エピタイ通り、TS警報です。
唐突に胸に痛みが走る。水輝は目を見張って息を飲み、身体を硬直させた。それまで感じていた快楽が一気に吹き飛ぶ。下腹部を中心に身体に満ちていた熱が消え、手足の先が震えだす。水輝は声を発することも出来ない痛みに見舞われ、必死で歯を食いしばった。
「なるほど……。確かに君の言う通りだね」
緊張に強ばった水輝の背に立城は手を突き立てていた。水輝はだがそのことにすら気付けなかった。強い痛みに身体が内側からばらけてしまいそうな錯覚に陥る。
「でも、これならどうかな?」
静かな立城の声も水輝の耳には届かなかった。身体の中で何かが軋みを上げる。水輝は凄まじい痛みに絶叫した。肛門に咥え込んでいた立城のペニスがずるりと抜ける。だが水輝にはそれも判らなかった。
水輝は余りに激しい痛みに意識を失った。気が付いた時、水輝は立城の腕の中に抱かれていた。窓からは明るい日の光が射し込んでいる。水輝はぼんやりとした目で立城を見つめ、昨日の晩に何があったのかを思い出そうとした。だが身体中が痛かったことくらいしか思い出せない。
「やあ。おはよう」
立城がそう言って笑みかける。挨拶を返そうとした水輝はそこで初めて身動きが出来ないことに気が付いた。身体はベッドに横たわっているのだが、腕を上げるどころか指一本まともに動かせないのだ。
身動き一つ出来ず、おまけに喋ることもままならない水輝に立城はゆっくりと説明した。どうやら立城は昨晩、強引に水輝の性別を女性に変えてしまったらしい。目覚めた時から身体の感覚がおかしいことに気付いていた水輝は、そう言われて素直に納得した。
立城が調べたところ、水輝の持つ宝珠はどれもがまるでただの石のようになっているという。龍神がある程度は自由に性の別を変ずることが出来るのは、この宝珠のおかげなのだ。だが水輝の宝珠は力を殆どなくした状態でとても使えなかった。
そこで立城は水輝の宝珠に強制的に力を送り込んだ。辛うじて機能した黒宝珠が水輝の性別を変えようとした。だが例え立城の力を送られたと言っても、受け側の水輝の宝珠は以前よりずっと鈍くなっていて、身体の構成を組み替えるにも酷く時間がかかり……結果的に水輝に激痛をもたらすことになったのだ。
骨や肉の形、配分、体内の臓器の配置の変化、性器の構造の変質。それらのこと全てが痛みを伴って行われたのだから意識をなくすのも無理はない。水輝は立城の説明を聞いてなるほどと心の中で頷いた。
立城が優しい微笑みを浮かべて水輝の頭をゆっくりと撫でる。
「気長に髪を伸ばそうね」
そう言って立城が水輝の短い髪を指ですく。水輝は誰が伸ばすか、と胸の中で呟いて立城を睨みつけた。幸い、目の周りの筋肉は動かすことが出来るため、視線を動かしたり瞼の開閉は出来る。水輝が怒りをこめて睨んだことに気付いたのだろう。立城が困ったような顔をする。
まるで人形のようだった。寝起きは勿論、食事を口許に運ばれても唇すら動かせない。立城はそんな水輝をかいがいしく世話した。内臓に出来るだけ負担がかからない柔らかな粥を炊き、ベッドの縁に腰掛けて水輝の口許に蓮華を寄せる。布団を畳んだところにもたれかかり、身動きしない水輝の唇を指でそっと開いて粥を口の中に落とす。そこまでされて漸く水輝は食事を喉に通すことが出来た。
立城は水輝が女性に変じ、動けなくなった日を境に屋敷から殆ど出なくなった。仕事はいいのかという水輝の心の内の問い掛けに立城は苦笑を浮かべ、少しの間なら大丈夫と言った。
風が日を追うごとに冷えていく。天気のいい日には立城は水輝を抱えて庭に出るようになった。大きなカウチに水輝をゆっくりと横たえ、のんびりとひなたぼっこをする。水輝は周囲が次第に秋の色に染まっていくのを眺めながら、ぼんやりと立城の話を聞いた。
最初は短かった水輝の髪が段々と長くなる。立城は時折、水輝を椅子に座らせて器用に髪を切りそろえた。もう染髪料は取れかけていて、毛の根元辺りは元の暗い青みを帯びた色へと変わっていた。
長い時間をかけて水輝は少しずつ身体を動かせるようになっていった。最初は自由に口を開けられるように。次は声を出せるように。指が自由になり、手足が動き、そして。
「なあ……まじでやるのか?」
水輝は渋い顔をして立城を見た。確かに身体は大分、動かせるようにはなった。だがまだ力加減が難しく、動きは酷くぎこちない。そのことを自覚していた水輝は急な立城の注文に戸惑っていた。
窓の外には雪がちらついている。季節はすっかり冬に変わり、部屋の暖炉では赤々と火が燃えている。時折、強い風が吹いては窓を微かに鳴らす。寝室の様子をぐるりと見回してから水輝は立城に目を戻した。
「君の仕事は何だったかな?」
「セックスの相手」
笑い混じりの立城の問いに水輝は憮然としたまま答えた。喉の構造が変わり、水輝の声はすっかり女性そのものになっている。だが相変わらず水輝の口調は元のままだった。
「長い間、お休みしていたから忘れてしまったかと思ったよ」
「お前が女にしやがるからだろうが」
うんざりした顔をして水輝は呻いた。そもそも立城はどうしてこんな面倒なことをしたのだろうか。いや、それ以前に動けなくなった後に男に戻してくれれば良かったのだ。そうすれば今よりはずっとスムーズに元通りに動けるようになっていただろう。
水輝は枕を抱えて正面に座る立城をぎらりと睨みつけた。
「大体、何の得があるってんだ。女抱きたきゃ外に行ってこいっつったろうが」
これまでに何度となく繰り返したことを水輝はまた言った。だが何度言っても立城は曖昧に言葉を濁すだけでその理由を言おうとしない。
何とか身体を起こして自分で食事をとれるようになるまで数ヶ月。その間、立城は飽きもせず水輝の世話をずっと焼いていた。その時間が水輝にはどうしても無駄に思えてならなかった。もっと別の時間の使い方をした方がよほど役に立つし建設的だったのではないか。そう思えてならないのだ。
立城が超楽しそうです。
ていうか、おまいら……何でいつも絡んでるんですかね?w
書いた作者がいうのもなんですけど。