※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 三部 夜の女王   作:伊駒辰葉

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エロシーンが若干あります。
機械なので気を付けてください。


プロポーズなのか? どうなんだろ?

 一昨日来やがれ、と不機嫌に吐き捨てて多輝は凝りもせずに跳んできた力を乱暴に跳ね返した。ふん、と鼻を鳴らしてどっかりと椅子に腰掛けた多輝を気遣うような目で由梨佳が見る。

 

 多輝たちが居るのはとあるリゾート地だった。まるで用意されていたかのようなホテルには多輝たちの他には透と要、それにちなりたち、学と文がいる。コテージは違うが互いの部屋は行き来できるようになっており、食事などは全てホテル側が用意してくれることになっている。

 

 ホテルから少し離れた場所には突如、見覚えのあるビルが現れた。どうやらあそこには渚や祐がいるらしい。

 

「誰が会うかよ。バーカ」

 

 漸く引き寄せの力が途切れたことに息を吐き、多輝は悪態をついた。優一郎はむきになって何度も力を跳ばしてきた。跳ね返すだけで精一杯だった多輝は全身で息をしながらぐったりと椅子にもたれかかった。

 

 窓の外に賑やかな声がする。早速、水着を着た透が浮き輪を持って海に向かって駆けていく。その後ろ姿を見送ってから多輝は額に浮いた汗を腕で拭った。

 

「多輝くん、よかったの?」

 

 不安そうな顔をして由梨佳が問い掛ける。いいんだよ、と多輝はぶっきらぼうに言ってから慌ててごめん、と詫びた。だが乱暴な口調で言ったことを由梨佳は特に気にしなかったらしい。少し笑みを浮かべて首を振る。

 

「それより、由梨佳の方は大丈夫なのか? 一応、直したけど……」

 

 呼吸を整えてから多輝はかけ声をかけて立ち上がった。だがすぐに足許がふらつく。多輝は慌てた声を上げて椅子に逆戻りした。

 

「大丈夫よ。んっ」

 

 由梨佳はベッドに横たわったままだ。ここに来てからも由梨佳はずっと自慰をし続けている。多輝は何とか身体に力を入れ、椅子から立ち上がって由梨佳に近付いた。

 

「ごめん。もしかして足りなかったか?」

 

 あの屋敷の中でも一度は交わったし、ここに来てからも数回ほど交わってはみた。が、由梨佳は多輝のペニスが膣に入っていない間、ずっとこうして股間を弄っているのだ。

 

「行為は足りているわ。わたしがエッチなだけだから、気にしないで」

 

 相変わらず股間を弄りながら由梨佳がにっこりと笑う。多輝はベッドの縁に腰掛け、ばつの悪い顔をして頭をかいた。

 

「いや、あの、えっちなのはいいんだけど、別に好みだし、いやそうじゃなくて、あんまりずっとしてると疲れないかと思って」

 

 多輝はぼそぼそと小声で言った。

 

「この身体になってから、弄っているほうが安定するみたいなの。呼吸みたいなものなのかしら」

 

 そう言いつつ、由梨佳は恥ずかしそうに俯いた。何となく見ていた多輝も恥ずかしくなって思わず俯く。

 

「そ、そっか。由梨佳がいいんならいいんだけど、でも疲れたらちゃんと言えよ」

 

 恥ずかしさを堪えて顔を上げ、多輝は由梨佳の頭をそっと撫でた。考えてみればここ最近、こんな風に由梨佳とゆっくり話をすることがなかったような気がする。理子と一緒にいて気が付かなかったが、もしかしたら由梨佳はずっと寂しい思いをしていたのではないだろうか。

 

「ごめんな、由梨佳。おれが自分勝手なことばっかしてたから」

 

 理子がいなくなった時の自分の錯乱ぶりを思い出して多輝は苦い顔をした。由梨佳に指摘されて初めて気付いた。確かに自分の理子に向けていた感情は、愛情ではなかった気がする。

 

「あの……多輝く……」

 

 急に由梨佳が声を途切れさせる。多輝は慌てて由梨佳の顔を覗き込んだ。表情がかたまり、唇は喋りかけた時のまま静止している。なのに由梨佳の手だけが動いて自慰は続けている。多輝は慌てて由梨佳のへそに指を押し込み、一度電源を落としてから再度、由梨佳の電源を入れた。

 

 由梨佳の機体の中でモーターの低い音がする。多輝は苛々しながら起動するのを待った。もしかして由梨佳の身体に酷い負担をかけるようなことをしてしまったのだろうか。それとも何か別の原因で由梨佳の身体の調子が悪くなってしまったのだろうか。多輝は考えを巡らせながらじっと由梨佳が起動するのを待った。

 

 やがて由梨佳が瞬きをする。多輝はほっと息を吐いて由梨佳の顔を覗き込んだ。

 

「大丈夫か? 由梨佳」

「おはよう。多輝くん」

 

 にっこりと笑って由梨佳が言う。

 

「おはよう……って、さっきなに言いかけたんだ?」

 

 多輝はじっと由梨佳を見つめてそう訊ねた。

 

「さっき……?」

 

 考えるような顔をして由梨佳が首を傾げる。そうしているうちに由梨佳の機体のあちこちで機械の音がし始める。多輝はぎょっとして由梨佳の全身を見つめた。

 

「あっ、んふっ」

「おい、由梨佳! 大丈夫じゃないじゃないか! すぐに、直さないと」

 

 蒼白になって多輝は叫んだ。欲情した由梨佳が身をくねらせて自慰をし始める。多輝は慌ただしく隣の部屋に向かい、積まれていたダンボール箱をひっくり返した。順の言葉通り、由梨佳の機体維持に必要な部品などは全て揃っている。多輝はとりあえず機械仕掛けの女性器ユニットをつかみ、急いで由梨佳のところに戻った。

 

「大丈夫よ多輝くん、まだあそこは壊れていないわ。通常動作だから」

「いや、そうなんだけど、調子悪いだろう!?」

 

 ヒューマノイドには性的な快楽がどうしても必要になる。そういう仕組みなのだ。が、由梨佳の動きはそれとはかなり違っているような気がする。さっき急に止まってしまったのも気にかかる。

 

 多輝は手にしていた部品をベッドの端に置いた。由梨佳はにっこりと笑いながら股間を弄っている。

 

「自業自得よ。機械人形の分際をわきまえずに、多輝くんに意見したりするから……」

「だから! 何度言やわかんだよ! 由梨佳は人形とかじゃなくて、おれの女だ!」

 

 自分ではどうしてやりようもないことに苛立っていた多輝は、思わず大声で叫んだ。すると由梨佳が多輝を見上げて寂しそうに微笑む。

 

「ありがとう。多輝くん。多輝くんは、わたしが護るから、魔なんかに掠わせたりしないから、だから、どこまでも逃げましょう」

 

 そう言って由梨佳がにっこりと笑う。多輝は肩を怒らせて声を張り上げた。

 

「違う! おれが由梨佳を護るんだよ!」

「多輝くん、駄目! 無茶はやめて! ここなら、あの方達に護られて安心だし、わたしも結界をずっと張っていられるわ」

 

 あくまでもにっこりと笑ったままで由梨佳が言う。それを聞いた途端、多輝の中でぶつんと何かが切れた。

 

「違うっつってんだろうが! 由梨佳はおれの女だからなに言ってもいいし、おれのこと護ってそんなんならなくていいんだよ! あー、もう、違うだろ!?」

 

 頭をかきむしって多輝は口早に喚いた。それまで多輝を見つめてにっこりと笑っていた由梨佳が不思議そうな顔になる。

 

「おれがここにいるのは由梨佳が危険な目に遭うのが嫌だからで! そりゃ、おれは間抜けにとっ捕まったりしたけども! 昨日がそうだからって明日がどうなるかわかんねえだろ!?」

 

 多輝自身も自分がなにを言っているのか、今ひとつよく判っていなかった。だが由梨佳の言っていることがどうしても気に入らないのだ。

 

「ごめんなさい。多輝くん。また、わたし……」

「あー、もうちがうー!」

 

 俯きかけた由梨佳を見て、多輝は素っ頓狂な声で叫んだ。頭を抱えて天井を仰いで叫んだ多輝を由梨佳が驚いたような顔で見る。

 

「違うのはおれだ! ええと! 要するに!」

 

 頭を強く振ってから、多輝は床にどん、と座った。驚きに目を見張った由梨佳が股間を弄りながら多輝を見る。多輝は正座をして床に手をつき、勢いよく頭を下げた。

 

「おれが成長するまで待ってください。出来るだけ由梨佳に似合う男になるように頑張るから」

「多輝くん……」

 

 由梨佳が驚いたように目を見張る。多輝は由梨佳のそんな視線を感じつつ、土下座したまま言葉を継いだ。

 

「おれはまだ全然子供で、なにもわかんなくて、だから由梨佳にいっぱい迷惑かけてばっかりだけど」

 

 これまでにあった様々なことを思い出しながら多輝は目を閉じた。いつもいつも誰かに護ってもらうばかりだった。自分で動いているつもりでも、結局は誰かが護ってくれていた。だが、それでは駄目なのだ。

 

「由梨佳が胸張って自分の男だって言えるような男に、ちゃんとなるから」

 

 今もこうして由梨佳は護ってくれている。出来るだけ早く子供から大人になって、護ってもらう側から護る側にならなければならない。多輝は不器用に言葉を継いでから恐る恐る顔を上げた。

 

「多輝くん……ありがとう。とっても嬉しい。だけど、それなら、言っていいかしら」

 

 自慰の手を止め、ベッドに身を起こした由梨佳が多輝と向かい合わせになる格好で座る。多輝はごくん、と唾を飲み込んで頷いた。

 

「まず、優一郎さんから逃げるのをやめましょう。彼の下にいては、多輝くんは大人になれないと思う。わたしを介せば、話ができるわ」

 

 うっ、と思わず呻いてから多輝はぐっと声を飲み込んだ。確かに由梨佳に言われた通りだ。例えいま、優一郎から逃げられてもこれからずっとそれが出来るとは限らない。それに逃げていては何の解決にもならないのだ。

 

「判った」

 

 多輝は真剣な顔をして頷いた。

 

「ちょっと待ってね」

 

 そう言い置いて、由梨佳はスカートをめくって足を開いた。クリトリスを指で操作している。由梨佳は自慰ではなく、通信回線を開いているのだ。多輝は固唾を呑んでその様子を見守った。

 

「少し、時間がかかるそうよ。とりあえず、そんなに堅くならないで。今後のことを話しながら、待ちましょう」

 

 しばらく後にそう言ってから由梨佳は足を閉じてスカートを戻した。にっこりと笑う由梨佳に頷き、多輝は手を伸ばした。両手で由梨佳の手をぐっ、と握る。手を取られた由梨佳は不思議そうな顔をして首を傾げた。

 

「由梨佳! おれと結婚して!」

 

 多輝は耳まで赤くなって声高に言った。

 

「わたしで、よければ」

 

 しばしの間を置いて、由梨佳が真っ赤になって頷く。多輝は由梨佳の手を握ったまま、真剣な顔で言った。

 

「じゃあ、恋愛とかもしてくれる!? ええと、セックスはいつもしてるけど、でもしたい!」

 

 真剣な顔をしつつも多輝は耳まで赤かった。

 

「どうすればいいかしら?」

 

 混乱した面持ちをして由梨佳が小声で言う。

 

「いや、今とかじゃなくて、由梨佳とデートしたりとか……いや、今までもしてたけど、そうじゃなくてなんていうか」

 

 言いたいことがまとまらず、多輝は難しい顔をして唸った。が、やっぱり多輝は耳まで赤いままだ。

 

 しばし照れた多輝が言うことに頷いたり困った顔をしてから、由梨佳がふと告げる。

 

「とりあえず、今、理子さんの下に向かってるそうよ」

 

 多輝も思うままに喋ったことで少し落ち着いていた。どうやら由梨佳が通信を入れたヒューマノイドが理子のところに向かっているらしい。そうか、と頷いて多輝はそっと由梨佳の手を離した。緊張しきっていたからか、多輝の手の中はぐっしょりと汗に塗れている。

 

「まずは理子さんだし、リラックスしましょう」

「お、おう」

 

 多輝は汗まみれの手をズボンで拭い、緊張の面持ちで頷いた。




多輝が素直というか馬鹿……もといw ストレートに言い過ぎなので……。
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