※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 三部 夜の女王   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


うっかり記憶を落っことしそうになった多輝

 ぼんやりと目を開けた多輝は深く息を吐いて何度か瞬きをした。見知らぬ天井が見える。やけに暗い部屋には聞き慣れた由梨佳の掠れた声が響いている。多輝はぼんやりと声のする方に目をやった。由梨佳は多輝の横たわるベッドの傍に座り、スカートの中に手を入れて自慰をしている。

 

「んっ、多輝くんっ! だめっ、壊れちゃうっ!」

 

 切ない声を上げ、由梨佳が忙しなく手を動かす。多輝はぼんやりとした顔をしてそんな由梨佳を見つめた。

 

 そこは知らない部屋だった。六畳ほどの狭い部屋にはベッドが一つ置いてある。他には椅子とテーブルのセット、古ぼけたテレビ、小さな冷蔵庫が置いてあるだけだ。多輝が普段暮らしている部屋の様子とは随分違う。

 

「んっ、あっ! 多輝くんっ! やだっ! ああんっ!」

 

 切ない声を上げて由梨佳がしきりに股間を弄る。多輝はぼんやりとそれを見つめ、小声でごめん、と詫びた。すると由梨佳がはっとしたように多輝を見る。

 

「謝らないで、謝るのは私のっ、あっ! だめ、止まらない……んふっ」

 

 そう言いながら由梨佳は忙しなく股間を弄っている。多輝はぼんやりとした目で由梨佳を見つめ、のろのろと考えた。

 

 だれだっけ、これ。

 

 そう思ってから多輝はまたゆっくりと自分の考えを否定した。これは由梨佳だ。そう自分に言い聞かせる。そう、目の前にいるのは由梨佳で、自分はあの時に気絶して、そして。

 

 多輝は自分の手を目の前にゆっくりと持ち上げてみた。しっかりと感じられていた水輝の力が今はどこにもなくなっているのが判る。あの時か。多輝はぽつりと呟いてため息を吐き、手を下ろした。あの淫魔に捕らわれた後、やけに気持ちの悪いものに包まれた気がする。

 

「多輝くん、良かった! ごめんなさい、私……ああんっ!」

「電源落とそうか?」

 

 辛そうに顔を歪めて股間をかきむしる由梨佳をぼんやりとした目で見つめ、多輝は小声で訊ねた。

 

「多輝くんが、そう望むなら、おねが あっ! あああああっ!」

 

 叫ぶような声を上げて由梨佳ががくがくと腰を震わせる。

 

「多輝くん、いいっ……。多輝くん、いいっ……。多輝くん、いいっ……」

 

 呆けた顔で同じことを繰り返す由梨佳を見つめ、多輝はのろのろと身体を起こした。ベッドの縁に座り、由梨佳のへそを服の上から探り当てる。スイッチを押し込むとほどなく由梨佳の動きがぴたりと止まった。

 

 自分の代わりにベッドに由梨佳を横たえ、多輝は周囲を見回した。ここはどこだろう。考えてはみたが、部屋にはやっぱり見覚えがない。テレビは付きっぱなしになっていて、画面には文字ばかりのニュースが流れている。多輝は何となくテレビの画面に映る文字を目で追いかけた。いつもと変わらず、地上のあちこちでは様々な魔の事件が勃発しているようだ。

 

「おれ、行かなくていいのかな」

 

 多輝はぽつりと呟いた。別に連絡を受けている訳でもない。だからきっと必要はないのだろう。そう結論付けて多輝はまたテレビに目を向けた。

 

 不意に画面が切り替わる。多輝は何度か瞬きをした。急にテレビ画面に現れた女性キャスターが慌ただしい口調でニュースを読み始める。それによるとどうやらどこかの大陸が丸ごと沈んでしまったらしい。

 

「嘘だろ……?」

 

 多輝は呆然とテレビ画面に見入った。女性キャスターの説明に続いて画像が表示される。そこには人の住んでいた家などが無惨に壊れて浮いているのが見えた。大量の瓦礫のあちこちには人の服らしきものも見えている。海に浮かぶそれらの周りにはたくさんの船が浮いていて、慌ただしく人々が動いている。空から映されたらしい光景に多輝は息を飲んだ。

 

 何がどうなっているのか判らない。多輝は緊張に手を握りしめ、固唾を呑んでテレビ画面を見つめた。




由梨佳が壊れかけたまま電源を落とされました。
多輝がまだぼんやりしてるのは、ちょっと前まで克人と紫に色々されてたからです。
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