※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 三部 夜の女王   作:伊駒辰葉

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エロシーンがあります。
すでにTSしてるので……BLではない気がしますが。
TSした後でもキッツいという方は避けてください!


夢やおとぎの国でも

 背中の中程まで伸びた髪が頭を動かした拍子に揺れる。水輝は少し顔をしかめて軽く身体を捻り、顔にかかりそうになっていた髪を背中に追い払った。ゆったりとソファに腰掛けた立城がそんな水輝を優しい目で見つめる。

 

 今日は朝から随分冷えたらしい。庭先の小さな池には氷が張っていたと聞いた。色んな植物の植えられた庭は雪ですっかり白くなっている。そんな庭で小道の雪をスコップで退けているのは執事の和也だ。水輝は窓の外の光景をちらりと見てからまた目を閉じた。

 

 スタッカート、ビブラート、ピアニシモ、フォルテシモ。水輝は窓辺に立ってバイオリンを奏でていた。楽器を用意したのは立城だ。指や手の動きを訓練するため、という名目で渡されたバイオリンを水輝は毎日こうして奏でている。

 

 音楽は不思議と譜を見なくても奏でられた。それは龍神の力をなくす前と同じだ。音をイメージするだけで楽器は弾くことが出来る。だが、それでもやっぱり前のように無意識にという訳にはいかない。しかもこの間まできちんと身体を動かすことが出来なかったのだ。水輝は神経を研ぎ澄まして丁寧に曲を奏でていった。

 

 曲が終わったところで立城が控え目に拍手する。水輝は目を開けて深く息を吐いた。

 

「もうすっかり良くなったみたいだね」

「まあ、動けるようにはなったな」

 

 素っ気なく答えて水輝は楽器をケースに戻した。

 

 立城はあれから本人の言葉通り、無理に水輝を抱こうとはしなかった。ベッドでお互いに裸になっても、立城は気長に水輝の身体に触れるだけで、無理やりに挿入しようとはしない。そのおかげなのか、それとも単に身体が回復したからなのか、水輝は次第に感じるようになった。

 

 最初は唇。次が耳朶。首筋や肩、胸、腕、脇腹、足。冷たく凍り付いたものが溶けるように、水輝は日を追うごとに少しずつ性感を覚えるようになった。

 

 そして昨日。初めて陰部に立城が指を這わせた。水輝はバイオリンのケースを片付けてから大股で部屋を横切った。立城は近頃はまた前のように仕事に出かけるようになっている。今日は休みなのだ。

 

「で? 真っ昼間っからセックスかよ。お前もよくよく好きだよなあ」

 

 呆れた顔を作って水輝は立城の隣に乱暴に腰を下ろした。ソファのクッションで弾んだ水輝の肩を立城がタイミング良く抱いて押さえる。

 

「うん。僕も自分でびっくりしているよ」

「まあ、今まではセックスっつっても突っ込んでねえしなあ……」

 

 水輝は眉を寄せて難しい顔をしてからそう呟いた。そうなのだ。立城は水輝の身体に触れるだけで、ペニスを膣に挿入してはいない。思いを巡らせてから水輝は判ったと頷いた。

 

 まだ男性の時のような感じ方は出来ない。だがこれ以上、立城に我慢させるのは酷というものだろう。交わりたいだけなら外で誰かとやってこい。水輝は何度もそう言ったのだが、立城は頑として譲らなかったのだ。

 

 さっさと立ち上がってから水輝は歩きながら着ていたものを一枚ずつ脱いでいった。行儀悪く散らかされた水輝の服を、後から歩く立城が拾い上げていく。セーターを脱ぎ、スカートを落とし、ブラウスを放った後に下着を脱ぐ。ベッドに辿り着いた時には水輝は裸になっていた。

 

 手早く服を脱いだ立城がベッドに上がる。水輝は仰向けに転がってさあこい、と立城を迎えた。すると立城が困ったように笑う。

 

「相変わらず色気がないね」

「うるせえ。文句言うならやらねえぞ」

「僕は感想を述べただけでしょう? 文句は言っていないよ」

 

 いちいち言い返すな、と言いかけた水輝の唇を立城が唇で塞ぐ。水輝はしかめっ面になったが、やがて目を閉じて大人しく唇を開けた。

 

 舌を絡ませながら立城が静かに手を動かす。身体に触れられるたびに水輝は微かな呻きを漏らした。前のように敏感にとまではいかないが、立城に触れられると気持ちいいと感じることが出来るようになった。指や唇でされる愛撫に水輝はささやかにではあったが反応を返した。徐々に立城の手が肌を伝って降りていく。乳房や乳首などの感じやすい部分を立城が特に念入りに愛撫する。水輝は微かに眉を寄せ、潤んだ目を立城に向けた。

 

「いいから、入れろって」

「やっとここまで感じてくれるようになったんだよ? もう少し楽しませてくれてもいいと思うんだけどね」

 

 苦笑のようなものを浮かべて立城が水輝の胸元に音を立てて口づけする。その感触に身震いした水輝の首筋に立城が強く吸い付く。

 

「あっ!」

 

 ぞくりとしたものを感じ、水輝は声を上げた。その隙に立城がするりと手を動かし、水輝の股間を探る。

 

「さっきの、気持ちよかった?」

「ん、気持ち、よかった」

 

 立城の指先がくすぐるようにクリトリスを撫でる。立城はすっかり水輝の性感帯を知り尽くしているのだろう。つつくような触れられ方がやけに心地いい。水輝は問われるままに素直に快感を認めた。

 

 白い首筋や胸元に次々に赤い印が刻まれる。次第に快感が深くなり、水輝は自然に声を上げ始めた。股間を弄る立城の指先に少しずつ力がこもり、性感を刺激されて勃起した水輝のクリトリスは包皮から顔を出した。

 

 昂奮にほんのりと赤く染まったクリトリスに立城が吸い付く。強い刺激に水輝は悲鳴のような声を上げて背を反らした。反射的に閉じかけた水輝の腿を立城が腕でしっかりと左右に開く。

 

「つっ、強すぎ! あっ、駄目だって!」

 

 泣きそうな声で水輝は立城を制した。だが立城は執拗にクリトリスを吸う。水輝はぎこちなく身を捩り、立城の頭をつかんで股間から引き剥がそうとした。

 

 くちゅりという音がして身体の中に何かが入ってくる。水輝はびくんと身体を震わせ、声にならない声を上げた。すっかり潤みきった膣内に立城が指を入れたのだ。水輝は恥ずかしさと快感に頬を真っ赤に染めて立城の頭を押さえた。

 

「だからっ、吸いながら入れるな! うっ、あっ!」

 

 昨日、初めて立城は水輝の股間に触れた。だがその時、立城はクリトリスや秘唇などの外側を撫でただけで膣内には触れていない。なのに何故か水輝は膣内を軽く弄られただけで強い性感を覚えた。

 

 水輝が強く反応した場所を立城が何度も指で弄る。水輝は立城の頭を懸命に引き剥がそうとした。だが腕が震えてどうしても力が入らない。そうしているうちに段々と切羽詰まってくる。水輝は目に涙を浮かべて叫んだ。

 

「やだって言ってるのに!」

 

 膣壁を立城の指が強く圧す。水輝は我慢が出来ず、身を捩りながら股間から潮を噴いた。すると立城が口を開いて水輝が噴き上げたものを余さず飲み下す。

 

「馬鹿! 何してんだよ!」

 

 恥ずかしさと情けなさにしゃくり上げながら水輝は涙声で喚いた。しばし水輝の股間に吸い付いてから立城がゆらりと顔を上げる。唇についた水滴を舐め取ってから立城は微笑んだ。

 

「泣かなくてもいいのに。君がしてくれたのと同じことをしただけでしょう?」

「射精と潮吹きは違うだろ!?」

「似たようなものだと思うけど」

「違うったら違う!」

 

 水輝は泣きじゃくりながら立城の背に腕を回した。はいはい、と苦笑して立城が水輝の腿を腕で押し上げる。

 

「覚えてろっ。後でしばきだからな!」

「はいはい。ほら、いれるよ」

 

 優しく笑んだ立城が水輝を抱きしめる。水輝は唇を噛んで痛みに備えた。恐らく処女膜は再生されている。身体が組み変わるだけであれだけ痛かったのだ。きっとペニスの挿入時にも相当に痛むだろう。

 

 そう思っていた。だから水輝は出来るだけ身体の力を抜き、余計な負担がかからないように備えていたのだ。

 

 ペニスの先端が徐々に膣に食い込む。立城も水輝の処女を破るつもりでいたのだろう。先端が埋まったところで一気に腰を押し進めた。その瞬間、水輝は痛みではなく強烈な快楽を覚え、反射的に腰を跳ね上げた。

 

「え?」

 

 立城が驚いたように目を見張る。急に絶頂に押し上げられた水輝は激しい声を上げて背を反らした。とても我慢が出来ない。

 

「すごいっ! いいっ」

「……水輝?」

 

 不安そうに立城が呼びかける。水輝は身を捩って自分から膣壁にペニスを擦りつけた。少し動くだけでたまらない快感がこみ上げてくる。

 

「水輝? 大丈夫なの?」

「早く、奥までねじ込んで! ああっ、またいく!」

 

 どくん。胸の奥で何かが深く脈打つ。甘ったるい声を上げて水輝は自分から大きく足を開いた。腕を立城の腰に回し、もっと奥まで突いてくれとせがむ。立城はしばし考えるような顔をしていたが、やがて水輝の腰をつかんで抽迭を始めた。

 

「前よりずっと具合がいいね」

 

 水輝の耳許に立城が熱っぽい声で囁く。だが水輝は次から次に襲ってくる快感に身を任せるのが精一杯だった。ペニスを押し込まれると内側から腹が持ち上げられる感覚がある。逆にペニスが引っ張られると腹の内側が引っこ抜かれてしまいそうな気がする。擦れるところが全部気持ちよくてたまらない。

 

 最初は様子を見るためにか、緩やかだった立城の腰の動きが徐々に大きくなる。二人の性器が擦れるたびに互いの漏らした体液が淫らな音を立てる。何度絶頂に達したか判らない。水輝は朦朧とする意識や身体の全部で立城のことを感じようとしていた。

 

「あっ、いいっ、いく! いくぅ!」

 

 快楽にだらしなく顔を緩め、水輝は甘く鳴きながら腰をくねらせた。立城がそんな水輝を愛しそうに抱きしめて囁く。

 

「そろそろ出るよ。水輝、僕の名前を呼んで」

 

 ペニスを突き入れられた膣壁が無意識に締まる。水輝は咥え込んだペニスの先端が膣奥に刺さるのを感じながら声を上げた。

 

「たつきぃ! おなかの、奥にっ、精液ちょうだい!」

「うわっ!」

 

 立城が慌てたような声を上げる。次の瞬間、水輝の膣内で立城のペニスが強く脈打ち、先端から熱い精液が大量に迸った。胎の奥が精液に満たされる感触に水輝は蕩けた顔になった。水輝はくすくすと笑って立城の身体に足を絡めた。

 

「おなかがたつきの精液でいっぱい……」

「水輝……?」

 

 荒い息を吐きながら立城が身を起こそうとする。水輝はそんな立城の背を抱きしめ、動きを制した。

 

 窓の外にちらりと目をやる。昼間だというのに窓の外には黒い蝙蝠が飛んでいる。水輝は唇を舐め、下腹に力を入れた。射精したての過敏になったペニスを膣壁で擦る。すると立城が焦ったように身を捩った。

 

「ちょっと待って。水輝?」

「Never」

 

 水輝は歌うように呟いた。そこで立城が勢いよく身を起こす。

 

「Never never land Nevertheless」

「……まさか……」

 

 立城の顔色が変わる。水輝はにっこりと笑って下腹に強い力をこめた。膣壁が動いて立城のペニスを膣奥に誘う。小さな声を漏らした立城のペニスが二度目の精を吐く。

 

「夢はまやかし、まやかしは夢。でも共に尽き果てるまでまやかしは終わらない。そう言ったのはお前だったよな? 樹」

「何故、その名を」

 

 呆然とした面持ちで立城が呟く。水輝は喉の奥で嗤って立城を抱き寄せ、情感のこもった口づけをした。緊張に強ばっていた立城の身体が少しずつ動き、ぎこちなく水輝を抱きしめる。

 

 だからやめときゃよかったんだ。水輝は声にならない声で呟いてそっと瞼を閉じた。




ここで一章は終わりです。
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