まとも……TS警報! TSなのでBL風味警報!
ぜんぜんまともじゃない気がしますけども!
だめ。やり直し。
何度、このせりふを聞いただろうか。窓からは朝の日が射し込んでいる。水輝はうんざりしながらうなだれた。
「勘弁してくれ。もう、夜が明けちまってるじゃねえか」
「無期限で買い取りをしたんだから、そんなことは関係ないでしょう」
憮然とした顔で立城が言い放つ。ちなみにベッドで裸になってからもしばらく問答したのだ。立城は女性にならないと言うし、水輝はセックスをするなら出来れば女相手の方が良かった。これまでに何度も男性とも交わってはいるが、そういう時の水輝はいつもされる側で、する側に回ったことがなかったからだ。
結局、立城が折れる形で女性にはなってくれている。だがいざペニスを挿入しようというところで立城が何度も駄目出しをするのだ。
「あーのな! そもそもセックスってのはペニスを突っ込んで、性器を摩擦するって作業だろうが!」
「その性根が駄目だって言っているんだよ」
ベッドに仰向けに横たわった立城が厳しい顔で水輝を睨む。苛々して水輝は頭をかきむしった。
「だから前戯もしてやってるじゃねえか! 現に濡れてんだろ、てめえのは!」
「性感の刺激で濡れるのは当然でしょう? 水輝だって勃ってるじゃない」
ああ言えばこう言う。水輝は怒りに歯軋りをしつつ、改めて立城の胸に手を乗せた。乳房を優しく揉みながら指の間で乳首をつまんで擦る。
「下手」
素っ気なく立城が言う。そこで水輝の頭の中で何かが切れた。
「もう知るか! そんなにされたくなけりゃ、オナニーでも何でも勝手にしやがれ!」
立城の上から退いて水輝はベッドを降りようとした。するとそんな水輝の腕を立城ががっちりとつかむ。
「何してるの。仕事を半ばで放棄する気?」
「うるせえ! 触るたびに下手だの駄目だの言いやがって! お前、ほんとはする気がねえんだろ!」
「払い戻し、出来るの?」
剣呑に立城が言う。そこで水輝はぐっと詰まった。立城が水輝を買い取るために積んだ金はとんでもない額だった。あの店を丸ごと買ってもまだお釣りがくるほどの金額だ。確かに水輝にはこれまでに稼いだ金がある。だが、立城が積んだ金はその稼ぎをはるかに上回っているのだ。
「判ったよ! やればいいんだろ、やれば!」
くそったれ、と悪態をついて水輝は改めて立城に跨った。要するにいつも客にするのと同じ手順ですればいいだけの話なのだ。耳朶や首筋、肩から乳房、乳首を手や口で刺激して、脇腹や手足にも出来れば愛撫をする。徐々に愛撫する場所を股間に近づけていく。それだけのことだ。
「駄目。やり直し」
「っだー!」
足を開かせてやっと挿入、というところで立城がまた駄目出しをする。水輝はつかんでいた立城の足を放り出し、その場にひっくり返った。
「どうしろってんだ、おれに!」
そう叫んで水輝は反動をつけて起きあがった。横たわっていた立城がため息を吐いて身を起こす。長い髪を背中に払い、立城は呆れた顔をしてみせた。
「いつもそんな風に女性を抱いていたの?」
「あー、そうだよ! ったく、何が気に入らねってんだ」
あぐらをかいてふて腐れる水輝と向かい合う形で座り、立城が言う。
「相手の反応をまったく見ずに?」
「あ」
指摘を受けて水輝は思わず間の抜けた声を漏らした。立城がやれやれとため息を吐いて肩を竦める。とにかく挿入さえすれば満足するのだと思って、初歩的なことをうっかり忘れていた。そのことに気付いて水輝は渋い顔になった。
「入れれば気が済むんじゃねえのかよ」
「……その性根が駄目だって言ってるんだけど……まあ、いいや」
独り言のように呟いて立城が少し腰を上げる。唐突に近づいた立城に唇を奪われ、水輝は驚きに息を飲んだ。硬直した水輝の唇を優しく吸い、立城が舌を伸ばして水輝の口をこじ開ける。そこで水輝は我に返って立城の身体を両腕に抱いた。
ほっそりとした身体が腕の中におさまる。口の中で蠢く立城の舌に舌を絡ませ、十分に吸ってから今度は水輝は自分から立城の口の中に舌をさし込んだ。
変な気分だな。立城と口づけを交わしながら水輝は心の中で呟いた。別に誰が相手でも同じだ。そう思うのに何故か心の何処かでほっとしているのが判る。口づけをしながら情欲が深くなるならともかく、何で安堵しているのだろう。水輝には自分の心の動きが理解出来なかった。
そういえば立城が部屋に押しかけてきた時もそうだった。あの時、水輝は仰向けに転がっていただけで自分からは何もしていない。立城が勝手にペニスを弄ったり舐めたりしていただけだ。なのにあの時も水輝は何故か安らいでいたのだ。
立城の頭を支え、ゆっくりと身体を傾ける。水輝は口づけを交わしながら自然とその場に立城を押し倒した。立城の反応を見ながら優しく身体を撫でる。傷一つない肌を水輝の指が滑るたびに立城は微かな声を漏らして身体を震わせた。
今度は立城は駄目とは言わなかった。立城の腿を手で押し上げたところで水輝はぴたりと身体の動きを止めた。
「……いいのか? ほんとに」
「だからいいってば。そこで止めないでよ、もう」
少し怒ったような顔をして立城が言う。水輝は眉を寄せて何となく視線を下げた。すっかり濡れそぼった立城の膣口に微かにペニスの先端が触れている。腿を押し上げられ、むき出しにされた立城の陰部はほんのりと薄紅色に染まっていた。
「もうっ、だからそこで止めないでって言ってるでしょう?」
やけに苛立った声が飛んでくる。水輝は慌てて顔を上げて詫びようとした。そこで立城の顔を凝視する。立城は何故か頬を真っ赤に染めていた。
「あ?」
立城が赤くなっている理由が判らず、水輝は訝りの声を上げた。すると立城が唇を噛んで足を動かす。横から立城に腕を蹴られて水輝はいてえ、とぼやいた。
「何で蹴るんだよ」
「だからっ、早く挿れてって言ってるの!」
真っ赤な顔で喚いてから立城がそっぽを向く。そこで漸く水輝は立城が照れていたのだと気付いた。なるほど、と呟いて水輝は改めて立城の腿を押し上げた。
思った通り、立城の膣は少し狭かった。水輝は出来るだけ負担が軽くなるよう、無理に体重をかけないように心がけた。だが何故だろう。立城はやっぱり龍神の力を完全に閉じてしまっている。
「おい。何でわざわざ力を閉じてるんだ?」
交わっている間にそんなことを訊くのも野暮かと思ったが、さすがに二度目となると気になって水輝は訊ねた。唇を噛んで何かを堪えるような顔をしていた立城が苦笑を浮かべる。
「開いたら、激しすぎて、判らないような気がして」
「は? まあ、確かに激しくはなるよな」
龍神は交わりの際に肉体だけではなく力を互いに混ぜ合わせる。それは別に決まり事というのではなく、無意識にそうなってしまうのだ。そのためどうしても感じやすくなるために昂奮が高まり、行為そのものが激しくなる傾向がある。そのことがなければ立城が力を閉じていることが水輝には判らない。水輝は力を読んでいるのではなく、立城の反応を見てそのことに気付いたのだ。
「こうしている方が、水輝がちゃんと、ここにいるって、判るから」
少し苦しそうな息を吐きながら立城が小声で言う。そんなもんかね、と呟いて水輝は緩やかな抽迭を始めた。そうしているうちに次第に立城が声を漏らし始める。どうやら一応は気持ちはいいらしい。そのことにほっとして水輝は徐々に腰の動きを大きくした。最初は膣の入り口から中程で擦っていたペニスを一気に膣奥に叩きつける。その瞬間、立城が高い声を上げて背を反らした。間を置かずに膣奥にペニスの先端を何度もねじ込む。
「いけそうか?」
激しい動きに額に汗が滲む。水輝は片腕にしっかりと立城の腰を支え、膣奥に力強くペニスを突き入れながら訊ねた。水輝の動きにつられて立城の乳房が揺れる。
「もう、ちょっと、そのまま」
甘い声の合間に言って立城が水輝の背を抱きしめる。水輝は引き寄せられるままに立城にのし掛かり、両腕に細い身体を抱いた。
耳許で甘ったるい声が響く。立城が達したのを確認してから水輝は衝動のままに腰を揺さぶった。絶頂に達し、緊張して締まりを帯びた膣の中で何度もペニスを往復させる。ほどなく衝動が高まり、水輝は呻きを漏らして射精した。
「いっぱい、出たね」
「そりゃあ、あれだけ待たされればな」
荒い息を吐きながら水輝は呟きで答えた。立城がくすくすと笑って水輝の身体に足を絡める。このやろう、と笑って水輝は立城をしっかりと抱きしめた。
エピタイは嘘ではなく……。
こいつらの話の中ではかなりまともなエロ、という意味でした。
ちなみに「だめ、やりなおし」のセリフは某ゲームを参考にしましたw