……が、ヒューマノイドががっつり足を開いているので、エロといえばエロでしょうか?
見方によっては百合ぽいかも知れません。
不意に小さな電子音が響く。理子は驚きに息を飲んで慌てて身体を起こした。優一郎が落ち着いた挙動でシャツのポケットを探る。どうやら携帯電話が鳴ったらしい。理子は不満いっぱいの顔をして唇を尖らせた。
「どうしたの?」
電話を耳に当ててそう言った後、優一郎の表情が険しくなる。理子は目を細めてじっと優一郎を見つめた。どうやら真面目な会話をしているようだ。受け答えからは内容までは判らないが、優一郎の表情を見ていれば会話の質くらいは判る。
もう。せっかく盛り上がってきたところだったのに。理子は拗ねた顔をしつつも乱れた優一郎の服を手際よく整えた。はみ出していたペニスをしっかりと服の中にしまい込んでズボンのファスナーを上げ、ベルトを直す。
「なあに? 大事な用が出来たの?」
電話を切ったのを見て取って、理子は優一郎に訊ねた。
「ごめん、理子。ちょっと僕が出ないとならない要件みたいだ。夕方には帰るから」
「うん、判った。理子、不貞寝することにするから」
にっこりと笑って理子は手をひらひらと振ってみせた。戸惑ったような顔をして優一郎が手の中の携帯電話と理子を見比べる。
「理子、その、大丈夫かい?」
「なにが?」
にこにこと笑いながら理子は訊ねた。すると優一郎が今度は困った顔をして視線を彷徨わせる。
「いや、理子。出来るだけ早く用事を済ませて帰るから」
真面目な顔をして言って優一郎が理子の頬に口づけする。その直後、優一郎の姿はかき消えた。理子はしばし優一郎がいた場所を見てにこにこと笑ってから、ソファを飛び降りた。
「ざけんじゃないわよ!」
一転して怒りに目を吊り上げてから理子はソファを蹴倒した。ご飯の入っていた釜を片付けていた沙雪が驚いた顔をして理子を見る。
「理子さま……」
「何よ! フェラチオしてパパも気持ちよーく射精して、さあこれからって時に、なにあの電話! いいかげんにしてよ、もう!」
地団駄を踏みながら理子は喚き散らした。理子は歯軋りをしながらうろうろと部屋の中を歩き回った。優一郎が仕事をしていることは判る。どうしても外せない事情などがあることも判る。
が。あの電話だけはどうしても許せない。
「何なの、あれは! 急に電話してくるなんて、これまでこっちのことなんて無視してたくせにっ」
思うままに叫んで理子は頭を抱えて地団駄を踏みまくった。
「あの、理子さまは電話の相手がお解りになったのですか」
感心したような顔をして沙雪が手を叩く。理子はぎらりとした目で沙雪を睨んでしまってから、慌てて詫びた。ついつい八つ当たりしてしまうところだった。
「あのタイミングで電話が出来る相手なんて一人よ! あの、ばい菌! こっちにまでちょっかいかけてくるなんて、どういう神経してるの!」
からかうのは先生だけにしておけばいいものを! 理子は怒りのままに喚いて壁を力任せに蹴った。どん、という鈍い音がして壁がへこむ。
「青龍王さまが、ですか?」
「違うっ!」
即座に否定して理子は続けざまにテーブルを蹴りつけた。理子が蹴りつけた支柱が折れ、テーブルががくんと傾く。
「あの人は、そりゃあ覗きはするかも知れないけど、そんなことしないわよっ」
そこまで言ってから理子はまた沙雪に謝った。どうも怒っているからなのか、ついつい八つ当たりしてしまう。えへん、と咳払いをしてから理子は腰に手を当ててふんぞり返った。
「出かけるわよ」
きっぱりと言った理子を見て沙雪がうろたえる。
「理子さま、待ってくだ、あっ」
沙雪ががくんと膝をついてうなだれる。理子は腕組みをしてそんな沙雪に視線を送った。
「付いて来れないなら置いていくわ。理子は急ぐから、あなたのメンテナンスをしている余裕はないの」
きっぱりと言い切って理子は手を差し伸べた。力をかけるとその場に大きな鏡が一枚現れる。
「理子さま、私も同行いたします。ですから、あのっ! スイッチを……切り替えていただけますか」
「どうして自分でしないの?」
鏡に映った自分の姿をチェックしていた理子はそう訊ねた。この格好はまずい。幾らなんでもこの季節に短パンにシャツだけでは寒いだろう。理子は大股で部屋を横切ってクロゼットを開けた。中から適当な服を見繕い、手早く着ていたものを脱ぐ。
「今の私は教材として用いられるようにセッティングされています。理子さまの制御が必要なんです。足手まといに成らない自信はあります。私も連れていってください」
真剣な顔をして沙雪が言う。理子はセーターを着ながらちらりと沙雪を見た。
「制御って、いちいちスイッチをいれたりしなきゃ動けないということ? 効率が悪いと思うんだけど」
このジーンズ、短すぎ。不機嫌な顔で言って理子は仕方なく膝下まで隠れるスカートを引っ張り出した。
「いえ、違うんです。あの、その……」
言葉を濁して沙雪が真っ赤になる。理子はスカートと靴下を身に着けたところで振り返った。
「事情は端的に説明して。急いでいるって言ったよね? 理子、邪魔されるの嫌いだなあ」
難しい顔をして理子は頭をかいた。
「性欲を制御するシステムを一時的に停止して欲しいんです。その、さっき理子さま達のことを見ていて、わたし……すいません」
そう言って沙雪が頭を下げる。ああ、と頷いてから理子は足早に沙雪に近付いた。頭を上げた沙雪の股間に手を突っ込む。
「クリトリスを押せばいいの?」
「いえ、押したら、駄目っ! ああんっ!」
「まだ押していないわ。どうすればいいの?」
理子は沙雪のスカートの中で股間を探った。指先に触れているのがクリトリスだろう。弾力のある小さな突起に触れたまま、理子はぴたりと手を止めた。
「引き抜いて……ください」
「わかった」
理子は頷いて指に突起をつまんで引っ張った。するとかちりと音がしてその部分がとれてしまう。理子は沙雪のスカートから手を出し、指につまんだものをはい、と手渡した。
「これで、カバーが開きます。右の、大淫唇の、開いた中にあるレバーを、回してください……」
「ええっ!? まだあるの!?」
早速、歩き出そうとしていた理子は苛立ちに声を上げて振り返った。いそいそとスカートをたくし上げた沙雪が床に座って足を開く。
「もう。急いでるのにっ」
顔をしかめて理子は沙雪に近付いた。右ね、と言いながら沙雪の陰部を手で探る。言われた通りにカバーを開き、中の小さなレバーを回してから理子は立ち上がった。
「これでいい? もう、何でパパったらこんな面倒なスイッチにしてるの? ワンタッチの方が早いじゃない」
文句を言いながら理子は今度こそ歩き出した。
「理子さま、違います! 向かって左です」
涙目で訴える沙雪の股間から透明な液体がとろとろと漏れている。あー、もう! と言いながら理子は振り返った。
「右って言ったじゃないの!」
怒りに目を吊り上げて理子は大股で沙雪にまた近付いた。要するに逆順で戻せばいいのね? と言いながらカバーを開き、さっきとは逆にレバーを回す。それから理子は今度は反対側のカバーを外した。
「もうっ、急いでいるっていうのが冗談か何かだと思ってるの?」
しかめ面で文句を言いながら理子は手早くレバーを回した。どうせカバーしてから元通りにクリトリスを嵌めるんでしょ? そう問い掛けた理子の手に沙雪が恐る恐るの態でさっきの部品を落とす。
「申し訳、ありません……」
目に涙を浮かべて沙雪が言う。理子は手早く沙雪の股間にクリトリスの部品をはめ込んでから立ち上がった。
「謝らなくていいわ。別に沙雪さんのせいじゃないし」
パパったら、もう少しちゃんとしてよ。文句を言いながら理子は鏡に向かって歩き出した。
「優一郎さまは、理子さまが緊急で外出されることを想定されてなかったのだと思います」
「そうかも知れないけど」
そう言いながら理子は鏡の表面に触れた。するとそれまで部屋の中の様子を映していた鏡に別の場所が映る。何度か映す場所を変えてから理子はよし、と頷いた。
「ここでいいわね」
そう言ってから理子はためらいなく鏡の中に足を踏み込んだ。ぶん、という低い羽音のようなものが聞こえた後、理子の身体が鏡を通り抜ける。明るい昼間の街中に現れた理子は振り返ってからため息を吐いた。微かに見える景色の向こうで沙雪が何かを言いながら懸命に鏡を叩いている。
手間取ったので理子ブチギレです。