイチャするお話   作:フレキシブルコーギー

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2話

カケルは、少女から視線を外し、目的地であるコンビニへと歩き出した。

敵意がないのなら、今は放っておいても問題ないだろう。それよりも物資だ。水と食料がなければ、明日の朝を迎えることすらできない。

 

住宅街の道を抜け、大通りへと出る。

かつては車の往来で賑わっていたであろう道路は、今や放置された車の墓場と化していた。フロントガラスの割れた軽自動車、横転したトラック、ドアが開いたままのワゴン。々が逃げ惑った痕跡が、そこかしこに残されている。カケルは慎重に足を進め、視界の隅で周囲を警戒しながら、目当てのコンビニへと向かった。

 

そして、彼はふと気配を感じて振り返った。

 

「……ついてきてるのか」

 

少女ゾンビが、数メートル後ろをとぼとぼと歩いていた。

おぼつかない足取りで、しかし確実に、カケルの後を追っている。まるで迷子の子犬のように。時折ふらつきながらも、彼の姿を見失わないよう、懸命についてくる様子だった。

栗色の髪が風に揺れ、セーラー服のスカートの裾が、脚の動きに合わせてひらひらと舞う。

 

「まあ、いいか……」

 

カケルは肩をすくめ、再び前を向いて歩き出した。

彼女が襲ってこないなら、それでいい。むしろ、もし他のゾンビに遭遇した時、彼女が盾になってくれるかもしれない。そんな打算も頭の片隅にはあった。

 

やがて、目的地のコンビニエンスストアが見えてきた。

 

──青と緑の看板は色褪せ、自動ドアのガラスは割れて穴が開いている。

店内からは、かすかに腐臭と埃っぽい匂いが漂ってきた。商品棚の一部は倒れ、床には散乱した菓子袋やペットボトルが転がっている。略奪の痕跡だ。

おそらく、パンデミック初期に生存者たちが奪い合ったのだろう。もっとも、生存者など最近はめっきり見なくなったが。

 

カケルは割れた自動ドアの隙間から、慎重に店内へと足を踏み入れた。

靴底がガラスの破片を踏み、ジャリッと嫌な音を立てる。薄暗い店内には、停電で消えたままの照明。窓から差し込む灰色の光だけが、わずかに視界を確保してくれている。

 

「食料は……」

 

目を凝らすと、奥の棚にまだいくつか缶詰やカップ麺が残っているのが見えた。冷蔵庫のドリンクコーナーは当然機能しておらず、ぬるくなったペットボトルの水が数本転がっている。

レジカウンターの奥には、タバコの陳列棚と、何かの雑誌が散乱していた。

 

そして背後から、あの気配。

 

「……ぁ……」

 

振り返ると、セーラー服の少女がすぐそこに立っていた。

彼女もまた、割れた自動ドアの隙間から店内に入り込んでいたのだ。虚ろな瞳でカケルを見つめ、その小さな唇からは、か細い吐息が漏れる。

距離は、わずか二メートルほど。彼女の身体の輪郭が、薄暗い光の中ではっきりと浮かび上がっていた。

 

店内は静かだった。

少なくとも今この瞬間他のゾンビの気配はない。物資を集めるには絶好の機会だ。

 

しかし、背後にぴったりとついてくる少女の存在が、妙に気になり始めていた。

 

 

 

♢   ♢   ♢

【現在の状況】

現在地: コンビニ店内

拠点: 郊外の一軒家

お嫁さんゾンビ: 0人

保有物資: バックパック(空)、牛刀×1

同行者: セーラー服の少女ゾンビ(愛情度★☆☆☆☆)

♢   ♢   ♢

 

 

 

カケルはまず、目の前の棚へと駆け寄った。

手当たり次第にバックパックを開き、残っていた缶詰──サバの味噌煮、ツナ缶、コーンスープの缶――を次々と放り込んでいく。

床に転がっていたペットボトルの水も、ラベルを確認する余裕もなく、四本まとめて詰め込んだ。カップ麺の棚にはシーフードヌードルが三つ。それも迷わず回収。

 

「これで……三日は持つ」

 

息を荒げながら、バックパックのチャックを閉める。

ずっしりとした重みが肩にかかった。だが、まだ足りない。もっと物資を集めておかなければ、次にいつここへ来られるか分からない。

 

カケルは店の、『従業員専用』と書かれた扉へと目を向けた。

バックヤード。そこには、まだ客に出されていない在庫が眠っているかもしれない。迷っている暇はなかった。彼は少女ゾンビの存在をちらりと確認し……彼女は相変わらず、ぼんやりとこちらを見つめている。

それから、扉へと手をかけた。

 

ギィッ……と、錆びた蝶番が軋む音を立てて扉が開いた。

 

薄暗い廊下の先に、倉庫らしき部屋の入口が見える。

段ボール箱が積まれているのが、わずかな光の中で確認できた。カケルは用心深く足を踏み入れ、バックヤードの奥へと進んでいく。

埃っぽい空気と、何か生臭い匂いが鼻をついた。

 

「……この奥に、まだあるかな」

 

そう呟いた瞬間だった。

 

「――ガアアアアァァッ!!」

「!?」

 

暗がりから、濁った絶叫とともに、何かが飛び出してきた。

反射的に身を引こうとしたが、遅かった。ゴツい腕がカケルの胸板を掴み、一気に押し倒す。視界が反転し、背中が冷たいコンクリートの床に叩きつけられた。

 

「うぐっ……!」

 

息が詰まる。上を見上げると、そこには血走った目をした男のゾンビがいた。

作業着を着た中年の男。顔は腐敗が進み頬の肉が一部剥がれ落ちている。口からは腐った肉の臭いと唾液が滴り落ち、ぬらりとカケルの顔にかかった。ゾンビの両手が、彼の喉元へと伸びてくる。

 

「くそっ……!」

 

カケルは必死で抵抗しようとしたが、馬乗りになられた状態では身動きが取れない。

牛刀は腰にあるが、手が届かない。男ゾンビの指が、首に食い込み始める。息が、できない――

 

その時だった。

鈍い音とともに、ガラスが砕ける音が響いた。

 

「ガ……ァ……」

 

男ゾンビの頭部に、何かが叩き込まれた。その衝撃で男の身体がぐらりと傾く。

首を絞めていた手の力が、一瞬緩んだ。カケルが目を見開くと、そこには──

 

セーラー服の少女ゾンビが立っていた。

彼女の細い腕には、今まさに振り下ろされたばかりの酒瓶が握られていた。

瓶は半分ほど砕け、鋭利なガラスの破片がキラリと光っている。男ゾンビの後頭部からは、黒ずんだ血がどろりと流れ出していた。

 

「ぁ……ぅ……!」

 

少女は、もう一度酒瓶を振り上げた。

その虚ろだった瞳に、今だけは確かな意志の光が宿っている。男ゾンビが再びカケルに襲い掛かろうとした、まさにその瞬間。

 

三度、四度、彼女は酒瓶を男ゾンビの頭に叩き込んだ。

容赦のない連撃。ガラスが砕け、男の頭蓋が割れる音が、静まり返ったバックヤードに響き渡る。

やがて、男ゾンビの身体が力なくカケルの上に崩れ落ちた。ぐったりとした重み。もう、動かない。

 

「っ、はぁ……はぁ……!」

 

カケルは荒い息をつきながら、男ゾンビの身体を力任せに押しのけた。ゴロリと横に転がる死体。彼は這うようにして立ち上がり、喉を押さえながら咳き込んだ。

 

「助け……られた……?」

 

顔を上げると少女ゾンビが、砕けた酒瓶を握ったまま、じっとこちらを見つめていた。

その手からは、ぽたり、ぽたりと、男ゾンビの返り血が滴り落ちている。

セーラー服のブラウスにも、赤黒い飛沫が無数に付着していた。だが、彼女の表情は相変わらず虚ろで、ただ瞳だけがカケルを映し続けている。

 

「……ぁ……」

 

酒瓶を取り落とし、ガシャンと床に落ちる。

少女は、おぼつかない足取りで、カケルへと一歩近づいた。

 

カケルの心臓が、激しく脈打っていた。

恐怖。安堵。困惑。そして、何か別の感情が、胸の内で渦巻き始めていた。

 

彼女は、自分を守ってくれたのだ。

言葉も通じない、理性もないはずのゾンビが。

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