オールマイトから「ワン・フォー・オール」を受け継ぎ、肉体強化の最後の調整を終えた後、ついに雄英高校の一般入試実技試験当日を迎えた。出久の体は、訓練によって大きく引き締まり、一見すると普通の受験生に見えたが、その内側には「インドミナス・レックス」と「ワン・フォー・オール」という、二つの規格外の力が渦巻いていた。
出久は雄英の巨大な門の前に立ち、込み上げる緊張と高揚感で胸を詰まらせた。
出「来た…!ついに来たんだ…!ここから僕のヒーローとしての道が始まるんだ…!」
その隣には、彼よりも遥かに余裕綽々とした表情の爆豪勝己がいた。
「おいあれ、ヘドロ敵の…」
「なんでこんなところにいるんだよ…」
出久への視線と言葉が自信に突き刺さる…。
勝「おい、デク。いつまでも突っ立ってんじゃねぇぞ。もたもたしてたら、俺がてめぇの分の点までかっ攫うからな」
勝己はそう言うとさっさと行ってしまった。そのお陰も合って出久は
出(そうだ。僕はヒーローになるんだ…以前とは違う!!踏み出せ…!
試験会場へと向かう舗装路を歩き出した出久は、緊張のあまり、足が一歩を踏み出す瞬間に、つまづいてしまった。
その瞬間、フワリと体が浮いた。
「大丈夫?私の“個性”。ごめんね勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね」
どうやら茶髪の女性が個性で助けてくれた様だ。
「緊張するよねぇ。お互いがんばろう」
彼女はそう言ってそのまま試験場へと向かっていった。
ー女子と喋っちゃった!!
喋ってない。
ーーーーー
筆記試験が終わり、実技試験の説明会が始まった。
「今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!」
シーン…。
説明会の担当であるトサカの様な髪型が特徴のプレゼント・マイク(PM)が続けてこう叫ぶ。
PM「こいつぁシヴィー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?YEAHH!!!」
シーン!!
出「ボイスヒーロー「プレゼント・マイク」だ。すごい…!!」
出久はプレゼント・マイクに感激し小声ながらもブツブツと語りだし始めた。
勝「うるせぇ」
それを余所にプレゼント・マイクが説明を始めた。
制限時間は10分。その間に市街地を模した演習場で“仮装敵かそうヴィラン”を倒していく。
仮装敵は三種類存在しておりそれぞれの強さに応じてポイントが振り分けられている。
勿論、他人への攻撃等、アンチヒーローな行為は一切禁止。
アイテムの持ち込みは自由。
勝「
「質問よろしいでしょうか!?」
そんな時一人の眼鏡をかけた男が立ち上がった。
「プリントには四種の敵ヴィランが記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英においてはずべき痴態!!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」
「ついでにそこの縮毛の君!」
出「!?」ビクッ
真面目そうな眼鏡の少年、飯田天哉が、ロボットのように正確な動きで出久を指差した。
天「雄英は、エリートが学ぶ場だ!物見遊山のつもりなら即刻雄英から去りたまえ…っ君はあのヘドロ敵事件の…!」
飯田は、そこでハッと口をつぐんだ。出久がインドミナス・レックスの個性を持つという噂は、既に受験生の間でも広がりつつあった。飯田は、その個性の凶悪さを思い出し、一瞬たじろぎを見せるが、すぐに表情を引き締めた。
出久は顔を真っ赤にして、縮こまる。
出「ご、ごめんなさい…」
壇上のプレゼント・マイクは、その一悶着を意に介さず、熱弁を続けた。
PM「オーケーオーケー受験番号7111くん。ナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0P!そいつはいわば“お邪魔虫”!各会場に一体!所狭しと大暴れしている「ギミック」よ!」
それを聞いた男は。
天「有難う御座います失礼致しました!」
そう言い一礼した後、席に座った。
PM「俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう!!かの英雄ナポレオン=ボナパルドは言った!「真の英雄は人生の不幸を乗り越えて行く者」と!!」
PM「“
PM「それでは皆、良い受験を!!」
プレゼント・マイクの激励で説明会が終了すると、受験生たちは、それぞれの受験票に記載された会場へと移動を始めた。
出久は、自身の受験票に書かれた会場番号を確認し、緊張で手が震えるのを感じた。
別れぎわに勝己は出久の目を見てニヤリと口角を上げた。
勝「せいぜいあのクソデカい個性でぶっ壊しすぎるなよ。それで失格になっても俺のせいじゃねぇからな」
出「うん…かっちゃんも頑張って」
二人はそれぞれの会場へ向かう為にここで別れた。
勝己は自信満々の足取りで人混みを突き進んでいく。出久は、「ワン・フォー・オール」を暴発させずに、「インドミナス・レックス」を制御しつつ、どうやってポイントを稼ぐかという、二重の重圧に苛まれながら、自分の試験会場へと向かった。
ーーーーー
試験会場の入り口にたどり着くと、そこには既に大勢の受験生が集まっていた。出久は緊張で心臓が喉元まで飛び出しそうになる。
出「うわぁ、すごい人だ…」
辺りを見渡すと自信ありげな受験生の中に先程、自分を助けてくれた女性がいた。
天「その女性は精神統一を図ってるんじゃないか?」
先程の眼鏡の男が出久に突っかかってきた。
天「君は何だ?妨害目的で受験しているのか?」
出「い、イエ!そういう訳では…!」
再度、彼等の視線が出久に突き刺さる。
天「“個性”事故もあるだろうが、それを含め君は要注意人物だ。警戒するのも当然だ」
その言葉に出久は俯いた…
PM「ハイ、スタートー!」
突然の開始宣言に皆の言葉が止まった。
PM『どうしたぁ!?実践じゃカウントなんざねえんだよ!!賽は投げられてんぞ!!?』
刹那、受験生たちが一斉に駆け出した!
出「え…えええ!?」
遅れて出久も走り出す。
出遅れた!!落ち着け…!!
落ち着け…!!落ち着いて!大丈夫!!
大丈夫!!やれる!なれる。僕はなるんだ!
出久はあの時の事を思い出す。
AM『よし!食ったな!毛!』
しかし、身体には何の変化も無かった。
AM『そりゃそうさ!!君、胃腸を何だと思ってる!まあ2〜3時間もすれば実感湧くさ』
グラ『慣らし運転も出来なかったからな…肉体の反動は覚悟しておけよ』
サー『一度だけしか言わないからしっかり覚えろ』
出(「
次の瞬間ー!
壁から仮想敵が現れる!
出「1P」
仮想1P『標的捕捉!!ブッ殺ス!!』
1P:速いぞ!脆いぞ!
出(来た!来た!!来た!!!)
しかし、足が震えて動かなかった…。
馬鹿ヤロウ何で………………!!!
「据え膳!!」
その瞬間、飛来したレーザーが仮想敵を破壊した。そこにはお腹に機械を付けた男が。
「メルスぃ!良いチームプレイが出来たね!でも、君と会うことは二度となさそうだ」
「アデュー!!!」と男は走り去ってしまった。
PM『あと6分2秒〜』
出「げっ」
マズイ、マズイ!
広場を見てみると皆が仮想敵を殲滅又は行動不能にし着々とポイントを稼いでいっていた。
このままだとポイントを取れずに不合格になってしまう!
ーーーーーー
一方、とある一室。
「この入試は敵の総数も配置も伝えていない」
限られた時間と広大な敷地…そこからあぶり出される。
状況をいち早く把握する為の『情報力』。
遅れて登場じゃ話にならない『機動力』。
どんな状況でも冷静でいられるか『判断力』
そして純然たる『戦闘力』……
市井の平和を守る為の
皆が出久の方を見る。
「彼が噂の
「今は目立った姿を見せてはいない。それどころかこのままだったら不合格だ」
「いやーまだ分からんよ。真価が問われるのは…
これからさ!!」
ーーーーーー
試験時間が残りわずかとなり出久は未だにポイントゼロのまま会場をさまよっていた。
他の受験生たちが遠くでヴィランを倒す爆発音を聞くたびに、焦燥感が募る。
その時、巨大な影が街区全体を覆った。
ゼロポイントの仮想敵の登場!!
あまりにも巨大な機体が轟音を立てて現れ、受験生たちを追い立て始めた。
圧倒的脅威
出久の身体中を感情が駆け巡る。
シャレにならん!!逃げなきゃ!!逃げつつ!Pを…!!マズイマズイマズイまだ0Pだ!!無駄になっちゃう!!
オールマイトが…皆がくれた
「いったぁ…」
その足元に、瓦礫に挟まれ動けなくなっているあの時転びそうになる所を救けてくれた彼女の姿があった。
瞬間!彼は動いた!
メリットは一切ない。
だからこそ色濃く浮かび上がることがある
「え…」
ヒーローの大前提!!
瞬間、出久の右腕が輝き出した!
出「スマーーーーッシュ!!!」
制御が安定しないワン・フォー・オールの力を、出久は右腕に集中させ、巨大なゼロヴィランの顔面に渾身の一撃を叩き込んだ。
ドォン!!
凄まじい衝撃波が会場を揺らし、ゼロヴィランは一瞬で大破。破壊された機体の残骸が、爆音と共に地面へと落下していく。
自己犠牲の精神ってやつが!!
しかし、その代償は大きかった。ワン・フォー・オールの絶大な力が、出久の右腕の骨と筋肉を粉砕した。
「あああああ!!」
出久は激痛に顔を歪ませ、破壊された右腕をだらりと垂らした。
出(こんなに…!!そうか…!バカか僕は!!)
オールマイトの力だぞ!!?
たった10ヶ月!!ギリギリ収まっただけなんだ!
出(僕はまだ!スタートラインに“立つ権利”を与えられただけだ!)
彼は意識を保ちながら、瓦礫の落下からを庇うために、地面へと落ちていく。まだ0P。合格は絶望的!!
しかし、
ゴキ…
出久は激痛とは違う痛みを感じ、見てみると…。
出久の右腕が白く、硬質な鱗状に覆われ鋭利な爪を生やした凶悪な腕に変わっていた…。
その直後、出久の姿が変化し始め出した!
出「あ…あ゙あ゙あアァァァーーーーーー!!!!??」
粉砕された右腕を瞬時に修復したと思いきや。右腕から全身へとまるで凶悪なウイルスが感染するかのように出久の体を瞬く間に侵食していく。
ドォォォォォォン!!!!
巨大化した身体が土煙を立たせ地面に降り立つ!
土煙の柱の中の影からゆっくりと音を立て現れたは…。
全身を覆う白鱗の巨体。対象を残酷に切り裂く鉤爪。頭部には骨質の角が形成され、瞳は血の様に真っ赤に染り、蛇を思わせる細長い瞳孔のものへと変わった。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
奴の口から放たれたのは、勝利の雄叫びではない、破壊と殺戮の衝動に満ちた、耳を劈く咆哮。
大破したゼロヴィランの残骸と、瓦礫が舞う轟音と共に、巨大な機体の残骸の陰から、白い悪魔がその姿を現した。
制御不能の王。「インドミナス・レックス」。
その姿は、周囲の受験生たちの目を、絶望の淵へと突き落とした。