※この作品はR-18です。

僕の制御不能なヒーローアカデミア   作:龍座

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ー幕間ー 出久が残した爪痕

緑谷出久が厳重な医療施設で拘束され、雄英の「特待生」として監視下に置かれることが決定した後、彼の母親である緑谷引子の生活は、一変して地獄と化した。

 

インドミナス・レックスが引き起こした「東の雄英地獄絵図」の惨劇が世間に伏せられたとはいえ、「雄英入試会場での未曾有の大規模ヴィラン襲撃事件」として報道され、「犯人は特定されたが、詳細は機密」という情報だけが広まっていた。

しかし、当然そんなものなんの役にも立たなかった。生き残った生徒、プロヒーロー達が事件の真相を話だが事で緑谷家は社会的な集中砲火を浴びることになった。

 

引子の自宅は、事件直後から戦場と化していた。

テレビカメラとフラッシュを持ったマスコミが昼夜を問わず家の前に押し寄せ、「殺人鬼の母親」として引子を非難する質問を拡声器で浴びせ続け。 事件の犠牲者や重傷を負った受験生の親族が、「なぜ、あの化け物を育てた!」と憎悪の叫びを上げながら卵や石をアパートのドアに投げつけた。

 

「あんたの息子が私の娘の未来を奪った! どう責任を取るんだ! あんたも同罪だ!」

「我々の血で地獄を見たんだぞ!あの世で償え!」

 

スマートフォンを持った野次馬が集まり、引子の悲痛な姿を撮影し、ネットで拡散し続けられもした。

 

オールマイトと爆豪勝己は、引子の精神的な崩壊を防ぎ、身の安全を確保するために、交代制で緑谷家を守るという極秘の任務についていた。

 

オールマイトは最初、平和の象徴としての表向きの活動と、引子の警護の重責、そしてOFA継承者として愛弟子の暴走を止められなかったという罪悪感から、マッスルフォームを維持する時間は著しく短くなっていた。だが、グラントリノとサー・ナイトアイ等の登場と彼への「背負い込むな!」という叱咤により、心が軽くなった結果、元の調子を取りもどしていった。

 

勝己は、「こんなモブども」の相手をしなければならないことに激しい苛立ちを感じていたが、出久と引子に対する複雑な感情から警護を続けていた。彼は家の前に張り付くマスコミや野次馬に対して本気の爆破を放ちたい衝動を必死で抑え、「うるせぇ!」と一喝して群衆を追い払う役目を担っていたのだった。

 

引子の不幸はそれだけではとどまらなかった。マスコミや世間だけでなく、最も頼れるはずの親族からも見放されていたことを、涙ながらにオールマイト等に語り始めた。

 

引「親戚も近所の人も…誰も信用してくれないんです。電話に出たら、『殺人鬼の息子を育てた罪』だと責められました…『縁を切る』とまで…」

 

出久の個性が極めて危険であることは、親族の一部にも漠然と伝わっていたため、事件が起こると彼らは即座に距離を置いたのだ。

 

そんな絶望的な状況の中、引子の拠り所となり心を支えようと立ち上がった人物はオールマイトと勝己等だけではなかった。

 

海外で単身赴任中の出久の父「緑谷久」は、事態の全てをオールマイトから聞き帰国が困難な状況でも国際電話で毎日のように引子を励まし続けた。彼は妻と息子を心から信頼していた。

 

出久の 幼馴染の母親である「爆豪光己」は長年の友情と母親としての共感から、連日緑谷家を訪れ、引子の世話を焼いた。彼女はマスコミに対しても一切怯まず、「アンタらに関係ないだろう!」と一喝して引子を庇った。

 

最初、親族に拒まれ、絶望していた彼女。しかし、まだ自分を、そして息子を心配してくれて、側にいようと奮起する存在がまだいたことが引子にとっては本当に嬉しかった。

 

ーーー

 

緑谷出久を監視下に置く為に雄英高校への特待生入学が決定し、厳重な施設で拘束状態に置かれたという情報は、最高機密にも関わらず、彼の出身校である折寺中学校には瞬く間に広まった。

 

彼らは、出久の個性《インドミナス・レックス》の真の危険性を、誰よりも早く、そして最も近しい場所で知っていた者たちだからだ。

 

折寺中学校の生徒と教師たちは、雄英高校の試験会場で起こった凄惨な「東の雄英地獄絵図」が、「あの緑谷」の個性によるものだと確信し、恐怖と安堵、そして根強い偏見が混ざり合った複雑な感情に支配されていた。

 

職員室は、雄英の惨劇について語る教師たちの緊迫した空気で満たされていた。

 

個性診断の担当教師(教師A)「見ろ!やはりな! あの時、診断で出た結果は間違いじゃなかった!『極めて危険な異形型』、『捕食本能』、『社会的適応不可能』…!」

 

彼は、出久の個性の覚醒が彼の「悪意」によるものだと、今もなお決めつけていた。

 

出久を無視し続けた担任教師(教師B)「チッ…。 結局、雄英はあのバケモノを引き取ったのか。特待生だと?馬鹿げている! まるで、核兵器を飼い慣らすようなものだ!」

平和主義者教師(教師C)「ですが、彼自身も被害者のはずです!個性には意思があったと…」

教師A「甘い! あの暴走は、彼が日頃から抱えていた『鬱憤』が怪物の意思と共鳴した結果だ!本質は変わらん! 彼のせいで、受験生が何百人も死んだ!彼が生きたまま雄英に入学なんて、笑い話にもならない!」

 

彼らは、自分たちの生徒の命が自分たちの偏見のせいで危険に晒された可能性から、必死に目を背けていた。

 

教室でも雄英での惨劇が最大の話題となっていた。

 

「聞いたか?雄英の試験で死人が数百人出たらしいぞ…あの緑谷がやったんだって…」

「あの『トカゲ野郎』が…!? やっぱり、あの時の診断は正しかったんだ!あいつは『個性』を持って生まれてきた時から、人間じゃなかったんだよ!」

 

「お前ら、よくあんな『怪物』と同じクラスで平気だったな…。私たちもいつか食われるんじゃないかって、ずっと嫌悪感を抱えてたんだぞ…キモイ」

 

彼らは、自分たちが安全な場所にいたことに安堵し、その恐怖を出久への憎悪と差別意識に変えていた。

 

爆豪勝己は、折寺中学校の生徒たちの騒ぎを一瞥することもなかった。彼は自身の机に座り、硬い表情で自分の拳を見つめていた。

 

「ば、爆豪…。アイツ、やっぱり『怪物』だったんだよ…。特待生で雄英に入るって…マジやばいだろ…」

勝「…うるせぇ」

 

怪物だと?クソが!

 

勝己は出久の個性に意思が宿っていたこと、出久がずっとその怪物と戦い続けていたことを知っている唯一の生徒だった。

 

勝(あの時のデクの目は…本物だった。俺は、アイツを『抗おうともせず“個性”を怖がってるビビリ』だと見下していたが…実際は、俺の想像を遥かに超える『怪物』を体内に宿っていた…)

 

勝「チクショウ…! 誰が『特待生』だ! あんな『生きた兵器』をヒーロー科に入れるなんて、雄英も狂ってやがる!デクを殺せるのは、俺しかいねぇ…次は、絶対に止めてやる!」

 

勝己は、出久を『ヴィラン』としてではなく、『乗り越えるべき規格外のライバル』として、憎悪と責任感がないまぜになった複雑な感情を抱いていた。

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