ゾンビ世界で拠点を作って女の子ゾンビとイチャイチャするお話 作:フレキシブルコーギー
ゾンビの死体を喰らい、変貌を遂げた「腐肉食らいの狼」が巨体を揺らしながら立ち上がった。
筋肉は鋼のように隆起し、爪と牙は黒曜石のように鋭く伸び、悍ましい姿はもはや狼というよりも悪魔のそれに近い。
「みんな気を付けろ! 来るぞ!」
カケルが警告を発した直後だった。
狼の姿が掻き消えた。
「なっ!?」
目で追えない。あまりに速すぎる。
次の瞬間、カケルの頬を熱い風が掠め背後のスーパーマーケットの壁に巨大な爪痕が刻まれた。
「どこだ!?」
カケルがペインブリンガーを構えて周囲を見回すが、狼の姿は捉えられない。
その動きは音もなく予備動作もなく、結果だけが叩きつけられる。
「くっ!」
ユイがスピードブースターを最大出力で起動させ、応戦しようとする。
だが、そのユイの動きすら狼の速度の前では鈍重に感じられた。狼はユイの攻撃を嘲笑うかのように躱し背後に回り込む。
エンジェルガードが狼の爪撃を受け止め、激しい火花を散らす。
ユイはなんとか防御したが、衝撃で大きく体勢を崩した。
「ぅぁ……!」
「ユイ!」
カケルもユイも完全に翻弄されている。
このままではジリ貧だ。
だが──その時、戦場に変化が起きた。
アーケード街の天井に張り付いていた絡新婦が、静かに準備を進めていたのだ。
カケルとユイが狼に翻弄されている間、彼女は無数の糸を吐き出し商店街の柱、看板、建物の間に、幾重にも張り巡らせていた。それは獲物を確実に捕らえるための巨大な蜘蛛の巣だった。
「オォンッ!」
狼は体勢を崩したユイに止めを刺そうと、一直線に突進した。
その神速の動きを遮るものはないはずだった。
ブチッ! ブチチチッ!
「グンッ!?」
突進した狼の身体が突如として見えない壁に激突した。
絡新婦が張り巡らせたベノムウェブで強化された粘着性の高い毒糸の巣。それに気づかず突っ込んだ狼は、巨体をがんじがらめに絡め取られていた。
「グルルルルァァァァッ!」
狼はもがき暴れる。
だが絡めとられた糸は動けば動くほどさらにきつく、深く身体に食い込んでいく。
ついに、狼は完全に身動きが取れなくなった。
「──今だ!」
カケルは絶好の好機を逃さなかった。
クラフトメニューを瞬時に展開し一つのアイテムを選択する。
『★特殊弾薬(対上位種)×1 – 150pt』
『クラフト実行!』
【残りポイント: 5,550pt】
カケルの構えるペインブリンガーの薬室が開き、光と共に赤黒い輝きを放つ一発の弾丸が生成され、自動で装填された。
対上位種用特殊弾薬。
この一撃に全てを賭ける。
カケルは息を止め、ペインブリンガーのスコープを覗き込んだ。
ホログラフィックサイトが蜘蛛の巣の中でもがく狼の弱点――眉間を、正確にロックする。
狙いを定める──。
カケルの指がゆっくりと引き金に触れた。
呼吸を整える。心臓の鼓動を静める。
狙いは、狼の眉間その一点のみ。
「終わりだ」
ペインブリンガーが轟音と共に火を噴いた。
赤黒い輝きを放つ対上位種用特殊弾薬が銃口から放たれる。
弾丸は意志を持っているかのように寸分の狂いなく、狼の眉間へと一直線に飛んでいく。軌跡は血のような赤黒い光の尾を引いている。
弾丸が狼の眉間に吸い込まれた。
次の瞬間、狼の頭部が、内側から膨れ上がった。
時空が歪む。重力が狂う。
そして──
凄まじい爆発が起こり、狼の頭部が完全に消滅した。
首から上が最初から存在しなかったかのように跡形もなく吹き飛んだ。
巨大な狼の身体が力なく崩れ落ちる。
静寂が戻った。
「……やった」
カケルは煙を上げているペインブリンガーを下ろし、その場に膝をついた。
「中位種との戦いに……勝った……!」
カケルの呟きが、夕暮れの商店街に響き渡る。
そして――
「……ぁ!」「……ぅ!」
カケルの周りに、女ゾンビたちが駆け寄ってきた。
ユイも絡新婦も、荷物持ちの三体も新たに仲間に加わった15体も全員が無事だった。
彼女たちはカケルを取り囲み勝利を祝福するように嬉しそうに身体を揺らしカケルに抱きついてきた。
「みんな、ありがとう!絡新婦、お前の機転がなければ俺たちは全滅してたかもしれない」
絡新婦は照れくさそうに顔を背けたが頬はほんのりと赤く染まっていた。
「さあ、戦利品を持って帰ろう!」
カケルは立ち上がり、荷物持ちのゾンビたちに声をかけた。
商店街で手に入れた大量の物資――医薬品、食料、衣類、日用品。そして中位種を倒したという、計り知れない経験値と自信。
総勢21名の大部隊は夕日に染まる道を、意気揚々と学校へと帰還していった。
【クラフトポイント獲得】
基本: 1,000pt(中位種「腐肉食らいの狼」撃破)
ポイント増幅装置により: 2,000pt獲得!
【現在のポイント: 7,550pt】
「中位種撃破でポイントが入った……?今まで入らなかったのに、どうしてだろう……しかも増幅器はセックスしか効果がないはずなのに……何かしらの法則が働いている……?」
【本日の総成果】
獲得物資:
医薬品(抗生物質、鎮痛剤、包帯、消毒液など)×大量
缶詰、レトルト食品、乾麺など保存食料×多数
衣類、靴、下着
電池、ライター、工具など日用品
新たな仲間:
女ゾンビ×15体(看護師、店員、学生など)
戦果:
中位種「腐肉食らいの狼」撃破
商店街エリア制圧
♢ ♢ ♢
【現在の状況】
現在地: 東側商店街(制圧完了)→学校へ帰還中
探索部隊: カケル、ユイ、絡新婦、荷物持ちゾンビ×3、新人ゾンビ×15
ハーレム戦力: 総勢57体(林の42体 + 新規15体)
クラフトポイント: 7,550pt
時刻: 夕方
物語の進展: 商店街の制圧に成功し、中位種との死闘を制した。カケルたちは、さらに強力な戦力と大量の物資を手に入れ、鉄壁の要塞へと凱旋する。この終末世界において彼らの勢力は成長しつつある。
♢ ♢ ♢
カケルたちが去った後……商店街
夕日が沈み夜の帳が降り始めた商店街。
カケルたちが凱旋した後、そこには静寂が戻っていた。倒された無数のゾンビの死体が夕闇に沈んでいく。
だが静寂は長くは続かなかった。
カツ……カツ……カツ……
整った足音が商店街の入口から響いてきた。
二つの影がゆっくりと、そして不気味なほど静かに商店街へと足を踏み入れる。
一人は――否、一体はシルクハットを被ったゾンビだった。
黒いタキシード、白い手袋、そして優雅なステッキ。ところどころ顔は腐り落ち、骨が剥き出しになっている。虚ろな眼窩には不気味な赤い光が宿っていた。
そして、もう一匹は――巨大で悍ましい姿をした狼だった。
カケルたちが倒した「腐肉食らいの狼」よりもさらに巨大で筋肉が隆起している。毛皮は漆黒で眼は地獄の炎のように赤く燃えている。口からは、絶えず腐臭を放つ涎が滴り落ちている。
二体は商店街に散乱しているゾンビの死体を、ゴミでも踏みつけるかのように無造作に歩いていく。
そして――
二体は頭部を失って倒れている「腐肉食らいの狼」の死体の前でピタリと脚を止めた。
「■■■! ■■■■■!!」
巨大な狼が死体を見て唸り声を上げた。
その声は怒りと悲しみが入り混じった、悍ましい咆哮だった。
シルクハットのゾンビはその様子を見て顎に手を当て、何かを考える素振りをした。
「グルルルゥゥゥゥッ!」
巨大な狼は怒りに震え、巨体を揺らしながら遠吠えをあげた。
シルクハットのゾンビは肩をすくめた。「やれやれ」と呆れているかのように。そしてステッキで地面を軽く叩いた。
コツン
その合図に応えるかのように――
ザザザザザザザッ……
どこからともなく無数の狼ゾンビが姿を現した。
その数は数十体。
カケルたちを苦しめた「腐肉食らいの狼」が大量に集結していた。
巨大な狼が再び咆哮を上げる。
「オォォォォォォンッ!!!」
それは復讐の宣言だった。
仲間を殺した者たちへの容赦なき報復の誓いだった。
夜が商店街を完全に覆い尽くした。
闇の中で数十の赤い眼が、獲物を狙う獣のように、不気味に光っていた。
「……」
シルクハットのゾンビは、狼に気付かれないように……静かに学校の方角へと視線を向けた。
その瞳にある感情は誰にも伺い知れない。
嵐の前の静けさ――やがて訪れるであろう、大規模な襲撃の予兆が闇の中で蠢いていた。