BL警報! というか片方はオジサマなので……ホモ?
まあ、そんな感じの警報です!
「あー!」
鼻にかかった甘い声を上げて水輝はがくがくと腰を震わせた。訳が判らなくなるような凄まじい快感が後から後からこみ上げてくる。水輝は虚ろな眼差しを中空に向け、開けた口の端から涎を垂らした。後ろから水輝を抱きかかえ、紫藤がこれでもかと言わんばかりに何度も腰を突き上げる。
「やはり小鳥は羽根を切らずに籠から出してはいかんな」
笑いながら言って紫藤が水輝のペニスを扱く。水輝は喉の奥で悲鳴を上げて腰を引いた。だがその分、肛門に猛々しく勃起した紫藤のペニスが食い込み、また快感が襲ってくる。
「いい! いいっ、あふ! でるぅ!」
まともに考えることが出来ない。水輝はされるがままに性感を高められ、声を上げながら身体をしならせた。紫藤に乱暴に扱かれたペニスから精液が迸る。
「大分、素直になってきたな。どうだ? 私から逃げ出そうとしたことを少しは反省したかね?」
「うん、だから、早く! ちょうだい!」
「おお、そうだったな。水輝はこうされるのが好きだったな」
満足そうに笑って紫藤が精液まみれの水輝のペニスを強く扱く。射精してすぐの敏感な性器を乱暴に扱かれ、水輝は激しい声を上げて快感に身を捩った。
よくわからない。水輝の視界はすっかりぼやけていた。注射器を何度も刺された腕には青い染みがいくつも出来ている。はっきりとしない視野、耳に聞こえてくるのは紫藤の深く低い声、そして感じるのは快楽だけだった。
唐突に襲ってきた寒さにぶるりと身を震わせ、水輝は浅い呼吸を何度も繰り返した。震え始めた水輝に気付いたのか、紫藤がのんびりと付き人を呼ぶ。すると付き人は慌ただしくベッドに駆け寄り、水輝の腕にまた注射針を突き刺した。しばしの後、ぴたりと水輝の震えが止まる。
店を連れ出されてどれだけ時間が過ぎたのか判らない。水輝は紫藤に来る日も来る日も抱かれ続けた。そのたびに水輝には薬が施される。最初はいつものように生意気な口をきいていた水輝も、やがて薬に囚われて自分から快感をねだるようになった。
これで大丈夫と踏んだのだろう。紫藤はある日を境に水輝をしつこく抱くことはなくなった。だがそれで水輝に飽きたという訳ではないらしい。やはり何かあるとすぐにベッドに呼ばれる。
薬を使われたとは言っても、さほど習慣性のあるものではなかったようだ。最初は酷い寒気に襲われたりもしたが、やがて水輝の身体からは薬が抜けた。
弦を弾き、弓を乗せる。水輝は無言でバイオリンを弾き始めた。近頃の紫藤は水輝に夜ごと楽器を奏でさせるのを趣味にしているらしい。水輝も頼まれれば大人しく演奏することにしている。
「シエラザードか」
「何だよ。気に入らないか?」
いつも選曲には口を出さない紫藤の呟きを聞きつけて水輝はそう訊ねた。既に季節は夏を迎え、閉じた窓の向こうには鮮やかな花火が上がっているのが見える。
「いやいや。私も好きな曲だ。邪魔をしたかな?」
優雅にブランデーを飲みながら紫藤が笑う。別に、と呟いて水輝は曲の続きを弾き始めた。
これで良かったのかも知れない。水輝はバイオリンを奏でながらそう思った。あの店からここまでは随分と離れている。力をなくし、足跡など消さずとも残らない水輝のことを立城が追うのは難しいだろう。
あれは夢だったのだ。水輝はそう思うことにした。おれは立城には会っていない。ホストクラブで働いてもいない。ずっとここで、この男の相手をしているだけだ。全てはどうでもいいし、誰がどうしようが知ったことではない。そう、あれは夢だ。
「真夏の夜の夢」
「まだ初夏だがね」
曲を変えた水輝を苦笑して紫藤が見つめる。だが水輝はそんな紫藤を無視してバイオリンを奏で続けた。
立て続けに何曲かを演奏した後、水輝は疲れたと呟いて紫藤に楽器を返した。紫藤が硝子ケースにいつものように楽器をしまいこむ。水輝はソファに寝そべって何となく天井に手を伸ばした。
もう腕に注射の跡はない。ぼんやりと腕を眺めていた水輝に紫藤が笑いかける。
「なんだね? 薬が恋しくなったかな?」
「まさか。二度とごめんだな」
水輝は身を起こして紫藤にソファを譲った。紫藤がそうだなと苦笑して水輝の横に腰掛ける。
「目も戻ったしな」
「目?」
紫藤の言う意味が判らず水輝は聞き返した。すると紫藤が困った奴だと言って水輝の頭を撫でる。
「あの時、水輝の目が変わっていたからな。ああするしかないと思った」
目。そういえば最初、紫藤は声を掛けてきた時にもそんなことを言っていた気がする。水輝は黙って考え込んだ。
あの頃の自分は今の自分と違っていたのだろうか。そう考えてから水輝は頭を強く振った。くだらない。あれはただの夢だとさっき決めたばかりなのに。
「それよりセックスしようぜ、セックス。今日はまずきっちり口で抜いてやる」
「珍しいな。水輝が自分から誘うとは」
「うっせえな。やるのかやらねえのか、どっちだ」
剣呑に言って水輝は紫藤を睨みつけた。手にしていたグラスをテーブルに戻し、紫藤が立ち上がる。よし、と水輝が服を脱ごうとした時、唐突にドアが開いた。
「たっ、大変です、社長!」
「何だ、騒々しい」
これからベッドインというところを邪魔されたからだろう。紫藤が機嫌の悪い顔でドアから飛び込んできた男を睨みつける。水輝は汗だくになっている男をじっと見つめた。
途中から不穏になるわけですが。
お約束です。