「かなり安定しているんだね」
「それはもう。ママですから」
やけに嬉しそうに言って頷き、理緒はエレベーターのボタンを押した。二人が乗り込んだところでエレベーターの扉が静かに閉まる。下降したエレベーターが止まったところで理緒がおずおずと言う。
「あの、理緒です。優一郎さんをお連れしました」
そう、理緒が言うとエレベーターの扉が静かに開いた。しんと静まりかえった廊下を理緒が先に立って進む。優一郎は促されるままに廊下を進んだ。廊下の左右には幾つか部屋があるらしい。扉を横目に過ぎて、廊下を曲がり、奥に向かって進む。
やがて一枚の扉が廊下を遮る。理緒がおずおずと扉をノックする。
「あの、ママ。理緒です」
戸惑い気味に扉に向かって理緒が話しかけると、中から女性の声が聞こえてくる。どうぞ、と言って理緒がドアを開けて優一郎を振り返る。
「お邪魔します」
そう声を掛けて優一郎はその部屋に足を踏み入れた。理緒がお茶をいれてきます、と言ってドアを閉める。部屋の中に立っていた、白衣を身に着けた女性が穏やかな微笑みを浮かべて優一郎を見つめる。優一郎のよく知る佑によく似た、けれど雰囲気が全く違う女性がそこにいた。
「今日はお招きありがとうございます」
微笑みを浮かべて優一郎は礼儀正しく挨拶をした。すると優一郎に負けないくらいに愛想のいい微笑みを浮かべて女性が頷く。この女性が優子だ。
「こんにちは。吉良優子と申します。そちらは吉良優一郎さんで宜しかったでしょうか?」
そう言いながら優子がソファを勧めてくれる。優一郎は頷いて勧めに従って腰掛けた。広々とした部屋は整理整頓されている。応接用のソファセット、巨大なモニタ、そして部屋の奥にはヒューマノイド用の修理台もある。
「はい。吉良優一郎と申します。この度は本当にありがとうございました」
「いいえ。わたしも助かりましたから」
優しい微笑みを浮かべて優子が答えたところでドアがノックされる。優子が返事をすると、理緒が二人分の茶を運んできた。どうぞ、と言いながら二人に茶を出して立ち去ろうとした理緒を優子が呼び止める。
「理緒。わたしの隣に座っていらっしゃい」
「え……でも」
戸惑った顔をして理緒が優一郎と優子を見比べる。
「理緒くんには、本当に助けていただきました。優秀なお子さんですね」
理緒が優子の実の子ではないと知りながらも、優一郎はさらりとそう言った。すると理緒が泣きそうな顔をする。だが優子はにっこりと微笑んで首を傾げてみせた。
「まあ。理子さんほどではありませんわ」
楚々と笑って言ってから優子が理緒の手をそっと引く。すると理緒は困惑した面持ちをしつつも大人しく優子の隣に腰を下ろした。
「こちらの世界は、脅威になるべきような存在の襲来はないのですか?」
「今のところは何も。そちらはかなり荒れ模様のようですね」
優一郎の問いに答えてから優子が静かにティカップを取り上げる。理緒は落ち着かない素振りで優子を見つめている。
「はい。さまざまな存在の思惑が入り乱れて、かなり荒んだ状況になっています」
「速やかな解決を望める状況ではないようですね」
困ったような顔をして優子がそっとため息を吐く。
「ハードランディングになれば、世界自体が消滅しかねませんから」
「確かにそうですわね」
そう優子が答えた時、ドアが軽くノックされた。優子が返事をすると、ドアが静かに開いて一人の青年が顔を覗かせる。それまで戸惑った顔をしていた理緒が唇を引き結び、かたい顔をする。
「吉良博士。先日の調査の件ですが、予算を乗せろと上の方から」
眼鏡を掛けた青年の顔立ちは何故か水輝にそっくりだ。優一郎は面白いものを見る気分で青年を見た。理緒が膝の上でかたくこぶしを握りしめ、身体を震わせている。だが隣に腰掛ける理緒の様子に気付かない素振りで、優子は青年に頷いてみせた。
「後で呉羽を行かせるから、それまでは保たせて」
「判りました。それでは、失礼します」
淡々と言った青年が静かにドアを閉める。優子は優一郎に微笑みかけ、ごめんなさいねと詫びた。
「彼は?」
「池田水輝、と言えばお判りになりますかしら?」
意味ありげな微笑みを浮かべて優子はティカップを取った。優一郎はそれを聞いて、さっきみたあの女性の姿をしていた水輝のことを思い出した。だが、今見た青年も水輝にそっくりだった。
「さやさんですか?」
「いいえ。水輝ですわ」
優子がさらりと優一郎の言ったことを否定する。するとそれまで黙っていた理緒が訴えるような眼差しをして口を開く。
「ママ! あの、理緒、やっぱりお外で遊んできます!」
口早に言った理緒が慌ただしく立ち上がり、部屋を駆け出して行く。だが不思議と優子はそんな理緒を引き留めなかった。
「この世界は本当に新鮮で楽しいです」
「気に入ってくださると思いましたわ。ぜひ、楽しんでいってくださいね」
お互いににっこりと微笑み合い、二人は頷き合った。
このエピソードで六章は終わりです。
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○吉良優一郎
やっと理子をゲットした!
と、思ったら色々なイベント(?)が入ってきて邪魔をされ続けている。
○池田理子
まだ結婚してない……と思うので、苗字は変わってない、はず!
並行世界から理子と似たような理緒を引っ張ったりと無茶をした。
なので、和也にめちゃくちゃ怒られた。
○木村順
後処理に奔走中。
いつも後処理してるけど。
○重森和也
謎の吉良瀬邸執事。
順と色々あったりするし、全ては科学のため! の上司がいるし。
まだまだ謎な人物。
○池田水輝
青いとこで奈月&佑といちゃこらしているつもりだった。
遠見の鏡であれこれ見てはぐったりしている。
高みの見物は難しい。
○吉良瀬佑
○吉良瀬奈月
水輝と一緒。
○吉良総一郎
理子の鏡から着想を得てアレコレしている。
○紫
ゼリーにご執心。
○蘇芳克人
紫と組んで多輝に悪戯なう。
そして優一郎の怒りを買っているところ。
○(別のとこの)立城
沙耶を保護中。
○沙耶
立城のところにいた、水輝を名乗ってた人物。
本名が沙耶なのだが……。
これからも水輝の名前を使うと思われ。
○(別のとこの)水輝
理緒の母親。
優柔不断というか意志らしいものがないので、流されまくりらしい。
○(別のとこの)佑
○(別のとこの)奈月
TSしているので男性。
水輝を囲っているらしい。
○(別のとこの)優子
理緒との関係性からして、優一郎がTSしたものと思われる。
ちなみに優子のところにも水輝がいるらしい。