オールマイトの指導の下、緑谷出久と爆豪勝己の特訓が始まった。朝5時。彼等はゴミだらけの海浜公園に居た。。
勝「なんでデクと一緒なんだ!!?」
勝己は文句を言うが…。
AM「二人は互いの最高のライバルとなるからさ!」
AMはそう言って一蹴した。
出久に課せられたのは、まず「個性の制御」と「個性に耐えうる肉体作り」という、二つの相反する課題だった。
オールマイトは出久のインドミナス・レックスの姿が凶悪すぎるという特性から完全変身は極力避け「部分的な変身」の制御に焦点を当てた。
AM「少年!まずは人差し指一本だ!そこに個性の力を集めてみたまえ!」
出久は、小さな指先に意識を集中する。個性を発動させようとするたび、全身の細胞が暴走を始め…。
出「ウウッ…!」
一瞬、指先が白く硬質な鱗に覆われかけるが、同時に全身の筋肉が脈打ち、変身が全身に広がろうとする。出久は必死に理性を保ち、力を押し戻す。
出「ダメだ…!力が強すぎる…!指先に留まらない…!」
オールマイトは、その姿を見て険しい顔になる。
AM(やはり、この個性は私の知るものとは次元が違う…。まるで、彼の理性が怪物の本能と綱引きをしているようだ…!)
訓練は過酷だった。少しでも個性を発動させれば、白鱗が皮膚を侵食し、体温が急上昇し全身の毛細血管が破れるほどの負荷がかかる。特訓の終盤には出久の体は傷だらけで常に疲労困憊の状態だった。
肉体作りの特訓も、インドミナス・レックスの莫大な潜在能力に見合う常軌を逸したメニューが組まれた。筋トレにAMを乗せた冷蔵庫を引きずる出久。それでも彼は挫けなかった寧ろ、苦にもならなかった。オールマイトの様な最高で立派なヒーローになる為だから。
一方、勝己の特訓は、自身の「爆破」の出力の最大化と、爆発の持続力の向上だった。
AM「爆豪少年!君の個性は素晴らしい!だが、《
オールマイトはあえて出久の個性の恐ろしさを勝己に突きつける。その言葉は勝己の闘争心に火を注いだ。
勝己は、出久の特訓の様子を常に意識していた。
時折、唸り声と共に白鱗が浮かび上がる出久の姿を見ると、胃の奥から込み上げるような苛立ちと「絶対に超えてやる」という鋼のような決意が全身を貫く。
勝(あの怪物を制御するのは、俺じゃねぇ…デク、テメェ自身だ。だが、テメェが完全に制御したところで、俺の爆破でその装甲を粉々にしてやる!)
ー放課後ー
ヘドロヴィラン事件の報道以降、出久は中学でも周囲から一層恐れられ、避けられるようになっていた。廊下を歩くだけで、生徒たちが壁際に張り付き、教師でさえ目を合わせようとしない。
それは、あの恐ろしいインドミナス・レックスの姿が人々のトラウマとして定着したからだ。
二人は無言で勝己の後ろを出久が追従するように歩いていた。
出久の体からはまだ特訓の疲労と個性の負荷による微かな血の匂いがしていた。
出久は自分の個性の重さに押しつぶされそうになりながら、ふと勝己に目をやった。勝己もまた全身に特訓の跡を残し、疲労困憊の状態だった。
その時、勝己は出久の歩みが少し遅れていることに気づいた。そして突然、足を止めずに低い声で言った。
勝「おい、デク」
出久がビクッと体を震わせた。
勝己は、出久の方を一瞥もせず、夜空を見上げながら、ぶっきらぼうに言葉を続けた。
勝「俺は先にいるぞ」
その言葉の意味は、二人にしか分からない。
それは、「自分は誰よりも早く雄英のトップに立って待っている」という意味であり…。
同時に「お前が遅れをとって
勝己は出久の個性の恐ろしさを誰よりも理解しているがゆえに、出久が孤独に苛まれていることも知っていた。
だからこそ、彼は敢えて「先にいる」と宣言する事で「お前はまだ、俺のライバルとして、同じ道を走っている」という、歪んだ激励を出久に与えたのだ。
勝己は出久の返事を待たずに一人、歩めを進める。出久は立ち止まり、その背中を見つめた。
出(かっちゃん…)
その言葉は出久の心に孤独ではないという確かな証明と、絶対的な目標を残していった。
ーーーーーー
オールマイトによるデクと勝己の特訓が始まって暫く。
特訓に気合を入れる彼等。しかし、AMの様子がおかしかった。
AM「ままま待ってたよ君たちちちち」ガタガタガタガタガタ…
出/勝((オールマイトがガチ震いしている!!))
あの平和の象徴が子鹿みたいに震えていた!
出「ど、どうしたんですか!?オールマイト!!」
AM「ききき今日は君たちに新たな講師を紹介しよう……」
震えながらのAMの言葉に二人は首を傾げた。
「君が緑谷出久だね」
その声の主の登場に二人は目を見開き固まった。
七三分けに金のメッシュの髪。服装は白(もしくは薄いグレー)を基調とした金ボタンのシングルスーツに、白いワイシャツ、赤地に白抜き水玉模様のネクタイとメガネをかけた男。
二人がそうなるのも無理はない。彼は
《サー・ナイトアイ》なのだから!
サー「君の《インドミナス・レックス》の事はきいている。だからこそオールマイト一人では困難だと判断し、私達が来た」
そして、彼は震えるオールマイトを一瞥し、冷酷に真実を突きつけた。
サー「彼が震えている理由。ソレはある深刻なトラウマによるものだ」
サー・ナイトアイがそう言い放った瞬間、ジェット噴射のような音と共に、一人の人物が飛び出してきた。
「トシノリィィィ!!」
その声の主、黄色と黒のコスチュームに身を包んだ小柄な老人が。
バゴーーーン!!
オールマイトを蹴り飛ばした!?
吹き飛ぶオールマイト!出久達は身構えるもサー・ナイトアイは手で制して説明を始めた。
サー「彼は《グラントリノ》。かつて雄英で一年間だけだが雄英教師をしており、そしてオールマイトの元担任だった男だ」
………え?
出「えーーーーーーーーー!!!??」
勝「何ーーーーーーーーー!!!??」
オールマイトの元担任の登場に流石の勝己も声を上げ驚いた!
グラ「こんな規格外の個性を持った生徒を指導するのに、テメェ一人で対処できると思ったか大馬鹿者!このガキの身体は『時限爆弾』だ!一つでも下手すれば暴走する!!!」
グラントリノの視点が三人に向けられる。
グラ「おい、インドミナスの小僧!改めて言うがお前の個性は自分が思ってる以上にヤバいモノだ!それも敵も裸足で逃げ出すほどにな!!後、お前もだ爆破小僧!」
勝「!」
グラ「此奴を本気で超えてぇんなら“個性”の威力を上げるだけでは駄目だ!技ももっと幅広く使え!!」
サー「我々が来た以上は君達を確実に結果を出させる。先ず緑谷出久。貴様の特訓は『戦闘技術』と『心の安定』の二軸で行う。少しでも不確実な兆候が見られれば、私は容赦しない。その覚悟を持て
そして、爆豪勝己は“個性”の特訓基、戦闘の幅を広げ技の手札を増やす事だ」
グラ「俊典みたいなテメェ等の甘い訓練に付き合ってる暇はねぇ。やるからには徹底的にだ!覚悟しとけよ小僧ども!!」
グラントリノとサー・ナイトアイというオールマイトが最も恐れ、最も信頼する二人が特訓に加わった事で出久と勝己の特訓は地獄絵図と化した。特に出久の個性制御と勝己の「予測不能な敵」への対応訓練は凄まじいものとなった。
限界を超えた訓練と内なる「怪物」の力に耐えようとする反動で出久の身体は常に悲鳴を上げていた。勝己もまた、二人の伝説的なヒーローからの指導を受け、爆破の出力を異常な速度で向上させていった。
それでも二人は「偉大な二人も加わったという」安心感と「絶対にモノにしてみせる」という闘争心が燃え上がっていたのだった。