インドミナス・レックスによる雄英高校入試実技試験の惨劇が終息した後、現場の完全封鎖と捜査のため、塚内警部を筆頭とする警察の捜査班が、厳戒態勢の中で施設へと到着した。
彼らが目にしたのは、単なるヴィラン事件の現場ではない。戦場、あるいは屠殺場としか言いようのない、血と肉の地獄絵図だった。
施設の外壁から地面、そして避難場所と化した体育館のような施設内部に至るまで、人間の血と肉片、砕けた骨が散乱していた。アスファルトは濃い血糊で滑りやすく、凄惨な獣臭が辺り一帯に立ち込めている。
ヒーローたちの懸命な防御とサー・ナイトアイ、13号による迅速な避難誘導、そして相澤消太の命を賭した抹消のおかげで、辛うじて命を繋いだ者たちがいた。
爆豪勝己、麗日お茶子、飯田天哉等、雄英ヒーロー科1-Aとなる受験生たちは、生死の境をさまよったが、辛うじて命だけは無事だった。しかし、梅雨の右足切断、芦戸と切島の全身の重傷など、永久に残る肉体的・精神的な傷を負っていた。
塚内警部の捜査が始まる前に既に事態は最悪を極めていた。受験生の内、大多数が、インドミナス・レックスの無慈悲な捕食と蹂躙によって死亡していた。その残骸は、もはや人間の形を留めておらず、特定が極めて困難な状態だった。
モブ受験生T(生存者):「僕の目の前で…頭が潰れるのを見たんだ…脳漿が飛び散って… 助けられなかった…」
モブ受験生U(重傷者):「俺の背骨が折れてる… あの化け物は、俺たちを人間だと思ってなかった! 遊び道具だったんだ!」
塚内警部は、オールマイトやプロヒーローたちから事件の概要を聞き取りながら、被害者の数を確認した。彼の個性の特性もあり、彼はヒーローたちの証言が真実であることを即座に把握した。
しかし、直正の表情が青ざめていく。
直「…数が合わない。プロヒーローたちの証言に基づく受験生総数と、現場に残された遺体の数が、大幅に食い違っている」
捜査員は、肉片の総量から人数を推定しようとしていたが、塚内は恐ろしい一つの可能性に思い至った。
直(もしや…彼が……)
彼は、インドミナス・レックスという怪物の「本能」を思い出す。
直(…その通りだ。数が合わないのは当然だ。インドミナス・レックスの腹の中に入った受験生がいる。喰い尽くされた遺体は、この世から存在が抹消されているんだ)
その胸糞悪い事実は、塚内警部の胃を激しく締め付けた。この地獄絵図は、単なる破壊ではなく、最凶の捕食者による、徹底的な狩りだったのだ。
彼は、血と泥にまみれた緑谷出久の意識を失った姿を見つめた。その幼い少年が、この惨劇の元凶であるという信じがたい現実が、雄英高校の栄光を永久に汚す傷として、深く刻まれた。
ーーーー
出(『ここ…は…?』)
一方、出久は、激しい頭痛と共に、意識の浮上を感じた。彼は、重い瞼をゆっくりと開いた。
目に映ったのは、椅子が沢山並んだ、倉庫のような場所だった。
しかし、倉庫の壁と床はボロボロで、周りは暗く、現実の病院とはかけ離れた静謐な場所だった。
彼は声を発しようとするも、どういうわけか出来なかった。
出(『どうして…体が動かない?僕、試験の最中に…』)
彼の脳裏に、侵食する白い巨体がフラッシュバックのように蘇る。
その時、優しくも力強い声が、空間に響いた。
「やっと目を覚ましたようだな」
出久が声のした方を向くと、そこにはオールマイトの様なぼやけた人物もいて、その人含めて八人。
すると、八人の中で唯一女性である人が立ち上がり、僕の方へ歩み寄った。
出久(『貴方は…?』)
出久は声が出ないながらも彼等に問うた。
「私は「志村菜奈」。先代ワン・フォー・オール継承者であり、君の師《オールマイト》の師匠だ。そして此処は、ワン・フォー・オールの精神世界だよ、出久くん」
これに出久は戸惑った。
目の前にいる人物がワン・フォー・オールという力の源流であること。歴代の継承者たちが、静かに、しかし厳格な視線で彼を見つめていた。出久は少しずつ冷静になり事態を受け入れていった。
「話が早くて良いっすね。そっ、俺らは『ワン・フォー・オール』の中で生きる意識だ」
「しっかしもう干渉できるようなるなんてな。正直、やっぱりアレが原因か……」
口元を隠している黒髪の男に、スキンヘッドにゴーグルを被ったガタイの良い男がそう言った。
待てよ、それだったらオールマイトもこれは知っているのか?
「いや、こうやって継承者同士でのコミュニケーションを取れるようになったのは、九代目、君が継承してからなんだ」
「まぁプライベートは保証するから、心配ないさ!」
「話を戻すよ。でも、最初謝らせてほしい。この大変な時にごめんね」
出久の目の前にいた白髪で顔が隠れている男が謝罪した。
出(貴方も…)
「うん。僕は「与一」。ワン・フォー・オールを生み出した…。初代ワン・フォー・オールって言ったほうが良いかな」
出久が、目の前の歴代継承者たちに謝罪と状況の説明をしようとした時、歴代の一人、五代目継承者であるスキンヘッドの男。「ラリアット」が、重いため息をついた。
ラリア「しかし、彼奴…とんでもない奴に継承しちまったな…」
その言葉は出久を指していた。そして、菜奈が指を向けたのはワン・フォー・オールの精神世界を囲む境界線の外側。
菜奈が指差すそこには…。
OFAの精神世界という穏やかな光の部屋と、完全に隔絶された「外側」の空間。その闇と荒廃に満ちた空間の中で、巨大な影が横たわっていた。
それは、この精神世界の部屋よりも遥かに巨大な白い異形の影。
インドミナス・レックスだ。
彼の巨体は、白い装甲と禍々しいトゲを露わにし、その存在自体が精神世界を押し潰しそうな圧倒的な威圧感を放っていた。
その怪物の体には、ワン・フォー・オールの歴代継承者たちが共同で、力の根源から織り上げたであろう、幾重にも重なる、無数の巨大な鎖が巻き付いており、インドミナス・レックスの装甲に深く食い込み、その猛々しい動きを完全に拘束していた。
怪物の赤い瞳は、今は閉じられ、OFAの精神世界に引きずり込まれたことで強制的に眠らされている状態だった。
菜奈は真剣な表情で出久を見つめた。
菜「あれが君の「個性」だ。君の肉体とワン・フォー・オールが融合した結果、君の精神世界に引きずり込まれた状態にある」
するとー。
「ワン・フォー・オールの事について説明する前に事の現状を話すべきだ」
顔に二本の線が入った男が割って入った。
「私は四代目。「四ノ森避影」という」
ラリア「四ノ森さんら俗世に嫌気が差して仙人みてーな生活してた変人さ」
ラリアットが肩を組もうするが避影はそれを躱した。
避「ひどい時代だった。私以外が変人だったんだ」
ラリアットの放つ《黒鞭》を己の“個性”《危機回避》で躱しながら話を進めた。
避「さて、聞く覚悟は出来てるか?君があの後、何をしたのかを」
彼の問いに出久は目を見開いた。
僕が…何をしたのか……。
正直、凄く怖い……。でも…。
ラリア「どうやら、覚悟は決まったらしいな」
彼等は入試試験で何が起こったのかを話した。
出久は言葉を失ったまま、自身の心の奥底で鎖に繋がれた怪物を前に、恐怖と絶望に打ちのめされた。彼は、この怪物こそが、無数の命を奪い、ヒーローたちの心を折った、「白い悪魔」であることを否応なく理解した。
出(…僕のせいだ… 僕が、こんな怪物を…)
彼のヒーローへの道は、自分の個性という巨大な鎖によって、最初から閉ざされていたことを、精神世界で歴代継承者たちに突きつけられた瞬間だった。
与一は鎖に繋がれたインドミナス・レックスの巨体から視線を外し、緑谷出久に向き直った。彼の表情は、後継者としての温かさと事態の深刻さを伝える重い決意に満ちていた。
与「元々、
“個性”に
与「あの個性は、君の体を乗っ取ろうと常に画策していた。単なる遺伝子ではなく、本能的な支配欲を持つ悪意の塊だったんだ」
常に…僕の体を狙っていた…?
与「だが、そこに僕たちワン・フォー・オールが宿ったことで、事態は起こった」
与一はワン・フォー・オールの継承の原理を、優しくも厳格な口調で出久に説いた。
与「本来、今のワン・フォー・オールという巨大な力を受け止めるには、何も無い器、すなわち「無個性」じゃなきゃ出来なかった。それは、歴代の力が混ざり合う空間が、純粋で広大である必要があったからだ」
出久は、自分は無個性ではなかったという事実に、激しい罪悪感を覚える。
ラリア「だがな、テメーの“個性”《インドミナス・レックス》がその膨大な力を無理やり取り込むことを可能にした。その代わり、其奴とワン・フォー・オールは、君の魂の核で繋がっちまったのさ」
それは、二つの規格外の力が、融合という最悪の連鎖を生んだ瞬間だった。
避「インドミナス・レックスは、ワン・フォー・オールという更なる膨大な力を自分のものにしようと、私たちに襲いかかってきた。その時は、私たち歴代継承者総出で、あの暴走を抑え、精神世界の壁の外側へと押し込めた。本当に苦労したよ…」
ラリアットが、憤懣を込めた口調で、今回の惨劇の真相を突きつけた。
ラリア「ワン・フォー・オールという膨大な力を手に入れた事で、あのインドミナス・レックスの個性は、知性を高めた。 奴はテメーが慣れないワン・フォー・オールの力を使って肉体を激しく破壊した、その時こそが解放される絶好のチャンスだと理解し、水面下でその時を待った」
ラリアットは、拘束された巨体を指さした。
ラリア「そして、お前がOFAの力を使った絶好の機会が来た瞬間に精神の壁をこじ開け、
与「それが、今回の騒動の全てだ」
出久は無言のまま、全身を支配する絶望の中で己の存在がどれほどの脅威であるかを明確に理解した。彼の体は英雄の光と最凶の怪物という二つの破壊的な力を内包する、時限爆弾だった。
菜奈はワン・フォー・オールの継承者として、そして師として、緑谷出久の苦悩と決意を全て見届けていた。彼女は精神世界での時間が終わりを告げようとしていることを察した。
菜「そろそろ時間のようだね。 現実の世界に戻るよ」
彼女は、歴代継承者たちが厳格な視線を向ける中で、出久のヒーローとしての核を繋ぎ止めるための最後の言葉を贈った。
菜「最後に言っておくよ」
菜奈はかつてオールマイトに教えた強く、優しい笑顔を作った。
菜「笑顔を忘れるな」
その言葉と共に、出久の体は、ワン・フォー・オールの精神世界から強制的に弾き出されていった。彼の脳裏には、鎖に繋がれた怪物の巨体と、菜奈の最後の笑顔が、強く焼き付いていた。
ーーー
緑谷出久が精神世界から離れて本当に目を覚ました時、彼の五感は病院の独特の消毒液の匂いと硬い寝台の感触を捉えた。
しかし、彼の身体は、動こうにも動けなかった。
出久の両手首と両足首そして胴体は特殊な硬化素材で作られた厳重な拘束具によって寝台にしっかりと固定されていた。彼は上半身裸のままであり、全身の至る所に痛々しい傷が生々しく残っている。
AM「…緑谷少年」
オールマイトが痛ましげな表情で彼の傍に立っていた。傍ではグラントリノとサー・ナイトアイ、そして勝己がいた。
オールマイトのトゥルーフォームは、試験での激闘と精神的な疲弊でいつ崩れてもおかしくないほどいつも以上に弱々しく見えた。
AM「こんな格好にして、本当に済まない。だが、君の個性の危険性を考慮すると、今はこれしか方法がないんだ」
オールマイトは「…落ち着いて聞いてくれ」と重い口を開いた。
インドミナス・レックスが試験会場と避難施設で出した惨状…。血の海、肉塊、そして潰された死体……。
オールマイト:「…君の行動で、多くの命が失われた。大多数の受験生が死亡した…」
改めて聞かされた現状に出久の心臓を鋭い刃物で貫くようだった。
出久の目から、大粒の涙が溢れた。彼は拘束具の中で、懺悔の念に身悶えるしかなかった。
その時、病室に小さな影が入ってきた。
「始めましてだね緑谷出久くん。僕は雄英高校で校長をしている「根津」というものなのさ」
雄英高校の校長というまさかの登場に出久は目を見開いた。
AM「彼は私の“個性”について知ってる人物の一人だ。」
根津のその小さな体からは重厚な責任感が滲み出ていた。
根「緑谷君。今回の件、君は何も悪くないのさ。」
根津は真っ直ぐに出久を見つめた。
根「君の個性が極めて特殊で危険である事は我々は前から知っていたのさ。それなのに、厳重に警戒してるからと侮り、それ以上の万全の対策を取らなかったのは僕たち雄英の責任なのさ」
根「君は被害者でもあるんだよ。心を鬼にして、自分の個性と戦い続けていた君に、この責任を負わせるわけにはいかないのさ」
出久の心は師の悲痛な告白と校長の責任論の間で激しく引き裂かれていた。彼は無言のまま、ただ涙を流すことしかできなかった。
厳重に拘束された病室の中で緑谷出久は涙を流し、言葉を失ったままだった。しかし、彼はこのままではいけないという強い使命感に駆られた。
出(僕の身体に何が起こっているのかを、皆に伝えなきゃいけない。そうじゃなきゃ、またあの怪物が暴走してしまう…!)
出久は言葉ではなく、激しい意思の力を込めてオールマイトを見つめた。幸い、拘束はされていたが、口元は開いていた。
出「…オールマイト…話したいことがあります……」
彼は全身の力を振り絞り、志村菜奈等継承者との出会いからインドミナス・レックスの真実を突きつけられたことまでを、一言一句、噛みしめるように語った。
出久の口から語られた真実は、あまりにも規格外で、常識を覆す内容だった。
AM「…まさか、少年の元々の個性に意思が宿っていたなんて……」
オールマイトは、師の存在と、OFAの秘密について出久が嘘をつくはずがないと理解しつつも、あまりにも重すぎる現実に、言葉を失った。
グラントリノは、顔を険しく歪ませた。
グラ「あの怪物のあの狡猾さは、本能なんかじゃなかった。知性…そして邪な意志だったのか!」
サー・ナイトアイは、鋭い目を大きく見開き、予知の個性をもってしても予測不可能だった事態の真相に、戦慄していた。彼は、出久の真剣な目が紛れもない真実を語っていることを確信した。
そして爆豪勝己。彼は、出久の言葉を聞きながら、あの暴走の最中に感じた「違和感」の正体を悟った。
勝「…あの時、テメェが暴れてたのは、彼奴に乗っ取らてたからってことかよ…!」
出久は拘束具の中で、涙と決意を込めた目で一同を見つめた。
彼の告白はヒーロー社会全体の運命を根底から揺るがす最重要機密だ。
緑谷出久の衝撃的な告白とインドミナス・レックスの真実を聞いた後、根津校長は静かに、しかし決然とした口調で雄英としての最終的な判断を下した。彼の小さな体には、教育者としての信念と責任が満ちていた。
根「緑谷くん。君は自分自身が最も大きな脅威であることを知ってしまった」
根津は出久の拘束された手を見つめながら、その重い言葉を続けた。
根「世間や警察、あるいはヒーロー社会の一部は、君を『怪物』と呼び、永久に隔離することを求めるだろう。君が引き起こした惨劇はそれほどに甚大だ」
出久はその言葉に反論する術も権利もなかった。彼は頭を垂れ、運命を受け入れる覚悟を決めていた。
しかし、根津校長は首を横に振った。
根「だが、僕たち雄英は、君をヴィラン認定して見捨てはしないのさ」
その言葉に、オールマイトとグラントリノの表情に、わずかな安堵が浮かんだ。勝己は沈黙を保っていたが、視線は出久に強く固定されていた。
根津は出久の未来と社会の安全を両立させるための非情な決断を告げた。
根「君の体内に存在する二つの規格外の力は、どこか一箇所で、監視と制御を受けなければならない。そして、君自身も、自分の運命と向き合う教育が必要だ」
根津校長は真っ直ぐに出久を見つめた。
根津:「そこで、君には監視という目的になってしまうが、特待生として雄英高校に入学してもらうのさ」
それは、ヒーロー教育という名の下に、史上最悪のハイブリッド個性を管理し、制御するという、雄英史上、最も危険な計画だった。
オールマイトは愛弟子の過酷な未来に胸を痛めながらもこれが最善の道だと理解していた。
出久は、ヒーローになるという夢と、自分が負った罪、そして鎖に繋がれた怪物を内包する現実を全て背負って入学することになったのだ。
出久(僕が…雄英に…? 僕は、あの人たちを…殺してしまったのに…)
彼の目には、新たな希望と、拭いきれない絶望の両方が混ざり合い、決意の炎を灯していた。彼のヒーローへの道は、地獄の門から再スタートを切ることとなった。
ーーー
緑谷出久が雄英高校の入学式を迎えるまでの数日間は彼にとって、肉体的苦痛よりも精神的な地獄だった。
彼は厳重な医療施設の一室で、常に拘束具に繋がれたまま生活していた。身体の傷は個性《治癒》を持つリカバリーガールによって急速に回復したが、ワン・フォー・オールの力とインドミナス・レックスの個性の融合による精神的な疲弊は深かった。
拘束具は、彼の皮膚に擦過傷と圧迫痕を常につけていたが、それが彼の「怪物」への変貌を止めるための唯一の安全策だった。
オールマイトや根津校長が訪れる度に、出久はあの惨劇で犠牲になった者たちを思い出し、拘束具の中で、声を殺して泣き続けた。
そしてー。
ー入学式当日の朝ー
出久は特別に、オールマイトと爆豪勝己に警護されながら、一時的に、自宅へと戻ることを許された。
自宅の前には、相変わらずマスコミや野次馬が群がっていたがオールマイトの存在と勝己の殺気に怯え、手出しはできなかった。
引子は数日ぶりに我が子と対面した。
出久は病院から支給された、清潔だが無機質な制服に身を包んでいた。拘束具の痕を隠すようにワイシャツの袖をしっかりと留めていたが、その顔は憔悴しきっていた。
引子は、やつれた息子の姿を見て、堪えきれずに、その場で泣き崩れた。
引「出久… 本当に…本当に、行ってしまうの…?」
出久は、母に抱きつくこともできず、ただ立ち尽くした。彼は自分が、母親と友人にどれほどの罪を負わせたか理解していた。
出「うん。 僕が起こしたことの責任を果たすために…そして、この力と向き合うために…」
引子は涙を拭い、覚悟を決めた息子を真っ直ぐに見つめた。
涙で歪んだ顔に精一杯の笑顔を浮かべた。その笑顔は、志村菜奈が精神世界で見せた、あの強い笑顔と重なった。
引「超かっこいいよ。 出久」
その母親の言葉は、出久の心に深く突き刺さった。彼は、拘束され、殺人者と見なされても、母の愛だけは変わらないことを知った。
出「…行ってきます!」
オールマイトと勝己に厳重に守られ出久は地獄の門とも言える雄英高校へと向かっていった。彼の新たな学園生活は、監視と憎悪に満ちた、過酷な戦いの始まりだった。