ゾンビ世界で拠点を作って女の子ゾンビとイチャイチャするお話 作:フレキシブルコーギー
お風呂から上がりさっぱりとした二人は服を着て、保健室の高級ベッドの上で作戦会議を始めた。
「仲直りもしたし、さっぱりしたし、久しぶりに街に物資を集めに行こうかな……」
拠点の設備は整ったが日用品や、ユイが喜ぶような新しい服、栄養価の高い保存食などまだまだ必要なものは多い。
「そう言えば、クラフトリストにユイ専用武器があったな。ポイントも十分あるし、それを生成してから街へ行こう!」
カケルは脳裏のクラフトメニューを開き、ユイ専用の武器を選択した。
『ユイ専用武器(強化版改良型バット)– 120pt』
『クラフト実行!』
ヴォンッ!
閃光とともに、保健室の床に一本のバットが出現した。
それは、今までユイが使っていた、ただ釘を打ち付けただけの粗末なものとは全く違っていた。
流線形のフォルムを持つ、黒とピンクを基調とした美しいデザイン。素材は軽量な強化木材と、打撃部分には高硬度の金属が埋め込まれているようだ。
握りやすいように滑り止め加工が施された柄には、小さく「For Yui」と刻まれている。
カケルがその武器の性能を確認すると、詳細なデータが表示された。
【改良型バット ユイ専用】
名称: エンジェルストライク
素材: 軽量強化木材と高硬度金属の複合素材
重量: 1.5kg
全長: 80cm
柄: 滑り止め加工付き
特殊能力:
衝撃吸収構造: 反動が少なく、連続攻撃が容易になる。
中位種特効: 中位種ゾンビに対してダメージが増加する。
エンジェルブースト: ユイの攻撃力を10%増加させる。
麻痺効果: 攻撃時に一定確率で敵の動きを鈍らせる。
サイレントヒット: 攻撃命中時のヒット音が小さく、不意打ちの効果を高める。
評価: ユイの機動性を活かしつつ、攻撃性能を大きく引き上げる高性能武器。
「エンジェルストライク……すごいな、これ」
カケルは高性能ぶりに驚いた。
ただのバットではない。特殊能力が満載のまさに専用武器だ。
「ユイ、これをお前に」
カケルが新しいバットを手渡すと、ユイは目を輝かせた。
自分の名前が刻まれ、自分のために作られた武器。その重みを確かめるように、軽く数回素振りをする。その動きは、以前よりもさらに鋭く、そして美しく見えた。
ユイは、カケルに向かって満面の笑みを浮かべ、新しい武器をぎゅっと抱きしめた。
「よし、これで準備万端だな! 行くぞ、街へ!」
カケルはライフルを、ユイは新しいバット「エンジェルストライク」を手に、二人は意気揚々と保健室を後にした。
♢ ♢ ♢
【現在の状況】
現在地: 学校内部(出発準備完了)
新拠点: 廃校(生活設備・娯楽設備が大幅強化)
お嫁さんゾンビ: 1人(ユイ・愛情度★★★★★、ご満悦)
ユイの装備: ユイ専用武器「エンジェルストライク」、クロスボウ
クラフトポイント: 795pt (915pt - 120pt)
時刻: 午前
次の目的: 街への物資調達
♢ ♢ ♢
「よし、行こうか」
カケルはライフルを肩にかけ、ユイは新しい武器「エンジェルストライク」を手に、二人は新拠点となった学校から出発した。
校門を出て、林の横を通り過ぎようとした時――
「……ぁ……」
「……ぅ……」
木々の間から、数十体の女ゾンビたちが姿を現した。
彼女たちは、攻撃するでもなく、ただじっとりと熱い視線でカケルを見つめている。
「もしかしてお見送りしてくれるのかな?留守中は、彼女たちに拠点を守ってもらえそうだな。俺はひっそりとザーメンを供給し、彼女たちはその見返りに忠誠を誓う……いい共生関係だなぁ」
カケルがそんな下心丸出しの笑みを浮かべた瞬間。
ごんっ!
「ぐふっ!?」
後頭部に、硬くて鈍い衝撃が走った。
ユイが、エンジェルストライクのグリップエンドで、カケルの頭をドツいたのだ。
ジト目で、ぷくーっと頬を膨らませて、カケルを睨みつけている。その顔には「下心が丸見えですよ」と書いてあった。
「わ、悪い……」
カケルは、愛しいお嫁さんの嫉妬深さを改めて思い知りながら、頭をさすった。
気を取り直して、二人は街の中心部へと向かった。
今日の目的は、食料品の調達だ。野菜栽培機は稼働し始めたが、収穫までにはまだ少し時間がかかる。それに野菜だけで生きていけるわけではない。
タンパク質源となる肉や魚の缶詰、米やパスタなどの炭水化物が必要だった。
「さて、どこに行こうか……」
カケルは脳内に行く場所の候補を思い浮かべる。
スーパーマーケット(駅前)
メリット: 食料品の種類が豊富。缶詰、乾麺、レトルト食品など、長期保存可能なものが大量にあるはず。
デメリット: パンデミック初期に最も人が集まった場所の一つ。大量のゾンビが徘徊している可能性が非常に高い。略奪も激しく、ほとんど残っていないかもしれない。
コンビニエンスストア(複数)
メリット: 街の至る所にある。小規模なので、探索が容易。意外な掘り出し物(お菓子や栄養ドリンクなど)が見つかることも。
デメリット: ほとんどが既に漁り尽くされている。残っている食料は少ない可能性が高い。
倉庫街(港湾エリア)
メリット: 大量の業務用食料品が手つかずで残っている可能性がある。巨大な冷凍倉庫などがあれば、肉や魚が大量に手に入るかもしれない(電源は落ちているが)。
デメリット: 港湾エリアは広く、見通しが悪い。ゾンビが潜んでいる場合、発見が遅れやすい。
デパート(地下食品街)
メリット: 高級な缶詰や瓶詰、ワインなど、質の良い食料品が期待できる。地下なので、外敵からは比較的安全。
デメリット: 地下は暗く、閉鎖的。換気も悪く、ゾンビが大量にいた場合、逃げ場がない。
住宅街の個人商店
メリット: 大規模な店舗と違い、見過ごされている可能性がある。店主が隠した備蓄品などが見つかることも。
デメリット: 品揃えは少ない。当たり外れが大きい。
「うーん……駅前のスーパーは、ゾンビも多いだろうし、もうほとんど残ってないだろうな。倉庫街やコンビニもいまいちかな……」
考えた結果、カケルは一つの結論に達した。
「デパートの地下食品街、デパ地下にしよう。地下なのは少し怖いけど高級な缶詰や保存食が手つかずで残っている可能性に賭けたい。それに……」
カケルは、ユイが愛おしそうに抱えている新しい武器に目をやった。
「ユイの新兵器も試したいしな!デパ地下に向かおう!」
カケルが言うと、ユイはこくりと力強く頷いた。瞳には、新しい武器を試せることへの期待が宿っている。
二人は学校を出て、街の中心部にあるデパートを目指して歩を進めた。
瓦礫が散乱し、乗り捨てられた車が道を塞ぐ、見慣れた終末の光景。だが、隣にユイがいるだけで、その景色も少しだけ違って見えた。
しばらく進んだ、その時だった。
「グルルルァァァッ!」
細い路地から、一体、また一体とゾンビが姿を現した。
その数は、ざっと十数体。ゾンビの群れが二人に気づき、一斉に襲いかかってきた。
「くそっ、囲まれる!」
カケルがライフルを構えるよりも早く、ユイが前に躍り出た。
その手には黒とピンクの美しい武器、「エンジェルストライク」が握られている。
ユイの動きは、以前とは比べ物にならなかった。
まるで死の舞踏を踊るかのように、彼女はゾンビの群れへと突っ込んでいく。
シュンッ!
最初の一体。ユイは敵の腕をかいくぐり、懐に潜り込むと同時に、エンジェルストライクを横薙ぎに一閃させた。
スパッ!
今までの、肉を叩き潰すような鈍い音ではない。
鋭く、空気を切り裂くような音とともに、ゾンビの頭部が綺麗に吹き飛んだ。サイレントヒットの能力のおかげか、ヒット音は驚くほど小さい。
ユイは止まらない。
衝撃吸収構造のおかげで、攻撃の反動がほとんどない。彼女は流れるような動きで、次のターゲットへと向かう。
ゾンビが振り下ろす腕を、バレリーナのようにスピンして回避し、その勢いのまま回転しながらエンジェルストライクを叩き込む。
麻痺効果が発動したのか、攻撃を受けたゾンビの動きがぐにゃりと鈍った。そこへ、追撃の一撃が叩き込まれ、頭蓋を粉砕する。
「すごい……強くなってる!」
カケルは、息を呑んでユイの戦いぶりを見守っていた。
以前の戦いが「力」だとしたら、今の彼女の戦いは「技」だ。エンジェルストライクは、ユイの身体能力を最大限に引き出し、彼女をより洗練された戦士へと昇華させていた。
クロスボウを使うまでもない。
ユイは、ただ一人で、十数体のゾンビの群れを翻弄し、次々と屠っていく。
そして、一分も経たないうちに、最後のゾンビが崩れ落ちた。
「ん……」
ユイは、エンジェルストライクを肩に担ぎ、静かに息を整えている。
その身体には、返り血ひとつ浴びていなかった。
「流石だユイ!すごいぞ!」
カケルが駆け寄って頭を撫でると、ユイは少し照れくさそうに、そして誇らしげに微笑んだ。
だが、その時だった。
「──!?」
全身に、悪寒が走った。
命の危険を知らせる原始的なアラーム。それはただのゾンビと対峙した時とは比較にならない、圧倒的な恐怖。
「ユイ、隠れろ……!」
カケルは囁くように言った。
ユイもまた、その悍ましい気配を察知していたのだろう。カケルの言葉に即座に反応した。
「!」
二人は、崩れかけた建物の物陰に、息を殺して身を潜めた。
そのすぐ後だった。
カツン……カツン……
規則正しい、金属の音が響いてくる。
誰かが重い鎧を纏って歩いているかのような音。
そして――姿を現した。
「■■■……■■■■■■……」
それはゾンビと呼ぶには異質だった。
壮麗なしかし所々が黒く錆びついた騎士の甲冑。全身を覆う鎧には、おぞましい紋様が刻まれている。
兜のスリットの奥からは、赤い光が二筋、不気味に揺らめいていた。
普通のゾンビではない。中位種とも違う。
その存在が放つプレッシャーだけで、空気が歪み、呼吸が苦しくなる。
──カケルの鑑定能力が、自動的に、そして強制的に発動した。
【上位種ゾンビのステータス】
名前: 不明
称号: 臓物食らいの騎士
派閥: 躯王ドルトウェン派
累計殺害人数: 3,171人
概要: 躯王ドルトウェンに仕える派閥の幹部の一人。生前は高名な騎士であったが魂が歪み、今はただ主の命令に従い生者の臓物を喰らうことを至上の喜びとしている。防御力無効の超高速の斬撃を繰り出し、対象の魂すら切り刻み消滅させる。
「……っ」
カケルは、息を呑んだ。
爆発紳士と同じ上位種。そして、またしても知らない派閥の名前。この世界には、一体いくつの勢力が存在するというのか。
そして──あれは、今の自分たちが絶対に敵わない相手だ。
直感で、そう理解した。
対上位種用の特殊弾薬を作れるようになったとはいえ、恐らくあの騎士には何百発も撃ち込まなければ倒せないだろう。
それほどまでに、格が違う。
騎士はカケルたちが隠れていることに気づいているのか、いないのか。
赤い双眸は感情を読むことのできない光をたたえたまま、ゆっくりと周囲を見渡している。
やがて騎士はカツン、カツン、と規則正しい足音を響かせながら、駅前の方向へと去っていく。
ゾンビが最も多く徘徊している、危険な場所へ。
「よかった、駅前に行かなくて……」
その姿が完全に見えなくなり、悍ましい気配が薄れたのを確認して、カケルはようやく安堵のため息をついた。
あの化け物たちはとんでもない力を持つが故に、近づけばその気配で存在を察知できるようだ。それが唯一の救いだった。
「……行こう、ユイ。デパートはもうすぐだ」
カケルは、まだ少し震えているユイの手を強く握りしめ、再び歩き始めた。
この世界には、自分たちの想像を絶する脅威が、まだいくらでも潜んでいるのだ。