やれやれ。行ってしまったか。そう呟いて立城は深々とため息を吐いた。隣に横たわっていた水輝が不思議そうな顔をする。立城は何でもないよ、と微笑んではみ出していた水輝の肩にそっと毛布をかけた。
あれから水輝の身体は驚く早さで回復した。恐らく奈月が手当をしてくれたからだろう。今はもう、水輝は自分で二人の子供に乳をやることが出来るようになっている。
「何でもないって顔じゃねえだろ」
「ん? 気になる?」
微笑みを浮かべて顔を覗き込むと、水輝が拗ねたように唇を尖らせてそっぽを向く。相変わらず水輝は意地っ張りだが、少しずつその性格も変化したような気がする。
「愛していますよ、水輝」
「うっ」
くすりと笑いかけると水輝が声を飲んで立城を睨む。むっとしたような顔をして寝返りを打った水輝の背中に微笑みかけ、立城は指先で白い背中をすい、となぞった。
優一郎と理子はいなくなった。それと同時に二人の気配もこの世界から消えた。だがきっとあの四人のことだ。どこかでまた元気にやっているのだろう。そう考えてから立城は思わず自分の考えに苦笑した。
「僕は何もしていませんからね」
「は? 何のことだよ」
立城の指の動きにひくひくと肌を震わせて声を殺していた水輝が、ぶっきらぼうに言って肩越しに振り返る。
「独り言……なのかな」
くすくすと笑いながら立城は今度は手のひらで水輝の背中を撫でた。うっ、と声を飲んだ水輝が声を殺して身体を震わせる。
分裂していた地上と地下は、今は一応落ち着いている。空の主の座は速やかに斎姫に移り、誓約者は世界から姿を消した。木龍神の使い魔たちは今は根の国を支えている。文字通り、地の根となっているのだ。
「ん」
微かな声を漏らして水輝が身震いする。立城はゆっくりと手を滑らせて水輝の腰を撫でた。柔らかな尻を撫でられた水輝が掠れた声を漏らして毛布を胸元につかみ寄せる。
「も、しかして、欲情、してるのか?」
さっきしたばっかなのに、と呆れたように付け足して水輝が振り返る。立城は微笑みを浮かべてうん、と頷いた。手を動かして水輝の肛門を指でとんとんとつつく。
「今度は僕のここ、苛めてくれる?」
「うあ。開き直りやがった」
嫌そうに言ってから水輝が寝返りを打ち、今度は立城と布団の中で向かい合う格好になる。立城はにっこりと笑って水輝の額に口づけした。
「いけないかな?」
「あー……判った判った。お前、あんときちょっと感じてたもんな」
そう言って水輝が身を屈めて立城の胸に口づける。水輝のいうあの時、というのは立城が強姦された時のことだ。
「妬いてるの?」
「ちげえよ。よく考えたら、されたい気分の時もあると思ってな」
「うん。今は凄くそういう気分」
胸を這い回る水輝の唇の感触にうっとりと目を細め、立城は深く息を吐いた。艶めかしく動いた水輝の足が立城の足に絡み、腿の内側を撫でられる。その感触に立城はひくりと肌を震わせた。
「肌もすべすべなんだよなー、男なのに」
どこか不満そうに水輝が言う。立城は困ったように笑って水輝の額に自分の額を押しつけた。
「綺麗な男は嫌いですか?」
「おっまえ、マジで開き直りまくったな」
「僕だけが置いて行かれるのは嫌だから」
呆れたような顔で言った水輝に言葉を返し、立城は身を竦めた。喋りながら水輝がしきりに腿の内側を撫でている。やがて水輝の手が掠めるように男性器を撫でる。立城は声を殺して身震いし、潤んだ目をして水輝を見つめた。
「判ったってば! そんな顔すんなよ!」
「どんな顔?」
参ったとでも言いたそうな顔をした水輝に立城は問い掛けた。すると水輝が舌打ちをして立城のペニスをつかむ。すっかり勃起しきったペニスをゆっくりと撫でながら水輝はぼそりと言った。
「すげえ物欲しそうな顔」
「物欲しそうな僕は嫌い?」
くすくすと笑って立城は自分からうつ伏せになった。くそ、と呻いた水輝が立城の耳許に唇を寄せる。微かな囁きを聞き取って立城は満足をこめて微笑んだ。
この二人の話には外伝ぽいのがあります。
気が向いたらアップするかもです。