※この作品はR-18です。

ゾンビ世界で拠点を作って女の子ゾンビとイチャイチャするお話   作:フレキシブルコーギー

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3話

カケルは荒い息を整えながら少女の瞳を見つめた。

 

「ありがとう」

 

言葉が通じるかどうかは分からない。

だが、彼は心からそう告げた。命を救われたのだ。たとえ相手が理性を失ったゾンビであっても、感謝の言葉を口にしないわけにはいかなかった。

少女は、じっとカケルを見つめている。虚ろな瞳に、かすかな光が揺れた気がした。

 

「まさか、ゾンビが俺を守ってくれるなんて」

 

カケルは呟きながら、喉元を擦った。まだヒリヒリと痛む。男ゾンビに首を絞められた痕が、赤く残っているだろう。今までも、女のゾンビたちは彼を襲わなかった。だが、それはただ「襲わない」だけ。助けてくれたことなど、一度もなかった。

 

「もしかして……俺の体質も、強化されてるのか……?」

 

ふと、そんな考えが頭をよぎる。

女ゾンビを惹きつけ、彼女たちに「守られる」ような力。まるで、フェロモンのような、目に見えない何か。それが、この少女を動かしたのだろうか。

だとしたら、この能力は思っていたよりも、遥かに有用かもしれない。

 

だが、今はそれを考えている場合ではなかった。

バックヤードの奥から、再び呻き声が聞こえ始めている。男ゾンビの断末魔が、他の個体を呼び寄せたのだろう。

 

「ここは、まずい。早く出よう」

 

カケルは床に転がっていた段ボール箱をいくつか開け、中身を素早く確認した。

幸いなことに、未開封のミネラルウォーターのケースと、レトルトカレーのパックが見つかった。それらをバックパックに詰め込む。

 

「取り合えず帰るか」

 

コンビニを出て、カケルは息を潜めながら来た道を引き返した。

背後では、店内からゾンビたちの呻き声が響き始めている。複数だ。間に合った。もう少し遅ければ、完全に囲まれていただろう。

 

住宅街へ戻る道すがら、カケルはちらりと後ろを振り返った。

セーラー服の少女ゾンビは、やはりついてきていた。数メートル後ろを、彼の影のように。返り血で汚れたブラウス、乱れたスカート、栗色の髪を風に揺らしながら、歩きながらゆっくりとただひたすらにカケルを追っている。

 

「……なんで、ずっとついてくるんだ?」

 

答えは返ってこない。

ただ、少女の虚ろな瞳が、じっとカケルを捉え続けていた。

 

やがて、カケルは無事に拠点である郊外の一軒家へと辿り着いた。

玄関前で立ち止まり、バリケードにしていた本棚をずらして扉を開ける。安堵のため息がこぼれた。生きて帰れた。物資も手に入れた。今日は、上出来だ。

 

だが、家の中に入ろうとしたその時、カケルは気づいた。

 

「……え?」

 

セーラー服の少女が、玄関の前に立っていた。

彼女は、カケルが家の中に入るのを、じっと見つめている。小さな手が、おずおずと扉の縁に触れた。

 

「おい……まさか、ここまでついてくるつもりか?」

 

カケルは困惑した。

ゾンビを家の中に入れる。そんなこと、考えたこともなかった。いや、彼女は自分を助けてくれた。敵意はない。それは分かっている。

だが、ゾンビはゾンビだ。本当に、家の中に入れて大丈夫なのか?

 

少女は、カケルの顔を見上げた。

その瞳には、哀しげな光が宿っている。置いていかれることを、恐れているのだろうか。

 

「……ぁ……」

 

か細い声が、唇から漏れた。

 

カケルは、迷った。

彼女を外に置いていくか。それとも、中に入れるか。

 

 

 

♢   ♢   ♢

【現在の状況】

現在地: 拠点(郊外の一軒家)玄関前

拠点: 郊外の一軒家

お嫁さんゾンビ: 0人

保有物資: バックパック(缶詰×5、水×4本、カップ麺×3、ミネラルウォーター×1ケース、レトルトカレー×数個)、牛刀×1

玄関前: セーラー服の少女ゾンビ(愛情度★☆☆☆☆)

♢   ♢   ♢

 

 

 

カケルは、深く息を吐いた。

そして、扉を大きく開けた。

 

「……入れ。頼むから、暴れないでくれよ」

 

命を救ってくれた恩人――いや、恩ゾンビを見捨てることなど、できるはずがなかった。

少女は、カケルの言葉に反応するかのように、おぼつかない足取りで玄関の中へと入ってきた。セーラー服の裾が、床を擦る音がする。カケルは扉を閉め、再び本棚でバリケードを作った。

 

「とりあえず、リビングに来い」

 

少女を促し、カケルは廊下を抜けてリビングへと向かった。

窓から差し込む灰色の光が、部屋をぼんやりと照らしている。ソファには埃が積もり、テーブルの上には数日前に読んだ古い雑誌が置かれたままだった。

彼はバックパックを床に下ろし、中から缶詰とカップ麺を取り出した。

 

「腹減ったな」

 

今日は命がけの探索だった。空腹が、身体を蝕んでいる。カケルは手に取ったカップ麺の蓋を開け、粉末スープを振りかけた。

本来ならお湯を沸かすべきだが、ガスも電気も止まっている今、そんな贅沢は望めない。

 

「冷たいカップ麺……贅沢は言ってられないな」

 

ペットボトルの水を注ぎ、しばらく待つ。麺が水を吸い、ふやけていくのを待ちながら、カケルはソファに腰を下ろした。

疲労が、どっと押し寄せてくる。少女ゾンビは、リビングの入口に立ったまま、じっとこちらを見つめていた。

 

やがて、適当な時間が経ったと判断し、カケルはカップ麺を手に取った。

フォークで麺をすくい上げ、口に運ぶ。冷たい。味は薄い。だが、これでも十分だ。空腹を満たすには。

 

ズルズルと音を立てて、麺をすする。

その時、視線を感じた。

 

顔を上げると、少女ゾンビがすぐ目の前に立っていた。

いつの間にか、ソファの正面まで近づいていたのだ。虚ろな瞳が、カケルの手元――カップ麺を、じっと見つめている。

いや、違う。カケルの顔を、見ているのだ。食べる仕草を、凝視している。

 

「お前も、一緒に食いたいのか?」

 

カケルは、ふとそう尋ねた。

ゾンビが人間の食べ物を口にするかどうかは分からない。だが、彼女は自分を助けてくれた。ならば、少しくらい分けてやってもいいだろう。そんな気持ちが、自然と湧き上がってきた。

 

その瞬間だった。

 

「――ぁ……!」

 

少女ゾンビが、突然身を乗り出してきた。

カケルが驚く間もなく、彼女の身体が一気にソファへと倒れ込んでくる。細い腕が、カケルの肩に回され、柔らかい重みが胸板に押し付けられた。

 

「うわっ、ちょ――!」

 

カップ麺がぐらりと傾ぎ、水が少しこぼれた。

カケルは反射的に身体を後ろに引こうとしたが、ソファの背もたれが邪魔をして逃げ場がない。そして、目の前には――

 

少女ゾンビの顔が、すぐそこにあった。

 

栗色の髪が、カケルの頬に触れる。

乾いていたはずの唇が、わずかに開き、熱っぽい吐息がかかる。虚ろだった瞳が、今は潤んで、妖しい光を帯びていた。彼女の小さな胸が、カケルの胸に押し付けられ、セーラー服越しにその柔らかさが伝わってくる。

 

「……っ、おい、何を――」

 

言葉が続かなかった。

少女の顔が、さらに近づいてきたのだ。その唇が、カケルの唇へと迫る。甘酸っぱい匂い。思春期特有の、少女の体臭。それが、鼻腔をくすぐった。

 

カケルの心臓が、激しく脈打ち始めた。

彼女は、食べ物が欲しいのではなかった。違う。彼女が求めていたのは――

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