※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 三部 夜の女王   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


水輝が要らんことするから、ややこしいことになった

「理子、Aさんを、ちょっと問題ある呼び方で呼んだとき、ペナルティが来たのは覚えているよね?」

「あ、うん……って、理子のせい!?」

 

 真っ青になって理子は叫んだ。

 

「違う。言いたいのはそうじゃなくて、ペナルティが、無いんだ。理子が、そう呼んでも」

「え?」

 

 理子は驚きに小さな声を漏らして慌てて優一郎に駆け寄った。どういうこと? そう訊ねてみる。

 

「向うが、既に理子を敵として認定しているってこと」

「あ、なんだ。そうなの?」

 

 つらつらと色んな最悪のパターンを思い描いていた理子はほっとして胸を押さえた。怪訝そうな顔をして優一郎が理子を見る。

 

「だって! 理子はあのばい菌をぜえったいに殴ってやるんだもん!」

 

 最初から敵だもん。そう言ってから理子ははっと我に返った。敵、ということは相手は弱点を突いてくるということだ。だから多輝や由梨佳と連絡がとれなくなってしまったのではないだろうか。そこまで考えて理子は蒼白になった。

 

「鏡を、出してくれるかい? Aさんと連絡が取りたい」

「うっ、うん!」

 

 慌てて頷き、理子はその場に大きな鏡を現した。すると何故か待ち構えているような顔をした水輝が鏡面に映った。

 

『よお』

 

 軽く片手を上げて水輝が挨拶する。水輝がいるのは青い空間だ。目に見えない椅子に腰掛けている水輝の隣には佑の姿もある。

 

「水輝さん、こんにちは」

『悪い。ばれた』

 

 優一郎が挨拶した直後、水輝が難しい顔をして言う。

 

「そちらには攻撃は?」

『厭味攻撃はされたがな。物理的には何も』

 

 そう言って水輝が首を横に振る。理子は険しい顔をして鏡の前に進み出た。

 

「何で理子たちが攻撃されなきゃならないの!? 多輝は!? ママは!?」

 

 確かにあの男のことを考えると腹の底から理由もなく怒りがこみ上げてはくる。が、これまで理子はあの男を直接に殴ったりなどの攻撃はしたことがない。頭にくると思ってはいたが、実際に口に出して悪態をついたのも今日が初めてだ。

 

「僕たちは、なぜかむこうから敵認定されているようなんですけど、何かありました?」

『あー……相当、怒ってたからなあ……やっぱり子供に来たか』

 

 嫌そうに顔を歪めて水輝が頭をかく。

 

「怒らせたって、いったい何を?」

『いや……ちょっと……』

 

 言いにくそうに言って水輝が口許を手で覆って横を向く。

 

『あの野郎が人の神経を逆なでする事ばかりしやがるから、たまには仕返ししてやろうと思って、それならついでに面倒なアブノーマル属性も切り分けて、欲しがってたんだろうそら、と押しつけたつもりだったんだが……というようなことをだなー……』

 

 横を向いたままで水輝がよく判らないことをずらずらと並べ立てる。理子はしかめ面をして腕組みをし、首を傾げた。

 

「まさか、気付いてらっしゃらなかったんですか?」

『いや、そのことには気付いてたんだろうと思うが、どうも思った以上にあれに嵌っていたらしくてなあ……』

「ちょっと待って。じゃあなに? 理子たちはあんたのやったことの尻ぬぐい的に攻撃されてるってこと!?」

 

 理子は声を荒らげて鏡に映る水輝を睨みつけた。

 

「水輝さん。まさかとは思いますけど……」

 

 優一郎がじろりと水輝を睨みつける。すると水輝は降参、と言いながら両手を軽く上げた。

 

『悪い。勝手に時限爆弾仕込んだ』

 

 そう言った水輝を隣にいた佑がばしん、と勢いよく叩く。

 

『なぜ、そんなことをしたの!』

『いや、だってあれを野放しにするのは危険だろう? って、いってえな! ぐーで殴るなよ!』

 

 ぼこぼこと佑に叩かれながら水輝が不満の声を漏らす。

 

『どれだけ、苦しいか……。どれだけ、辛いか、解ってて、やったの……?』

『だから、怒るなよ』

 

 水輝の服を握りしめ、佑が震える声で言う。水輝はそれを避けもせず、されるがままになっている。理子はうろんな目で二人を見つめてからため息を吐いた。

 

「要するにあれね。あんたの計算以上にばい菌がその……よく判らないけどなに? アブノーマルがどうとか? が大好きになっていて、で、あんたはそれを勝手に壊そうとしたと。こういう理解でいい?」

 

 腕組みをして理子はずらりと並べ立てた。

 

『まあ、そうだな』

 

 佑に服をつかまれたままで水輝が頷く。

 

「それで、どうしてこっちにとばっちりが来るのか、良くわからないんですけど」

『それはあれだな。ここには手を出せないからな。おれの子供を狙うことにしたんだろ。翠は残念ながら時空を渡るから手出しはしても無駄だ。そうなると』

 

 そこで言葉を切って水輝が鏡越しに理子を指差す。

 

『理子しかいない訳だな』

「あの、忘れてるみたいですけど、多輝も、一応水輝さんの子供のような気がするんですけど」

『あれは天輝だろう? ちなみに今は産婦人科にいるらしいが?』

 

 さらりと水輝が言う。理子は優一郎と顔を見合わせて慌てて鏡を覗き込んだ。

 

「何で産婦人科!?」

『え? 立城が子供を見に来いって誘ったから……ってーな!』

 

 がいんっ、と水輝の頭をこぶしで殴ってから、佑が何故か急に身を翻して鏡に映らない場所に歩いていってしまう。どうやら相当、怒っているようだ。

 

「多輝は無事なんですね?」

『ああ、そのはずだぞ。……何だ、理子。その面は』

 

 しかめ面をして水輝が言う。理子はじろりと水輝を睨んでぼそりと言った。

 

「サイテー」

『う』

『わたし、あいつの仕業かと思ってた』

 

 ひょっこりと鏡の端に顔を覗かせて佑が言う。はー? と訝りの声を上げて水輝が佑を振り返る。だが佑はつん、とそっぽを向く。




ばい菌と呼ぶのもヤバいですが、そもそも水輝が要らんことをしなければ……w
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