雄英高校の入学式当日。出久は、厳重な警護のもと、雄英高校の巨大な校舎へと足を踏み入れた。彼の両脇をオールマイトと爆豪勝己が固め、その後ろを担任教師となる消太が静かに続いた。
オールマイトは、周囲の生徒や教師から出久への好奇の視線が集まるのを静かに牽制し、勝己は苛立ちと鋭い殺気を放つことで無関係の者を遠ざけていた。
出久は、彼らが自分を「怪物」ではなく「生徒」として扱っていることに、胸の奥でかすかな温かさを感じていたが、同時に、自分が起こした罪の重さから顔を上げることすらできなかった。
1年A組の教室へと近づくにつれ、出久は一つの疑問を消太に投げかけた。彼は、自分は隔離された特別棟で教育を受けるべきだと思っていたからだ。
出「あの…相澤先生。 僕が…皆と同じ、1年A組の教室で学ぶのは…本当に正しいのでしょうか?僕は多くの人を…殺めてしまいました。 皆とは隔離された場所で…監視されるべきでは…」
彼の声は、後悔と無力感に満ちていた。
オールマイトは心配そうに出久を見つめたが口を挟まなかった。勝己はチッと舌打ちをし、その言葉に苛立ちを覚えているようだった。
消太は立ち止まり、出久の目を真っ直ぐに見つめた。
彼の赤い瞳は厳しく、しかし偽りのない教育者としての覚悟を映していた。
消「緑谷。お前の“個性”が凶悪だからって俺たちは差別はしない」
その言葉は拘束され、社会から非難され続けてきた出久の心に、鋭く、深く突き刺さった。
消「お前の
お前にヒーローになるという覚悟があるのなら、俺たちも全力で、お前の暴走と心の闇を制御するためにサポートする。お前を『悪』にしないために、教師として全ての力を使う」
消「ただし、 当然、過酷な道になる。 お前は、同級生の憎悪と社会の重圧、そして体内の怪物と戦い続けることを強いられる。挫けることは許されない」
消「全力で付いてこい」
消太の言葉は、「監視対象」としての厳しさと、「生徒」として見捨てないという確固たる意志を同時に含んでいた。
出久は、相澤の揺るぎない覚悟に、激しく胸を打たれた。
出「…はい!」
彼の返事には、悲壮な決意と希望が混ざり合っていた。差別され、隔離されるべきだと思っていた彼にとって、消太の言葉は何よりも嬉しかった。拘束はされても、彼はまだ「ヒーローの卵」として戦うことを許されていたのだ。
消「入れ。緑谷」
消太の指示で、出久は緑谷出久はオールマイトと勝己に護衛されながら緊張の面持ちで、1年A組の巨大な扉を開け、未来のヒーロー達、そして彼を憎み、殺意を抱く、惨劇の生存者たちが待つ教室へと新たなそして過酷な一歩を踏み出した。
教室は重く、冷たい沈黙に支配されていた。
出久が中に入ると、視線は一点に集中した。それは、恐怖、憎悪、そして純粋な殺意に満ちた、凍えるような視線だった。
出久は、その視線を恐る恐る受け止めながら、彼のせいで人生を狂わされた、クラスメイトたちの「惨状」を目の当たりにした。
「飯田天哉」の特徴的なエンジンの脚は消えていた。代わりにメタリックな、無機質な義足が制服のズボンから覗いており、インドミナス・レックスに踏み潰された彼の両足の無残な記憶を生々しく示していた。彼の顔は憎悪で硬く引きつっていた。
「蛙吹梅雨」は潰された右足の幻肢痛に全身を震わせながら、制服の下に隠された、右足の切断部分の先端を強く握りしめていた。涙が静かに頬を伝っていたが、その目は出久への冷たい殺意で燃えていた。
そして、惨劇の記憶が最も深く刻まれた、女子生徒たちは既に理性を失いかけていた。
岩石による上半身の圧壊から蘇生した「麗日お茶子」は、包帯こそ取れていたが、椅子の上で身を小さく丸め、極度のパニックに陥っていた。彼女は出久を見た瞬間、自分の下半身を強く握りしめ、恐怖から引き攣った声をあげた。
お茶「汚い… グ…グェッ… どいて… 近づかないでぇ! 食わないでぇえ!!」
「芦戸三奈」は 顎による噛み砕きのトラウマで摂食障害に陥っている彼女は、出久を見た途端、胃液を吐きながら、耳を塞ぎ、ヒステリックに叫び始めた。
三「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! 口を開けるな! 肉の味がする! 吐き気がする!」
「葉隠透」と「耳郎響香」も錯乱しており、葉隠は震えながら、自分の体を必死で隠そうとし、耳郎は自分の耳を爪で掻きむしりながら嗚咽を漏らしていた。
爆豪勝己は、苛立ちながら椅子に座って、出久への殺意を露わにする他のクラスメイトたちを一瞥した。
勝(相変わらずモブはうるせぇな…だが、コイツらの憎しみの目は本物だ)
教室に渦巻く恐怖と憎悪は、限界点に達した。
数名の生徒が、出久を倒そうと無謀な行動に出た。上鳴電気が放電を準備し、常闇踏陰の影がうごめき始める。
踏「悪は断罪されねばならん! ここで始末する!」
消す「落ち着け!」
相澤消太の長い髪が宙に浮き上がり、その真っ赤な瞳が教室全体を射抜いた。
バチンッ!
上鳴の放電は途中で途切れ、常闇のダークシャドウは縮小し、他の生徒が発動しようとした全ての“個性”が一瞬で掻き消えた。
消「良し、全員揃ったな。騒ぐのは後にしろ」
沈黙が支配する中、制服の裾から血と汚物の匂いが微かに漂う。「峰田実」が震えながら相澤に悲痛な叫びを上げた。
実「な、何でヴィランがここにいるんだよ!!俺たちをまた殺す気か!こんなのおかしいだろ!」
その叫びは教室の全員の本音だった。
相澤は表情一つ変えず、冷徹に言い放った。
消「彼は雄英の特待生だ。そして、これから共に学んでいく生徒だからだ」
消「いいか。 お前たちはこれからジャージに着替えてグラウンドに集合だ。 文句は全て俺が聞く。今は命令に従え」
教室には相澤の威圧的な個性によって強制的に静止させられた憎悪と、出久という生きた怪物との地獄の学園生活が始まることへの絶望が重く、深く渦巻いていた。
ーーー
1年A組の生徒たちは、制服から体育着へと着替え、消太に促されるままグラウンドへと集まっていた。
彼らの体育着の生地はそれぞれの身体が負った生々しい傷跡や不自然な欠損を隠しきれず、痛々しかった。飯田天哉の義足、蛙吹梅雨の右足の切断部分、瀬呂範太の空になった右袖が、出久が引き起こした惨劇の代償として存在していた。
生徒たちは出久から可能な限り距離を取り、誰も彼に近寄ろうとはしなかった。爆豪勝己のみが一歩離れた場所で腕を組み、周囲の憎悪と出久を交互に睨みつけていた。
オールマイトと勝己に付き添われ、グラウンドの中央に立つ出久は、全ての殺意を一身に浴びながら、その場に立っていること自体が苦痛だった。
「「「個性把握…テストォ!?」」」
麗日お茶子や芦戸三奈といった精神的に錯乱している者たちは、相澤の突拍子のない発言にさらに混乱し、目を見開いていた。
消「お前たちは、中学でも体力測定はやってきただろう? だが、この国は未だに個性を禁止した『平均記録』に基づいて物事を判断している。非合理的だ」
消「ヒーローを目指すなら、お前たちがどういう能力を持っているか、正確に把握しなければ始まらない。雄英では、入学式はヒーローの卵としての覚悟を測るためのものだ」
消太は表情を一切変えず、冷たい視線を出久へと向けた。その視線は出久の体内の怪物を直接見透かしているかのようだった。
消「緑谷。お前は入学試験で散々、その“個性”の危険性を見せつけてくれた。
だが、今日はその“個性”を制御し、ヒーローとして扱えることを証明してもらう」
相澤は、出久を指名し、ソフトボールを手渡した。
消「中学の時のソフトボール投げの記録はいくつだ?」
出久は震える声で答えた。
出「…60メートル台です」
消「じゃあ、個性を使ってやってみろ。思い切りな」
勝己は相澤の指示に鼻で笑った。
勝「ハッ! あのクソ雑魚が個性を使えだと? 暴走して自滅しろ」
しかし、他の生徒たちの反応は異なっていた。彼らの目は、出久の制服の下に隠された、ワン・フォー・オールと融合した白い怪物の影を見ていた。
天(奴が個性を使えば、また…またあの血の地獄が繰り返されるのか!)
梅(また暴走するのなら、ここで止めなければ…私の右足の代償は無駄にできない)
出久はソフトボールを握りしめた。彼の全身は恐怖で硬直していた。ワン・フォー・オールの力を使えばインドミナス・レックスの個性が再び覚醒し、この場で再び惨劇を引き起こすかもしれない。
消太は、その迷いを見透かすように、彼の「抹消」の個性をいつでも発動できるように準備していた。極度の緊張と殺意が支配する中、雄英高校の最初の試練が始まろうとしていた。
出久は消太の厳格な視線とクラスメイトたちの憎悪に突き動かされ、ソフトボールを握りしめた。彼は、体内のOFAを慎重に制御し、暴走を起こさないように細心の注意を払いながら個性を発動させた。
出久(暴走させちゃいけない。皆をまた傷つけるわけにはいかない…この力をコントロールしないと…)
細心の注意と最大の緊張が全身を覆う中、右腕にOFAの緑色の電流が微かに走り始めたその次の瞬間!
ドクン!
心臓が嫌な音を立てて激しく脈打った。それは、出久の意志とは無関係に、体内の「白い悪魔」が覚醒を始めた**合図だった。
出久:「ぐっ…グウゥゥ…!」
緑谷の身体がみるみるうちに異形へと変形し始めた。右腕の皮膚は硬質な白い装甲へと変わり、指先は鋭い鉤爪へと伸びる。顔の右半分には不自然なトゲと白い鱗が侵食し、琥珀色の眼光がギラリと相澤を睨みつけた。
インドミナス・レックスは、ワン・フォー・オールの発動という
消太は、この事態を予測していたかのように即座に反応した。
消太の赤く光る瞳がインドミナス・レックスの変異を捉えた直後、個性《抹消》が電光石火で発動した。
バチン!
インドミナス・レックスの右腕に走っていたOFAの電流が一瞬で掻き消え、変形しかけていた白い装甲がゆっくりと元の出久の皮膚へと戻っていく。怪物の咆哮は喉の奥で強制的に押し込められた。
消「緑谷、 もう一度だ」
個性を消され、身体の侵食が後退した出久は、激しい吐き気と精神的な疲労に襲われながらも、グラウンドにゆっくりと立ち上がった。
クラスメイトたちの視線は相変わらず恐怖と嫌悪、そして憎悪に満ちていた。彼らの負の視線が、出久の背中に無数の棘となって突き刺さる。
消太は生徒たちの殺意と出久の弱さを一括するように、厳しい言葉を投げつけた。
消「言っとくぞ 緑谷」
消「誰かにまた救けてもらうつもりで、いつ起きるかわからないチャンスを棒に振ってばかりじゃ、ヒーローにはほど遠いぞ」
その言葉は、オールマイトや相澤自身の救いに甘えようとする出久の深層心理を鋭く穿った。目の前の現実は、誰かの助けなしに乗り越えられないほど過酷であることを彼は知っていたが、相澤は敢えて、彼の意志を問うた。
出(力の調整…今は完全には無理だ……このままではまた暴走する。それなら!)
ただ全力で!!ボールが指から離れる寸前の、一瞬だけ!
出久は、ソフトボールを再び握りしめ、全神経をボールとその指先に集中させた。
走り込み、跳躍し、ボールが指から離れる、わずかにコンマ数秒の瞬間—人差し指の先端に、OFAの全てを集中させた!
ドォン!
ボールは、凄まじい爆風とワン・フォー・オールの衝撃波を伴って、遥か遠くへと飛んでいった。
しかし、その短い時間でも、インドミナス・レックスの侵食は始まっていた。
ボールが指を離れたのと同時に怪物の個性が出久の体に一気に流れ込み、その右半分を瞬時に変形させた。侵食は右肩から顔の右半分へと広がり、右眼は琥珀色の獰猛な眼光を放っていた。
だが、あまりにも時間が短かった事で侵食は右半分で終息した。
左半分の人間としての理性の目と、右半分の白い悪魔が同居するおぞましい姿となっていた。
完全な白い悪魔の右腕と侵食した右半分の身体で、琥珀色の眼光を相澤に向けた、半分怪物となった出久は、掠れた声で叫んだ。
出「まダ…やレマす…!」
己の肉体が半ば怪物に支配されながらも、決して折れない、ヒーローとしての意志を叫んだのだ。
消太は、その言葉と半獣半人のおぞましい姿を見て、一瞬の沈黙の後、口元を静かに、そしてわずかに上げた。
消「此奴……!」
それは、予想を遥かに超える、制御不能な危険性と、それをねじ伏せるほどの異常な執念を見た教師の満足感だった。
消「705.3メートルだ」
消の口元は、出久という規格外の生徒が、ヒーローとして一筋の光を見せた事への教師としての確かな「微笑み」だった。
地獄のクラスでの最初の一歩が踏み出された瞬間だった。
ーーー
緑谷出久がインドミナス・レックスの半身を露呈させながらも、ソフトボール投げで驚異的な記録を出した直後、グラウンドには一時的な沈黙が訪れた。
半身が怪物、半身が人間というおぞましい姿の出久を見て、クラスメイトたちの感情は極度の混乱に陥った。
上鳴 電気は腰を抜かし、恐怖に顔を歪ませた。
電「何だよ… アレは! まるで二つの存在が一つになっているみたいだ…」
「八百万百」は、推薦組として惨劇を免れたが、その場で出久の体を見た瞬間、顔が真っ青になった。彼女の学術的な知識とヒーローとしての本能が危険信号を発した。
百「個性が2つあるように見えましたけど…まさか! あれこそが事件の元凶…!…あの時、聞いた『ハイブリッド』とはこういう意味…?」
恐怖によって百の本能が彼女に命令した。
百(これ以上、あの怪物が大きくなる前に始末しないと…!彼の体を構成している細胞を破壊するべき…)
三奈は噛み砕かれた際のトラウマが蘇り、激しく後ずさりながら、怒りと恐怖を滲ませた。
三「あ、あの化け物……まだ… まだ隠し持ってたの…? あの時、全力を出していたら、私たちが死んでたってこと…? 嘘だと言ってよ!」
しかし、地獄を生き延びたことで精神的に変容を遂げていた一部の生徒たちは、このおぞましい光景を別の視点から見ていた。
しかし、天は見捨ててはいなかった。
峰田 実「カッケェ……!」
踏(内に秘める悪魔に抗い制御しようと動くその姿…! 彼こそが真の『ダークヒーロー』の資質を持つ…)
「常闇踏陰」は目元を手の甲で拭い、静かに涙を流していた。
力そうか… 彼奴は個性に振り回された被害者だったんだな…… 制御しようと必死なんだ)
障子範多と轟焦凍は無言だったがその眼差しは出久の抱える力の闇とそれに対する抵抗に強い興味を示し始めていた。特に轟は、二つの力の共存という自身の宿命と、出久の状況を重ね合わせているようだった。
彼等は出久の苦闘を見たことで、彼を「悪意ある怪物」ではなく「個性の被害者」として認識し始めたのだ。
消「良し、それじゃ、他の生徒と混ざってテストを受けろ」
その後、出久は相澤に個性を消され、残りの個性把握テストを個性なしで終えることになった。
しかし、彼の身体は激しい疲労と侵食の反動でフラフラだった。
テストの最中、クラスメイトから疑念や怯えの声、そして露骨そして陰湿な妨害が繰り返された。
天哉は 憎悪の義足で出久の走路を妨害しようと動き。
梅雨は遠くから舌で出久の足を払おうとし。
範太は片腕でテープを放ち、出久の体に貼り付けようとする。
教師にバレないように動き出す。しかしこの憎悪に満ちた妨害は、一部の生徒によって阻まれた。
勝「テメェら横取りすんじゃねぇ!此奴は俺がぶっ殺すんだ!!」
口は悪かったが彼なりに出久を庇ってるんだろう…多分……。
踏陰は
そして、休憩中、優雅、実、力道、甲司は静かに、しかし確かな、慰めの言葉を出久にかけた。
優「C'est magnifique! 自己を制御する輝きに満ちているね☆!負けないで☆」
力「…大変だろうけど、頑張れよ」
恐怖はあるが好奇心や善意を抱く生徒達が怯えながらも、出久に声をかけ彼を慰めようと試みた。
消太は、その全てを、目を細めて見ていた。
消「…………」
彼は何も言わなかった。相澤は生徒たちの間に生まれた「憎悪」と「共感」という複雑な感情の坩堝、そして出久の存在が引き起こすであろう「化学反応」こそが、真のヒーローを育成するための、過酷な授業だと考えていた。
消(これが、お前たちの現実だ。殺意と恐怖が渦巻く中で、お前たちはヒーローとして、そして、人間として、どう生き残るつもりだ)
彼等は憎悪の連鎖を断ち切ろうとしていることを静かに観察していた。彼の「個性把握テスト」は、出久の力の測定だけでなく、この「崩壊したクラス」の精神状態を把握するための、最初のそして最も残酷な試みだった。
ーーー
個性把握テストの全行程が終了したグラウンドは、激しい疲労と出久への根深い負の感情で満たされていた。特に、左足を失ったことで精神的な安定を欠く飯田天哉、片腕を失った瀬呂範太、そして異常な二重個性に恐怖を覚える八百万百からの憎悪は、隠しようもなく出久に突き刺さっていた。
その激しい視線から出久を守るため、障子目蔵は個性《複製腕》を静かに展開し、巨大な手のひらで出久の視界を物理的に遮っていた。
相澤消太は、テスト結果が表示された端末を手に、静かに宣告を始めた。
消「これで全てのテストは終わりだ。それじゃ、結果を言うが、ヒーローの資質ゼロの奴は除籍にするからな」
「除籍」。その言葉に生徒たちは青褪めだした。
消「生徒の如何は
それで今回の除籍者だが…緑谷と爆豪と峰田、轟、常闇、障子、口田、青山、砂藤……」
出久と峰田、口田の顔は一気に青ざめ、轟と爆豪は苦い表情を浮かべた。彼らは、出久が特待生であるため除籍はないと思っていたが、その予想は裏切られた。
そして、この場で出久を憎むクラスメイト達からは安堵と歓喜の声が上がった。
お茶「よかった! これで、あの怪物と一緒にいなくて済む…!」
天「当然の結果だ! 奴の犯した罪は、そう簡単に許されるものではない!」
消「以外の奴ら、全員だ。とっとと出ていけ」
相澤の言葉に、歓喜の声を上げていたクラスメイトたちは一瞬で凍りついた。
出久に敵意を剥き出しにし、恐れていた生徒達は、驚愕と混乱で言葉を失った。
何人かが抗議の言葉を口にしようと前に出たが…。
消「お前ら、緑谷をヴィラン認定し、妨害したり、最悪、殺そうとしただろ?」
相澤消太は、赤く光る《抹消》の瞳で一人一人を射抜いた。その指摘は具体的で、彼らの最も醜い感情を暴き出した。
消「飯田。お前は憎悪に目が眩み、自分の義足を使って、出久の走行を妨害した。正義の名の下に私情でルールを破る、ヒーローとして最低の行為だ」
消「瀬呂。お前は自らの欠損の痛みから逃れるため、個性を使って出久を拘束しようとした。負傷した者に対して行う行為か」
消「蛙吹。お前は理性的なフリをして舌を使い、出久を転倒させ、二度目の暴走を誘発しようとした。自己の正当性を証明するための犠殺か」
消「麗日、芦戸、耳郎。お前たちは精神的に不安定な状態であったとしても、恐怖に支配され、彼の存在を消滅させようという明確な悪意を持った。その精神状態でどうやって市民を守るつもりだ?」
消「雄英が『監視下』で『更生』という名の『教育』を決めたにも関わらず、お前たちは『自分たちの感情』と『恐怖』に支配され、『私的な復讐』を実行しようとした」
消「妨害しようとした者。個性で攻撃しようと飛び出した者。そして、終始、憎悪の視線を送り、クラスの和を乱した者……ヒーローとは自身の感情や社会の憎悪に流されず、常に冷静な判断を下し、対象の命と、法の公平性を守る存在だ。お前たちは、その初歩すら理解していない」
オールマイトも重い表情で除籍者たちに語りかけた。
AM「君たちが負ったトラウマは、理解できる。しかし、正義の裁きは、私的な感情で下されてはならない。君たちの行動は、『
消「恐怖から最も危険な排除という行為を選んだ。その程度の自己保身の感情で人を救えると思うな」
オールマイトと相澤の冷徹な指摘は、彼らの心に深く、回復不能な傷を負わせた。彼らは自分たちが「被害者」ではなく「除籍されるべき資格のない人間」と断罪されたことに激しく抗議した。
天「ふざけるな!奴は…奴は殺人鬼だ! 我々は被害者だ!義足になって、それでもヒーローになろうとした我々が、なぜ…!」
お茶「嘘や! また、また騙してるんだ!あの化け物を残すなんて、雄英は狂ってる! 認めない!」
しかし、相澤達の思いは彼らに届くことはなく、彼らの悔しさと絶望は緑谷出久への殺意と恨みをさらに濃く、深く増しただけだった。
麗日は過呼吸を起こし、芦戸は胃液を吐き、飯田は義足を激しく叩きつけた。彼らの絶望と怒りが渦巻く中、個性把握テストは終わりを迎えた。
ーーー
消「さて、雄英入学おめでとう。で、お前らは残れ」
相澤の指示に従い、除籍を免れた9名がグラウンドに立ち尽くした。出久は安堵よりも緊張で全身が強張っていた。
相澤は、出久と爆豪に冷たい視線を向けた。
消「お前たちは今から、自身の個性の訓練をしてもらう」
消「緑谷、お前は体内の怪物の暴走を制御すること。爆豪、お前はその暴走を止めるための力を持つこと。それがお前たちに課せられた最初の、そして最も重要な課題だ」
残された生徒たちは雄英が課した地獄のような訓練と社会から隔絶された彼らの異質な学園生活へと足を踏み入れた。