象徴を
殺せ
マスコミ事件から後日。
PM0:50
消「今日のヒーロー基礎学だが…」
消「俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見る事になった」
出(なった…?やっぱり
消「今回やるのは先買い水難なんでもござれ。
実「レスキュー…今回も大変そうだな」
消「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上、訓練開始」
出(救助訓練…!!憧れに…最高のヒーローに近づくための訓練!!!!頑張るぞ!!!)
出久は闘志を燃やしていた。
ーーー
バスに揺られ会場に着いた一行。
実「すっげーーー!!USJかよ!!?」
そこは室内かと疑うほどに山や水場など様々あり、そして、広大だった。
すると宇宙服を来た人がやって来た。
「水難事故、土砂災害、火事……
あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も……」
「
(((USJだった!!)))
出「スペースヒーロー「13号」だ!災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」
消「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせる筈だが…」
13号「先輩、それが…通勤時に
AM『すまん!!終わりがけに少しだけなら
消「不合理の極みだなオイ」
オールマイト不在はかなりの痛手だ。緑谷の力が暴走した時の最初の難易度が一気に跳ね上がった。
消「仕方ない。始めるか…(今、無いものを願ったってしょうがない)」
すると13号が前に出る。
13号「えー始める前にお小言を一つ二つ…三つ…」
(((増える…)))
13「四つ…皆さんご存知だとは思いますが、僕の“個性”は“ブラックホール”。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
出「その“個性”でどんな災害からもすくい上げるんですよね!!」
13号「ええ…しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう“個性”がいるでしょう」
13「超人社会は“個性”の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。
しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる“いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないで下さい」
13号「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います」
13号「この授業では心機一転!人名の為に“個性”をどう活用するかを学んでいきましょう」
13号「君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」
出久(……13号
カッコイイ!!)
「以上!ご清聴ありがとうございました」ペコ
消「そんじゃあ、まずは…」
ズズ…。
広間に黒い何かが現れる。
消「……?」
それはどんどん大きくなっていき…。
消「…!!?」
その中から手をつけた男が手の合間から不気味な目で彼等の覗いていた。
消「一かたまりになって動くな!!!」
「え?」
奇しくも。
消「13号!!生徒を守れ!!!」
命を救える訓練時間に彼等の前に現れた。
鋭「何だアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
消「動くな!!あれは…」
消「
プロが何と戦っているのか。
「13号に…イレイザーヘッドですか…先日頂いた・・・教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが…」
次々と敵が現れる渦を出している張本人の男がそう言う。
消「やはり、先日のはクソ共の仕業だったか」
いつの間にかゴーグルをかけていた消太がそう言い放った。
実は先日、雄英が誇る「雄英バリアー」が何者かに破壊され。マスコミが一斉に押し寄せるという事件が発生したのだ。
そうしていると手を大量に付けた男が口を開いた。
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…」
「オールマイト…平和の象徴…いないなんて」
何と向き合っているのか。
「子供を殺せば来るのかな?」
それは…。
途方もない悪意。
実「敵ンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」
踏「先生、侵入者用のセンサーは!」
13号「もちろんありますが...!」
焦「現れたのはここだけか学校全体か…何にせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそういう事出来る“個性ヤツ”がいるって事だな。
校舎と離れた隔離空間。そこに少人数クラスが入る時間割…バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」
すると、死柄木弔の目が、生徒たちの後ろ、相澤の脇に立つ異様な姿を捉えた。
弔「所で黒霧。何で
死柄木弔は、緑谷出久を指差してそう言った。彼の全身を包む禍々しいボーン・アーマーはヴィランの集団の中にいても全く違和感がない、あまりにも異質で、そして強烈な「悪」のオーラを放っていた。
黒霧「いえ、違うと思いますが……。私のゲートで送り込んだ記憶はございません。ですが、確かに……あの少年からは我らと同じ、あるいはそれ以上の『闇』を感じますね」
黒霧の言葉に、1-Aの生き残りたちは思わず心の中でツッコミを入れざるを得なかった。
(((あ……やっぱり敵から見ても、そう見えるんだ……)))
出久のヴィランめいた戦闘服は、本物のヴィランの目から見ても、「
出「敵にまで……!? 何で!!? 僕、一応、ヒーロー科なのに!!」
勝己(自覚しろ馬鹿! どこのヒーローが死神の骨なんか着てんだよ!!)
相澤はその会話の隙を逃さず即座に命令を下した。
相澤「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサーの対策も頭にある敵だ、電波系の“
出久「先生は一人で戦うんですか!?あの数じゃいくら“個性”を消すって言っても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は………」
相澤「一芸だけじゃヒーローは務まらん」
消太は「13号任せたぞ」と言い残し、一人飛び出す。
「射撃隊!行くぞ!」
「情報じゃ13号とオールマイトだけじゃなかったのか!?ありゃ誰だ!」
「知らねぇ!!が、一人で正面から突っ込んで来るとは…」
「「「大間抜け!!」」」
射撃系の個性を発動しようとするが個性は消されているため発動しない。
「あれ?出ね…」
そのことに呆けている敵の隙を相沢は見逃さず装備している包帯を二人に巻き付け頭同士をぶつける。
「ばか野郎!!あいつは見ただけで“個性”を消すっつぅイレイザーヘッドだ!」
四本腕の敵が前に出る。
「消すぅ~~~~~!?へっへっへ、お俺らみてぇな異形型も消してくれるのか?」
消太はそれよりも前にパンチを敵に入れる。
消「それは無理だ。発動系や変化形に限る。が、お前らみたいなやつらのうまみは統計的に近接格闘で発揮されることが多い」
殴り飛ばした敵の脚に包帯を巻きつけ後ろから来る敵の個性を身を低くして回避するとそのままぶつけた。
消「だからその辺の
弔う「肉弾戦でも強く…その上ゴーグルで目線を隠されていては”誰を消しているか“わからない。集団戦においてそのせいで連携が後れを取るな…なるほど。嫌だな、プロヒーロー。
全身手で覆われている男が冷静に分析をする。
出久「すごい…!多対一こそ先生の得意分野だったんだ」
障「分析してる場合じゃない!早く避難を!!」
黒霧「させませんよ」
13号が引率して避難しようとするが出口に黒い敵が立ちふさがる。
消(しまった。一瞬まばたきの隙に…!一番厄介な奴を!)
黒霧「初めまして。我々は敵連合。僭越ながら…この度はヒーローの巣窟雄英高校に入らせていただいたのは。
平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことです」
出(は!?)
黒霧「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが、何か変更があったのでしょうか?まぁ…それは関係なく…」
13号は警戒して人差し指の蓋を開けいつでも”個性”を発動できるようにする。
黒霧「私の役目はこれ―――」
敵が何かを言おうとした途端、勝己が攻撃を仕掛けるが敵は回避する。
勝「その前に俺たちにやられることは考えてなかったのか!?」
黒霧「危ない危ない………そう…生徒と言えど優秀な金の卵。」
13号「ダメだどきなさい、二人とも!」
散らして
黒い霧が生徒を囲み…。
嬲り殺す
そのまま包みこんだ!!
ーーー
黒い霧に飲み込まれた瞬間、感覚が消失し、次の瞬間には強烈な浮遊感が出久を襲った。
「わぁぁ!? 水難んん!!!」
視界が開けた先に見えたのは、一面の蒼。USJ内に設置された巨大な人工湖、水難ゾーンの遙か上空だった。重力に引かれるまま、出久は成す術なく水面へと叩きつけられる。
ドッパァン!!
激しい衝撃と共に、冷たい水が全身を包み込んだ。気泡が視界を遮り、水圧が鼓膜を圧迫する。
出(ワープ……あいつの“個性”か!! オールマイトを殺す!? 何が……一体、どうなってるんだ。何なんだよ、あいつら!)
混乱する脳内。だが、水中という環境は出久にとって最悪の極致だった。内なる怪物、インドミナス・レックスの強靭な脚力も、陸上での爆発的なスピードも、水の抵抗によってその威力を大きく削がれてしまう。
そこへ、暗い水の底からギラリと光る獲物を見つけた眼光が迫った。
「来た来た!!」
現れたのは、鋭い牙と流線型の体躯を持つサメ型ヴィランだ。水中をわが物顔で泳ぐその動きは、出久の鈍い動作とは対照的に滑らかで速い。
「おめーに恨みはないけど……サイナラ!!」
ヴィランが顎を大きく開き、出久の喉元を目掛けて突進してくる。
出(ここじゃ動きが制限される……でも、やるしかない!!)
出久は覚悟を決めた。意識を深淵へと沈め、檻の中にいる「白い悪魔」の力を引き出そうとしたその時。出久の意思とは無関係に、右腕の装甲の隙間から、どす黒いエネルギーの奔流が噴出した。
それは変身の予兆ではない。実体化した「影」のような、あるいは有機的な「鎖」のような、不気味な黒いムチだった。
出「なっ……!? 何だこれ!?」
放たれた黒いムチは、水中を切り裂くような速度で伸び、襲いかかろうとしたサメ型ヴィランの鼻先を猛烈な勢いで弾き飛ばした。予期せぬ迎撃に、ヴィランは泡を吹いて後退する。
出久自身も何が起きたのか分からず、ただ自身の右腕から伸びる漆黒の触手を見つめるしかなかった。だが、驚いている暇はない。視界の端で、必死にもがきながら沈んでいく峰田実の姿を捉えた。
出「峰田くん!!」
出久は反射的に右腕を振った。制御不能に見えたその「黒いムチ」は、出久の救けたいという本能に応えるようにしなやかに伸び、峰田の腰をしっかりと絡め取った。
出(引けっ……上がれ!!)
出久は黒いムチ…「黒鞭」を力任せに引き寄せると、峰田の身体を自身の胸元へ抱き寄せた。そのまま水底を蹴り、水面へと急上昇する。
水面に顔を出した瞬間、出久はすぐ近くに浮かぶ人工の救助船を視界に入れた。再び腕を振り、黒鞭の先を船の甲板の手摺りへと叩きつける。黒い鎖はガッチリと獲物を捉え、出久と峰田の二人分の中量を、凄まじい収縮力で一気に引き上げた。
出「……っ、ふぅ、はぁ……!!」
甲板に転がり込んだ出久は、激しく咳き込みながら自分の右手を見た。つい先ほどまで暴れ狂っていた黒いエネルギーは、霧が晴れるように消えていた。
実「助かった……のか? ……死ぬかと思ったぜ、緑谷ぁ……。っていうか、今のは何だよ!? お前、骨だけじゃなくてムチまで出すのかよ……!」
実がガタガタと震えながら、恐怖と驚愕の混ざった声を上げる。
出「分からない……僕にも、今の力は……」
出久は震える手で、自身の右腕を握りしめた。ワン・フォー・オール、インドミナス・レックス、そして今現れた「黒い力」。自分の中に眠る謎がまた一つ増えたことに戦慄しながらも、出久は船縁から湖面を見下ろした。
敵1「んのヤロォ!! 逃がさねぇぞ、殺してやる!!」
その時、湖底から響く怒号と共に、水面を割ってサメや半魚人のような異形のヴィランたちが次々と姿を現した。彼らは救助船を完全に包囲し、鋭い爪や武器で船体を叩く。ゴン、ゴンと不気味な振動が足元から伝わり、船は徐々に浸水を始めていた。
実「ひぃぃぃ! 大漁だあああ〜〜〜!! 死ぬ、今度こそ死ぬんだ俺は!!」
峰田はパニックになり、自身の頭から《モギモギ》を引き剥がしては闇雲に投げ散らかすが、恐怖で狙いも定まらない。
一方で、出久は船縁に手をかけ、視線を一点に固定したまま激しく思考の迷宮を彷徨っていた。
出「奴らには……オールマイトを倒す算段がある……。多分、そのとおりだ……それ以外考えられない。わざわざカリキュラムを盗み出し、これだけの戦力を揃えて奇襲を仕掛けてきた……。無策で『平和の象徴』を狙うほど、あの手の男は馬鹿じゃない……」
ブツブツと、周囲の喧騒すら遮断するような速度で独り言が漏れる。
出「……何で殺したいんだ? 敵、悪への抑止力となった人だから……? いや、それだけじゃない……象徴を壊すことで、この世界の仕組みそのものを書き換えようとしている……? だとしたら、あの『脳無』とかいう怪物は……」
思考の加速と共に、右腕の装甲から黒い火花が散る。
「……ていうか、いま、理由なんて……」
脳裏を過るのは、あの日、絶望の淵にいた自分に手を差し伸べてくれた最強の男の姿。
AM『君はヒーローになれる!』
その言葉が、出久の心臓を熱く、激しく叩き上げる。
出「理由なんて……知るか!!」
出久は独り言を切り裂くように叫び、顔を上げた。その眼窩には、もはや迷いはない。ただ、大切な人を守り、勝つという純粋な意志だけが宿っていた。
出「奴らに……オールマイトを倒す術があるんなら……!! 僕らが今すべき事は……!!」
出久の身体は、自分でも驚くほど激しく震えていた。だがそれは恐怖による逃走本能ではなく、爆発を待つ火薬のような、高潔な闘争心によるものだ。
出「戦って……
実「な……何するつもりだよ緑谷!!? 相手はあんなにいるんだぞ!?」
実が腰を抜かしながら問いかける。出久は右腕を前に突き出し、全身のワン・フォー・オールを一点に集中させ始めた。
出「峰田くんは直ぐに動ける準備をして」
実「ちょ、止めろよ! 敵を刺激すんじゃねーよ! そのまま大人しく救助を待とうぜ!!」
峰田の悲鳴のような制止を聞きながら、出久はボーン・アーマーの出力を最大まで引き上げる。白い骨の装甲が不気味に軋み、周囲の空気が重圧で歪んでいく。
出「僕だって怖いよ。……震えが止まらない。でも……」
出久は獣のような低い声で、自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
出「勝つには、これしか無い……」
出久は船縁から身を乗り出し、水面を埋め尽くすヴィランたちを見下ろした。ワン・フォー・オールの緑色の稲妻と、インドミナス・レックスの凶暴な琥珀色の光が混ざり合い、出久のシルエットはもはや「救い」とは程遠い、破壊神のような威容を放ち始めていた。
ーーー
救助船を取り囲む絶望的な包囲網。その沈黙を破ったのは、咆哮に近い決意の叫びだった。
出「死ぃねぇぇぇ!!!」
出久が船縁を蹴り、宙へと躍り出た。その姿は、まるで獲物に飛びかかる白い獣のようだった。
敵2「ハハッ、やっぱガキだ! 水に落ちればこっちのモンよ!」
水面で待ち構えるサメ型ヴィランたちが、勝ち誇ったように牙を剥く。彼らにとって、滞空中の人間はただの的に過ぎない。
だが、出久の脳内は、恐怖に震える身体とは裏腹に、驚異的な速度で状況を演算し続けていた。
出(……いくらスマッシュでも、円形に陣を取られてちゃ一掃は無理だ! そもそも、この水難ゾーンを突破してもまだ中央(広場)には敵がいる……腕を犠牲には出来ない!)
水面が迫る。敵は「着水してからなぶってやる」と薄汚い笑みを浮かべている。
出久は空中で左手を掲げ、親指に中指を添えた。
出(卵が……爆発しないイメージ……。レンジの中で、必要な分だけを、一箇所に……!)
ボーン・アーマーの隙間から、迸るような緑色の稲妻が中指の一点に凝縮される。あまりのエネルギー量に、指先がミシミシと悲鳴を上げ、皮膚が紫に染まっていく。
船の上でその光景を見ていた峰田実は、目を見開いて硬直していた。
実(震えながら……! オイラと同じくせに! 怖くて足がガクガクなはずなのに!! 何で……何でそこまでできるんだよ!!)
出「DELAWARE……」
指先に溜まった圧力が、周囲の空気を歪ませる。
出「SMASH!!」
パギィィィィィン!!!
放たれた「デコピン」は、もはや指先の弾きではない。超高圧の空気の杭が湖面を貫き、巨大な人工湖に直径十数メートルに及ぶ「奈落の大穴」を抉じ開けた。
凄まじい衝撃波が円状に広がり、水中にいたヴィランたちは、爆圧によって文字通りバラバラの方向へと弾き飛ばされる。
だが、その力を使った瞬間、出久の意識を漆黒の闇が塗りつぶした。
脳内で、インドミナス・レックスの凶暴な咆哮が鳴り響く。ワン・フォー・オールの高出力使用に呼応し、怪物が主導権を奪おうと精神の檻を内側から食い破ろうとしていた。
出「ぐ、あああああ……ッ!!」
水面に落下しながら、出久は必死に自身の頭を抱え、怪物の侵食に抗う。琥珀色の眼光が明滅し、ボーン・アーマーから不気味な白煙が上がる。
その命懸けの背中を見て、実の中の何かが、ついに弾けた。
実(ちくしょう!! 何だ緑谷!! おめええ!! かっけえことばっかしやがって!!!)
実「うわああ!!!! オイラだってえええええ!!」
実は泣き叫びながら頭から《モギモギ》を、血が滲むほどの勢いで引き剥がし、狂ったように水面の大穴へと投げ込んだ。
出「これでもくらえ! このっ! このっ!!」
物理の法則が、出久の計算通りに牙を剥く。
スマッシュによって抉られた大穴は、広がった反動で今度は中心に向かって猛烈な勢いで「収束」を始めた。穴に吸い込まれるように大量の水が流れ込み、そこにいたヴィランたちは巨大な渦に飲み込まれる。
そして、そこに峰田の執念の弾丸が降り注いだ。
渦の中で揉みくちゃにされる敵たちに、粘着性の高い紫の玉が次々と付着していく。
敵2「なっ、なんだこれ! 取れな……腕が、背中が!!」
敵3「奴らとくっついちまう! 離せぇ!!」
渦の力で一つに纏め上げられたヴィランたちは、モギモギの強力な粘着力によって、巨大な「肉の塊」へと変わり果てた。
出久が水面に足をつき、荒い息を吐きながら計算の結果を呟く。
敵「……水面に強い衝撃を与えたら、広がって、また中心に収束するから……」
ザパアン!!!
中心に集まった水流が逃げ場を失い、天を突くような巨大な水柱となって爆発した。一塊になったヴィランたちは、そのまま上空へと吹き飛ばされ、戦闘不能の状態で湖の彼方へと排除されていく。
出「……はぁ、はぁ……」
出久は、侵食しようとするインドミナスの意識を、強靭な精神力で再び深淵へと押し戻した。右腕が痙攣している。だが、休んでいる暇はない。
出「……出ろ!!」
出久が叫ぶと同時に、右腕の装甲から再び「黒鞭」が飛び出した。
今度は暴走ではない。仲間の勇気に応えようとする、出久の意志に従う確かな力として。
黒鞭は船の構造物を捉え、出久と、船から飛び降りてきた実を一気に引き寄せると、その勢いを利用して水難ゾーンの出口へと力強くスイングした。
出「行くぞ、峰田くん! まだ、終わってない!!」
白い死神と小さな勇者は、水飛沫を切り裂きながら、水難ゾーンから離れていった。
ーーー
なんとか上がることに成功した出久達。そこでは消太が敵と戦ってる最中だった。
中央広場の喧騒の中、死柄木弔の乾いた声が、冷酷なカウントダウンを刻んでいた。
弔「23秒」
消太の意識が跳ねる。本命だ。目の前の、無数の手首を纏った不気味な男こそが、この群衆の核。消太は迷わず捕縛布を射出した。しかし、弔はその布を、まるで飛んできた羽虫でも払うかのように、事も無げに右手で掴み取った。
弔「20秒」
消太の頬を冷や汗が伝わる。
多勢に無勢。瞬き一つで「消去」が解けるリスクを抱えながら、消は流れるような体術で取り囲むヴィランの隙間を縫い、弔の懐へと潜り込んだ。
弔「17秒」
掴まれた捕縛布を逆手に取り、渾身の力で引き寄せながら、弔の腹部へ強烈な肘打ちを叩き込む。確実に捉えたはずだった。しかし、弔は苦悶の表情すら浮かべず、カサカサとした不気味な声で語り続ける。
弔「動き回るので分かり辛いけど、髪が下がる瞬間がある。……アクション終えるごとだ。そして、その間隔は段々短くなってる」
消太の心臓が警鐘を鳴らす。個性の限界、瞬きのタイミング、その全てが「観察」され、暴かれていた。
弔「無理をするなよ、イレイザーヘッド」
弔の五本の指が、消太の右肘を静かに、だが確実に捉えた。
直後、相澤の制服が、皮膚が、そして骨までもが、乾いた砂のようにバラバラと音を立てて崩れ落ちた。
消「ーっ!!(肘が、崩れた……!)」
激痛が脳を焼く。消太は即座に弔を蹴り飛ばして距離を取るが、視界の端で崩壊していく自分の肉体に戦慄を禁じ得なかった。襲いくる雑魚ヴィランを反射的に戦闘不能に追い込みながらも、息は激しく乱れていく。
弔「その“個性”じゃ……集団との長期決戦は向いてなくないか? 普段の仕事と勝手が違うんじゃないか? 君が得意なのはあくまで『奇襲からの短期決戦』じゃないか?」
弔は悦に浸るように、さらに言葉を重ねる。
弔「それでも真正面から飛び込んできたのは、生徒を安心させるためか? かっこいいなあ。かっこいいなあ。……ところでヒーロー」
弔の口角が、歪に吊り上がった。
弔「本命は、俺じゃない」
その言葉が終わるか終わらないかの瞬間だった。
消太の背後に、巨大な「絶望」が音もなく出現した。
それは、筋骨隆々の巨体に、剥き出しの脳。そして鋭利な嘴を持つ異形の怪物――脳無。
人間を遥かに超越した質量が、無慈悲に消太を押し潰した。
消「ぐ、ああああああ!!!」
消太の両腕が、枝のように容易くへし折れる。脳無の力は、ただの怪力ではない。「平和の象徴」を殺すために調整された、絶対的な暴力の結晶。地面に叩きつけられ、顔面を石畳にめり込ませる相澤の姿は、もはやプロヒーローの威厳を保つことすら許されないほどに無惨だった。
弔「対平和の象徴…改人『脳無』。ショック吸収に超回復……。オールマイトに匹敵するパワーを持っている」
血飛沫が舞い、消太の呻き声が広場に虚しく響く。
その光景を、茂みの陰から見ていた実は、歯の根が合わないほどに震えていた。
実「緑谷、ダメだ……流石に、考え改めただろ……? あんなの、人間じゃねーよ。プロが、先生がああなっちまうんだぞ……逃げようぜ、緑谷……!」
出「――っ!」
出久は何も答えなかった。
ただ、獣のマスクを外したままの剥き出しの顔には、今まで見たこともないような深い「憤怒」と「戦慄」が刻まれていた。
ドクン、ドクンと、心臓が爆発しそうなほど激しく打ち鳴る。
自身の右腕に宿るインドミナス・レックスの意志が、目の前の脳無という「人造の怪物」に対し、同族嫌悪に似た凄まじい殺意を滾らせていた。
目の前で、自分を信じてくれた先生が壊されていく。
プロの世界の非情。そして、目前に突きつけられた本物の「悪意」。
緑谷出久は、震える拳を血が出るほど強く握りしめ、地獄の如き広場を射抜くように見つめていた。
その時、出久の瞳から光が消え、代わりに底知れない「深淵」が這い出してきた。
出「……峰田くんは、遠くに離れてて」
絞り出すようなその声に、隣にいた実は全身の毛が逆立つような恐怖を覚えた。
実「緑谷……? まさか!? 止めろ緑谷! 戻れなくなるかもしれないぞ!!」
実の制止は届かない。出久は一歩、また一歩と、地獄の釜の底のような殺気を放つ弔たちの元へと歩を進める。その背中は、もはや少年のそれではなく、獲物を屠る決意を固めた獣のそれだった。
弔「……何だ? 彼奴は」
弔はカサカサと乾いた音を立てて首を掻きむしり、興味深げに目を細める。
地面に組み伏せられた消太は、薄れゆく意識の中で出久の異変を察知した。教え子を「怪物」にさせまいと、腫れ上がった瞼を無理やりこじ開けて個性を発動しようとする。しかし、その慈悲は脳無の非情な一撃によって阻まれた。
ドォォォンッ!!
顔面を石畳に叩きつけられ、消太の意識が混濁する。
出(すみません先生……ごめんね峰田くん……かっちゃん……)
出久は心の中で、これまでの「人間」としての自分に別れを告げるかのように、静かに目を閉じた。
出(でも、力を恐れてたら……進めない!!)
ドクン。
心臓が一度、大きく跳ねた。
次の瞬間、出久の全身をワン・フォー・オールの緑の稲妻が激しく駆け巡る。だが、その光はすぐさま禍々しい「白」へと塗りつぶされた。
メキメキ、ミシミシと、身体中の骨が組み変わり、増殖していく異音が静まり返ったUSJに響き渡る。白磁の如き強靭な装甲が皮膚を突き破って現れる。背筋からは鋭い棘が突き出し、指先は鉄をも断つ鉤爪へと変貌を遂げた。
それは「装着」ではない。
内なる「悪魔」が、少年の肉体を依代として現世にその完全な姿を現す、冒涜的な変態だった。
弔「……そうか。ハハッ、そうか……! お前が……!」
弔の口角が、耳まで届かんばかりに吊り上がる。探し求めていた「最高の玩具」を見つけた子供のような、狂気的な歓喜がそこにはあった。
インドミナス・レックス「ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
爆発的な音圧を伴った咆哮が、USJの全セクションを揺るがした。
水面は震え、土砂は崩れ、逃げ惑うヴィランたちがその場に平伏す。
それは「救い」の対極。
「平和の象徴」を殺すために造られた脳無と、自らの「正義」を守るために怪物へと成り果てた出久。
二体の「絶望」が、ついに正面から衝突しようとしていた。