機械相手です。
「あのぉ、理子じゃなくて理緒です……」
「名前はどーでもいいのよ! 今すぐママを抱きなさい! 逆らったらコロス!」
凄みのある目で理緒と名乗った少年を睨み、理子が喚く。すると理緒はうろたえながらベッドに横たわる由梨佳と優一郎を見比べた。
「由梨佳さん、とりあえずストレスレベルを下げないとどうしようもありませんから、彼に抱かれてください」
優一郎は真面目な顔をして強い口調で言った。ママを抱く、と呟いた理緒がいそいそと優一郎に寄ろうとする。だがそこで理子にそっちじゃない! と頭を殴られ、理緒は涙を目に浮かべつつもベッドに近付いた。
「ああんっ! おねがい、早くっ! んぅっ!」
「ごっ、ごめんなさい、パパ! 理緒で我満してください!」
ぺこりと由梨佳に向かってお辞儀をした理緒がベッドに乗る。ややこしい話ではあるが、どうやら理緒のいる世界では由梨佳が男、優一郎が女、そして理緒自身が男ということになっているらしい。パパ、と呼ばれた由梨佳が複雑な顔をする。
由梨佳が頷いて足を開く。由梨佳の女性器は乱暴な自慰のせいで壊れる寸前になっていた。が、何とかセックスは出来そうだ。理緒も優一郎と同じことを考えたのだろう。入れますね、と優しく由梨佳に声をかけてから、機械仕掛けの膣内にそっとペニスを押し込む。
「ふっふっふ。必殺、身代わりの術!」
腕組みをし、ああでもないこうでもないと理緒に注文を付けていた理子が不敵に笑う。術って、と情けない顔をする理緒の下では、由梨佳があられのない声を上げている。
「あっ! ああっ! 多輝くんっ! いい、そこっ! ああああんっ! 壊れる! 壊れちゃうっ!」
機体の下腹部から嫌な音が聞こえてくる。理緒が真っ青になってぶんぶんと首を振る。
「やっ、あっ! パパ、そんなに締めちゃ、だめえっ!」
「あんたは女か!」
怒りに目を吊り上げた理子がベッドで身悶えする理緒の頭をぶん殴る。だがどうやら由梨佳の膣が壊れてペニスが無理やりに締め付けられているらしい。理緒が悲鳴を上げてペニスを引っこ抜く。その直後、歯車の外れた音がしてがらがらという耳障りな金属音が響く。
「大丈夫。十分な性感は与えられたはずだ。情報は修理しながら聞けばいい」
「うう、理緒のおちんちん、千切れるかと思った……」
涙を目に溜めて理緒が呟きながら自分のペニスを指でつつく。理子がそんな理緒を見てはん、と鼻で笑う。
「その程度で千切れるようなペニス、あっても役立たずね。ちょん切ってあげようか?」
「ひっ、酷いよ! 何て乱暴な女の子なんだ!」
はらはらと泣きながら理緒が言う。だが優一郎はまじまじと二人を見比べて感心した。なるほど、鏡の中から出てきただけあって、性別は違っても二人の容姿はとてもよく似ている。
「それに、女の子がそんな……そんな……あの、恥ずかしくない? その格好」
顔を赤くして理緒が理子を指差す。なによ、と声を荒らげた理子が自分の格好を見下ろし、唐突
に悲鳴を上げる。理子は最中だったため、胸ははだけて下半身は丸出しになっていたのだ。
慌ただしく服を着た理子が理緒の頭を殴る。どうやら理緒は少し様子を見ることにしたらしい。理子が鏡の中に送り返そうとすると、もう少しいると自分から言い出した。
「理子、修理の準備をするから由梨佳さんの服を脱がせてくれ」
「はあーい」
ちくちくねちねちと理緒を苛めていた理子が返事をして由梨佳に近付く。由梨佳は十分に快感を得て失神してしまっている。そんな由梨佳の服を理子が脱がせているところを眺めていた優一郎は、ふとシャツの袖を引っ張られて何気なくそっちを見た。
「あ、あの……ママは……いや、ええと……」
頬を染めた理緒がもじもじしながら優一郎のシャツを引っ張っている。
「優一郎、って呼んでくれるかい?」
そう言って優一郎はにっこりと笑った。すると理緒がうっ、と息を飲んで恥ずかしそうに頭をかく。
「ええと、その、優……一郎さんは、理緒……じゃなくて、理子、さんが、好きですか?」
「もちろん」
即答して優一郎はにっこりと笑った。すると理緒がぱっと明るい顔をする。だがそこでベッドから理子が横やりを入れた。
「鏡の中の世界は多層構造だからこそ、何もかも一緒って訳じゃないの。あんたのいる世界のママは、違うこと思ってるかもねー」
「うっ!」
ずらずらと理子が並べ立てたところで理緒が呻いて悲しそうに顔を歪める。けけけ、と意地悪く笑った理子が手際よく由梨佳の服を脱がせてベッドから飛び降りる。
優一郎はその場にヒューマノイド専用の修理椅子を引き寄せ、そこに由梨佳を乗せた。理子と理緒は何やら互いの世界の話をしているようだから、放っておいても大丈夫だろう。時々、変な会話が聞こえてきてはいるが、理子が怒りに任せて飛び出すことを思えば百万倍はましだ。
「えー? あんたのところではばい菌はなんにもしかけてないの?」
「はい。理緒の世界は平穏そのものです。お父さんとお母さんがよくそう言っています」
理緒の言う、父母というのは水輝と佑らしい。ちなみに理緒の世界では父親が佑、母親が水輝だそうだ。そして話題の立城は女性らしい。
「そういえばここには赤の王もいらっしゃるんですね。初めて聞きました」
「は? そっちはそういうのはいないの?」
ベッドに並んで腰掛けて理子がぶらぶらと足を揺する。はい、と頷いて理緒が言葉を継ぐ。
「理緒の世界の王は四人……ママは正しくは主だから、女王とか王ではないですけど」
「へー。そうなの?」
「天の王、地の女王、青の女王、そして空の主の四人です」
「……ほんとに赤いのはいないのねー」
「それに、ええと……魔? とかいうのもいません」
意識の隅で二人を会話を捉えつつ、優一郎は由梨佳の機体を修理していった。
「これで良しっと」
壊れた女性器のユニットを新品にすげ替えたところで優一郎は頷いた。直ったの? と嬉しそうな声を上げて理子が駆け寄ってくる。その後ろから戸惑い気味に理緒が寄る。
「それなら、ヒューマノイドも存在しないんだ?」
「いえ。ヒューマノイドは存在します。でも、男性体のみです。女性はいません」
不思議そうに優一郎の手元を見ながら理緒が小声で言う。
「なるほど。じゃあ、女性型のヒューマノイドを見るのは初めてなのか」
「はい。さっきはびっくりしました……パパが……いえ、あの、女性ですけど……機械だったから」
恥ずかしそうに俯いて理緒が指をもじもじと絡ませる。理子が呆れたような顔をして理緒を振り返り、ため息を吐く。
「あんたねえ……パパに欲情してるんじゃないわよっ。いいかげん、下着とかつけたらどう!?」
「はっ、はい、すみません!」
理子に叱責されて理緒が涙声で詫びる。理緒がぱちんと指を鳴らす。すると理緒の身体には男物の服が一瞬でまとわりついた。それを見ていた理子が息を飲む。
「あ、あんた……服とか……その、出したりできるの?」
「はい。引き寄せは得意です」
微笑みを浮かべて理緒が頷く。何故か理子は難しそうな顔をしてくるりと理緒に背を向けた。
「理子、由梨佳さんを起動させるよ」
「そっ、そうよ。多輝の居所を聞かなきゃ!」
「多輝? あ、ゴーストハンターたきりんのことですか?」
二人と一緒になって由梨佳を見つめていた理緒が言う。そこで理子が怪訝そうな顔をしてゆらりと理緒を振り返る。いちいち水を差さないでくれる? と剣呑な声で言ってから、理子はごーすとってなにと訊ねた。
理緒は理子が男だったら、というところから引っ張ってます。