『ここに来る前の水輝さんって、挿れればそれだけで女がいくって、そういうセックスのやり方だったわよね?』
実際それで、充分気持ち良かったけど。龍神だから。呼吸を整えながら言う佑に水輝はそうだなと笑った。
『それで十分だったからな。人間の女が相手の時はもっと顕著だったな。触れるだけで果てる女は多かったし』
『充分じゃないと思うわ。水輝さんってプレイボーイのようでいてそうじゃないのよね』
『あー……奈月が留守で良かったかも』
ぼそりと呟いてから水輝は佑に腕枕をした。疲れた息を吐いていた佑が大人しく水輝の腕に頭を乗せる。
『おれはな。実はあんまり女に興味がなかったんだ』
佑を間近に見つめて水輝はこっそり白状した。すると佑が複雑な顔をする。
『アブノーマルでブレイクしてたのね』
『というかだな。おれにとって女とのセックスは、食事だったからな。正直、女がどう反応するとか、そういうことにあまり興味がなかった』
とにかく女に突っ込んで、交わればそれでいいと思っていた。水輝は苦笑を浮かべて言った。
『食事……。ヒューマノイドみたいね』
『似たようなものだと思うぞ。呼吸や食事と大差なかった。足りない分は、実際に飯を食うことで補っていたが』
何でこんな話になったかな、と苦笑して水輝は佑の額に口づけした。
『奈月さんはどうだったの? 食事にはならなかったでしょう?』
『奈月は……こう、優しくしたい気分になるんだよ。辛くないように、苦しくないように、出来れば気持ち良くなって欲しいし、そういう奈月を見ているととてもほっとするというか……』
難しいな、と呟いて水輝は頭をかいた。その手で佑の身体をそっと撫でてみる。母乳や体液に塗れた佑の身体はだが、汚いとは到底思えないし、今すぐにでもまたしたくなる。
『そうよね。和むっていうか、侘び寂び萌えっていうか』
『安心、というのが近いかな。だから危険なことには近づけたくない』
少し声を落として水輝は呟くように言った。
『おれには母親が存在しないから判らないが、多分、母親の胎内にくるまれている感覚というのが一番近いんじゃないかな』
『でも欲情するんでしょう? 母親プラス妹プラス妻。ってところじゃないかしら?』
くすくすと笑って佑が指摘する。困ったな、と頭をかいて水輝は佑をまじまじと見つめた。
『微妙に違うんだけどな……。確かに奈月を見ていると勃起するし、やりたいと思うんだが……』
どうも違う気がする。水輝は難しい顔をして首を傾げた。
『奈月さんって、妹さんの生まれ変わりなんでしょう?』
そう言ってから佑が少しだけ顔をしかめる。どうやら失言だったかな、と思っているらしい。それを読んで水輝は苦笑した。
『何となく判る。そうかも知れない。莢花に感じていた気分に似たところはある』
そう言ってから水輝は優しく佑の髪を撫でた。
『奈月を見て欲情する場合は、ああ、抱きたいなあ。抱いたらほっとしそう。って感じかな』
そこで言葉を切ってから、水輝は佑の鼻の頭を指でかるくつついた。
『お前の場合は、凄く判りやすい。うわっ、犯してえ! ぐちょぐちょにしてみてえ! いやらしいこといっぱいしてみてー! って、思う』
そう水輝が言うと、何故か佑が目に涙を浮かべる。ここで泣くと思わなかった水輝は慌てておいおい、と声を掛けた。もしかして佑は嫌だったのだろうか。確かに少し乱暴なことを言ってしまった気がする。真剣に考え込んでしまった水輝を見つめ、佑が浮かんだ涙を指で拭う。
『違うの。やっとわたしを見てくれるようになったって、実感できたから。おじさまの作った人形でも、優一郎の劣化コピーでも無く、わたしをわたしとして』
『え……う、そうなのか?』
言われている意味が判らず、水輝は困惑に顔を歪めた。いや、だってなあ、とぼそぼそと呟く。
『凄く気になるんだよ。どんな反応するかとか。こう言ったらどうするか、とか、ここを触ったらどんな風とか、そういうのを凄く見たいと思うから、だから色々考える』
何でこんなにまとまりのない話し方になるのだろう。自分で自分の心の動きが理解出来ず、水輝は難しい顔をしてたどたどしく言葉を継いだ。そんな水輝を急かすでもなく、佑は穏やかな微笑みを浮かべて黙って聞いている。
『考えて、試してるうちに、我慢できなくなるけど、でもすぐに挿れたらもったいないような気がして、いや、どうしてもの時はあれだけど』
『水輝さんって、やっと今、思春期に到達したのね』
そう言って佑がくすりと笑う。水輝はうっ、と言葉に詰まって頭をかいた。
『人のことがきとか言えないな、これは』
『ここでゆっくり大人になりましょう』
にっこりと佑が微笑む。優しく髪を撫でられて水輝は少し赤くなって俯いた。何だか気恥ずかしいものがこみ上げてくる。なのに居心地は悪くない。
不意に水鏡にノイズが入る。それまで落ち着いて清陵高校の校舎を映し出していた水鏡の鏡面が揺れる。
『あー……』
水輝はもの凄く嫌な顔をして低い声で唸った。
『何かあったの?』
『いや、もの凄く嫌な予感が……』
揺れた鏡面から何かが飛び出す。それは水輝の頭に軽く当たってベッドに落ちた。その後、また水鏡が元に戻り、落ち着いた夜景を映し出す。水輝はがりがりと頭をかき、飛んできた紙を丸めたものを拾い上げた。
無言で紙を開いた水輝はひくひくと頬を引きつらせた。紙には見覚えのある字で『ばか』と書いてある。
『この字……』
『あー、もう、いいや。ほっとこう』
水輝はぐしゃぐしゃと紙を丸め、ベッドの向こうに放り投げた。戸惑った顔をする佑を腕に抱き、紙に向かって舌を出す。
『結局、子供ばっかりだったってことね』
水輝の腕の中で佑がしみじみとした口調で呟く。そうかも知れない、と同意して水輝は紙から目を逸らし、佑の髪に口づけした。
ハーメルンって一度の投稿の文字数が1,000字を越えないといけないのですけども。
シーンを分割する時は大体、2,000字から3,000字くらいに分けてます。
1万字を越えることもあるんで、そういう時は5分割とかにしたりしてます。